| 【発明の名称】 |
免震装置のトリガー機構およびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】指田 郁子
【氏名】加藤 直樹
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| 【要約】 |
【課題】製造、施工が容易な構成で、構造物が風荷重等により揺動するのを回避すると共に、地震発生時には効果的に免震機能を果たすことができ、而も破断荷重の低下を防ぐ。
【解決手段】水平方向の振動エネルギを相対変位して吸収する転がり支承体4と共に地盤3、建物2間に介装され、当該振動エネルギが所定値未満では展延性に富んだ状態で塑性変形し且つ所定値以上では塑性破壊する円柱状弾塑性体6と、円柱状弾塑性体の両端に2つの有底円筒部材14、15が所定の隙間W1で当該円柱状弾塑性体に圧着されるコア10と、コアの一方の有底円筒部材14が固着され地盤に固定される下部ブッシュ11と、コアの他方の有底円筒部材15が移動可能に嵌合され建物に固定される上部ブッシュ12とから構成され、各有底円筒部材は円柱状弾塑性体より剛性の高い材料から成るものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】構造物および基礎間または上部構造物および下部構造物間に、水平方向に発生する振動エネルギによって大きく相対変位して当該振動エネルギを吸収する振動エネルギ吸収手段と共に並列に介装され、前記水平方向の振動エネルギが所定値未満では展延性に富んだ状態で弾塑性変形し且つ所定値以上では塑性破壊する柱状弾塑性体を有する免震装置のトリガー機構であって、前記柱状弾塑性体の両端に対向して嵌入された2つの嵌入部材が予め定められた隙間で当該柱状弾塑性体に固定されるコアと、前記コアの一方の前記嵌入部材が嵌合され前記基礎または前記下部構造物に固定される下部用中空案内部材と、前記コアの他方の前記嵌入部材が上下方向へ移動可能に嵌合され前記下部用中空案内部材の直上で前記構造物または前記上部構造物に固定される上部用中空案内部材とから構成され、前記各嵌入部材は前記柱状弾塑性体より剛性の高い材料から成ることを特徴とする免震装置のトリガー機構。 【請求項2】前記コアの前記2つの嵌入部材の静止時における前記隙間は0.02〜5mmであることを特徴とする請求項1記載の免震装置のトリガー機構。 【請求項3】前記コアの前記2つの嵌入部材は、前記水平方向へ摺動可能に接触していることを特徴とする請求項1記載の免震装置のトリガー機構。 【請求項4】前記コアの前記2つの嵌入部材の対向面にはそれぞれ摺動抵抗の少ない摺動材が施されていることを特徴とする請求項3記載の免震装置のトリガー機構。 【請求項5】前記柱状弾塑性体の両端部に実質的に同形状の孔部を有する前記2つの嵌入部材を対向するように嵌入し、この対向する前記2つの嵌入部材間に、当該2つの嵌入部材の内周面の形状と実質的に同形状の内周面を有する所定厚さから成る2分割シムプレートを前記柱状弾塑性体の一部位の外周面を挟み込むように配置し、この状態で前記柱状弾塑性体を前記2つの嵌入部材と共に圧縮することにより、前記柱状弾塑性体を前記2つの嵌入部材に圧着させると共に前記2分割シムプレートに密着させ、且つ前記2つの嵌入部材をそれぞれ前記2分割シムプレートに密着させてから、当該2分割シムプレートを抜脱して前記コアを形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の免震装置のトリガー機構の製造方法。 【請求項6】前記コアの前記2つの嵌入部材はそれぞれ有底円筒形であることを特徴とする請求項5記載の免震装置のトリガー機構の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は免震装置のトリガー機構およびその製造方法に係り、特に戸建て住宅等の比較的軽量な構造物に好適な免震装置のトリガー機構およびその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来より、図11に示すような免震装置のトリガー機構70が提案されている。