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【発明の名称】 液体封入式防振装置
【発明者】 【氏名】内山 高

【要約】 【課題】設備コストを安価にでき、組み付けが容易でかつ液体洩れを防止できる液体封入式防振装置を提供する。

【解決手段】防振装置は、支持金具10と、その外側に離間して同軸状に配設される外側金具20と、加硫成形されて両金具間を連結するゴム弾性体30と、ゴム弾性体の加硫成形によって外側金具の外周面に形成される外側ゴムシール部40とからなる加硫ゴム成形体Mに対して、支持金具の他端側に固定されて外側金具の他端に全周に亘って対向して配設される減衰板16とを備えなる中間構成品Nと、外側ゴムシール部の外径より僅かに内径の小さい有底筒状の金属製の容器金具50とを備えている。容器金具の側壁の軸方向中間位置に設けた空気抜き孔54と、ゴム弾性体の減衰板と密着する部分に設けた通気孔を、軸方向に揃えた状態で、中間構成品を容器金具に圧入することにより空気抜きがスムーズに行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 棒状の支持金具と、該支持金具の外側に離間して同軸状に配置され、軸方向一端側に径方向外方に延びた第1フランジ部を有する筒状の外側金具と、前記支持金具の他端側に固定されて前記外側金具の他端との間に隙間を隔てて配設される円板状の減衰板と、前記外側金具と前記支持金具との間に加硫成形されて該両金具を連結する一方、前記減衰板の外周側に密着してその径方向内側に該減衰板との間に環状の空間部を形成し、該減衰板と密着する部分において周方向の少なくとも1箇所に該空間部を外部と連通させる通気孔が設けられた略筒状のゴム弾性体と、前記外側金具の外周面に設けられた薄肉ゴム層であって前記通気孔に連通して通気孔から軸方向中間位置に至る部分に溝部が設けられた外側ゴムシール部とを備えてなる中間構成品と、前記外側ゴムシール部の外径より僅かに内径の小さい有底筒状の金属製容器であって、開口端に径方向外側に延びた第2フランジ部を有し、筒部側壁の軸方向中間位置に空気抜き孔を備えた容器金具とを備えてなる液体封入式防振装置であって、所定量の液体が収容された前記容器金具内に、前記中間構成品が前記減衰板側から同軸的に、かつ前記通気孔と前記空気抜き孔を軸線方向に揃えた状態で前記第1フランジ部が前記第2フランジ部に当接するまで圧入されて、該中間構成品と該容器金具とが前記外側ゴムシール部を介して液密に固定され、その後、前記空気抜き孔が封止されてなることを特徴とする液体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体封入式防振装置に係り、特にショベルカー等の産業用車両及び自動車のマウント用として適した液体封入式防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の液体封入式防振装置としては、例えば、図7に示すものが知られている。この防振装置は、軸方向に貫通した注入用貫通孔6を有する棒状の支持金具1と、その外周側に離間して同軸状に配設され、軸方向一端側に径方向外方に延びたフランジ部2aを有する筒状の外側金具2と、支持金具1の他端側に固定されて外側金具2の他端との間に隙間を隔てて配設される外周側が下方に向けて湾曲した減衰板3と、外側金具2と支持金具1との間に加硫成形されて両者間を連結すると共に減衰板3との間に空間部を形成した略筒状のゴム弾性体4と、外側金具2の外側に配設される有底筒状の金属製容器であって開口端に外側にフランジ部5aを有する容器金具5とを設け、容器金具5内に外側金具2の外周面にも設けられているゴム弾性体4を介して外側金具2を圧入し、両フランジ部2a,5aを固定することにより組み付け形成される。この容器金具5内に、注入用貫通孔6から空気を抜きながら液体例えばシリコンオイルを注入し、注入後に内部に所定量の空気を残した状態で貫通孔6を封止することにより、防振装置に形成されるものである。封入される液体については、粘性が5,000〜300,000cSt(センチストークス)程度の高粘性のシリコンオイル等の液体が用いられる。
【0003】また、同様な形状の他の液体封入式防振装置は、図8に示すように、支持金具1に注入用貫通孔を設ける代わりに、容器金具6底壁と減衰板3の水平部に軸方向の同一軸線上にそれぞれ貫通孔7,8を設け、この貫通孔7,8に液体注射機を挿入し空気を抜きながら液体を注入することにより形成されている。
