| 【発明の名称】 |
流体封入式防振装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴木 達也
【氏名】加藤 和彦
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| 【要約】 |
【課題】流体封入式の防振装置において、簡単な構造により、広い周波数域に亘って低動ばね効果を達成すること。
【解決手段】流体室46内に傘部材22を配することにより、振動入力時に流体流動が生ぜしめられる狭窄流路を形成するに際して、かかる狭窄流路を、互いに直交する各径方向で対向位置せしめられた各一対の第一流路部分74,74と第二流路部分76,76によって構成し、且つ、各第一流路部分74の領域を周方向に30〜80度の範囲に亘って形成すると共に、第一流路部分74における流路断面積と流路長さの比:As /Ls の値と、第二流路部分76における流路断面積と流路長さの比:Aw /Lw の値を、下式を満足するように設定した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 防振連結すべき一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を、本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された流体室を形成し、該流体室において、主たる振動入力方向に略直交する方向に広がる傘部材を配設して前記第一の取付部材によって支持せしめることにより、該流体室を主たる振動入力方向で該傘部材を挟んだ両側に位置する分割室に仕切ると共に、それら両分割室を相互に連通する狭窄流路を、該傘部材によって該流体室内に形成した流体封入式防振装置において、前記狭窄流路の前記主たる振動入力方向での長さ寸法と、該狭窄流路の該主たる振動入力方向に直交する方向での開口幅寸法との、少なくとも一方を、前記傘部材の周方向で変化させて、かかる狭窄流路のうち主たる振動入力方向に直交する軸直角方向で互いに対向位置する一対の領域を、それぞれ該傘部材の周方向で30〜80度の範囲に亘って、流路断面積:Aと流路長さ:Lの比:A/Lの値が小さい一対の第一流路部分とすると共に、前記狭窄流路における該一対の第一流路部分を除く領域を、該一対の第一流路部分の対向方向に直交する軸直角方向で対向位置して、流路断面積:Aと流路長さ:Lの比:A/Lの値が該第一流路部分よりも大きくされた一対の第二流路部分とし、且つ該第一流路部分における流路断面積:As と流路長さ:Ls の比:As /Ls の値を、該第二流路部分における流路断面積:Aw と流路長さ:Lw の比:Aw /Lw の値に対して、下式:1/10≦(As /Ls )/(Aw /Lw )≦1/2を満足するように設定したことを特徴とする流体封入式防振装置。 【請求項2】 前記狭窄流路における前記主たる振動入力方向に直交する方向での開口幅寸法を、前記傘部材の周方向で変化させて、前記一対の第一流路部分を、開口幅寸法が小さい一対の狭幅流路部分にて構成すると共に、前記一対の第二流路部分を、開口幅寸法が大きい一対の広幅流路部分にて構成した請求項1に記載の流体封入式防振装置。 【請求項3】 前記狭窄流路を構成する前記第一流路部分と前記第二流路部分において、その流路長さ:Ls ,Lw を、全体に亘って且つ互いに略同一に設定した請求項2に記載の流体封入式防振装置。 【請求項4】 前記第一流路部分を前記傘部材の外周面と前記流体室の内周面の対向面間に形成すると共に、該第一流路部分における軸直角方向の開口幅を、周方向の全長に亘って略一定とした請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式防振装置。 【請求項5】 前記傘部材の外周面を一定の外径寸法を有する円形外周面とすると共に、前記流体室の内周面を一定の内径寸法を有する円形内周面として、それら傘部材の外周面と流体室の内周面の対向面間において略一定幅で周方向に延びる環状間隙を形成する一方、該傘部材における径方向に対向位置する部分に一対の貫通孔を形成して、それら各貫通孔と、前記環状間隙における該各貫通孔の外周側に位置する部分とによって、前記一対の第二流路部分を協働して形成すると共に、該傘部材における該貫通孔が形成されていない部分の外周側に位置する前記環状間隙によって、前記一対の第一流路部分を形成した請求項1乃至4の何れかに記載の流体封入式防振装置。 【請求項6】 前記流体室の内周面を一定の内径寸法を有する円形内周面とすると共に、前記傘部材の外周面の曲率半径を、互いに直交する径方向部分で相互に異ならせて、径方向で対向位置する曲率半径の小さい外周面と前記流体室の内周面との対向面間に前記一対の第一流路部分を形成すると共に、径方向で対向位置する曲率半径の大きい外周面と前記流体室の内周面との対向面間に前記一対の第二流路部分を形成した請求項1乃至4の何れかに記載の流体封入式防振装置。 【請求項7】 前記傘部材の外周面に対して、主たる振動入力方向に直交する方向で離間して対向位置する前記流体室の周壁部を、前記第二の取付部材によって構成して剛性壁部とすると共に、それら傘部材と流体室の周壁部との対向面の少なくとも一方に緩衝ゴム層を設けて、該流体室の周壁部に対する該傘部材の当接によって、主たる振動入力方向に直交する方向における前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の相対変位量を制限するストッパ機構を構成した請求項1乃至6の何れかに記載の流体封入式防振装置。 【請求項8】 前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の間への振動入力により、前記流体室に対して相対的な内圧差が生ぜしめられる副流体室を形成すると共に、それら流体室と副流体室を相互に連通するオリフィス通路を設けた請求項1乃至7の何れかに記載の流体封入式防振装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【技術分野】本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置であって、例えば自動車用エンジンマウントやボデーマウント,デフマウント等に有利に採用され得る流体封入式防振装置に関するものである。 