トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 防振装置
【発明者】 【氏名】小島 宏

【要約】 【課題】大型のアクチュエータを用いることなく、可動壁を高い周波数域で振動させると共に振幅を十分大きくし、かつ防振性能の経時的な低下を抑制する。

【解決手段】流体封入室62内の液体からの圧力を受ける駆動壁56は、メンブラン54の受圧面積に対して約3倍の受圧面積を有している。電磁アクチュエータ70が、吸引板68へ磁力を作用させて駆動壁56を流体封入室62の容積拡縮方向へ往復動させることにより、流体封入室62内に封入された液体に周期的な圧力変化が生じ、この圧力変化が液体を介してメンブラン54へ伝達される。このとき、駆動壁56の受圧面積とメンブラン54の受圧面積との比に応じて駆動壁56の振幅が拡大されてメンブラン54へ伝達される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置されて弾性変形可能な弾性体と、液体が封入され、前記弾性体を内壁の一部として弾性体の変形により内容積が拡縮する受圧液室と、流体が封入され、前記受圧液室と隣接して配置される流体封入室と、前記受圧液室と前記流体封入室との間を仕切ると共に、受圧液室及び流体封入室に対する容積拡縮方向へ変位可能とされた可動壁と、前記流体封入室の隔壁の一部を構成し、前記可動壁より広い受圧面積を有すると共に、流体封入室に対する容積拡縮方向へ変位可能とされた駆動壁と、磁性体により形成され、前記駆動壁と一体となって前記容積拡縮方向へ変位する被駆動部材と、前記被駆動部材へ磁力を作用させて前記駆動壁を前記流体封入室に対する容積拡縮方向へ往復動させる電磁アクチュエータと、を有することを特徴とする防振装置。
【請求項2】 振動発生部からの振動入力に対応させて前記電磁アクチュエータの駆動を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車、一般産業用機械等に適用され振動発生部からの振動を吸収する防振装置に係り、特に液体が封入された受圧液室内の液圧が制御可能とされた液体封入式の防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】防振装置は、例えば、振動発生部となる車両のエンジンと振動受部となる車体との間にエンジンマウントとして配設されており、エンジンが発生する振動を吸収し、振動の車体側への伝達を抑制する。この種の防振装置には、内部に防振主体となる弾性体を内壁の一部とする受圧液室及び、この受圧液室とオリフィスを通して連通した副液室が設けられた液体封入式のものがある。この液体封入式の防振装置によれば、振動入力時に弾性体の変形と共にオリフィスを通して受圧液室と副液室との間で液体を流通させることにより、弾性体の内部摩擦及び液柱共振や液体の圧力変化により振動エネルギーを効果的に吸収できる。
【0003】また液体封入式の防振装置には、振動入力時に受圧液室の内圧を制御することにより防振効果を高めたものがある。このような防振装置の構造としては、例えば、受圧液室の隔壁の一部を構成する可動壁を弾性膜等により弾性的に支持し、この可動壁をボイスコイル、電磁石、圧電素子等を用いたアクチュエータにより入力振動に応じて往復動(振動)させて受圧液室の内容積を強制的に拡縮し、受圧液室の内圧を制御するものがある。このような液圧制御式の防振装置に用いられるアクチュエータには、ロッド等の連結部材により可動壁へ直接連結され、この連結部材を介して可動壁へ駆動力を伝達して可動壁を往復動させる構造のものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のようなアクチュエータを備えた液圧制御式の防振装置では、アクチュエータの能力によって可動壁の振動周波数と振幅が制限される。このため、可動壁を高い周波数域で振動させ、かつ可動壁の振幅を十分大きくするには、大パワーを出力でき、かつ連結部材を十分長いストロークで往復動できる大型のアクチュエータが必要になる。
【0005】また連結部材を介して可動壁を往復動させるアクチュエータでは、連結部材が往復動する際に連結部材が滑り軸受等を介して摺動する。このため、アクチュエータの滑り軸受等が摩耗すると出力低下や故障が発生し、経時的に防振装置による防振性能が低下するおそれがある。