【0004】この液体封入式防振装置は、例えば、油圧ショベルカー等の産業用大型車両に用いられるものであり、容器金具5が油圧ショベルカーの車体側に固定され、支持金具1がキャビン室側に固定され、ゴム弾性体の弾性作用や高粘性液体の弾性作用等により車体側からの振動がキャビン室内に及ばないように防振が行われるもので、通常高減衰特性の要求される用途に用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記液体封入式防振装置についてはいずれも、防振装置1個ずつに注入作業と共にエア抜きを行わなければならないため、量産時に多数の液体注射機等の注入設備が必要になり、設備コストが高価になる。さらに、液体が高粘性であるため、エア抜きを含めた防振装置への液体の注入時間が長くなり、そのため生産性が低く、製造コストが高くなるという問題がある。また、液体の注入に伴い、外部への液体の洩れが生じ易く、液体の拭き取りの手間が煩雑である。さらに、液体の洩れにより金具の外部に液体が付着すると、後工程の防錆塗装において金具への塗料の付着が悪くなるため前処理が必要になるという問題もある。本発明は上記した問題を解決しようとするもので、液体注入設備が不要となり設備コストを安価にでき、組み付けが容易で製造コストが安価でありかつ液体洩れを防止できる液体封入式防振装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的を達成するために、上記請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、棒状の支持金具と、支持金具の外側に離間して同軸状に配置され、軸方向一端側に径方向外方に延びた第1フランジ部を有する筒状の外側金具と、支持金具の他端側に固定されて外側金具の他端との間に隙間を隔てて配設される円板状の減衰板と、外側金具と支持金具との間に加硫成形されて両金具を連結する一方、減衰板の外周側に密着してその径方向内側に減衰板との間に環状の空間部を形成し、減衰板と密着する部分において周方向の少なくとも1箇所に空間部を外部と連通させる通気孔が設けられた略筒状のゴム弾性体と、外側金具の外周面に設けられた薄肉ゴム層であって通気孔に連通して通気孔から軸方向中間位置に至る部分に溝部が設けられた外側ゴムシール部とを備えてなる中間構成品と、外側ゴムシール部の外径より僅かに内径の小さい有底筒状の金属製容器であって、開口端に径方向外側に延びた第2フランジ部を有し、筒部側壁の軸方向中間位置に空気抜き孔を備えた容器金具とを備えてなる液体封入式防振装置であって、所定量の液体が収容された容器金具内に、中間構成品が減衰板側から同軸的に、かつ通気孔と空気抜き孔を軸線方向に揃えた状態で第1フランジ部が第2フランジ部に当接するまで圧入されて、中間構成品と容器金具とが外側ゴムシール部を介して液密に固定され、その後、空気抜き孔が封止されてなることにある。
【0007】上記のように構成した請求項1の発明においては、液体が収容された容器金具内に、中間構成品を減衰板側から同軸的にかつゴム弾性体の通気孔と容器金具の空気抜き孔を軸線方向に揃えた状態で第1フランジ部が第2フランジ部に当接するまで圧入することにより、容器金具内の減衰板とゴム弾性体間の空間部に溜った余分な空気を、圧入に応じて通気孔及び溝部を通して空気抜き孔から外部にスムーズに排出させることができる。また、容器金具内に収容された液体量が所定量に調整されているため、圧入において空気抜き孔から容器外部への液体の洩れを防止できる。
【0008】その結果、請求項1の発明によれば、中間構成品の容器金具内への圧入により、同時に容器金具内部のエア抜きも行われるため、複雑な液体注入設備が不要となり、設備コストを低減できる。さらに、上記圧入作業時に同時にエア抜きがスムーズに行われるため、液体封入を含む中間構成品の容器金具への組付け時間を大幅に短縮でき、製造コストを低減させることができる。また、液体の外部への洩れを防止できるため、容器金具等に液体が付着することがなく、そのため液体拭き取りの手間が省けると共に、金具類への塗装を確実に行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明すると、図1及び図2は、同実施形態である油圧ショベルカー用のキャブマウント(液体封入式防振装置)を平面図及び断面図により示したものであり、図3及び図4は、キャブマウントを構成する加硫成形品を平面図及び断面図により示したものである。
