| 【発明の名称】 |
切れ込みを有する衝撃エネルギー吸収部材 |
| 【発明者】 |
【氏名】井上 敏夫
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| 【要約】 |
【課題】簡便な構造でありながら安定した自己破壊が継続できる衝撃エネルギー吸収筒状体を提供する。
【解決手段】中空筒状体1の一部に、筒の軸線方向に延びる切れ込みを設ける。この筒状体1は切れ込みのトリガー作用により安定に破壊される。衝撃エネルギー吸収筒状体1の材料としてはサーモトロピック液晶ポリマーが好ましく、この樹脂を筒の軸線方向と角度をなして配向させると、軸線方向の機械的強度が増加するのみならず、切れ込みがより好ましい破壊トリガーとなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 中空筒状体を具備する衝撃エネルギー吸収部材であって、該筒状体は少なくともその一部に、該筒状体の軸線方向に延びる切れ込みを一または複数有することを特徴とする衝撃エネルギー吸収部材。 【請求項2】 前記中空筒状体の内側面または外側面のうち少なくとも一方が円筒状曲面であり、かつ該円筒状曲面において、該筒状体の構成材料が該筒状体の軸線方向と異なる方向に配向している請求項1に記載の衝撃エネルギー吸収部材。 【請求項3】 樹脂製である請求項1または2に記載の衝撃エネルギー吸収部材。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】積載物が人間、動物、危険物等である輸送手段には、不測の衝撃が加わったときに、その衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収構造部材が装備されている。本発明は、この衝撃吸収構造部材に関するものであり、自身の特定破壊モードで非可逆的にこのエネルギーを吸収する、特に熱可塑性樹脂の射出成形によって得られる衝撃エネルギー吸収部材に関する。 【0002】 【従来の技術】車両、船舶等の移動体が互いにあるいは岸壁、橋脚等の静止体に衝突する衝撃を緩衝するための緩衝装置(例えば、バンパーの支持部材やハンドル軸の支持部材)として、航空機、ヘリコプターやエレベーターが故障で着地する際の衝撃を緩衝するための緩衝装置として、あるいは核燃料用輸送装置(キャスク)や放射性廃棄物を収容した容器(キャニスタ)が落下したときの衝撃を緩衝するための緩衝装置として、各輸送手段には、非可逆的に衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部材が装備されている。 【0003】従来、これらの衝撃吸収構造部材としては、「衝撃エネルギーを摩擦エネルギーに、次いで熱エネルギーに変換消費させる原理を利用した、液体緩衝機構を用いたもの」、「衝撃エネルギーを金属の塑性変形に変換消費させる原理を利用した、特定強度金属材料からなる管状、ハニカム状等の特定形状構造体を用いたもの」などが使用されている。 【0004】しかし、これら衝撃吸収構造部材は衝撃吸収性そのものには優れるものの、(1) 構造が複雑で故障し易い(機構的、腐食等) (2) 製造費が高い(高度加工、高エネルギー消費製造プロセス等) (3) 重い(金属材料の使用等) 等の問題点を有し、それらの点において改善が望まれている。 【0005】近年、車両、航空機、エレベーター等に搭載される衝撃吸収構造部材に対しては、これら輸送体の軽量化、高機能化指向に伴い、省スペース、軽量化の要求が高まっている。この要求に対応するために、単位体積または単位重量あたりの衝突エネルギー吸収量の高い衝撃エネルギー吸収部材が、素材、構造の両面から検討されている。また、これら輸送体にはコストダウンの指向も強く、この観点からも、衝撃エネルギー吸収部材について素材、構造の両面からの検討が行われている。 【0006】そして、これらの検討に伴って、従来の衝撃エネルギー吸収部材が有している上記欠点が、今まで以上に、極めて大きな問題として認識されるようになってきた。 【0007】これらの課題を克服すべく、特に、車両用搭載型衝撃エネルギー吸収部材の開発を中心として、繊維複合合成樹脂を材料とする衝撃エネルギー吸収部材の開発が行われるようになってきている。 