【0006】本発明の目的は、上記事実を考慮し、大型のアクチュエータを用いることなく、可動壁を高い周波数域で振動させると共に振幅を十分大きくでき、かつ経時的な性能低下が少ない防振装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の防振装置は、振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置されて弾性変形可能な弾性体と、液体が封入され、前記弾性体を内壁の一部として弾性体の変形により内容積が拡縮する受圧液室と、流体が封入され、前記受圧液室と隣接して配置される流体封入室と、前記受圧液室と前記流体封入室との間を仕切ると共に、受圧液室及び流体封入室に対する容積拡縮方向へ変位可能とされた可動壁と、前記流体封入室の隔壁の一部を構成し、前記可動壁より広い受圧面積を有すると共に、流体封入室に対する容積拡縮方向へ変位可能とされた駆動壁と、磁性体により形成され、前記駆動壁と一体となって前記容積拡縮方向へ変位する被駆動部材と、前記被駆動部材へ磁力を作用させて前記駆動壁を前記流体封入室に対する容積拡縮方向へ往復動させる電磁アクチュエータと、を有するものである。
【0008】上記構成の防振装置によれば、流体封入室の内壁の一部を構成する駆動壁が、受圧液室と流体封入室とを仕切った可動壁より広い受圧面積を有し、かつ電磁アクチュエータが、被駆動部材へ磁力を作用させて駆動壁を流体封入室の容積拡縮方向へ往復動させることにより、駆動壁が容積拡縮方向へ往復動すると共に流体封入室内に封入された流体に周期的な圧力変化が生じ、この圧力変化が流体を介して受圧液室と流体封入室との間を仕切った可動壁へ伝達されるので、可動壁が容積拡縮方向へ往復動して受圧液室に封入された液体へ周期的な圧力変化が伝達される。このとき、流体封入室に封入された流体が非圧縮性流体又は近似的に非圧縮性流体と見做せる流体であるならば、可動壁の受圧面積と駆動壁の受圧面積との比に応じて駆動壁の振幅が拡大されて可動壁に伝達される。
【0009】この結果、電磁アクチュエータにより駆動壁を往復動させる際の振幅が小さくても、駆動壁の受圧面積を可動壁の受圧面積に対して十分大きくすれば、大型のアクチュエータを用いることなく、可動壁を往復動させる際の振幅を十分大きくできるので、受圧液室内の液体には十分大きい圧力変化を生じさせることが可能になる。
【0010】従って、振動発生部から第1の取付部材又は第2の取付部材へ振動が伝達されると、振動により弾性体が変形して弾性体の内部摩擦により振動が吸収され、振動受部への振動の伝達が抑制される。更に、振動により弾性体が変形すると共に受圧液室内の液圧が変化しようとするが、可動壁が十分大きな振幅で往復動するので、高い周波数の振動が入力した場合であっても、可動壁の往復動により受圧液室内の液圧変化を十分抑えることができ、振動受部への振動伝達を効果的に抑制できる。
【0011】また、本実施形態の防振装置では、可動壁を往復動させるためのアクチュエータとしてロッド等の摺動部品がない電磁アクチュエータを用いているので、アクチュエータの性能低下や故障等に起因する防振能力の低下が生じ難く、装置の信頼性を向上できる。
【0012】請求項2記載の防振装置は、請求項1記載の防振装置において、振動発生部からの振動入力に対応させて前記電磁アクチュエータの駆動を制御する制御手段を有するものである。
【0013】上記構成の防振装置によれば、制御手段が、振動入力に対応させて電磁アクチュエータの駆動を制御することにより、例えば、振動周波数に対応させて電磁アクチュエータのオン/オフを制御し、又は電磁アクチュエータにより駆動壁を往復動させる際の周波数等を制御すれば、広い周波数域に亘る振動を効果的に吸収できる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態に係る防振装置を図面に基づいて説明する。
【0015】(実施形態の構成)図1から図3には本発明の実施形態に係る防振装置が示されている。なお、図中符号Sは装置の軸心を示し、この軸心に沿った方向を軸方向として以下の説明を行う。防振装置10は、図1に示されるように、その外枠部が下端側を底部とする有底円筒状の外筒金具12により形成されている。外筒金具12は、上部側と下部側では互いに径が異なる2段円筒状に形成されており、上部円筒部14は下部円筒部16より大径とされている。また上部円筒部14と下部円筒部16との間には段差状のフランジ部18が形成されている。下部円筒部16の底部には、振動受部である車体(図示省略)側に締結固定されるボルト20が植設されている。また上部円筒部14内には、下部円筒部16の内径より長い外径を有する支持円筒22が挿入されている。この支持円筒22には軸方向中間部に細径部22Aが形成されており、この細径部22Aは支持円筒22の外周面に周方向に沿った溝部24を形成している。