【0002】 【背景技術】従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の一種として、防振連結すべき一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を、本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された流体室を形成せしめて、振動入力時における封入流体の共振作用等の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式の防振装置が、知られている。更に、かかる流体封入式防振装置においては、第一の取付部材で支持されて流体室内を主たる振動入力方向に略直交する方向に広がる傘部材を設けることにより、該流体室を主たる振動入力方向で該傘部材を挟んだ両側に位置する二つの分割室に仕切ると共に、それら両分割室を相互に連通する狭窄流路を、傘部材によって流体室内に形成した構造のものが、提案されている。 【0003】このような傘部材を設けた流体封入式防振装置では、第一の取付部材と第二の取付部材の間に振動が入力された際、流体室内を傘部材が変位して、狭窄流路を通じての流体流動が生ぜしめられるのであり、この流体の共振作用等の流動作用を利用することによって、有効な防振効果を得ることが出来るのである。 【0004】ところが、従来構造のものでは、傘部材によって形成された狭窄流路を通じて流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果が、予めチューニングされた特定周波数域の振動だけにしか有効に発揮されず、特に、チューニング周波数域を越えた高周波数域の振動に対しては、狭窄流路における流動抵抗の大幅な増大による高動ばね化に起因して、防振性能が大きく低下してしまうという問題があった。それ故、広い周波数域で低動ばね特性が要求されるような場合には、要求特性を充分に達成することが、難しかったのである。 【0005】 【解決課題】ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、流体室に配設した傘部材によって、広い周波数域に亘って低動ばね効果を得ることが出来、以て、広い周波数域の入力振動に対して有効な防振効果を得ることの出来る、改良された構造の流体封入式防振装置を提供することにある。 【0006】 【解決手段】以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体の記載および図面に記載の発明思想に基づいて認識されることが理解されるべきである。 【0007】本発明の第一の態様は、防振連結すべき一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を、本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された流体室を形成し、該流体室において、主たる振動入力方向に略直交する方向に広がる傘部材を配設して前記第一の取付部材によって支持せしめることにより、該流体室を主たる振動入力方向で該傘部材を挟んだ両側に位置する分割室に仕切ると共に、それら両分割室を相互に連通する狭窄流路を、該傘部材によって該流体室内に形成した流体封入式防振装置において、前記狭窄流路の前記主たる振動入力方向での長さ寸法と、該狭窄流路の該主たる振動入力方向に直交する方向での開口幅寸法との、少なくとも一方を、前記傘部材の周方向で変化させて、かかる狭窄流路のうち主たる振動入力方向に直交する軸直角方向で互いに対向位置する一対の領域を、それぞれ該傘部材の周方向で30〜80度の範囲に亘って、流路断面積:Aと流路長さ:Lの比:A/Lの値が小さい一対の第一流路部分とすると共に、前記狭窄流路における該一対の第一流路部分を除く領域を、該一対の第一流路部分の対向方向に直交する軸直角方向で対向位置して、流路断面積:Aと流路長さ:Lの比:A/Lの値が該第一流路部分よりも大きくされた一対の第二流路部分とし、且つ該第一流路部分における流路断面積:As と流路長さ:Ls の比:As /Ls の値を、該第二流路部分における流路断面積:Aw と流路長さ:Lw の比:Aw /Lw の値に対して、下式:1/10≦(As /Ls )/(Aw /Lw )≦1/2を満足するように設定したことを、特徴とする。 【0008】なお、上記狭窄流路は、傘部材の外周面と流体室の内周面との対向面間に形成する他、傘部材に貫通孔を設けること等によって形成することも可能である。そこにおいて、傘部材に貫通孔を設けた場合に、狭窄流路の軸直角方向(主たる振動入力方向に直交する方向)での開口幅寸法は、軸直角方向線上に存在する、傘部材の外周面と流体室の内周面の間に形成された間隙と、傘部材に形成された貫通孔とのトータルの開口幅寸法として把握される。 【0009】また、第一の実施形態に係る流体封入式防振装置において、前記狭幅流路部分の周方向範囲は、より好ましくは、40〜60度に設定される。更にまた、前記(As /Ls )/(Aw /Lw )の値は、より好ましくは、下式:1/6≦(As /Ls )/(Aw /Lw )≦1/3を満足するように設定される。なお、第一及び第二の流路部分において、流路断面積:Aと流路長さ:Lの比:A/Lの値を相対的に調節設定するに際しては、それら第一流路部分と第二流路部分の間で、流路断面積:Aと流路長さ:Lの両方を互いに異ならせる他、流路断面積:Aと流路長さ:Lの何れか一方を相互に同一とし、他方だけを異ならせることも可能である。 【0010】すなわち、本発明者が多数の実験と詳細な検討を行った結果、このような第一の態様に係る流体封入式防振装置によれば、一対の第一流路部分と一対の第二流路部分を、特定の相対的領域比をもって、且つ特定の相対的流路断面積・流路長比をもって形成し、それらの第一流路部分および第二流路部分で狭窄流路を構成することによって、該狭窄流路を流通せしめられる流体の共振作用に基づいて発揮される低動ばね効果を、広い周波数域に亘って有利に得ることが出来ることを、新たに見い出したのであり、かかる知見に基づいて、本発明が完成されたのである。 【0011】そこにおいて、第一の態様に係る本発明において採用される一対の第一流路部分と一対の第二流路部分における特定の相対的領域比および特定の相対的流路断面積・流路長比の技術的根拠は必ずしも明らかでないが、第一流路部分の周方向での形成領域を30〜80度の範囲とし、第二流路部分の周方向での形成領域よりも小さな相対的領域比を採用した理由は、第一流路部分を周方向に80度より大きくすると、第一流路部分を通じての流体流動性の防振特性への影響が支配的となって第二流路部分による高周波数域の低動ばね効果が低下する傾向があるからであり、また第一流路部分を周方向に30度以上とした理由は、それより小さくすると第一流路部分を通じての流体の流動作用に基づく低動ばね効果が充分に得られ難くなる傾向があるからである。