このトリガー機構70は、地盤71に固定される下部ブッシュ72と、下部ブッシュ72の直上に配置され建物73に固定される上部ブッシュ74と、下部ブッシュ72および上部ブッシュ74に嵌合される柱状弾塑性体75とから構成され、下部ブッシュ72および上部ブッシュ74間には所定の隙間W10が設けられている。 【0003】このようなトリガー機構70によれば、柱状弾塑性体75の降伏力の設定次第で水平方向の振動エネルギに対して、展延性に富んだ状態で弾塑性変形させたり、塑性破壊させることができる。したがって、構造物が風荷重等により揺動するのを回避すると共に、地震発生時には効果的に免震機能を果たすことができる。しかしながら、強風時や小地震時に加わる繰返し微小振動により柱状弾塑性体75に変形が生じたり、中地震時による弾塑性変形が繰返し加わることにより柱状弾塑性体75が徐々に変形し破断部において体積が変化するので、図12に示すように破断荷重の1サイクル目の履歴と10サイクル目の履歴とに大きな変化が生じる。したがって、柱状弾塑性体75の破断荷重が下がってしまうなどの難点がある。また、このような変形によって柱状弾塑性体75が上部ブッシュ74の内壁面に圧着してしまうことがあり、破断後に上部ブッシュ74から離脱せず、破断材料同士が接触するブレーキ現象が起きるなどの難点がある。また、施工時に下部ブッシュ72および上部ブッシュ74間の隙間W10を、シムプレートなどを挿入して調整しなければならない。 【0004】このような難点に対して、図13に示すようなトリガー機構80が提案されている。このトリガー機構80は、地盤81に固定される下部ブッシュ82と、この下部ブッシュ82の直上に隔置され建物83に固定される上部ブッシュ84とを有し、溝が全周に亘って切り欠かれた円柱状剛性部材85が上部ブッシュ84に固定されると共に下部ブッシュ82に嵌合され、この下部ブッシュ82および上部ブッシュ84間に位置する円柱状剛性部材85の溝を含む外周には中空弾塑性体86が嵌着されている。また、中空弾塑性体86は軸方向の両端のみが円柱状剛性部材85に固定されている。 【0005】このようなトリガー機構80によれば、シムプレートなどを使用せずに弾性域、破断荷重、塑性域等の挙動を任意に設定できるようになる。また、円柱状剛性部材85および中空弾塑性体86が破断しても、破断した円柱状剛性部材85は下部ブッシュ82に嵌合されていることから、破断片を重力落下させることができるので、各破断片同士が接触するブレーキ現象を回避することができる。さらに、中空弾塑性体86の軸方向の両端のみが円柱状剛性部材85に固定されていることから、中空弾塑性体86は水平方向に発生する振動エネルギにより弾塑性変形しても軸方向に体積変化しなくなるので、破断荷重の低下を防ぐことができる。 【0006】しかしながら、構造上、製造、施工する際に手間がかかる難点がある。これは、コストアップの要因の1つになるので、改善が望まれている。本発明は、このような従来の難点を解決するためになされたもので、製造、施工が容易な構成で、構造物が風荷重等により揺動するのを回避すると共に、地震発生時には効果的に免震機能を果たすことができ、而も破断荷重の低下を防ぐことができる免震装置のトリガー機構およびその製造方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】このような目的を達成する本発明の免震装置のトリガー機構は、構造物および基礎間または上部構造物および下部構造物間に、水平方向に発生する振動エネルギによって大きく相対変位して当該振動エネルギを吸収する振動エネルギ吸収手段と共に並列に介装され、水平方向の振動エネルギが所定値未満では展延性に富んだ状態で弾塑性変形し且つ所定値以上では塑性破壊する柱状弾塑性体を有する免震装置のトリガー機構であって、柱状弾塑性体の両端に対向して嵌入された2つの嵌入部材が予め定められた隙間で当該柱状弾塑性体に固定されるコアと、コアの一方の嵌入部材が嵌合され基礎または下部構造物に固定される下部用中空案内部材と、コアの他方の嵌入部材が上下方向へ移動可能に嵌合され下部用中空案内部材の直上で構造物または上部構造物に固定される上部用中空案内部材とから構成され、各嵌入部材は柱状弾塑性体より剛性の高い材料から成るものである。 