【0010】このキャブマウントは、支持金具10と、その外周側に離間して同軸状に配設された中間金具15と、その外側に離間して同軸状に配設され、軸方向一端側に径方向外方に延びた第1フランジ部22を有する筒状の外側金具20と、外側金具20と支持金具10との間に加硫成形されて両者間を連結するゴム弾性体30と、ゴム弾性体30の加硫成形によって外側金具20の外周面に形成される外側ゴムシール部40とからなる加硫ゴム成形体Mに対して、支持金具10の他端側に固定されて外側金具20の他端に全周に亘って対向して配設される減衰板16とを備えてなる中間構成品Nと、外側ゴムシール部40の外径より僅かに内径の小さい有底筒状の金属製容器であり軸方向一端側に径方向外方に延びた第2フランジ部53を有し中間構成品Nが圧入される容器金具50とを備えている。
【0011】支持金具10は、略円柱形の金具であり、図4に示すように、軸方向一端側(図示上端)にて軸心位置にネジ溝を有する取付孔12が形成された本体11と、軸方向他端側(図示下端)にて同軸的に突出した筒状の固定部13を設けている。固定部13の外径は、本体11の外径の略半分になっている。支持金具10の本体11外側には、筒状で薄肉の中間金具15が本体11の両端間に本体から離間して同軸的に配設されている。また、中間金具15の外側には、筒状の外側金具20が、中間金具15から離間して同軸的に配設されている。
【0012】外側金具20は、円筒部21と、その軸方向一端側にて径方向外部に向けて延出した正方形板状の第1フランジ部22を設けており、軸方向長さが中間金具15より短く、その軸方向他端が中間金具15の他端よりわずかに外方(図示下方)に位置している。第1フランジ部22の四隅には各々取付孔23が設けられている。また、外側金具20の他端側には、周方向の所定の1箇所に、軸方向に向けて略逆U字状に切り欠かれた端部孔24を設けている。そして、支持金具10と、中間金具15を含む外側金具20間には、筒状のゴム弾性体30が設けられており、これらを一体的に連結させている。
【0013】ゴム弾性体30は、軸方向の一端が、中間金具15の軸方向一端より上側の支持金具10の本体11一端側近傍に位置し、軸方向他端が、外側金具20の軸方向他端より下側である本体11他端と同一位置に位置している。また、ゴム弾性体30は、軸方向一端側の外周が上記第1フランジ部22の径方向略中間に位置しており、他端側の外周位置が外側金具20の外周位置と同一位置にされている。ゴム弾性体30は、軸方向の両端側にて、外側金具20の内周面よりわずかに軸心側位置から径方向の内側部分が、軸方向にへこんだ環状の凹部31,32になっており、凹部31,32の軸直角断面形状が中間金具15を経て略W字形状になっている。ゴム弾性体30の軸方向両端側の凹部31,32の径方向外側は、環状凸部33,34になっている。そして、他端側(図示下側)の環状凸部34には、図5に詳細に示すように、外側金具20の端部孔24位置に、端部孔24に軸方向長さ略半分位置まで延びた通気孔35が径方向に形成されている。
【0014】また、外側金具20の外周側には、第1フランジ部22の径方向中間位置から環状凸部34端部に至る部分に薄肉の外側ゴムシール部40が設けられている。外側ゴムシール部40には、上記通気孔35から軸方向に延び外側金具20の軸方向略中間位置に至る部分が除去された溝部41が設けられている。外側ゴムシール部40には、溝部41の先端から軸方向一端側にわずかに離れた位置に、径方向に同軸的に突出した2本のリング状のシールリング部42が設けられている。この外側ゴムシール部40は、成形型に支持金具10、中間金具15及び外側金具20をセットした状態で加硫成形を行うことによりゴム弾性体30と共に一体的に形成され、図4に示す加硫ゴム成形体Mとして形成される。
【0015】この加硫ゴム成形体Mには、支持金具10の他端側の固定部13に、図6に示すように、金属製の円板であり少なくとも1箇所に貫通孔16bを有する減衰板16がその中心孔16aを挿入することにより装着され、固定部13の先端を外側に曲げることにより支持金具10に固定され、中間構成品Nとして形成される。これにより、減衰板16と凹部32との間に空間部37が形成され、空間部37はゴム弾性体30の通気孔35に連通している。