更に、第一流路部分と第二流路部分における相対的な流路断面積・流路長比:(As /Ls )/(Aw /Lw )の値を、1/10〜1/2の範囲とした理由は、かかる相対的流路断面積・流路長比を1/10より小さくすると、第一流路部分を通じての流体流動作用に基づく低動ばね効果が発揮される周波数域と第二流路部分を通じての流体流動作用に基づく低動ばね効果が発揮される周波数域との間の周波数域において高動ばね化する傾向があるからであり、また1/2より大きくすると、第一流路部分を通じての流体流動と第二流路部分を通じての流体流動が一体化するような状態となり、全体として狭い周波数域での低動ばね効果しか有効に発揮されなくなる傾向があるからである。 【0012】そして、第一の態様に係る本発明においては、それら第一流路部分と第二流路部分における特定の相対的領域比と特定の相対的流路断面積・流路長比の両方を、互いに組み合わせて採用したことによって、第一流路部分を流動せしめられる流体の共振作用と第二流路部分を流動せしめられる流体の共振作用との協働作用に基づいて、広い周波数域に亘って低動ばね効果を達成することが出来たのであり、以て、広い周波数域の入力振動に対して有効な防振効果を発揮し得る流体封入式防振効果を提供し得たのである。 【0013】また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材を、前記第一の取付部材に向かって開口する筒状部を備えた構造とし、該第一の取付部材と該第二の取付部材における該筒状部の開口部分とを、前記本体ゴム弾性体で連結すると共に、前記流体室の周壁部を該第二の取付部材における筒状部で構成したことを、特徴とする。このような第二の態様に係る流体封入式防振装置によれば、傘部材と協働して狭窄流路を形成する流体室の周壁部を高剛性として、振動入力時にも一定の狭窄流路の形状を確保することが出来ることから、狭窄流路を通じての流体の流動作用に基づく防振効果の安定化が実現され得る。 【0014】また、本発明の第三の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式防振装置において、軸部材と該軸部材の外周側に離間して配された外筒部材とによって、前記第一の取付部材と前記第二の取付部材を構成すると共に、それら第一の取付部材と第二の取付部材の間に本体ゴム弾性体を介装せしめて、第一の取付部材と第二の取付部材の径方向対向面間に前記流体室を形成すると共に、該流体室内において径方向線に直交する方向に広がる状態で前記傘部材を配設し、該傘部材を、前記軸部材または前記外筒部材によって支持せしめたことを、特徴とする。このような第三の態様に係る流体封入式防振装置によれば、例えばFF型自動車用のエンジンマウント等に用いられる円筒型の流体封入式防振装置が有利に実現され得る。 【0015】また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の態様に係る流体封入式防振装置において、前記狭窄流路における前記主たる振動入力方向に直交する方向での開口幅寸法を、前記傘部材の周方向で変化させて、前記一対の第一流路部分を、開口幅寸法が小さい一対の狭幅流路部分にて構成すると共に、前記一対の第二流路部分を、開口幅寸法が大きい一対の広幅流路部分にて構成したことを、特徴とする。このような本態様に係る流体封入式防振装置においては、第一流路部分と第二の流路部分における流路長さの差を小さく、或いは略同一に設定することが出来、製造が容易となる。 【0016】また、かかる第四の態様において、特に好適には、前記第一及び第二の狭窄流路を構成する前記狭幅流路部分および前記広幅流路部分の流路長さ:Ls ,Lwが、全体に亘って且つ互いに略同一に設定される。このような構造に従えば、傘部材の構造が簡単となって製作性が一層有利に向上されると共に、狭窄流路を通じての流体の流動が全体として安定化して、広い周波数領域において全体に滑らかな低動ばね特性が一層有利に実現可能となる。 【0017】また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の態様に係る流体封入式防振装置において、前記第一流路部分を前記傘部材の外周面と前記流体室の内周面の対向面間に形成すると共に、該第一流路部分における軸直角方向の開口幅を、周方向の全長に亘って略一定としたことを、特徴とする。このような第五の態様に係る流体封入式防振装置によれば、第一流路部分を通じての流体の流動が安定化して、流体の流動作用に基づく低動ばね効果がより有効に発揮される得る。なお、第二流路部分は、軸直角方向の開口幅を周方向に変化させても良い。このように、開口幅の狭い第一流路部分の開口幅を周方向に略一定化すれば、目的とするチューニングを施すに際して、傘部材と流体室内周面との対向面間距離の最小値をできるだけ大きく設定することが可能となる。 【0018】また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の態様に係る流体封入式防振装置において、前記傘部材の外周面を一定の外径寸法を有する円形外周面とすると共に、前記流体室の内周面を一定の内径寸法を有する円形内周面として、それら傘部材の外周面と流体室の内周面の対向面間において略一定幅で周方向に延びる環状間隙を形成する一方、該傘部材における径方向に対向位置する部分に一対の貫通孔を形成して、それら各貫通孔と、前記環状間隙における該各貫通孔の外周側に位置する部分とによって、前記一対の第二流路部分を協働して形成すると共に、該傘部材における該貫通孔が形成されていない部分の外周側に位置する前記環状間隙によって、前記一対の第一流路部分を形成したことを、特徴とする。このような第六の態様に係る流体封入式防振装置においては、傘部材の外周面と流体室の内周面の間に形成される環状間隙が、周方向に略一定幅で形成されることから、例えば、主たる振動入力方向以外の振動が入力された際の傘部材の流体室周壁部に対する不要な接触が、何れの方向においても有利に回避され得る。しかも、傘部材の組付けに際して方向性を考慮する必要がなくなり、作業性が向上される利点もある。なお、このような本態様に係る流体封入式防振装置は、例えば、前記第二の態様に示されている如く、第一流路部分を狭幅流路部分として構成すると共に、第二流路部分を広幅流路部分として構成することによって、一層有利に構成され得る。 