【0008】このような免震装置のトリガー機構は、柱状弾塑性体が弾塑性変形しても、当該柱状弾塑性体は他方の嵌入部材を介して上部用中空案内部材に嵌合されているので、上部用中空案内部材の内壁面に柱状弾塑性体が圧着してしまうことを防ぐことができる。また、本発明の免震装置のトリガー機構においてコアの2つの嵌入部材の静止時における隙間は0.02〜5mmであることが好ましい。これにより、各嵌入部材によって柱状弾塑性体を覆設する面積を大きくすることができるので、柱状弾塑性体が弾塑性変形した後に軸方向へ体積変化する、所謂細り現象を改善できるようになる。 【0009】また、本発明の免震装置のトリガー機構においてコアの2つの嵌入部材は、水平方向へ摺動可能に接触していることが好ましい。これにより、各嵌入部材によって実質的に柱状弾塑性体全体を覆設できるので、柱状弾塑性体が弾塑性変形した後に軸方向へ体積変化する、所謂細り現象を回避できる。。また、このように2つの嵌入部材を水平方向へ摺動可能に接触させる場合には、これら対向面に、それぞれ摺動抵抗の少ない摺動材が施されていることが好ましい。これにより、嵌入部材同士を引っ掛かることなくスムーズに摺動させることができる。 【0010】また、本発明の免震装置のトリガー機構の製造方法は、柱状弾塑性体の両端部に実質的に同形状の孔部を有する上部用嵌入部材および下部用嵌入部材を対向するように嵌入し、この対向する2つの嵌入部材間に、当該2つの嵌入部材の内周面の形状と実質的に同形状の内周面を有する所定厚さから成る2分割シムプレートを柱状弾塑性体の一部位の外周面を挟み込むように配置し、この状態で柱状弾塑性体を2つの嵌入部材と共に圧縮することにより、柱状弾塑性体を2つの嵌入部材に圧着させると共に2分割シムプレートに密着させ、且つ2つの嵌入部材をそれぞれ2分割シムプレートに密着させてから、当該2分割シムプレートを抜脱してコアを形成するものである。 【0011】このような免震装置のトリガー機構の製造方法によれば、柱状弾塑性体の両端部に対して予め定められた隙間を確保した状態で2つの嵌入部材を圧着させることができるので、2つの嵌入部材の隙間をコアの製造段階で設定しておくことができる。また、本発明の免震装置のトリガー機構の製造方法において、コアの上部用嵌入部材および下部用嵌入部材は有底円筒形であることが好ましい。これにより、上部用嵌入部材および下部用嵌入部材に対して柱状弾塑性体をかしめやすくなる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の免震装置のトリガー機構の実施の一形態について、図面を参照して説明する。本発明のトリガー機構は図1(a)に示すように、水平方向に発生する振動エネルギによって大きく相対変位して当該水平方向の振動エネルギを吸収する振動エネルギ吸収手段である転がり支承体4と共に、比較的軽量な構造物である建物2と、基礎である地盤3との間に介装される免震装置1に適用される。なお、転がり支承体4とトリガー機構5とは、建物2と地盤とが大きく相対変位したときに互いに干渉することのない位置に並列に配置される。 【0013】転がり支承体4は、建物2に固定されボールベアリング6を転動自在に下方に突出させて支承する支承部材7と、一定の曲率から成り中心部が最深となる凹曲面部8が設けられた受皿部材9とから成り、支承部材7のボールベアリング6が受皿部材9の凹曲面部8上で転動するように構成されている。したがって、水平方向へ移動した支承部材7は建物2の重力作用で凹曲面部8に沿って元の位置、即ち、凹曲面部8の最深位置に戻ることができる。これにより、建物2は、元の位置に完全復帰することができる。なお、このような凹曲面部8は必ずしも一定の曲率である必要はなく、ある角度から成る傾斜面、あるいは外周に向かうにしたがって徐々に曲率が大きくなるような形状のものでもよい。 