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【発明の名称】 免震装置
【発明者】 【氏名】菊池 巧

【氏名】中村 徹人

【要約】 【課題】装備構造を複雑化することのない転動構造からなる免震装置を提供する。

【解決手段】固定側Aと被免震側Bとの間にレール1,2,ローラ3からなる転動構造を備えてなる。レール1,2,ローラ3の間の対面中心にレール1,2,ローラ3が当接しない非当接部aを設け、レール1,2,ローラ3が当接する差動すべり部bを被免震側Bの荷重F方向に対し傾斜させて非当接部aの両側に対称的に配置した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定側と被免震側との間にレール,ローラからなる転動構造を備えてなる免震装置において、レール,ローラの間の対面中心にレール,ローラが当接しない非当接部を設け、レール,ローラの間で差動すべりを発生する差動すべり部を被免震側の荷重方向に対し傾斜させて非当接部の両側に対称的に配置したことを特徴とする免震装置。
【請求項2】 請求項1の免震装置において、差動すべり部は平面状からなることを特徴とする免震装置。
【請求項3】 請求項1の免震装置において、差動すべり部が曲面状からなることをことを特徴とする免震装置。
【請求項4】 請求項1の免震装置において、差動すべり部が複数点状からなることをことを特徴とする免震装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、地震等の振動(震動)を減衰する免震装置に係る技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】 従来から免震装置としては、特公平6ー74609号公報や特開平10ー94444号公報に示すように、固定側と被免震側との間にレール,ローラからなる転動構造を備えてなるものが知られている。
【0003】この従来の免震装置は、固定側に掛かった振動を転動構造の転動移動により減衰して被免震側に伝達しないようになっている。この従来の免震装置では、転動構造の特性から減衰起動が円滑であるとともに、レールの方向規制から減衰方向性が正確であるという利点がある。
【0004】また、図8に示すように、長手方向へわたって平面状を呈するレール2と、このレール2の対面中心に平面状に転動するローラ5とを備え、ローラ5の軸受孔51に車軸6の軸部61を嵌合させることによって、軸受孔51と軸部61との間に摩擦を発生させて振動を減衰する構造も採用可能である。さらに、図示しなが、振動を減衰するダンパを装備させることが実施されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】 従来公報の免震装置では、転動構造の特性から振動を減衰するための転動移動が慣性で継続してしまうために、各種機器類等への装備の際にダンパ等を付設しなければならず、装備構造が複雑になるという問題点がある。
【0006】また、図8に示すような振動の減衰構造では、軸受孔51と軸部61とで摩擦を発生させるための高度な加工組立精度が要求されるうえ、軸受孔51と軸部61の摩擦発生部が繰り返し使用に伴って磨耗し、徐々に振動減衰率を低下させる可能性が予測される。さらに、叙述のようにダンパを付設することは、装備構造の複雑化を招くことに他ならない。
【0007】ところで、レールとローラとの接触面に傾斜角度を設けた構造は家具・建具あるいは精密機器類の移動機構等の分野で知られているが、これは調芯や脱輪防止の目的で用いられており、滑らかな転動が果たされるものである。特に、レールとローラとの間では接触面の傾斜角度に摩擦が少なくなるように働くので、傾斜する接触面間においては滑らかな転動に必要なクリアランスが存在しており、むしろ摩擦係数を低く落としているものである。この種のレールとローラとの間には、転動に際して積極的に摩擦を取り込みすることによって振動を減衰させるという技術思想が示されていない。
【0008】本発明は、このような諸問題を考慮してなされたもので、装備構造を複雑化することがなく、レールに対するローラの転動のみで振動を減衰させる転動構造からなる免震装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】 前述の課題を解決するため、本発明に係る免震装置は、次のような手段を採用する。
【0010】即ち、請求項1では、固定側と被免震側との間にレール,ローラからなる転動構造を備えてなる免震装置において、レール,ローラの間の対面中心にレール,ローラが当接しない非当接部を設け、レール,ローラの間で差動すべりを発生する差動すべり部を被免震側の荷重方向に対し傾斜させて非当接部の両側に対称的に配置したことを特徴とする。