【0019】また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第五の態様に係る流体封入式防振装置において、前記流体室の内周面を一定の内径寸法を有する円形内周面とすると共に、前記傘部材の外周面の曲率半径を、互いに直交する径方向部分で相互に異ならせて、径方向で対向位置する曲率半径の小さい外周面と前記流体室の内周面との対向面間に前記一対の第一流路部分を形成すると共に、径方向で対向位置する曲率半径の大きい外周面と前記流体室の内周面との対向面間に前記一対の第二流路部分を形成したことを特徴とする。このような第七の態様に係る流体封入式防振装置においては、例えば、一対の第一流路部分の対向方向に入力される振動荷重に対して、一対の第二流路部分の対向方向に入力される振動荷重の方が大きい場合に、振動入力時における傘部材の流体室周壁部に対する不要な接触が有利に回避され得る。なお、このような本態様に係る流体封入式防振装置は、例えば、前記第二の態様に示されている如く、第一流路部分を狭幅流路部分として構成すると共に、第二流路部分を広幅流路部分として構成することによって、一層有利に構成され得る。 【0020】また、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の態様に係る流体封入式防振装置において、前記傘部材の外周面に対して、主たる振動入力方向に直交する方向で離間して対向位置する前記流体室の周壁部を、前記第二の取付部材によって構成して剛性壁部とすると共に、それら傘部材と流体室の周壁部との対向面の少なくとも一方に緩衝ゴム層を設けて、該流体室の周壁部に対する該傘部材の当接によって、主たる振動入力方向に直交する方向における前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の相対変位量を制限するストッパ機構を構成したことを、特徴とする。このような第八の態様に係る流体封入式防振装置においては、第一の取付部材と第二の取付部材の相対偏位量を制限するストッパ機構が、特別な部材を必要とすることなく、且つコンパクトに実現され得る。 【0021】また、本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の態様に係る流体封入式防振装置において、前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の間への振動入力により、前記流体室に対して相対的な内圧差が生ぜしめられる副流体室を形成すると共に、それら流体室と副流体室を相互に連通するオリフィス通路を設けたことを、特徴とする。このような第九の態様に係る流体封入式防振装置においては、オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて有効な防振効果を得ることが出来るのであり、かかるオリフィス通路を、傘部材によって形成された第一流路部分および第二流路部分とは異なる周波数域にチューニングすることによって、一層広い周波数域の振動に対して優れた防振効果を得ることが可能となる。なお、第一流路部分および第二流路部分による防振効果をより有効に得るためには、オリフィス通路を、それら第一流路部分および第二流路部分のチューニング周波数域よりも低周波数域にチューニングすることが望ましい。 【0022】 【発明の実施の形態】先ず、図1及び図2には、本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が、示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体15で弾性的に連結されてなる構造を有している。そして、第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられる一方、第二の取付金具14がボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持するようになっている。また、そのような装着状態下、かかるエンジンマウント10には、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に対して、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14の略対向方向となる、図1中の略上下方向に、防振すべき主たる振動が入力されることとなる。 【0023】より詳細には、第一の取付金具12は、金属等の剛性材で形成されており、円板形状を有している。また、第一の取付金具12には、軸方向下方に向かって突出する略逆円錐形状の支持金具20が溶着されており、この支持金具20の突出先端部に対して、傘部材としての傘金具22がかしめ固定されている。この傘金具22は、略円板形状を有しており、中央に貫設された取付孔に支持金具20の先端部が挿入されてかしめ固定されることにより、支持金具20の中心軸に対して直交する方向に広がって支持されている。更に、第一の取付金具12の中央部分には、ボルト装着孔16が設けられており、このボルト装着孔16に対して取付ボルト18が圧入固定されて、第一の取付金具12から図1中の上方に向かって突設されている。そして、この取付ボルト18によって、第一の取付金具12が、図示しない自動車のパワーユニット側に取り付けられるようになっている。 【0024】一方、第二の取付金具14は、金属等の剛性材で形成されており、全体として大径の略円筒形状を有している。そして、この第二の取付金具14は、第一の取付金具12の中心軸上で、下方に離間して配設されている。また、かかる第二の取付金具14には、軸方向一方(第一の取付金具12側に位置せしめられた、図1中の上方)の開口周縁部に対して、径方向外方に向かって広がるフランジ状部24が一体形成されていると共に、軸方向他方(図1中、下方)の開口周縁部には、径方向内方に向かってわずかに曲折された係止部26が一体形成されている。そして、この第二の取付金具14は、厚肉の大径円筒形状を有する剛性のブラケット28に圧入固定されており、該ブラケット28を介して、図示しない自動車のボデー側に対して、例えばボルト等によって取り付けられるようになっている。なお、ブラケット28には、軸方向一方の開口周縁部に外向きのフランジ状部30が一体形成されており、このフランジ状部30に対して、第二の取付金具14のフランジ状部24が重ね合わされることにより、パワーユニットの荷重入力方向での耐荷重強度が大きく設定されている。 