【0014】このような転がり支承体4と共に免震装置1に用いられるトリガー機構5は、水平方向の振動エネルギが所定値未満では展延性に富んだ状態で弾塑性変形し且つ所定値以上では塑性破壊する機能を有する円柱状のコア10と、コア10の一方が嵌合され地盤3に固定される下部用中空案内部材である下部ブッシュ11と、コア10の他方が上下方向へ移動可能に嵌合され下部ブッシュ11の直上で建物2に固定される上部用中空案内部材である上部ブッシュ12とから構成されている。 【0015】コア10は、上述した機能を具備する円柱状弾塑性体13と、円柱状弾塑性体13の両端に対向して嵌入され当該円柱状弾塑性体13に固定される2つの嵌入部材である有底円筒部材14、15とから成り、この2つの有底円筒部材14、15は予め定められた隙間W1で隔てられている。この円柱状弾塑性体13は、屋外放置される使用環境を考慮すると、劣化が少なく、而も展延性に富み且つ容易に弾塑性変形できる純鉛が好ましいが、弾塑性変形可能なポリエチレン等の樹脂材料や、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金等の金属材料でもよい。また、2つの有底円筒部材14、15は、円柱状弾塑性体13より剛性の高い材料が好ましく、例えば、鉄、鋼、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、銅、金等の金属材料や、カーボン樹脂などの剛性の高い樹脂材料がよい。 【0016】このような材料から成るコア10の2つの有底円筒部材14、15の隙間W1は、0.02〜5mmまたは有底円筒部材14、15の内径の0.1〜5%、好ましくは0.02〜3mmまたは有底円筒部材14、15の内径の0.1〜3%、より好ましくは0.02〜1mmまたは有底円筒部材14、15の内径の0.1〜1%である。これは、2つの有底円筒部材14、15によって円柱状弾塑性体13を覆設する面積を大きくすることができるので、円柱状弾塑性体13が弾塑性変形した後に軸方向へ体積変化する、所謂細り現象を改善できるようになるからである。 【0017】また、2つの有底円筒部材14、15を水平方向へ摺動可能に接触させるようにコア10を形成させれば、当該有底円筒部材14、15によって円柱状弾塑性体13全体を覆設できることから、円柱状弾塑性体13が弾塑性変形した後に軸方向へ体積変化する、所謂細り現象を回避できる。なお、この場合には、有底円筒部材14、15の対向面に、それぞれ摺動抵抗の少ない摺動材であるポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や硬質クロームメッキ等をコーティングすることが好ましい。これにより、嵌入部材同士を引っ掛かることなくスムーズに摺動させることができるので、免震装置の初動荷重を設定することが可能になる。 【0018】また、2つの有底円筒部材14、15の対向距離よりも、後述する下部ブッシュ11および上部ブッシュ12の対向距離の方が短い場合には、上述の摺動抵抗の少ない摺動材を下部ブッシュ11および上部ブッシュ12の各対向面にコーティングさせれば、ブッシュ同士を引っ掛かることなくスムーズに摺動させることができるので、免震装置の初動荷重を設定することが可能になる。なお、これら対向距離が同じ場合には、何れにもコーティングさせることになる。 【0019】このように形成されたコア10の2つの有底円筒部材14、15がそれぞれ嵌合される下部ブッシュ11および上部ブッシュ12は、各有底円筒部材14、15より剛性の高い材料が好ましく、一般構造用圧延鋼材や機械構造用炭素鋼鋼材等の剛性材料もしくは剛性の高い樹脂材料がよい。なお、他方の有底円筒部材15を上部ブッシュ12に対して、確実に移動可能にするために、他方の有底円筒部材15の外周15aと、上部ブッシュ12の内周12aとの隙間W2は、0.02〜0.5mmが好ましい。これは、比較的軽量な建物2の重量に対応した円柱状弾塑性体6が固定された他方の有底円筒部材15を、上部ブッシュ12内でスムーズに移動させるためである。また、コア10の直径が大きくなる場合には、他方の有底円筒部材15の直線性を考慮して、この隙間W2を0.1〜1mmにするとよい。