トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 防振支持装置
【発明者】 【氏名】青木 和重

【要約】 【課題】小型軽量化を図って設計自由度を高め、副流体室の容積変動を大きくすることで防振性能を安定させることが可能な防振支持装置を提供する。

【解決手段】高さ寸法を大きくしていない第1筒状部材34の外周に、ダイアフラム42を外部から閉塞するダイアフラムカバー36を装着する。このダイアフラムカバーは、ゴム材などの弾性体により形成した筒体である。そして、流体共振時に主流体室の容積の減少によって主流体室側から副流体室40に流体が流れ込んでくると、ダイアフラムが環状空間より外側の径方向外方に膨出しようとする際に、ダイアフラムカバーも弾性変形してダイアフラムの膨出を許容するので、副流体室の容積を確実に増大させる。これにより、主流体室の容積変動と同時に副流体室も所望の容積で変動するので、主流体室及び副流体室間の流体移動が確実に行われ、良好な防振効果を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 振動体側及び支持体側の間に支持弾性体を介在し、前記振動体側又は前記支持体側の一方と前記支持弾性体との間を、軸心が振動体支持方向を向き且つ軸心方向の一部に縮径部を形成した第1筒状部材を介して結合し、前記第1筒状部材を第2筒状部材で外嵌して前記縮径部の外周面と前記第2筒状部材の内周面との間に環状空間を画成し、前記第2筒状部材に開口部を形成し、この開口部を閉塞して前記環状空間内の径方向内方に膨出するようにダイアフラムを配設し、前記第1筒状部材の内側と前記支持弾性体の内周面とで囲まれた空間を主流体室とし、前記縮径部に前記主流体室及び前記ダイアフラムに向けて連通する連通開口部を形成して当該連通開口部をオリフィスとし、前記オリフィスに対向して前記ダイアフラムの一部に囲まれた領域を容積可変の前記副流体室として画成し、前記主流体室、前記オリフィス及び前記副流体室に流体を封入するとともに、前記主流体室の隔壁の一部を形成し且つその流体室の容積を変化させる方向に変位可能な可動部材と、この可動部材を前記方向に変位させるアクチュエータとを備えた防振支持装置において、前記第1筒状部材の外周に、前記ダイアフラムを外部から閉塞するダイアフラムカバーを装着し、且つ、当該ダイアフラムカバーを、前記ダイアフラムが前記環状空間より外側の径方向外方に膨出しようとする際に、前記ダイアフラムの膨出を許容しつつ自身も径方向外方に変形する構造としたことを特徴とする防振支持装置。
【請求項2】 前記ダイアフラムカバーを、前記第1筒状部材の外周に沿って装着したゴム材などの弾性体からなる筒体により形成したことを特徴とする請求項1記載の防振支持装置。
【請求項3】 前記ダイアフラムカバーを、前記第1筒状部材の外周に沿って拡径或いは縮径自在な拡縮筒部が位置している合成樹脂などの可撓性部材からなる筒体により形成したことを特徴とする請求項1記載の防振支持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば車両のエンジン等の振動体を車体等の支持体に防振しつつ支持する装置に関し、特に、特に、流体がオリフィスを通過する際に発生する減衰力を利用して防振効果を得るとともに、支持弾性体によって画成された流体室の容積を積極的に変化させることにより能動的な支持力を発生することができる防振支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の先行技術としては、例えば本出願人が先に提案した特開平9−250590号公報に記載したものがある。即ち、特開平9−250590号公報の防振支持装置を、図7を参照して説明すると、この防振支持装置1は、例えばエンジン等の振動体側に固定される平板状の固定部材2を有し、この固定部材2の上面にはエンジンへの取り付け用のボルト2aが一体に設けられていて、この固定部材2の裏面には、支持弾性体3の上面中央部が加硫接着されている。