【0016】支持円筒22の上部内周面には、上方へ向かって断面が縮小する略円錐台状に形成されたゴム製の弾性体26が加硫接着されており、この弾性体26の頂面には頂板金具28が加硫接着により固着されている。頂板28には、その中央部から軸心Sに沿って振動発生部であるエンジン側へ締結固定されるボルト30が突出している。また弾性体26の底面中央部には、頂面側へ向かって円形凹状に窪んだ弾性内壁部32が形成されている。
【0017】支持円筒22内には、弾性体26の底部へ当接するように略円筒状の仕切部材34が挿入されている。仕切部材34の上面には、円形凹状の第1液室形成部36が形成されている。この第1液室形成部36は、上部側と下部側とでは互いに内径が異なっており、上部側が大径部36Aとされ、下部側が小径部36Bとされている。
【0018】一方、仕切部材34の下面には、円形凹状の第2液室形成部38が第1液室形成部36と同軸的に形成されている。ここで、第2液室形成部38は、第1液室形成部36の小径部36Bより内径が長くされ、かつ軸方向へは第1液室形成部36より浅くされている。また仕切部材34には、第1液室形成部36の底面から第2液室形成部38の底面へ貫通して液室形成部36,38間を連通させた連通部40が軸心Sに沿って形成されている。第1液室形成部36は、弾性体26の弾性内壁部32へ連通しており、弾性内壁部32と共に大液室である受圧液室37を形成している。
【0019】仕切部材34の外周面には、軸方向中間部に矩形断面の溝部42が形成されている。この溝部42は周方向に沿って全周に亘り形成されており、溝部42の内周側底部には、第1液室形成部36の大径部36Aへ連通する連通穴42Aが穿設されている。仕切部材34の外周面は支持円筒22の細径部22Aの内周面へ密着しており、溝部42の外周側は支持円筒22の細径部22Aの内周面により閉止されている。また細径部22Aには、軸心Sに対する周方向へ貫通した連通穴22Bが形成されている。そして、溝部42内に形成される円環状の空間は、受圧液室37を支持円筒22の溝部24内に形成される副液室44へ連通させる液体通路であるシェイク振動吸収用のオリフィス46を構成している。
【0020】外筒金具12と支持円筒22との間には、支持円筒22の外周面を全周に亘って覆うように薄肉円筒状の中間筒48が配置されている。これらの支持円筒22及び中間筒48は、それぞれの下端部が外筒金具12のフランジ部18の内側上面へ当接しており、この状態で、上部円筒部14の上端部が軸心S側へかしめられることにより、支持円筒22及び中間筒48は外筒金具12内へ固定されている。
【0021】中間筒48の内周面には薄肉円筒状に形成されたゴム製のダイヤフラム50の軸方向両端部がそれぞれ加硫接着されている。このダイヤフラム50は、支持円筒22の溝部24の外周側を閉止しており、軸方向中間部が溝部24内へ突出するようにアーチ状に湾曲している。ここで、ダイヤフラム50により外周側が閉止された溝部24内に形成される肉厚円筒状の空間は、小液室である副液室44とされている。またダイヤフラム50の軸方向中間部がアーチ状に湾曲していることにより、ダイヤフラム50の外周面と中間筒44の内周面との間には、ダイヤフラム50の径方向への弾性変形を可能とする空気室52が形成される。そして、受圧液室37、副液室44及びこれらの液室37,44を連通させたオリフィス46内には、水、オイル等の液体が封入されている。
【0022】仕切部材34における小径部36Bの内周面には、その軸方向中間部へ肉厚円板状の弾性膜であるメンブラン54の外周面が加硫接着されている。これにより、小径部36Bは受圧液室37の一部を形成する上部側空間と、メンブラン54を介して受圧液室37に隣接する下部側空間とに仕切られている。また仕切部材34における第2液室形成部38は、下側開口端が肉厚円板状の駆動壁56により閉止されている。駆動壁56は円板状に形成された樹脂製の駆動円板58とリング状に形成された弾性膜60とからなる。この弾性膜60は、駆動円板58の外周面と第2第2液室形成部38の内周面とへそれぞれ加硫接着されており、これにより、弾性板58と第2第2液室形成部38との間をシールしている。