【0016】容器金具50は、有底筒状の金属製容器であって、その内径が外側金具20の外径よりは大きく外側ゴムシール部40より小さい内径の筒状の本体51と、軸方向の他端側に一体で設けられて外方に膨出する凸曲板状の底板部52と、軸方向一端側の開口端に径方向外側に延びた上記第1フランジ部22と同様の正方形板状の第2フランジ部53を有している。第2フランジ部53にも、四隅に取付孔(図示しない))が設けられている。また、本体51側壁の軸方向中間位置には、側壁を貫通した空気抜き孔54が形成されている。また、第2フランジ部53の対向する2辺の中間位置には、外方に突出する一対の係止片55(図1、2においては折り曲げられている)が設けられている。
【0017】つぎに、キャブマウントの組み立てについて説明する。容器金具50内部に、粘性が5,000〜300,000cStの高粘性のシリコンオイル等の液体Lが、予め調整された量収容された状態で、中間構成品Nが減衰板16側から容器金具50内に同軸的に圧入される。この圧入作業は、容器金具50の空気抜き孔54と、中間構成品Nの通気孔35とを軸方向に揃えて略同一線上に配置した状態で、第1フランジ部22と第2フランジ部53が接触するまで行われる。そのため、圧入作業時に、容器金具50内及び中間構成品Nの空間部37内に溜められた余分な空気が、ゴム弾性体30の通気孔35を通り、さらに通気孔35に続く外側ゴムシール部40の溝部41を通って、容器金具50に設けた空気抜き孔54を通して円滑に外部には排出される。また、容器金具50内に収容された液体Lの量が所定量に調整されているため、圧入において液体Lの容器金具50外部への洩れを防止できる。
【0018】その後、容器金具50の一対の係止片55を折り返して第1フランジ部22に係止させることにより、中間構成品Nが容器金具50に外側ゴムシール部40を介して液密に固定される。さらに、容器金具50の空気抜き孔54を止め具で封止することにより、内部に所定量の空気を残して液体Lが封入されたキャブマウントが形成される。
【0019】このように組み立てられたキャブマウントは、外側金具20及び容器金具50の第1,第2フランジ部22,53が取付孔23を介して油圧ショベルカーの車体側にネジ止め等により固定され、支持金具10がキャビン室側にネジ止めにより固定される。そして、車体側からの振動が、ゴム弾性体の弾性作用や高粘性液体の弾性作用等によりキャビン室内に及ばないように防振が行われる。
【0020】以上に説明したように、上記実施形態においては、液体Lが収容された容器金具50内に、中間構成品Nを減衰板16側から同軸的にかつゴム弾性体30の通気孔35と容器金具50の空気抜き孔54を軸線方向に揃えた状態で第1フランジ部22が第2フランジ部53に当接するまで圧入することにより、容器金具50内の減衰板16上の空間部37に溜った不要な空気を、圧入に応じて通気孔35及び溝部41を通して空気抜き孔54から外部にスムーズに排出させることができる。
【0021】その結果、中間構成品Nの容器金具50内への圧入により、同時に容器金具50内部のエア抜きも行われるため、エア抜きを含む液体注入設備が不要となり、設備コストを低減できる。さらに、圧入時にエア抜きがスムーズに行われるため、中間構成品Nの容器金具50への組付け時間を大幅に短縮でき、その製造コストを低減させることができる。また、容器金具50外部への液体Lの洩れを防止できるため、容器金具50等に液体が付着することがなく、液体拭き取りの手間が省けると共に、金具類への塗装を確実に行うことができる。
【0022】なお、上記実施形態においては、通気孔35と空気抜き孔54はそれぞれ1個ずつ設けられているが、2個以上設けることもできる。また、上記実施形態において示した液体封入式防振装置の具体的構造等についてはこれに限るものではなく、適宜変更することができる。
【出願人】 【識別番号】000219602
【氏名又は名称】東海ゴム工業株式会社
【出願日】 平成10年12月30日(1998.12.30)
【代理人】 【識別番号】100097353
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 功二
【公開番号】 特開2000−193016(P2000−193016A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−377352