上限を1mmにしたのは、これ以上大きくすると、他方の有底円筒部材15の直線性を保つことが困難になるからである。なお、上部ブッシュ12の内周面12aには、防錆メッキ処理が施されている。 【0020】次に、トリガー機構5の主要部となるコア10の具体的な製造方法について説明する。なお、2つの有底円筒部材14、15の隙間W1は0.5mmとする。図2(a)に示すように、円柱状弾塑性体13の両端部13a、13bに、実質的に同形状の内周面14a、15bを有する2つの有底円筒部材14、15を対向するように嵌入し、この対向する2つの有底円筒部材14、15間に、0.5mm厚の2分割シムプレート16、17を円柱状弾塑性体13の一部位の外周面13cを挟み込むように配置し、この状態で円柱状弾塑性体13を2つの有底円筒部材14、15と共に圧縮する。これにより、図2(b)に示すように、円柱状弾塑性体13が2つの有底円筒部材14、15に圧着すると共に2分割シムプレート16、17に圧着し、且つ2つの有底円筒部材14、15がそれぞれ2分割シムプレート16、17に密着する。 【0021】そして、2分割シムプレート16、17を円柱状弾塑性体13および2つの有底円筒部材14、15から抜脱することにより、2つの有底円筒部材14、15の隙間W1が0.5mmのコア10を形成することができる。なお、シムプレートに2分割のものを用いているのは、脱着し易くするためである。また、2分割シムプレート16、17の内周面16a、17aの形状を、2つの有底円筒部材14、15の内周面14a、15bの形状と実質的に同形状にする。これにより、トリガー機構5の据付け後において、クリープ等により地盤3および建物2間の距離が狭まったとしても、円柱状弾塑性体13が有底円筒部材14、15によって押し潰されたりすることがなくなる。さらに、円柱状弾塑性体13の外径D1を、2つの有底円筒部材14、15および2分割シムプレート16、17の内径D2より僅かに小さくし、長さL1を2つの有底円筒部材14、15の各中空部の深さL2、L3と2分割シムプレート16、17の厚さL4との合算値より僅かに長くし、体積V1を2つの有底円筒部材14、15の各中空部の体積V2、V3と2分割シムプレート16、17を合わせることによりできる中空部の体積V4との合算値より僅かに大きくする。これにより、2つの有底円筒部材14、15の隙間W1を0.5mmにした状態で、当該2つの有底円筒部材14、15に対して円柱状弾塑性体13を確実にかしめることができるようになる。したがって、2つの有底円筒部材14、15の隙間W1をコア10の製造段階で設定しておくことができるので、設置現場における施工、コア交換が容易になる。 【0022】このように構成された免震装置1のトリガー機構5を、建物2と地盤3との間に設置する場合について説明する。なお、建物2は予め転がり支承体4によって支承されているものとする。また、コア10を下部ブッシュ11および上部ブッシュ12に嵌合させるためには、上部ブッシュ12を建物2に固定させ、下部ブッシュ11を地盤3に固定させると、通常、建物2を所定位置まで上昇させなければならないので、図3(a)、(b)、(c)に示すような2分割された下部ブッシュ21、上部ブッシュ22を使用する。 【0023】まず、予め定められた地盤3上に、一方の下部ブッシュ21Aを固定ボルト23で固定させ、この一方の下部ブッシュ21A内にコア10の他方の有底円筒部材14を固着させる。コア10の他方の有底円筒部材14を一方の下部ブッシュ21Aに固着後、当該一方の下部ブッシュ21Aに他方の下部ブッシュ21Bを取付ボルト24で締結させ、さらに、この他方の下部ブッシュ21Bを地盤3上に固定ボルト25で固定させて、コア10を下部ブッシュ21に固着させる。 【0024】下部ブッシュ21に固着されたコア10の一方の有底円筒部材15に一方の上部ブッシュ22Aを嵌合させ、この一方の上部ブッシュ22Aに他方の上部ブッシュ22Bを取付ボルト26で締結させ、さらに、この上部ブッシュ22を建物2に固定ボルト27、28で固定させ、コア10を上部ブッシュ22へ上下方向へ移動可能に嵌合させて、トリガー機構5の組立てを完了する。