【0008】例えば特開平6−264949号公報には、第1端部から第2端部に向かって次第に肉厚になり、第1端部が半径方向外側に湾曲した、短繊維強化中空円筒体が提案されている。この中空円筒体は、強化繊維を短繊維としたことで上記問題点(1)、(3)を解決したことに加え、通常の射出成形で製造可能としたことで上記問題点(2)も解決している。 【0009】ここで、衝撃エネルギー吸収部材が有効に機能するためには、特に衝突変形時に突発的な荷重を発生しないような工夫が重要である。例えば、円筒が破壊の途中で座屈等せず、継続的な安定した破壊が最終段階まで継続することにより、大きなエネルギーの吸収が達成される。 【0010】前記公報では、例えば中空円筒体の一端から他端に向かって壁を徐々に厚くする構造を採用することで、円筒体の安定した破壊の継続を達成している。ここでは、いわば肉厚の円筒軸方向における変化を破壊のトリガーとしているものである。 【0011】しかしながら、肉厚が徐々に厚くなるため円筒底部ではかなりの厚みとなり、その結果円筒体全体の重量も増加することとなる。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】上記従来の問題点に鑑み、本発明は、より簡便な構造でありながら安定した自己破壊が継続できる衝撃エネルギー吸収部材を提供することを目的とする。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記目的は、以下に述べる衝撃エネルギー吸収部材により達成された。 【0014】すなわち、本発明の第1の衝撃エネルギー吸収部材は中空筒状体を具備し、該筒状体は少なくともその一部に、該筒状体の軸線方向に延びる切れ込みを一または複数有することを特徴とする。 【0015】本発明の第2の衝撃エネルギー吸収部材は、第1の発明に係る吸収部材において、前記中空筒状体の内側面または外側面のうち少なくとも一方が円筒状曲面であり、かつ該円筒状曲面において、該筒状体の構成材料が該筒状体の軸線方向と異なる方向に配向している。 【0016】本発明の第3の衝撃エネルギー吸収部材は、樹脂製である第1または第2の発明に係る吸収部材である。 【0017】 【発明の実施の形態】本発明の衝撃エネルギー吸収部材(衝撃エネルギー吸収筒状体とも称する)は通常樹脂製であり、また上下から筒の軸線方向に衝撃が加わるような状態で緩衝装置に取り付けられて使用されるものである。 【0018】本発明の衝撃エネルギー吸収部材の使用形態には制限はない。例えば、単独使用、複数の組み合わせ使用が可能で、また、他の衝撃エネルギー吸収部材、構造部材等と組み合わせて使用してもよい。 【0019】図1および2はそれぞれ、本発明の衝撃エネルギー吸収部材の一実施形態の側面図および頂面(または横断面)図である。同図に示す衝撃エネルギー吸収部材1は頂面(横断面)が円環状の円筒状体からなり、湾曲した底部分を有する。この円筒状体はその上下の端部付近に、円筒の軸線方向に延びる複数の切れ込み2を有している。図1では、切れ込みは端部近傍のみにあるが、筒状体の中間部のみに設けることも、また一端から他端まで延設することもできる。切れ込みを端部のみに設ける場合には、その形状はノッチ形状とすることもできる。 【0020】本発明の衝撃エネルギー吸収筒状体の有する切れ込みの数は1本でもよいが、図1〜2に示すように複数設けることもできる。例えば、図2の(a)では4本、(b)では8本、(c)では16本の切れ込みを対称に設けている。このように、切れ込みはその位置、本数等を適宜に決定できる。なお、図2の(a)では切れ込みは円筒状体の外側面にあるが、(b)のように内側面に設けることも可能である。さらに、図2(c)のように切れ込みは円筒状体の壁を貫通していてもよい。このように貫通している場合、切れ込みは円筒状体の端部のみに設けることが多い。切れ込み自体の横断面形状は、図2(a)に示すようなノッチ型の三角形状でも、また(b)のような矩形でも良い。なお、切れ込みの本数、設置位置、形状の組み合わせは任意である。 【0021】切れ込みの幅は、筒状体の大きさにより任意に設定することができる。しかしながら通常は、筒状体の径によらず切れ込み幅は約10mm以下、好ましくは約5mm以下である。 【0022】図3は、本発明の衝撃エネルギー吸収部材の別の実施形態の斜視図である。同図に示す衝撃エネルギー吸収部材1は内側が円柱中空であり、一方、外形は角柱である。