【0025】さらに、前記第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体15が介装されている。この本体ゴム弾性体15は、略厚肉のテーパ付き円筒形状とされており、軸方向上方に向かって次第に小径化された略円錐台形の外周面形状を有している。そして、本体ゴム弾性体15の小径側端面に第一の取付金具12が重ね合わされた状態で加硫接着されている一方、本体ゴム弾性体15の大径側端部外周面に対して、第二の取付金具14が、その上方開口端部の内周面において加硫接着されている。また、第一の取付金具12に溶着された支持金具20は、本体ゴム弾性体15の中心孔32を貫通して配されており、支持金具20が本体ゴム弾性体15の中心孔32の内面に加硫接着されている。要するに、本実施形態では、本体ゴム弾性体15が、第一及び第二の取付金具12,14を有する一体加硫成形品として形成されているのである。 【0026】また、本体ゴム弾性体15は、第二の取付金具14の内周面に沿って、第二の取付金具14の内周面の略全面に渡って延び出している。そして、第二の取付金具14の内周面には、軸方向略中央部分よりも上側部分を覆う厚肉の緩衝ゴム34が、本体ゴム弾性体15と一体的に形成されており、これら本体ゴム弾性体15と緩衝ゴム34によって、下方に開口するポケット状の凹所36が協働して形成されている。また、このポケット状の凹所36内には、上底面の中央から支持金具20が突出しており、該支持金具20で支持された傘金具22が、かかる凹所36内に位置せしめられている。更に、第二の取付金具14の内周面における軸方向略中央部分よりも下側部分は、本体ゴム弾性体15および緩衝ゴム34と一体的に形成された薄肉のシールゴム層38で覆われている。 【0027】さらに、かくの如き一体加硫成形品には、第二の取付金具14の軸方向下方の開口部側から、仕切部材40とダイヤフラム42が、順次、挿入されて組み付けられている。仕切部材40は、合成樹脂材やアルミニウム合金等の金属材の如き硬質材で形成されており、全体として略円板形状を有している。また、ダイヤフラム42は、弾性変形が容易に許容される薄肉のゴム膜で構成されており、その外周面には円筒形状の嵌着リング44が加硫接着されている。そして、これら仕切部材40とダイヤフラム42が、第二の取付金具14に内挿されて、シールゴム層38が形成された軸方向下側部分に配設された後、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材40とダイヤフラム42(嵌着リング44)が、第二の取付金具14に対して嵌着固定されている。 【0028】そして、これにより、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部が、ダイヤフラム42によって流体密に覆蓋されて、第二の取付金具14の内部に、外部空間に対して密閉されて非圧縮生流体が封入された流体封入領域が画成されている。なお、封入流体としては、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いはそれらの混合流体等が何れも採用されるが、特に、流体の共振作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。また、非圧縮性流体の注入と充填は、例えば、一体加硫成形品として与えられた第二の取付金具14に対する仕切部材40とダイヤフラム42の組み付けを、かかる非圧縮性流体中で実施すること等によって、有利に為され得る。 【0029】さらに、かかる流体封入領域は、仕切部材40によって上下に二分されており、以て、該仕切部材40を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体15で構成されて、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に内圧変化が生ぜしめられる流体室としての受圧室46が形成されている一方、該仕切部材40を挟んで下側には、壁部の一部がダイヤフラム42で構成されて、該ダイヤフラム42の変形に基づいて容積変化が容易に許容されて圧力変化が吸収される副流体室としての平衡室48が形成されている。 【0030】また、仕切部材40には、外周面に開口して周方向に略螺旋状に連続して延びる周溝50が形成されており、この周溝50が第二の取付金具14で覆蓋されることによって、受圧室46と平衡室48を相互に連通するオリフィス通路52が形成されている。そして、振動入力時に、受圧室46と平衡室48の間に生ぜしめられる圧力差に基づき、オリフィス通路52を通じて流動する流体の流動作用によって、所定の防振効果が発揮されるようになっている。なお、本実施形態では、オリフィス通路52を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて、シェイク等の低周波振動に対して有効な防振効果が発揮されるように、オリフィス通路52の流路断面積や長さ等が設定されている。 【0031】更にまた、仕切部材40の中央部分には、上方に開口する円形の中央凹部54が形成されており、この中央凹部54内に可動ゴム板56が収容配置されている。この可動ゴム板56は、外周部分を、中央凹部54の底壁と、該中央凹部54の開口部に嵌入固定された円環形状の押えリング58で軸方向に流体密に挟圧保持されることによって、仕切部材40に組み付けられている。また、そのような組付状態下で、可動ゴム板56の中央部分の上面は、押えリング58の中央透孔60を通じて受圧室46に露呈されている一方、可動ゴム板56の中央部分の下面は、中央凹部54の底壁に貫設された複数の連通孔62を通じて平衡室48に露呈されている。かくの如く配設された可動ゴム板56には、受圧室46と平衡室48の内圧が上下面に及ぼされるのであり、それ故、振動入力時には、受圧室46と平衡室48の圧力差に基づいて弾性変形せしめられる。そして、この可動ゴム板56の弾性変形に基づいて、仕切部材40の中央透孔60や連通孔62を通じての流体流動が生ぜしめられることにより、流体の共振作用や受圧室46の圧力吸収作用に基づいて、所定周波数域の入力振動に対する低動ばね効果が発揮されるようになっている。なお、本実施形態では、仕切部材40の弾性変形に伴う流体の流動作用に基づいて、アイドリング振動や低速こもり音等の中乃至高周波振動に対して有効な防振効果が発揮されるように、可動ゴム板56のばね特性や流体流路の長さと断面積等が設定されている。