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【発明の名称】 積層ゴム支承体
【発明者】 【氏名】加藤 直樹

【氏名】村松 佳孝

【氏名】永井 正弘

【氏名】柳 勝幸

【氏名】福田 滋夫

【氏名】指田 郁子

【要約】 【課題】地震力による取付板の面外変形や取付ボルトの破壊を防ぐ。

【解決手段】建築物2とコンクリート基礎3とを互いに相対変位可能に振動絶縁するために、上部連結鋼板11と下部連結鋼板12との間にゴム層13と中間鋼板14とが交互に積層成型された積層ゴム体10と、積層ゴム体10の上部連結鋼板11および下部連結鋼板12にそれぞれ固定される上部取付板15および下部取付板16とを備え、各取付板15、16が建築物2およびコンクリート基礎3に対して複数の取付ボルト18によって固定されており、これら取付板15、16は、板厚tfが25〜45mm、且つ外径rfと複数の取付ボルト18の取付ピッチ円直径Rfとの比が1.1〜1.4で形成されている。また、各取付板15、16は、外径rfがD×1.5以下(但し、Dは積層ゴム体10の各連結鋼板11、12を除いた外径とする。)で形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】上部構造体と下部構造体とを互いに相対変位可能に振動絶縁するために、上部連結板と下部連結板との間にゴム状弾性体と剛性材料とが交互に積層成型された積層ゴム体と、前記積層ゴム体の前記上部連結板および(または)前記下部連結板に固定される取付板とを備え、前記取付板が前記上部構造体および(または)前記下部構造体に対して複数の取付ボルトによって固定される積層ゴム支承体において、前記取付板は、板厚が25〜45mm、且つ外径と前記複数の取付ボルトの取付ピッチ円直径との比が1.1〜1.4で形成されていることを特徴とする積層ゴム支承体。
【請求項2】前記取付板は、前記外径がD×1.5以下(但し、Dは前記積層ゴム体の前記連結板を除いた外径とする。)で形成されていることを特徴とする請求項1記載の積層ゴム支承体。
【請求項3】前記積層ゴム体の前記連結板は、外径がD+(tR×300%)×2以上、D+(tR×700%)×2以下(但し、tRは前記ゴム状弾性体の1枚の厚さとする。)で形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の積層ゴム支承体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は積層ゴム支承体に係り、特に建築物や精密機器等の免震、除振あるいは防振のために使用される積層ゴム支承体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、上部構造体および下部構造体間に設けられ、両構造体間の相対的な水平方向の振動エネルギを吸収して上部構造体への振動加速度を低減するために、積層ゴム支承体が使用されている。このような積層ゴム支承体は図5に示すように、上部連結板51と下部連結板52との間にゴム層53と中間鋼板54とが交互に積層成型された積層ゴム体50とを備え、この積層ゴム体50の上部連結板51および下部連結板52には、それぞれ上部取付板55および下部取付板56が連結ボルト57によって固定されている。なお、積層ゴム体50の外周には耐候性を目的とした保護ゴム層58が被覆され、この保護ゴム層58が被覆された積層ゴム体50には養生ゴム59が巻付けられ、この状態で積層ゴム支承体5は設置現場に出荷される。
【0003】この出荷された積層ゴム支承体5を使って建築物を設置現場で設置するには、積層ゴム支承体5の上部取付板55に取付ボルト60および取付ナット61によって上部ベースプレート62を固定し、この上部ベースプレート62上にクレーン等によって吊り下げるためのアイボルト63を螺合する。そして、この上部ベースプレート62が固定された積層ゴム支承体5をクレーン等で吊り下げた状態で、予めコンクリート基礎に所定深さまで埋設された下部ベースプレート上に移動させて着座させ、取付ボルトによって締結する。
【0004】なお、上部構造体が鉄筋コンクリートの場合、上部ベースプレート62上には型枠(図示せず)が組立てられ、当該型枠内に所定量のコンクリートを流し込めば、積層ゴム支承体5の組立作業が完了する。このようにして設置現場へ設置された積層ゴム支承体5においては、通常時には建築物の鉛直荷重を座屈することなく支承し、地震時には水平変形して地震力を吸収することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように設置されている積層ゴム支承体5は、近年、100〜150kgf/cm2以上の高面圧で使用されているので、地震力が入力されると図6に示す矢印Aのような引張力が上部取付板55や下部取付板56に加わることがあった。この引張力は、上部取付板55や下部取付板56に面外変形を生じさせ、また取付ボルト60を破壊する虞があった。さらに、上部構造体が比較的高層な建物の場合、図7に示すように、建物にロッキング現象が発生し易くなることから、上部取付板55や下部取付板56に生じる引張や圧縮による面外変形や取付ボルト60の破壊が顕著になる虞があった。