【0023】そして、仕切部材34内におけるメンブラン54と駆動壁56との間に形成された空間、すなわちメンブラン54により仕切られた小径部36Bの下部側、連通部40及び駆動壁56により閉止された第2液室形成部38からなる空間は、流体が封入される流体封入室62とされている。この流体封入室62内には、受圧液室37に封入されている液体と同一液体が封入されている。ここで、メンブラン54は、受圧液室37及び流体封入室62に対する容積拡縮方向である軸方向へ弾性変形可能とされており、駆動壁56は、弾性膜60が弾性変形することにより流体封入室62に対する容積拡縮方向である軸方向へ変位可能とされている。
【0024】メンブラン54及び駆動壁56は、それぞれ流体封入室62内に封入された液体からの圧力を受けるが、駆動壁56は、メンブラン54の受圧面積より大きい流体封入室62内の液体からの受圧面積を有している。具体的には、駆動壁56は、その受圧面積がメンブラン54の受圧面積の3倍程度となるよう形成されている。これにより、駆動壁56が容積拡縮方向へ変位する際には、駆動壁56の変位が、駆動壁56の受圧面積とメンブラン54の受圧面積との比に応じて拡大され、駆動壁56を容積拡縮方向へ小さく変位させるだけでメンブラン54が容積拡縮方向へ大きく変位する。
【0025】仕切部材34の外周面には、下端部に径方向外側に延出したフランジ部34Aが形成されており、このフランジ部34Aの下面にはリング状のスペーサ64が当接している。フランジ部34A及びスペーサ64は、支持円筒22の細径部22Aの外周側下面と外筒金具12のフランジ部18の内周側上面とにより挟持されている。これにより、仕切部材34は軸方向における所定位置に固定される。
【0026】フランジ部34Aとスペーサ64との間には、薄肉円板状の板ばね66の外周部が挟持されている。この板ばね66は、非変形状態では外周部に対して中心部が上方へ突出するようにテーパ状に形成されており、板ばね66は、その中心部を駆動円板58の外周部へ圧接させて、駆動壁56を常に受圧液室37に対する容積縮小方向(上方)へ付勢している。また駆動円板58の下面には、下方へ突出した円形凸状のボス部58Aが形成されている。そして、スペーサ64の中空部66内には、板ばね66の中心穴を挿通したボス部58Aの下面へ固着され、駆動円板58へ連結された吸引板68が配置されている。この吸引板68は鉄等の磁性体からなり、上面側外周部に外側端へ向かって下方へ傾斜したテーパ部が形成されている。これにより、板ばね66の内周側が外周側に対して撓み変形する際における吸引板68の板ばね66への干渉が防止されている。
【0027】外筒金具12の下部円筒部16内には、電磁アクチュエータ70が挿入されている。電磁アクチュエータ70は、鉄製のコア72、永久磁石74及びコイル76を備えており、コア72は略円筒状に形成されており、その上面外周部がスペーサ64の下面へ当接している。永久磁石74は円板状に形成されており、コア72の上面中央部へ面一となるように埋設されている。これにより、吸引板68には永久磁石74からの磁力が常に作用しており、吸引板68は、図1に示されるように電磁アクチュエータ70の停止時には永久磁石74による下方への付勢力と板ばね66による上方への付勢力とが釣り合う中立位置に静止している。
【0028】吸引板68が中立位置に静止している状態では、メンブランゴム54及び駆動壁56の弾性膜60は軸方向への弾性変形が殆ど生じていない非変形状態になっている。またコア72には、永久磁石74の外周端に沿って環状溝が形成されており、コイル76はコア72の環状溝内にはコイル76が配設されており、リング状に形成された樹脂製の蓋部材78により環状溝内へ密閉されている。
【0029】外筒金具12の外部には、電磁アクチュエータ70に対する制御手段であるコントローラ80が配置されており、このコントローラ80はコイル76へ接続されている。従って、コントローラ80からの駆動電流がコイル76へ供給されることにより、電磁アクチュエータ70は駆動電流に応じた磁力を吸引板68に作用させる。ここで、コントローラ80は車両電源によって作動し、エンジンの回転速度及び回転角度をエンジンのクランクからのクランク信号に基づき検出し、アイドル振動発生時かシェイク振動発生時か及び、振動発生のタイミングを判断できるようになっている。
【0030】(実施形態の作用)次に本実施形態に係る防振装置10の作用を説明する。
【0031】頂板金具28に搭載されるエンジンが作動すると、エンジンの振動が頂板金具28を介して弾性体26へ伝達される。弾性体26は吸振主体として作用し、弾性体26の内部摩擦に基づく制振機能によって振動が吸収される。