また、可動ゴム板56は、それ自体の弾性と中央凹所の底部への当接によって、弾性変形量が制限されるようになっており、シェイク等の低周波大振幅振動の入力時には、可動ゴム板56の弾性変形に伴う流体流動量が制限されて、オリフィス通路52を通じての流体流動量が十分に確保されるようになっている。 【0032】一方、壁部の一部が本体ゴム弾性体て画成された受圧室46の内部には、主たる振動入力方向(図1中、上下方向に延びるマウント中心軸方向)に対して直交する方向に広がって、傘金具22が配設されている。そして、エンジンマウント10の装着状態下では、図1中に仮想線で示されているように、パワーユニット荷重の入力で本体ゴム弾性体15が圧縮変形することにより、傘金具22が、図1の状態から下方に変位し、受圧室46内の略中央部分に位置せしめられる。これにより、受圧室46の内部が、傘金具22によって二分されているのであり、以て、傘金具22を挟んだ両側に上側分割室70と下側分割室72が形成されている。そして、これら上側分割室70と下側分割室72は、傘金具22の外周面66と、受圧室46の内周面(緩衝ゴム34の内周面)との対向面間に形成された、周方向に連続して延びる環状間隙64によって、相互に連通されている。 【0033】ここにおいて、本実施形態では、傘金具22として、支持金具20にかしめ固定される中央部分から斜め下方に向かってテーパ状乃至はスカート状に広がり、更に外周部分が径方向外方に向かって円環プレート状に広がる形状のものが採用されており、その最外周面66は、支持金具20による支持中心軸(受圧室46の中心軸)に対して同心的な円形形状とされている。また、傘金具22が収容配置される受圧室46の周壁部も、受圧室46の中心軸に対して同心的な円形形状とされている。これにより、傘金具22の外周面と受圧室46の内周面との径方向対向面間における環状空間64が、略一定の径方向寸法をもって周方向全周に亘って連続して延びる円環形状とされているのである。 【0034】また、傘金具22には、径方向の中間部分において、特に本実施形態ではテーパ状乃至はスカート状に広がる傾斜部分において、周方向に所定長さで延びる一対の貫通孔68が形成されている。これらの貫通孔68は、一定の径方向幅をもって周方向に半周以下の長さで延びており、傘金具22の中心軸を挟んで径方向で対向位置せしめられている。そして、かかる一対の貫通孔68の周方向長さが、それぞれ、傘金具22の中心軸回りの角度:θ1(図2参照)において100〜150度に設定されることとなり、特に本実施形態では、θ1≒125度とされている。換言すれば、傘金具22において、貫通孔68の形成されていない部分が、貫通孔68,68の対向方向に直交する径方向で互いに対向位置せしめられている。そして、かかる貫通孔68が形成されていない部分が、それぞれ傘金具22の中心軸回りの角度:θ2において30〜80度となるように設定されることとなり、特に本実施形態では、θ2≒55度とされているのである。 【0035】これにより、上側分割室70と下側分割室72を相互に連通する流路が、傘金具22の中心軸回りにおいて、貫通孔68が形成されていない領域、即ち図3において周方向にθ2の角度範囲で広がる領域では、環状間隙64のみによって構成されており、かかる流路が、第一流路部分としての狭幅流路部分74とされている。一方、傘金具22の中心軸回りにおいて、貫通孔68が形成された領域、即ち図3において周方向にθ1の角度範囲で広がる領域では、上側分割室70と下側分割室72を相互に連通する流路が、環状間隙64と貫通孔68によって協働して構成されており、かかる流路が、第二流路部分としての広幅流路部分76とされている。なお、狭幅流路部分74と広幅流路部分76の理解を容易とするために、図3中において、狭幅流路部分74を細かいクロスハッチングを付して示すと共に、広幅流路部分76を粗いクロスハッチングを付して示す。 【0036】また、これら狭幅流路部分74と広幅流路部分76は、貫通孔68の周方向長さが適当に設定されることによって、それぞれの周方向長さが調節されていると共に、貫通孔68の径方向幅が適当に設定されることによって、それぞれの流路面積が調節されている。ここにおいて、狭幅流路部分74と広幅流路部分76は、その流路断面積:Aと流路長さ:Lの比:A/Lの値が、下式を満足するように設定されることとなる。 1/10≦(As /Ls )/(Aw /Lw )≦1/2但し、As およびLs は、狭幅流路部分74の流路断面積(図3中の細かいクロスハッチングを付した領域)および流路長であり、Aw およびLw は、広幅流路部分76の流路断面積(図3中の粗いクロスハッチングを付した領域)および流路長である。特に、本実施形態では、(As /Ls )/(Aw /Lw )の値が、略1/3となるように設定されている。 【0037】このような狭幅流路部分74と広幅流路部分76を、傘金具22にて形成した、上述の如き本実施形態のエンジンマウント10においては、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に防振すべき振動が入力されると、受圧室46内で傘金具22が変位せしめられることにより、上下の分割室70,72間で、各一対の狭幅流路部分74,74と広幅流路部分76,76を通じての流体流動が生ぜしめられる。要するに、これら各一対の狭幅流路部分74,74と広幅流路部分76,76によって狭窄流路が構成されているのであり、かかる狭窄流路を通じての流体の流動作用に基づいて、所定の防振効果が発揮されることとなる。 【0038】そして、狭窄流路を流動せしめられる流体の共振作用に基づく低動ばね効果が発揮される周波数域は、受圧室46の壁ばね剛性や封入流体の密度等を考慮しつつ、狭窄流路における流路断面積と流路長さの比を調節することによってチューニングすることが出来る。ここにおいて、かかる狭窄流路は、周方向に流路断面積と流路長さの比(A/L)の値が変化せしめられており、狭幅流路部分74,74と広幅流路部分76,76が、互いに直交する軸直角方向で対向位置せしめられていることから、狭幅流路部分74を通じて流動する流体の共振作用に基づく低動ばね効果と、広幅流路部分76を通じて流動する流体の共振作用に基づく低動ばね効果とを、互いに異なる周波数域においてそれぞれ有効に発揮させることが出来るのである。