この例では、切り込み2は筒状体1の外表面に設けられており、上端から下端まで延びている。 【0023】本発明の衝撃エネルギー吸収筒状体は、衝撃が加わる方向である筒の軸線方向に延びる複数の切れ込みを有しており、切れ込み部分には衝撃応力が集中しやすいためそこから亀裂が発生し易い。すなわち、この切れ込みが筒状体に対する一種の破壊トリガーとなり、同時に、座屈等の衝撃エネルギー吸収率を低下させる望ましくない破壊形式を回避できる。 【0024】本発明の衝撃エネルギー吸収部材はその筒状本体に、ボルト、突起、窪み等の緩衝装置用取り付け部材や、破壊トリガーとして本体に固定可能な蓋や底を具備することもできる。 【0025】次に、本発明の衝撃エネルギー吸収部材の材料および製造方法について説明する。通常、本発明の衝撃吸収部材は樹脂製であり、該部材形状のキャビティーを有する金型を用いて射出成形により製造することが好ましい。射出成形の場合、材料樹脂としてはいずれの熱可塑性樹脂も使用することができる。 【0026】熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン・プロピレンゴム/スチレン(AES)樹脂、高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、ブロックポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアセタール、ナイロンなどのポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイドが例示できる。 【0027】本発明の衝撃エネルギー吸収部材の切れ込みは、その切れ込みに対応する形状の凸線を有する金型を用いることにより、筒状体の成形と同時に形成することができる。他の方法としては、まず切れ込みのない筒状体を成形し、これに切削等の手段により切れ込みを形成することもできる。 【0028】本発明の衝撃エネルギー吸収筒状体の構成材料は、筒状体の軸線方向と異なる方向に配向していることが好ましい。つまり、樹脂等の材料の配向方向が筒の軸線方向に対して傾斜し、筒の半径方向に近いほど、筒状体は軸線方向からの応力に対する機械的強度が増す。さらに、本発明の筒状体は切れ込みを軸線方向に有するので、構成材料は軸線に対して傾いている方が、この切れ込みは筒状体に適度な破壊を誘発するトリガーとなる。 【0029】樹脂等の材料を筒の軸線方向に対して斜めに配向させるには、回転する金型部材を用いて材料を射出成形することが好ましい。例えば、図3に示すような内側が円柱中空、外形が多角柱の衝撃エネルギー吸収筒状体を製造する場合には、回転させるのは円柱形状の内部コア金型であり、一方、外形を形成する多角柱中空の外部金型は固定させる。この固定外金型はその内側表面に、形成すべき切れ込みに対応する形状の凸線を有し、筒状体の外表面にまたは壁を貫通するよう切れ込みを形成する。一方、図1〜2に示す様な横断面が環状の円筒状体を製造する場合には、円柱形状の内部コア金型または円柱中空の外部金型を回転させることにより材料樹脂を配向させることができる。この際切れ込みは、固定する方の金型に対応形状の凸線を設けることにより形成することができる。 【0030】回転金型を用いて射出成形することにより樹脂の配向性を利用するならば、配向によって高い弾性率を発現するような性質を有する熱可塑性樹脂が好ましい。 【0031】配向によって高い弾性率を発現する代表的な熱可塑性樹脂としては、芳香族環を含有する化合物を主構成モノマーとして含み、該モノマーが主鎖中に含有され、剛直な分子構造を有するものが挙げられる。このような主構成モノマーとしての芳香族環を有するモノマー化合物は、具体的にはビスフェノールA、メタキシリレンジアミン、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2価フェノール等のモノマーが例示される。 【0032】これら芳香族環を含有する化合物を主構成モノマーとして含み、該モノマーが主鎖中に含有され、剛直な分子構造を有する熱可塑性樹脂は、市販の樹脂として容易に入手できる。