【0006】ここで、面外変形とは、上部取付板55および下部取付板56を積層ゴム体50に固定した際に、当該積層ゴム体50の外周部50aから突出する当該各取付板55、56のフランジ部55a、56aの曲げ変形のことである。特に、連結ボルト57および取付ボルト60間で生じ易い。なお、このような難点を有する積層ゴム支承体は、これに限らず、高減衰ゴムの積層ゴム体を備えた積層ゴム支承体、天然ゴムの積層ゴム体の中央中空部に柱状弾塑性金属が挿入された積層ゴム支承体、天然ゴムの積層ゴム体の片端に低摩擦材が設けられ平板上で滑らせることができる積層ゴム支承体、あるいは天然ゴムの積層ゴム体を備えた積層ゴム支承体とダンパーとを組合わせた免震装置においても、取付板の面外変形や取付ボルトの破損が発生する虞があった。
【0007】本発明は、このような従来の難点を解決するためになされたもので、地震力によって生ずる引張力や圧縮力の悪影響を受けない積層ゴム支承体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成する本発明の積層ゴム支承体は、上部構造体と下部構造体とを互いに相対変位可能に振動絶縁するために、上部連結板と下部連結板との間にゴム状弾性体と剛性材料とが交互に積層成型された積層ゴム体と、積層ゴム体の上部連結板および(または)下部連結板に固定される取付板とを備え、取付板が上部構造体および(または)下部構造体に対して複数の取付ボルトによって固定される積層ゴム支承体において、取付板は、板厚が25〜45mm、且つ外径と複数の取付ボルトの取付ピッチ円直径との比が1.1〜1.4で形成されているものである。
【0009】このような積層ゴム支承体によれば、取付ボルトを取付板の外周部方向に位置させることができるので、地震力による取付板の面外変形や取付ボルトの破壊を防ぐことができる。また、本発明の積層ゴム支承体において取付板は、外径がD×1.5以下(但し、Dは積層ゴム体の連結板を除いた外径とする。)で形成されていることが好ましい。これにより、地震力に対する強度が最適な取付ボルトを選定しても取付板を小型化させることができるので、地震力による取付板の面外変形や取付ボルトの破壊を、より一層防ぐことができる。これは、取付板を積層ゴム体に固定した際に、当該積層ゴム体の外周部から突出しているフランジ部を、従来の積層ゴム支承体より小さくできるからである。なお、取付板の最小外径は、外径と複数の取付ボルトの取付ピッチ円直径との比によって必然的に求まる。
【0010】さらに、本発明の積層ゴム支承体において積層ゴム体の連結板は、外径がD+(tR×300%)×2以上、D+(tR×700%)×2以下(但し、tRはゴム状弾性体の1枚の厚さとする。)で形成されていることが好ましい。これにより、積層ゴム体の大変形時に、ゴム状弾性体が連結板から食み出して損傷することを防ぐことができるので、この食み出しによる積層ゴム体の弾性強度の劣化による取付板の面外変形や取付ボルトの破壊を防ぐことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の積層ゴム支承体の実施の一形態について図面を参照して説明する。本発明の積層ゴム支承体は図1に示すように、基本構成が従来の積層ゴム支承体と同様で、上部構造体である建築物2と下部構造体であるコンクリート基礎3とを互いに相対変位可能に振動絶縁するもので、上部連結鋼板11と下部連結鋼板12との間にゴム状弾性体であるゴム層13と剛性材料である中間鋼板14とが交互に積層成型された積層ゴム体10とを備え、この積層ゴム体10の上部連結鋼板11および下部連結鋼板12には、それぞれ上部取付板15および下部取付板16が連結ボルト17によって固定されている。
【0012】積層ゴム体10は円柱状に形成され、その中央部には放熱用開口部10aが刳り貫かれている。なお、放熱用開口部10aは、積層ゴム体10の各連結鋼板11、12を除く外径が小さければ、刳り抜かれていなくともよい。このような形状の積層ゴム体10のゴム層13には、弾性機能に優れた天然ゴムまたはクロロプレンゴム等の合成ゴムが用いられる。また、上部連結鋼板11、下部連結鋼板12および中間鋼板14は、ゴム層13との付着性から、通常は鋼板を用いるが、ニッケル板、銅板、黄銅板またはニッケルメッキ、銅メッキ、黄銅メッキを施した鋼板を使用することもできる。なお、この積層ゴム体10の積層成型は加硫接着に限らず、付着する際、非接着、部分接着または後接着してもよい。また、積層ゴム体10の形状は、中間鋼板露出型もしくは中間鋼板被覆型の何れを用いてもよい。