なお、このように狭窄流路のチューニング周波数が、狭窄流路における周方向のトータル流路断面積ではなく、径方向でのトータル流路断面積に関係し、たとえ周方向で連続していても、径方向でのトータル流路断面積が異なれば、該径方向でのトータル流路断面積が異なる領域毎に、実質的に異なる流体流路を構成することの技術的理由は、未だ明らかでないが、例えば、第一の取付金具12と第二の取付金具14を弾性連結する本体ゴム弾性体15の振動モード、換言すれば振動入力に伴って生ぜしめられる本体ゴム弾性体15の弾性変形の形態等によるものであろうと推考される。そして、このことは、それぞれ同一の流路断面積と流路長さの比が設定された各一対の狭幅流路部分74,74と広幅流路部分76,76を、互いに直交する径方向で、それぞれ対向位置して形成することにより、チューニング周波数の設定精度と流体の共振作用に基づく防振効果が、より有効に発揮され得ること等からも、推考され得る。なお、特に本実施形態では、各一対の狭幅流路部分74,74と広幅流路部分76,76は、何れも、互いに同一の流路形状(同一の流路断面積および流路断面形状と流路長さ)をもって形成されている。 【0039】従って、かかるエンジンマウント10においては、狭幅流路部分74,74がチューニングされた第一の周波数域と、広幅流路部分76,76がチューニングされた第二の周波数域との、互いに異なる二つの周波数域において、それぞれ、上下分割室70,72間を流動せしめられる流体の共振作用に基づく低動ばね効果によって優れた防振効果を得ることが出来るのである。なお、狭幅流路部分74および広幅流路部分76は、何れも、可動ゴム板56の弾性変形に伴う流体流動作用に基づく防振効果が発揮される周波数域よりも更に高周波数域(例えば、高速こもり音等)にチューニングされることが望ましく、それによって、より広い周波数域の入力振動に対して有効な防振効果を得ることが出来ると共に、狭幅流路部分74および広幅流路部分76を流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果を一層有利に得ることが出来る。 【0040】しかも、狭幅流路部分74は、中心軸回りで30〜80度の領域に設定されており、広幅流路部分76よりも中心軸回りで小さくされていることから、たとえ狭幅流路部分74のチューニング周波数域よりも高い周波数域の振動入力時においても、狭幅流路部分74における流動抵抗の増大に伴う著しい高動ばね化が軽減乃至は回避されて、広幅流路部分76を通じて流動する流体の流動作用に基づく低動ばね効果が有効に発揮されるのである。 【0041】加えて、狭幅流路部分74と広幅流路部分76における各流路断面積と流路長さの比の割合:(As /Ls )/(Aw /Lw )が、1/10〜1/2に設定されていることから、それら狭幅流路部分74と広幅流路部分76を通じてそれぞれ流動せしめられる流体の共振作用による低動ばね効果が、充分に広い周波数域に亘って、且つ部分的な高動ばね化を生ずることなく全体としてなだらかなばね定数分布をもって達成され得るのである。なお、特に本実施形態では、狭幅流路部分74と広幅流路部分76の流路長さが、全体に亘って略一定で且つ相互に略同じに設定されていることから、チューニングが容易であると共に、安定した流体流動が発現され得る。 【0042】また、本実施形態のエンジンマウント10においては、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に軸直角方向の荷重が入力された際、傘金具22が緩衝ゴム34を介して第二の取付金具14に当接することにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の相対的変位量が有効に制限され得る。しかも、本実施形態では、傘金具22が、中心軸回りで半径が一定の円形外周面を備えていることから、環状間隙64の幅が周方向の全周に亘って一体となり、傘金具22の組み付け方向を特に考慮する必要がないといった利点もある。 【0043】次に、図4及び図5には、本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウント80が、示されている。なお、本実施形態は、第一の実施形態に係るエンジンマウントに比して、傘金具の異なる具体例を示すものであり、第一の実施形態に係るエンジンマウントと同様な構造とされた部材および部位については、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、詳細な説明を省略する。 【0044】すなわち、本実施形態のエンジンマウント80において採用されている傘金具78においては、その外径寸法が、周方向で変化せしめられており、径方向一方向(図5中、上下方向)で対向位置する部分が、それに直交する径方向(図5中、左右方向)で対向位置する部分に比して、径方向外方に大きく突出せしめられている。特に、本実施形態では、外径寸法が大きくされた一対の大径部分82,82と、外径寸法が小さくされた一対の小径部分84,84が、何れも、略一定の曲率半径で周方向に延びる外周面形状とされており、且つ小径部分84よりも大径部分82の方が、曲率半径が小さく設定されている。即ち、傘金具78の外周面は、径方向の段差等は有していないが、周上の4箇所で曲率半径の変化点を有しており、それらの曲率半径の変化点をつなぐようにして、各一対の大径部分82と小径部分84が周方向に交互に位置し、相互に連続的に滑らかに接続された外周面形状をもって形成されているのである。 【0045】なお、本実施形態では、大径部分82の外周面の曲率半径が、受圧室46の内周面と略同心円形状となるように、換言すれば傘金具78の中心軸が曲率中心となるように設定されており、以て、大径部分82の外周面と受圧室46の内周面の間には、略一定の径方向幅寸法をもって周方向に延びる狭幅流路部分74が形成されている。また一方、小径部分84の外周面の曲率半径は、受圧室46の内周面よりも大きな曲率半径とされており、以て、小径部分84の外周面と受圧室46の内周面の間には、径方向幅寸法が周方向中央部分で最も広くて周方向両側に行くに従って狭くなる広幅流路部分76が形成されている。更に、これら狭幅流路部分74と広幅流路部分76は、互いの周方向両端部で径方向幅寸法が同じとされて、周方向に連続せしめられている。 【0046】そして、本実施形態のエンジンマウント10においては、図6に示されているように、傘金具78および受圧室46の中心軸まわりにおいて、狭幅流路部分74が、中心角:θ1=100〜150度となるように、特に本実施形態では、θ1≒130度に設定されていると共に、広幅流路部分76が、中心角:θ2=30〜80度となるように、特に本実施形態では、θ2≒50度に設定されている。