例示すれば、メタキシリレンジアミンを主構成モノマーとするポリアミド(例えば、三菱ガス化学社製のMXDナイロン樹脂(商品名));テレフタル酸を主構成モノマーとするポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂);2,6−ナフタレンジカルボン酸を主構成モノマーとするポリエステル(例えば、PEN系樹脂);ビスフェノールAを主構成モノマーとするポリカーボネートおよびポリエステル;ポリフェニレンスルファイド;ポリフェニレンオキシド;ポリスルフォン;2価フェノールを主構成モノマーとするポリアリレート(例えば、ユニチカ社製のUポリマー樹脂(商品名));ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;p−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、2価フェノールまたはビフェノールを主構成モノマーとする、溶融時に光学的異方性を示すサーモトロピック液晶ポリマー(例えば、住友化学社製のスミカスーパー(商品名)、アモコ社製のザイダー(商品名)、デュポン社製のゼナイト(商品名)、ヘキスト−セラニーズ社製のべクトラ(商品名)、東レ社製のシベラス(商品名)、ユニチカ社製のロッドラン(商品名))が挙げられる。熱可塑性樹脂は単独で用いても複数の混合物で使用してもよい。 【0033】これら樹脂の中でも、サーモトロピック液晶ポリマー(以下、LCPとも称する)は、その分子構造が極めて剛直で、配向させることにより自己補強性と呼ばれる効果を示して配向方向の弾性率が極めて大きなものになるので、本発明の成形材料として好ましいものである。また、不燃性に優れ、難燃性を付与することが容易である点からも好ましい。 【0034】また、主鎖中に芳香族環を含まない熱可塑性樹脂の中では、連続相と分散相からなるいわゆる海島構造をとる熱可塑性樹脂も好ましい。海島構造をなしていることは、該樹脂の薄膜を電子透過型顕微鏡で観察することにより容易に確認できる。一般には海構造の部分は比較的硬質な熱可塑性樹脂からなり、そして島構造の部分はゴム質からなっている。 【0035】上記のような連続相と分散相からなるいわゆる海島構造をとる熱可塑性樹脂が、衝撃エネルギー吸収部材の材料樹脂として好ましい理由は明らかではない。しかしながら、衝撃エネルギー吸収部材全体が変形を受けたとき、連続相と分散相の弾性率とポアソン比が異なるために発生する両相の挙動の差に関係があると推測される。すなわち、この差が相界面における相剥離等の微細剥離を生じて、この剥離が衝撃エネルギー吸収部材の安定的な圧搾破壊に好ましい条件を与えるものと推測される。 【0036】具体的な連続相と分散相からなるいわゆる海島構造をとる熱可塑性樹脂の例としては、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン・プロピレンゴム/スチレン(AES)樹脂、高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、ブロックPP共重合体樹脂が挙げられる。なお、連続相と分散相の弾性率とポアソン比が大きく、また、連続相が高弾性脆性材料、分散相が低弾性靭性材料である方が好ましいので、これらの中でも、ABS樹脂、AES樹脂、HIPS樹脂が好ましい。 【0037】ここで、ABS樹脂は、たとえば工業的にはポリブタジエンまたはアクリロニトリル/ブタジエン共重合体存在下、スチレンとアクリロニトリルをラジカル重合させることにより製造される。より具体的には、アクリロニトリル・ブタジエンのゴム基質ラテックスを調製し、次にスチレンとアクリロニトリルをグラフト化させる二段階の乳化重合法、塊状重合によりブタジエンのプレポリマーを調製し、続いてスチレンおよびアクリロニトリルを懸濁重合させる二段階反応法並びにスチレンおよびアクリロニトリルのモノマー中でブタジエンゴムを溶解し、重合させる方法などがある。その外、ポリブタジエンまたはその共重合体(たとえばアクリロニトリル/ブタジエンゴム)と、アクリロニトリル/スチレン共重合体樹脂を常法によるポリマーブレンドによる操作方法で混合して、本発明で用いる材料を調製することがきる。 【0038】AES樹脂は、ゴム成分であるEPゴム(エチレン・プロピレンゴム)にスチレンとアクリロニトリルを加えてグラフト重合するという上記ABS樹脂と同様な方法により製造される。