なお、コア10を下部ブッシュ21に固着させるには、ねじ締結、溶接、かしめ等が考えられる。 【0025】また、コア10の円柱状弾塑性体13が弾塑性破壊して分裂後は、2分割された上部ブッシュ22および下部ブッシュ21の各取付ボルト26、24を取り外し、さらに、この上部ブッシュ22および下部ブッシュ21のそれぞれ一方のブッシュの固定ボルトを外すことにより当該各ブッシュを取り外して、各コア片を取り除く。そして、上部ブッシュ22および下部ブッシュ21の損傷を点検して、損傷がなければ新しいコア10を上述した組立要領で組立てる。このように、2分割された上部ブッシュ22および下部ブッシュ21を有するトリガー機構5によれば、コア10が弾塑性破壊して分裂しても容易に付け替えることができるようになる。 【0026】なお、コア10は下部ブッシュ21に対して固着されていなくともよく、摺動可能に嵌合されていてもよい。また、2分割されたブッシュを上部、下部の何れか一方に使用した場合でも、建物2を所定の位置まで上昇させることなくトリガー機構5を組立てることは可能である。 【0027】さらに、ブッシュが2分割されていない場合には、上部ブッシュを建物に、下部ブッシュを地盤上にそれぞれ固定後、建物に設けられた孔からコアを挿入して組立ててもよく、また、上部ブッシュおよび下部ブッシュにコアを組込んでから、建物および地盤に固定させてもよい。次に、このように製造されたコア10を備えたトリガー機構5を有する免震装置1の免震動作について説明する。 【0028】建物2に強風や小地震による水平方向の振動エネルギが加わると、コア10の円柱状弾塑性体13は図4(a)、(b)に示すように、高い初期剛性により建物2の揺れを抑制させる。また、建物2に中地震による水平方向の振動エネルギが加わると、コア10の円柱状弾塑性体13は図5(a)、(b)に示すように、弾塑性変形して建物2の揺れを減衰させる。この際、建物2は転がり支承体4(図1(a)参照)により元の位置に復帰することができる。なお、コア10は円柱状弾塑性体13の外面を隙間W1=0.5mm以外はすべて2つの有底円筒部材14、15により覆設することができるので、このような水平方向の振動エネルギを繰返し受けても、破断荷重の1サイクル目の履歴と10サイクル目の履歴とに大きな変化が生じなくなる(図5(b))。したがって、コア10の円柱状弾塑性体13の破断荷重の低下を防げるようになる。 【0029】さらに、建物2に大地震による水平方向の振動エネルギが加わると、コア10の円柱状弾塑性体13は図6(a)、(b)に示すように、塑性破壊するので、転がり支承体4により建物2の振動周期は長周期化される。この際、建物2および地盤3が大きく相対変位したときにコア10の円柱状弾塑性体13が塑性破壊して分裂しても、上部ブッシュ12内に残されたコア片10Bは下部ブッシュ11上の位置から外れた位置で重力によって落下するので、分裂したコア片10A、10B同士が接触するブレーキ現象を回避することができる。また、建物2の振動周期を長周期化させても、転がり支承体4とトリガー機構5とは互いに干渉することのない位置に配置されているので、大地震によって建物2が水平方向へ大きく変位しても正常な免震機能を確保できる。 【0030】なお、本発明の実施の一形態によれば、コア10を形成させるのに、2つの有底円筒部材14、15と共に円柱状弾塑性体13を圧縮させていたが、これに限らず、円柱状弾塑性体13の両端部に2つの有底円筒部材14、15をホモゲン加工により溶着してもよい。ここで、ホモゲン加工とは、鉄の表面を酸洗いして、その上に融着液を塗布したり鉛錫合金めっきをしたりして有底円筒部材と円柱状弾塑性体とを融着させる加工をいう。なお、有底円筒部材と円柱状弾塑性体との定着はホモゲン加工に限らず、定着できれば、どのような溶着または接着でもよい。 【0031】また、本発明の実施の一形態によれば、分裂した上部ブッシュ側のコア片を重力の落下で離脱させていたが、上部ブッシュ内で引っ掛かってしまう場合等を考慮して、強制離脱させることができる弾性体をトリガー機構に設けてもよい。