これにより、傘金具78によって形成された狭窄流路の流路断面積が、周方向において変化せしめられており、以て、狭幅流路部分74における流路断面積(図6において、細かいクロスハッチングを付した領域):As と流路長さ:Lsの比:As /Ls の値と、広幅流路部分76における流路断面積(図6において、粗いクロスハッチングを付した領域):Aw と流路長さ:Lw の比:Aw /Lw の値が、下式を満足するように設定されている。 1/10≦(As /Ls )/(Aw /Lw )≦1/2特に、本実施形態では、(As /Ls )/(Aw /Lw )の値が、略1/3.4に設定されている。 【0047】従って、このような構造とされたエンジンマウント80においても、前記第一の実施形態に係るエンジンマウントと同様な効果が有効に発揮され得るのであり、特に、狭幅流路部分74,74がチューニングされた第一の周波数域と、広幅流路部分76,76がチューニングされた第二の周波数域との、互いに異なる二つの周波数域において、それぞれ、上下分割室70,72間を流動せしめられる流体の共振作用に基づく低動ばね効果を得ることが出来るのであり、以て、高周波数域においても、広い周波数域に亘って優れた防振効果を得ることが出来るのである。 【0048】また、本実施形態のエンジンマウント80においては、傘金具78と受圧室46の内周面との径方向対向面間距離が、互いに直交する二方向で異なる値に設定されていることから、傘金具78の受圧室46内周面への当接によるストッパ機構において、互いに直交する2つの径方向で相互に異なる変位制限量(許容ストローク)を設定することが出来る。 【0049】以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの実施形態における具体的な記載によって、何等、限定されるものでない。 【0050】例えば、前記実施形態では、受圧室46の内周面が円形とされていたが、楕円形状や矩形状、多角形状等、各種の形状が採用可能である。また、傘金具22の外周面形状としても、円形や楕円形に限定されるものでない。例えば、円形外周面形状の傘金具と、楕円形状の内周面を有する受圧室を組み合わせて採用することにより、傘金具の外周面と受圧室の内周面の対向面間に形成される環状間隙の断面積を周方向に変化させて、互いに直交する2つの径方向で狭幅流路部分と広幅流路部分を形成することも可能である。 【0051】また、本発明は、前記実施形態に示されているように、第一の取付金具12と第二の取付金具14が、主たる振動入力方向で離間して同軸的に配設された構造の防振装置に対して、特に有効に適用され、それによって、傘金具22,78で形成された狭窄流路を通じての流体の流動作用に基づく防振効果をより有効に得ることが可能となるが、その他、第一の取付部材としての軸部材の径方向外方に第二の取付部材としての外筒部材を離間配置し、それら軸部材と外筒部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、それら軸部材と外筒部材の間に流体室を形成してなる円筒型の防振装置に対しても、本発明は、適用可能である。 【0052】更にまた、傘金具22の全体、或いは外周部分等の狭窄流路形成部分を、ゴム弾性体等で被覆することによって厚肉化し、以て、流体流路長さや断面積等を調節したり、傘金具22を他部材への接触時から保護したりすることも可能である。 【0053】また、前記第二の実施形態における傘金具78において、その小径部分84の曲率半径を無限大として、直線的に延びる外周面形状を採用することも可能である。 【0054】更にまた、傘金具22に貫通孔68を形成して流体流路断面積:Aを調節する場合に、傘金具22の強度確保等の目的で、該貫通孔68を周方向に分割することも可能である。その場合には、貫通孔68の分割部の周方向長さを小さく設定することにより、特性上は実質的に周方向に連続した一つの貫通孔68とみなすことが出来る。 【0055】また、傘金具22における狭幅流路部分を形成する部分にも、流路断面積の設定等に際して、適当な大きさの貫通孔を形成しても良い。 【0056】更にまた、前記実施形態では、低周波振動の防振用のオリフィス通路52と、中周波振動の防振用の可動ゴム板56が採用されていたが、それらオリフィス通路52や可動ゴム板56は、要求される防振特性等に応じて適宜に採用されるものであって、本発明において必須のものではない。 【0057】加えて、本発明は、自動車用エンジンマウントの他、自動車用ボデーマウントやデフマウント,サスペンションブッシュ、或いは自動車以外に用いられる各種の防振装置に対しても、同様に適用可能であり、それによって、本発明の効果が、何れも、有効に発揮され得ることとなる。 【0058】その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。 【0059】 【発明の効果】上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、傘部材によって流体室に形成される狭窄流路を、互いに直交する軸直角方向で対向位置せしめられる、各一対の第一流路部分と第二流路部分によって構成し、且つ、それら第一流路部分と第二流路部分に対して、特定の相対的領域比と、特定の相対的流路断面積・流路長比を設定したことによって、かかる狭窄流路を流通せしめられる流体の共振作用に基づいて発揮される低動ばね効果を、広い周波数域に亘って発揮せしめ得たのであり、以て、広い周波数域の入力振動に対して何れも有効な防振効果を発揮し得る防振装置が有利に実現されるのである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000219602 【氏名又は名称】東海ゴム工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年12月24日(1998.12.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078190 【弁理士】 【氏名又は名称】中島 三千雄 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−193015(P2000−193015A) |
| 【公開日】 |
平成12年7月14日(2000.7.14) |
| 【出願番号】 |
特願平10−366627 |
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