【0013】このような積層ゴム体10の上部連結鋼板11と下部連結鋼板12とは、それぞれ外径がD+(tR×300%)×2以上、D+(tR×700%)×2以下(但し、Dは積層ゴム体10の各連結鋼板11、12を除いた外径、tRはゴム層13の1枚の厚さとする。)で形成されている。これにより、図2に示すように、積層ゴム体10の大変形時において、ゴム層13が連結鋼板12から食み出して損傷してしまう現象を防ぐことができる。なお、D+(tR×700%)×2以下に限定しているのは、これ以上の大きさになるとゴム層13に亀裂が生じるからである。
【0014】上部取付板15および下部取付板16は、円柱状の積層ゴム体10を建築物2およびコンクリート基礎3に固定させるもので、円板状に形成されている(図1)。具体的には図3に示すように、上部取付板15は建築物2のフーチング2aへ固着される上部ベースプレート21に、また、下部取付板16はコンクリート基礎3のフーチング3aへ固着される下部ベースプレート31に、それぞれ複数の取付ボルト18で固定される。なお、各取付板15、16の材料としては、一般構造用圧延鋼材、機械構造用炭素鋼鋼材、ステンレス鋼などの鉄鋼が用いられているが、剛性を保つことができれば、エンジニアリングプラスチックや非鉄金属等を用いることができる。また、取付板15、16に防錆を施すには溶融亜鉛めっきが好ましいが、防錆塗装でもよい。
【0015】このような各取付板15、16は図1に示すように、板厚tfは材料の汎用性および経済性を考慮して、25〜45mmとする。また、取付ボルト18は、JISB 0205に規定されているねじの呼びM24〜M42のものを用い、強度区分は10.9〜12.9とする。なお、1つの積層ゴム支承体あたりの取付ボルト本数の低減、様々なサイズの積層ゴム支承体に対応させる適応性、取付ボルトの軽量化を考慮すると、取付ボルト18はねじの呼びがM30〜M36のものが好ましい。また、この取付ボルト18の防錆は、ボルト締結後にボルト頭部に防錆塗装を施すことが一般的であるが、ボルト自体に溶融亜鉛めっき、粉体塗装等を施しても防錆効果を得ることができる。
【0016】このような各取付板15、16の外径rfと複数の取付ボルト18の取付ピッチ円直径Rfとの比は1.1〜1.4に設定される。この取付ボルト18の取付け間隔は、1円周上において6〜24等分とするのがよい。これにより、取付ボルト18を各取付板15、16の外周部方向に位置させることができるので、地震力による各取付板15、16の面外変形や取付ボルト18の破壊を防ぐことができる。
【0017】なお、上部取付板15および上部連結鋼板11と、下部取付板16および下部連結鋼板12とをそれぞれ固定させる連結ボルト17の取付ピッチ円上の取付け間隔は、1円周上または2円周上において6〜24等分とするのがよい。また、各取付板15、16は、外径rfがD×1.5以下で形成されている。これにより、地震力に対する強度が最適な取付ボルト18を選定しても各取付板15、16を小型化させることができるので、地震力による各取付板15、16の面外変形や取付ボルト18の破壊を、より一層防ぐことができる。なお、各取付板15、16の最小外径rfは、外径rfと複数の取付ボルト18の取付ピッチ円直径Rfとの比によって必然的に求まる。
【0018】このように形成された上部取付板15および下部取付板16を備えた積層ゴム支承体10によれば、各取付板15、16の外径rfを従来のものより小さくすることができるので、地震力による各取付板15、16の面外変形や取付ボルト18の破壊を防ぐことができる。即ち、図4に示すように、各取付板15、16を積層ゴム体10に固定した際に、当該積層ゴム体10の外周部10aから突出している各フランジ部15a、16aを、従来の積層ゴム支承体より小さくできるからで、建物荷重が積層ゴム体10に集中することになり、積層ゴム体10の不安定変形が防止され、建物の安定支持および積層ゴム性能が有効に発現される。
【0019】なお、本発明の実施の一形態によれば、上部連結板と下部連結板との間にゴム状弾性体と剛性材料とが交互に積層成型された積層ゴム体を備えた積層ゴム支承体であったが、これに限らず、高減衰ゴムの積層ゴム体を備えた積層ゴム支承体、天然ゴムの積層ゴム体の中央中空部に柱状弾塑性金属が挿入された積層ゴム支承体、天然ゴムの積層ゴム体の片端に低摩擦材が設けられ平板上で滑らせることができる積層ゴム支承体、あるいは天然ゴムの積層ゴム体を備えた積層ゴム支承体とダンパーとを組合わせた免震装置においても、適用させることができる。
【0020】また、本発明の積層ゴム支承体の設置箇所は建築物およびコンクリート基礎間には限らず、例えば上部構造物および下部構造物となるビルの8階と9階との間に設置してもよい。
【0021】
【実施例】さらに、本発明の積層ゴム支承体1について、以下のような条件で大変形実験および各取付板15、16の強度計算を行った。
【0022】
【表1】