例えば図7に示すように、上部ブッシュ12内に弾性体であるコイルスプリング30を内設してもよい。これにより、コア10は上部ブッシュ12内から常時、離脱方向へ付勢されることになる。 【0032】このように、上部ブッシュ12内にコイルスプリング30が内設されたトリガー機構5′に、水平方向の大きな振動エネルギが加わると、建物2および地盤3が大きく相対変位してコア10の円柱状弾塑性体13は塑性破壊して分裂し、上部ブッシュ12内に残されたコア片はコイルスプリング30により強制離脱されるので、確実にブレーキ現象を回避させることができる。なお、弾性体はコイルスプリングに限らず、コア片に上部ブッシュ12内から強制離脱させるだけの付勢力を付与することができれば、皿ばね、ゴム状弾性体でもよい。 【0033】また、本発明の実施の一形態によれば、コアの両端部は2つの嵌入部材によって塞がれていたが、これに限らず、下部ブッシュに嵌合される一方の嵌入部材を、図8に示すような底のない円筒部材14′にしても、破断荷重の低下を防ぐことができる。また、図9に示すように、一方の嵌入部材と下部ブッシュとを一体化しても、破断荷重の低下を防ぐことができる。 【0034】また、本発明の実施の一形態によれば、振動エネルギ吸収手段として転がり支承体を使用していたが、これに限らず、積層ゴムなど、振動エネルギを吸収できればどのようなものでもよい。また、上述した本発明の実施の各形態によれば、柱状弾塑性体に円柱のものを使用したが、これに限らず、四角形でも多角形でもよい。これは、柱状弾塑性体の降伏力が断面積−剪断応力の関係で求まるからである。この際、2つの嵌入部材も柱状弾塑性体の形状に嵌合させることができるように形成させる。 【0035】なお、本発明のトリガ機構を有する免震装置は、建物の揺れ幅および揺れ時間を抑制するために、図10に示すようにダンパ26をトリガー機構5とは別置で、建物2および地盤3間に設けてもよい。この際、ダンパ26は転がり支承体4と別置(図示通り)または一体形成で配することができる。また、本発明のトリガ機構を有する免震装置は、構造物および地盤間には限らず、例えば上部構造物および下部構造物となるビルの8階と9階との間に設置してもよい。 【0036】また、本発明のトリガ機構を有する免震装置は、除振作用を有しているのは元より、振動を発生する機器から基礎に当該振動が伝われば、防振作用をすることになる。 【0037】 【発明の効果】以上、説明したように、本発明の免震装置のトリガー機構によれば、上部用中空案内部材の内壁面に柱状弾塑性体が圧着してしまうことを防ぐことができるので、上部用中空案内部材の内壁面に特別な表面処理を施さなくても柱状弾塑性体と上部用中空案内部材との離脱を良好に行うことができる。 【0038】また、嵌入部材によって柱状弾塑性体を覆設する面積を大きくすることができるので、柱状弾塑性体が弾塑性変形した後に軸方向へ体積変化する、所謂細り現象を改善できるようになる。したがって、柱状弾塑性体の破断荷重の低下を防ぐことが可能になる。さらに、2つの嵌入部材の隙間をコアの製造段階で設定しておくことができるので、設置現場における施工、コア交換が容易になる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002255 【氏名又は名称】昭和電線電纜株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年12月7日(1998.12.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077584 【弁理士】 【氏名又は名称】守谷 一雄
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| 【公開番号】 |
特開2000−170834(P2000−170834A) |
| 【公開日】 |
平成12年6月23日(2000.6.23) |
| 【出願番号】 |
特願平10−347310 |
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