【0011】この手段では、非当接部の介在によって対称的な傾斜を案内として差動すべり部に被免震側の荷重が集中されるので、傾斜相互での楔的作用が発揮されて面接触度合いが強められる。振動の発生により、差動すべり部に差動すべりが発生することとなるが、ころがり移動距離の差異によって摩擦係数が高められる。その際には強い面接触によって摩擦係数が一層高められる。従って、転動構造自体によって実質的にダンパの機能を奏させ、別個にダンパを付設することを不要にする。
【0012】また、請求項2では、請求項1の免震装置において、差動すべり部は平面状からなることを特徴とする。
【0013】この手段では、被免震側の荷重が非当接部に向けて差動すべり部の傾斜に応じて平面楔状に集中される。
【0014】また、請求項3では、請求項1の免震装置において、差動すべり部が曲面状からなることをことを特徴とする。
【0015】この手段では、被免震側の荷重が非当接部に向けて差動すべり部の傾斜に応じて曲面楔状に集中される。
【0016】さらに、請求項4では、請求項1の免震装置において、差動すべり部が複数点状からなることをことを特徴とする。
【0017】この手段では、被免震側の荷重が非当接部にむけて差動すべり部の複数点に集中される。
【0018】
【発明の実施の形態】 以下、本発明に係る免震装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1,図2は、本発明に係る免震装置の実施の形態(1)を示すものである。
【0019】この実施の形態では、上下に配置された固定側Aと被免震側Bとにそれぞれレール1,2が固定され、上下のレール1,2の間にローラ3が挟込まれるように転動構造が構成されている。
【0020】固定側Aは、例えば破損しやすい展示品を収納する展示ケースのケース枠のように、床面,卓上等に強固に設置されて地震等の振動がそのまま伝達されてしまうものからなる。勿論、免震が必要な軽量建造物やその他の据付機械装置類の基礎部分も含まれる。
【0021】被免震側Bは、例えば破損しやすい展示品を収納する展示ケースの展示品載承台のように、床面,卓上等に直接的に接触しないようにケース枠等に組付けられて振動がそのまま伝達されては困るものからなる。叙述の軽量建造物や据付機械装置類の他に、コンピュータ等の電子機器類も対象となる。
【0022】レール1,2は、長尺板形に形成され、ローラ3に対面する突出面11,21の両縁を角取りして直線状の傾斜面12,13,22,23が設けられている。この傾斜面12,13,22,23は、被免震側Bの荷重F方向に対して、角度θ分傾斜している。
【0023】ローラ3は、軸部31の両端部にフランジ32,33が形成され、軸部31の周面31からフランジ32,33の間にレール1,2の傾斜面12,13,22,23と略々同一角度の傾斜面34,35が平面状に設けられている。
【0024】これ等のレール1,2,ローラ3が組合わされた状態では、レール1,2の突出面11,21とローラ3の軸部31の周面とが一定のスペースSを介して当接しない非当接部aを構成し、レール1,2の傾斜面12,13,22,23の全部とローラ3の傾斜面34,35の一部とが当接して差動すべり部bを構成している。即ち、レール1,2,ローラ3の間の対面中心に非当接部aが配置され、非当接部aの両側に差動すべり部bが対称的に配置されていることになる。
【0025】差動すべり部bは、傾斜面34,35において、回転数×回転直径×円周率で表される移動距離が相違することから構成される。実際には傾斜面34,35の傾斜方向にわたって移動距離が無数の存在するが、例えば傾斜面34,35の軸部側とフランジ端側とでは、移動距離の差異が生じて差動すべり現象が発生するので、これによって摩擦が発生することとなる。
【0026】この実施の形態によると、地震等の振動に対しては、図2に示すように、レール1,ローラ3,被免震側Bが転動移動して減衰機能を発揮することになる。このとき、前述の従来公報例と同様の転動構造を採用していることにより、減衰起動が円滑で減衰方向性が正確であるという利点が確保される。
【0027】また、被免震側Bの荷重Fがレール1,2,ローラ3の差動すべり部bに集中して楔作用が働くと同時に、傾斜面12,13,22,23の移動距離の相違によって、レール1,2,ローラ3の摩擦係数が高くなる。この結果、レール1,2,ローラ3の間にダンパが組込まれたような構造になるため、振動減衰のための転動移動が慣性で長距離継続されることがなくなる。なお、摩擦係数については、非当接部a,差動すべり部bの長さa’,b’の調整(即ち、角度θの調整。)によって変更が可能である。
【0028】従って、本発明に係る免震装置を各種機器類等へ装備する際には、別個にダンパ等を付設する必要がなくなり、装備構造が複雑化且つ高価格化するのを避けることができる。
【0029】さらに、この実施の形態では、非当接部aにスペースSが設けられているため、レール1,2にある程度ゴミ等が堆積,付着していても、ローラ3の回転(転動)に支障がなくなる。これに加えて、経年繰返し使用があったとしても、楔作用の発揮によって摩擦係数を低下させることがない。従って、減衰起動の円滑性がより向上することになる。