【0023】なお、大変形実験は、積層ゴム体10の受圧面積Aに対し、鉛直軸力として面圧ρ=100、200、300kgf/cm2を載荷した状態で、ゴム層厚ntR(n:層数、tR:ゴム厚)の100、200、300、350%の変形を3サイクルずつ与えた。なお、1サイクルは一往復とする。また、700〜900φのものは、400%を供試した。ここで、受圧面積Aは、【0024】
【数1】

【0025】である。但し、Dは積層ゴム体の各連結鋼板を除いた外径、dは積層ゴム体の内径である。また、表1に示す各取付板15、16の引張側の面外曲げ剛性は、積層ゴム体10外の曲げ剛性であるK1部分と、積層ゴム体10内の曲げ剛性であるK2部分とでは板厚が異なるので、それぞれ剛性を算出し、その直列ばねとした。即ち、各取付板15、16の引張側の面外曲げ剛性をKとすると、【0026】
【数2】

【0027】となる。一方、各取付板15、16の圧縮側の面外曲げ剛性は、それぞれK2部分に各連結鋼板11、12の板厚が加わることからK1部分に比べてかなり剛であるので、K1部分のみの剛性で算出した。表1から明らかなように、各取付板15、16の引張側の面外曲げ剛性が従来品に比べて1.3〜2.1倍上昇したので、水平方向の大変形時に加わる引張力の抵抗力が増加することが確認できた。また、各取付板15、16の圧縮側の面外曲げ剛性が従来品に比べて3.7〜9.2倍上昇したので、水平方向の大変形時に加わる引張力の抵抗力が増加することが確認できた。したがって、各取付板15、16の面外変形を抑えることが可能になる。
【0028】また、板厚が25〜45mmの各取付板15、16、ねじの呼びがM30〜M36の取付ボルト18を使用する場合においては、各取付板15、16の外径rfと積層ゴム体10の連結鋼板11、12を除いた外径Dとの比(rf/D)を1.39〜1.5、各取付板15、16の外径rfと複数の取付ボルト18の取付ピッチ円直径Rfとの比(rf/Rf)を1.1〜1.4にすることにより、地震力による各取付板15、16の面外変形や取付ボルト18の破壊を防ぐことが実証できた。
【0029】また、板厚が25〜45mmの各取付板15、16、ねじの呼びがM30〜M36の取付ボルト18を使用する場合において、rf/Dを1.20〜1.4、rf/Rfを1.15〜1.20にすることにより、地震力による各取付板15、16の面外変形や取付ボルト18の破壊を防ぐことが実証できた。なお、板厚が25〜45mmの各取付板15、16、ねじの呼びがM16〜M36の取付ボルト18を使用する場合における各取付板15,16の最初外径rfは、外径rfと複数の取付ボルトの取付ピッチ円直径Rfとの比によって必然的に求まる。
【0030】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明の積層ゴム支承体によれば、地震力に対する強度が最適な取付ボルトを選定しても取付板を小型化できるので、地震力による面外変形や取付ボルトの破壊を防ぐことができる。したがって、地震力によって生ずる引張力や圧縮力に拘らず、建築物や精密機器等を安定した状態で免震、除振あるいは防振できる。また、取付板の外径を小さくできるので、建築におけるフーチングの小型化が可能となるので、免震、除振あるいは防振層の有効活用が可能となる。さらに、取付板の外径を小さくできるので、製品の軽量化を図れる。
【出願人】 【識別番号】000002255
【氏名又は名称】昭和電線電纜株式会社
【出願日】 平成10年12月25日(1998.12.25)
【代理人】 【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【公開番号】 特開2000−193005(P2000−193005A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−370403