このようなグラフト重合法としては、EPゴムを芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素などの溶媒に溶解させ、その中にアクリロニトリル、スチレンを添加して重合させる溶液重合法、水分散系を用いる懸濁重合法や、EPゴムラテックスを用いる乳化重合法などがある。 【0039】HIPS樹脂は、スチレンモノマーの重合の際にポリブタジエンなどのゴムを添加し重合させることにより製造することができる。 【0040】また、上述した樹脂は主として重合操作により製造される樹脂例であるが、公知のポリマーブレンドの手法を使用して連続相と分散相を有する材料、たとえば、硬質の熱可塑性樹脂とゴム質材料とをポリマーブレンドすることにより海島構造を発現させて同構造の樹脂組成物を製造し、これを本発明品の材料として使用することもできる。 【0041】上記連続相と分散相からなるいわゆる海島構造をとる熱可塑性樹脂は、容易に射出成形により任意の形状の衝撃エネルギー吸収部材に成形することができ、またこの部材は切り込み等を具備することなく均一な破壊を確保することが可能である。 【0042】ところで、LCPの有利な特性は、回転部材を有する金型を用いた射出成形により発揮される。すなわち、サーモトロピック液晶樹脂は、射出注入時の樹脂の流れ方向に配向し易い。その結果得られる成形品は、樹脂の流れ方向の機械強度は弱いが、しかし反対に流れ方向に直角な方向には強い。 【0043】LCPを回転金型を用いずに従来のように単純に射出すると、LCPのこの性質は欠点となり、不都合である。つまり、従来の射出成形、すわなち、回転する部材を用いず筒状キャビティーの一方の端部または側面に設けられたゲートから溶融LCPを単に射出すると、LCPは筒の軸線方向に配向するので、成形品は上下方向から受ける応力にはかえって弱くなり、他の樹脂よりも良くない。 【0044】しかし、筒軸線を中心に回転する金型を用いて成形することにより、LCPは回転金型の壁面に連れ回され、その結果、軸線方向に対して斜めに配向するので(極端な配向は直交だが、通常は直交する程配向しない)、成形品は軸線方向の応力に対しては強度が増す。他の樹脂は、回転金型による配向の変化が明瞭ではなく、成形品の強度は単純な成形と比べて変わりが無い。 【0045】したがって軸線方向の応力に対しては、LCPは単純な射出成形では他の樹脂よりも弱いこともあるが、回転金型によると極端に強度を発揮する。LCPには繊維状の充填剤(ガラス繊維、炭素繊維など)を配合することもできる。充填剤の含有量は、材料組成物の重量基準で5〜80重量%とすることができる。 【0046】中空筒状体の内側および/または外側の構成材料が筒軸線方向に対して傾斜配向していることは、各種の測定法により確認することができる。たとえば、母材樹脂に関してはX線回折、含有充填剤に関しては超音波顕微鏡により、配向状態を測定し確認することができる。そのほか、簡便には、図3に示すような筒状体1の内側表面における流れ状態、例えばフローマーク3を観察し、それぞれの面の流れの方向を観察することにより配向方向を確認できる。樹脂の着色状態によっては表面の流れ状態が観察し難い場合が有り得る。このような場合には、たとえば、黒配合の場合、白色ぺレットを樹脂ぺレット中にわずかの量混ぜて、その色の流れ方向を観察することによりそれぞれの表面における配向方向を確認できる。 【0047】 【実施例】本発明の衝撃エネルギー吸収部材の一製造方法を説明する。図4は本実施例で用いた射出成形装置を示し、同図において11は射出機、12は溶融ポリマーの通路(スプルー)、13はランナー、14は円柱状の回転コア、15は八角柱中空の固定外金型(分割金型)、16は回転コア14と外金型15で形成される筒状体の形成部(キャビティー)である。17はコア14の回転を保持する軸受け、18は回転コア14に円周運動を与えるチェーン、19はモータ、20は突き出しピンである。外金型(固定金型)15の内側面には凸線(図示せず)を形成している。 【0048】溶融樹脂が射出機11から射出され、スプルー12およびランナー13からゲート(不図示)を経てキャビティー16内へ注入される。回転コア14の回転数は100〜400rpm、好ましくは200〜400rpmの範囲である。キャビティー内に射出された溶融樹脂は回転コア14の壁面と共に連れ回り、筒軸線方向と角度をなして配向する。