【0030】図3は、本発明に係る免震装置の実施の形態(2)を示すものである。
【0031】この実施の形態では、前述の実施の形態(1)のレール1,2を長さ方向の両端側から中心に向けて凹状となるように傾斜させてある。
【0032】この実施の形態によると、ローラ3がレール1,2の凹状の中心14,24に向けて転動するように常時付勢されるため、振動減衰のための転動移動が自動的に復帰されることになる。
【0033】図4は、本発明に係る免震装置の実施の形態(3)を示すものである。
【0034】この実施の形態では、前述の実施の形態(1)の被免震側Bに固定されているレール1を省略し、ローラ3を軸4で被免震側Bに回転可能に支持してある。
【0035】この実施の形態によると、ローラ3の被免震側Bでのレール1へ挟込みがないため、減衰起動の円滑性がより向上する。
【0036】図5は、本発明に係る免震装置の実施の形態(4)を示すものである。
【0037】この実施の形態では、前述の実施の形態(1)のレール1,2の傾斜面12,13,22,23とローラ3の傾斜面34,35とが曲面状に形成されており、レール1,2の傾斜面12,13,22,23にはローラ3の軸部部分に位置して突出部11,21が平面状に形成されて非当接部aが形成されている。
【0038】この実施の形態によると、差動すべり部bに集中する被免震側Bの荷重Fの応力を曲線状で分散することができるため、差動すべり部b付近のレール1,2,ローラ3の耐荷重強度を高めることができる。
【0039】図6は、本発明に係る免震装置の実施の形態(5)を示すものである。
【0040】この実施の形態では、前述の実施の形態(1)のレール10,20を溝形としローラ3をレール10,20の溝形に嵌入する無フランジ形としてある。なお、傾斜面102,103,202,203については、傾斜する両端の2点のみ突出させ、この突出箇所をレール10,20の傾斜面304,305に当接させる構造としており、その他については前述の実施の形態(1)とほぼ同様の構成になっている。
【0041】この実施の形態によると、突出箇所102,103,202,203の各2点で差動すべりが得られ、各2点での大きな摩擦が得られる他は、前述の実施の形態(1)と同様の作用,効果が奏される。
【0042】図7は、本発明に係る免震装置の実施の形態(6)を示すものである。
【0043】この実施の形態では、前述の実施の形態(4)について、レールとローラの凹凸を置換して曲面状に当接させた以外は前述の実施の形態(5)の構成を採用している。
【0044】この実施の形態によると、前述の実施の形態(4)と同様の作用,効果が奏される。
【0045】以上、図示した実施の形態の外に、前述の実施の形態(4)〜(6)について、前述の実施の形態(2),(3)の構成を採用することも可能である。
【0046】
【実施例】(実施例1)図1に示すような、ローラ3とレール1,2の転動構造を採用して実施した。ローラ3としては、フランジ32,33の外径φ50mm、軸部周面φ32mm、傾斜面34,35の傾斜角30°、同様にレール1,2の傾斜角30°とし、転動による摩擦係数を計測したところ、摩擦係数は0.012〜0.016であった。平面状のレールとローラとの転動による摩擦係数に対して、転動による摩擦係数が約3〜4倍と高いものであった。
【0047】(実施例2) また、実施例1のローラ3とレール1,2の転動構造を前提として、レール1,2を図3に示すように中央が凹んで左右が高くなるレール勾配として摩擦係数を計測したところ、実施例1と同様の摩擦係数が得られたうえに、傾斜に応じた復元性が得られた。
【0048】
【発明の効果】 以上のように、本発明に係る免震装置は、レールとローラとの対面中心に非当接部を設けるとともにこの両側に差動すべりを発生させることによって、レールとローラとの転動構造のみで地震等の振動に対する減衰力を発生させることができた。
【0049】とくに、転動構造の基本構造が変更されず、転動構造に設けられた当接部に被免震側の荷重が集中されて摩擦係数を高めることができ、転動に際しても常時摩擦係数を高めることで転動構造自体によって実質的にダンパの機能を奏させ、別個にダンパを付設することを不要にするため、装備構造を複雑化することのない免震装置を提供することができる効果がある。
【出願人】 【識別番号】391039494
【氏名又は名称】株式会社エーエス
【出願日】 平成10年12月9日(1998.12.9)
【代理人】 【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
【公開番号】 特開2000−170833(P2000−170833A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−350436