【0032】また本実施形態の防振装置10では、コイル76へ駆動電流が供給されると電磁アクチュエータ70により吸引板68に吸引力が作用する。これにより、吸引板68は、図2に示されるように板ばね66の付勢力に抗して中立位置から下方へ移動し、吸引板68に連結された駆動壁56も弾性膜60を撓ませながら吸引板68と一体となって下方へ移動する。
【0033】吸引板68に対する電磁アクチュエータ70からの磁力(吸引力)と板ばね66の付勢力とは吸引板68が永久磁石74へ接する直前の下限位置で釣合う。この下限位置へ吸引板68が到達したタイミングに同期させ、コントローラ80が電磁アクチュエータ70への駆動電流の供給を停止すると、吸引板68及び駆動壁56は、図3に示されるように弾性膜60の復元力及び板ばね66の付勢力により上方へ移動し、駆動円板58が第2液室形成部38の底面へ接する上限位置で停止する。
【0034】更に、吸引板68及び駆動壁56が上限位置へ到達したタイミングに同期させ、電磁アクチュエータ70へ再び駆動電流を供給すると、吸引板68及び駆動壁56が上限位置から下限位置まで移動する。従って、電磁アクチュエータ70への駆動電流の供給/停止を周期的に繰り返すことにより、駆動壁56を所望の周波数で往復動させることが可能となる。
【0035】また本実施形態の防振装置10では、駆動壁56がメンブラン54に対して約3倍の受圧面積を有し、上述したように電磁アクチュエータ70が、吸引板68へ磁力を作用させて駆動壁56を流体封入室62の容積拡縮方向へ往復動させることにより、駆動壁56が容積拡縮方向へ往復動すると共に流体封入室62内に封入された液体に周期的な圧力変化が生じ、この圧力変化が液体を介して受圧液室37と流体封入室62との間を仕切ったメンブラン54へ伝達される。これにより、メンブラン54が容積拡縮方向へ往復動し、受圧液室37に封入された液体へ周期的な圧力変化が伝達される。このとき、駆動壁56の受圧面積とメンブラン54の受圧面積との比に応じて駆動壁56の容積拡縮方向への振幅が拡大されてメンブラン54へ伝達される。
【0036】次に、エンジンからの振動入力時のコントローラ80による電磁アクチュエータ70に対する制御を説明する。
【0037】コントローラ80は、エンジンが作動している場合には一定周期毎に、クランク信号に基づいてアイドル振動発生時かシェイク振動発生時かを判断する。コントローラ80は、エンジンから比較的低い周波数域の振動であるシェイク振動が発生するシェイク振動発生時であると判断すると、電磁アクチュエータ70へ電流を供給しない。これにより、シェイク振動発生時には、弾性体26及びダイヤフラム50の変形に伴って内容積が変化する受圧液室37及び副液室44の中の液体がオリフィス46を介して相互に流動し、このオリフィス空間に生ずる液体流動の粘性抵抗及び液柱共振等に基づく減衰作用で振動エネルギーが吸収され、シェイク振動を効果的に吸収することができる。
【0038】一方、コントローラ80は、エンジンから比較的高い周波数域の振動であるアイドル振動が発生するアイドル振動発生時であると判断すると、エンジンから伝達される振動に対応させて電磁アクチュエータ70を駆動させる。これにより、アイドル振動発生時には、通過抵抗が大きいシェイク振動吸収用のオリフィス46には目詰まりが生じて、弾性体26の変形に伴って受圧液室37内の液体圧力が変化しようとするが、電磁アクチュエータ70によりメンブラン54を往復動させることにより、受圧液室37の液体圧力の変化を抑えることができ、アイドル振動を効果的に吸収できる。
【0039】具体的には、コントローラ80はアイドル振動発生時であると判断すると、以下のように電磁アクチュエータ70を制御する。
【0040】防振装置10にエンジンからのアイドル振動が入力されて、頂板金具28が図2の矢印D方向に下降する時には、クランク信号により頂板金具28の下降を検出したコントローラ80は、電磁アクチュエータ70へ駆動電流を供給して駆動壁56及びメンブラン54を下降させる。これにより、頂板金具28が下降する時には、弾性体26の変形と共に受圧液室37の内容積が縮小して液圧が上昇しようとするが、メンブラン54が下降して受圧液室37の内容積を拡張するので、受圧液室37内の圧力変化が抑えられる。また頂板金具28が図3の矢印U方向に上昇する時には、クランク信号により頂板金具28の上昇を検出したコントローラ80は、電磁アクチュエータ70への駆動電流の供給を停止して駆動壁56及びメンブラン54を上昇させる。これにより、頂板金具28が上昇する時には、弾性体26の変形と共に受圧液室37の内容積が拡張して液圧が低下しようとするが、メンブラン54が上昇して受圧液室37の内容積を縮小するので、この時にも受圧液室37内の圧力変化が抑えられる。この結果、エンジンからのアイドル振動のエネルギーを受圧液室37内の液体により効率よく吸収できるので、車体側へのアイドル振動の伝達を効果的に抑制できる。