軸受け17は、弾性体で構成すればコア14の回転中でも焼き付く恐れは少ない。 【0049】固定させている外金型15の内表面には凸線(図示せず)を設けたため、これを用いて得られた筒状体には図3のように外表面に切れ込みが形成された。なお、金型を用いる射出成形によるので、切れ込みの形成は容易であった。 【0050】使用した樹脂は、フタル酸/イソフタル酸/4−ヒドロキシ安息香酸/4,4−ジヒドロキシジフェニルからそれぞれ誘導される繰返単位を有するサーモトロピック液晶コポリエステルであって、各モノマーのモル比は、0.75/0.25/3/1である。この樹脂は、ホットステージを装着した偏光顕微鏡を用いて光学的異方性を観察したところ、340℃以上で溶融状態で光学的異方性を示した。 【0051】この樹脂にガラス繊維30重量%(組成物全体に対して)を含む組成物を用いて、図4の装置により、内径24mm、最大外径30mm、最小肉厚3mm、長さ100mm、重量15g、切れ込み深さ1mmの、正円柱中空で外形が正八角柱の同心筒状体を射出成形した。射出時間は約5秒、冷却時間は約10秒であり、計約15秒を要した。得られた筒状体の外側表面と内側表面のそれぞれを観察し、フローマークから樹脂流れの方向を確認したところ、外側表面の樹脂流れの方向は筒状体の軸線方向とほぼ一致しており、内側表面の樹脂流れの方向は筒状体の軸線方向に対して約33°傾いていた。 【0052】回転コアと固定外金型を用いる射出成形方法で製造される中空筒状体中の材料配向は、射出機から加えられた圧力に起因する軸線と同一方向の溶融樹脂流動と、回転部材例えば回転コアと溶融樹脂間の摩擦抵抗に起因する軸線と90°方向の溶融樹脂流動とのバランスで決定される。したがって、中空筒状体の内側と外側を形成する金型部材の回転運動に差が存在すれば、筒状体の壁厚方向の各部分の両流動のバランスは連続的に変化している状態になるから、材料配向も壁厚方向に連続的に変化する。この結果として壁厚方向の各部分の配向は異なる。 【0053】ここで、実施例により製造した切れ込みを有する外形八角柱の正円柱中空筒状体を圧縮変形試験装置に取り付け、円筒状体をその軸方向に圧縮することにより圧縮変形試験をし、その破壊状況を観察したところ、特に急激な座屈現象などは見られず破壊状況は均一に進行したことを確認した。 【0054】また、ABS樹脂(テクノポリマー(株)販売、商品名;テクノABS 350)を用い、切れ込みを付けなかった他は、上記実施例と同様の金型により射出成形して外形八角柱の正円柱中空筒状体を得た。これを同様に圧縮変形試験をし、その破壊状況を観察したところ、特に急激な座屈現象などは見られず破壊状況は均一に進行したことを確認した。 【0055】 【発明の効果】本発明の衝撃エネルギー吸収筒状体は、衝撃が加わる方向に延びる切れ込みを有するため、簡便な構造でありながら、安定した自己破壊が継続できる。また外形が角柱の本発明の筒状体は、平面を有する緩衝装置への取り付けや、緩衝装置取り付け用部材の取り付けが容易である。 【0056】樹脂の射出成形により製造される本発明の衝撃エネルギー吸収部材は、軽量であり、製造費も安価である。特に、サーモトロピック液晶樹脂から構成される衝撃エネルギー吸収部材は、同樹脂を筒の軸線方向と角度をなして配向させると、軸線方向の応力に対する機械的強度が増加するのみならず、軸線方向の切れ込みが適度な破壊トリガーの役目を果たす。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000231682 【氏名又は名称】日本石油化学株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年12月24日(1998.12.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100086287 【弁理士】 【氏名又は名称】伊東 哲也 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−193008(P2000−193008A) |
| 【公開日】 |
平成12年7月14日(2000.7.14) |
| 【出願番号】 |
特願平10−367020 |
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