【0041】以上説明した本実施形態の防振装置10によれば、駆動壁56の受圧面積とメンブラン54の受圧面積との比に応じて駆動壁56の振幅が拡大されてメンブラン54に伝達されるので、電磁アクチュエータ70により駆動壁56を往復動させる際の振幅が小さくても、駆動壁56の受圧面積をメンブラン54の受圧面積の3倍程度にすれば、大ストロークの大型のアクチュエータを用いることなく、メンブラン54を往復動させる際の振幅を十分大きくできるので、受圧液室37内の液体に十分大きい圧力変化を生じさせることが可能になる。この結果、エンジンからの振動入力時に受圧液室37内の液圧変化を十分抑えることができ、車体側への振動伝達を効果的に抑制できる。
【0042】また、本実施形態の防振装置10では、駆動壁54及びメンブラン54を往復動させるためのアクチュエータとしてロッド等の摺動部品がない電磁アクチュエータ70を用いているので、アクチュエータの性能低下や故障等に起因する防振能力の低下が生じ難く、装置の信頼性を向上できる。
【0043】なお、上記の説明では、コントローラ80がシェイク振動発生時であると判断すると、電磁アクチュエータ70へ電流を供給しないものとしたが、シェイク振動と同時に、入力することがある比較的高い周波数で微小振幅の振動を効果的に吸収するために、シェイク振動発生時にも、アイドル振動発生時と同様にシェイク振動と同時に入力する微小振幅の振動に対応させて電磁アクチュエータ70を駆動し、メンブラン54を往復動させるようにコントローラ80により電磁アクチュエータ70を制御するようにしてもよい。
【0044】また本実施形態の防振装置10では、駆動壁56の受圧面積をメンブラン54の受圧面積の約3倍としたが、この駆動壁56の受圧面積とメンブラン54の受圧面積との比は、本実施形態における約3倍に限定されるものではなく、電磁アクチュエータ70による吸引板68に対する吸引力に余裕があれば、さらにメンブラン54の受圧面積に対して駆動壁56の受圧面積を大きすることも可能である。
【0045】また本実施形態の防振装置10では、アイドル振動の入力時に電磁アクチュエータ70を駆動してメンブラン54を受圧液室37に対する容積拡縮方向へ移動させる場合のみを説明したが、これはオリフィス46がシェイク振動吸収用であることを考慮したものであり、アイドル振動とは異なる周波数域の振動が入力する場合にも、このアイドル振動とは異なる周波数域の振動、例えば、こもり音等に対応させて電磁アクチュエータ70を駆動して前記振動を吸収することも可能である。
【0046】また本実施形態の防振装置10では、流体封入室62内には受圧液室37内に封入された液体と同一種類の液体を封入したが、流体封入室62内には受圧液室37内に封入された液体とは異なる種類の流体を封入してもよく、この流体には空気等の気体も含まれる。但し、流体封入室62内へ気体を封入する場合には、液体に比べて気体は圧縮性が高いことから、メンブラン54の剛性が高いときには駆動壁56の振幅に対するメンブラン54の振幅の拡大率が小さくなる。
【0047】また本実施形態の電磁アクチュエータ70には、コア72の上面中央部に吸引板68に対して磁力を作用させる永久磁石74が配置されていたが、この永久磁石74に代えてコイルを配置し、このコイル及びコア72によりコイル76の内周側に第2の電磁石を構成し、この第2の電磁石により電磁アクチュエータ70の作動時に吸引板68へ常に磁力を作用させるようにしてもよい。また吸引板68を永久磁石により形成し、電磁アクチュエータ70により交番磁界を作用させて吸引板68を軸方向へ往復動させるようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように本発明の防振装置によれば、大型のアクチュエータを用いることなく可動壁を高い周波数域で振動させると共に振幅を十分大でき、かつ経時的な防振性能の低下を抑制できる。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成10年12月2日(1998.12.2)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2000−170825(P2000−170825A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−343134