【0003】支持弾性体3は、その中央部が周縁部よりも上方に盛り上がって内面に断面山形状の空洞部3aが形成されている。この支持弾性体3の薄肉形状とした下端部は、中間筒4の内周面に加硫接着により結合されている。中間筒4は、小径筒部4aを形成して外周側に環状凹部を設けた部材であり、図示しないが、小径筒部4cに開口部を形成して中間筒4の内側及び外側が連通している。中間筒4の外側に嵌合している外筒5は、周面に形成した開口部5aの縁部にダイアフラム6が結合しており、このダイアフラム6は開口部5aを閉塞しながら中間筒4の環状凹部に向けて膨出している。
【0004】また、中間筒4の内側に嵌合しているオリフィス構成部材7は、中間筒4の小径筒部4aより小径に形成した最小径筒部7aと、最小径筒部7aの上部から径方向外方に向けて延在する環状の上部平坦部7bと、最小径筒部7aの下部から径方向外方に向けて延在する環状の下部平坦部7cとを備えた部材であり、中間筒4の内周面との間に環状空間が画成されている。
【0005】そして、支持弾性体3、中間筒4、外筒5、ダイアフラム6及びオリフィス構成部材7の一体部品を装置ケース8の下端開口部から内部に挿入し、上端かしめ部8aに中間筒4及び外筒5の上部を当接させた状態で装置ケース8上部に配設されている。
【0006】また、装置ケース8の下部には、シールリング9、可動部材10と一体化した板ばね11、ギャップ保持リング12、電磁アクチュエータ13、荷重センサ14が順次組み込まれており、これら部品の組み込みが完了した後に、装置ケース8の下端開口部を蓋部材15で閉塞して装置ケース8の下端部を径方向内方に向けてかしめていくことにより、上記部品が装置ケース8内に内蔵される。
【0007】そして、支持弾性体3の空洞部3aからダイアフラム6が膨出している空間までの連通路に油等の流体が封入されているが、支持弾性体3の空洞部3aからオリフィス構成部材7と中間筒4の間の環状空間までの連通路を主流体室とすると、中間筒4に形成した開口部の近傍をオリフィスとし、ダイアフラム6に囲まれながら前記開口部に対向している領域を副流体室とした流体共振系が形成されている。
【0008】そして、この防振支持装置1は、前記流体共振系のオリフィスを通じての主流体室及び副流体室間の流体の移動が可能な比較的低周波数の振動入力に対しては、オリフィス内の流体共振による防振支持装置となる。一方、前記オリフィスを通じての流体の移動が不可能になる比較的高周波数の振動が入力した場合には、その振動入力による流体の圧力変動が相殺される様な制御信号を電磁アクチュエータ13に供給して可動部材10を変位させることにより流体室内の容積を変化させた(実際には変化させないようにして)防振支持装置となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前記防振支持装置1においては、アイドル振動等の比較的低周波数の振動入力に対して良好な防振効果を得るためには、主流体室の大きな容積変動に追従して副流体室の容積も大きく変動させ、オリフィス近傍の流体をスティック状態とせずに主流体室及び副流体室間の流体移動が確実に行わなければならない。そのためには、副流体室の容積を決定しているダイアフラム6が弾性変形する領域を大きくして副流体室の容積を大きくしなければならない。
【0010】ところが、この防振支持装置1は、装置ケース8がダイアフラム6の外周側を囲んでおり、副流体室に流体が流れ込むことによりダイアフラム6が径方向外方に脹らんで容積を拡大しようとしても、ダイアフラム6が装置ケース8の内壁に張り付いた時点で副流体室の容積拡大が阻止されてしまう。そのため、上記構造の防振支持装置1は、外筒5の高さ寸法H1 を大きくし、大きな開口面積の開口部5aに大形状のダイアフラム6を結合して副流体室の容積を大きく設定していた。
【0011】しかし、外筒5の高さ寸法H1 を大きくすると、防振支持装置1全体の高さが高くなるとともに装置重量が大きくなり、レイアウト条件が厳しくなり設計の自由度が無くなる等の問題が発生してしまう。本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、装置の小型軽量化を図って設計自由度を高めるとともに、副流体室の容積変動を大きくすることで防振性能を安定させることが可能な防振支持装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、振動体側及び支持体側の間に支持弾性体を介在し、前記振動体側又は前記支持体側の一方と前記支持弾性体との間を、軸心が振動体支持方向を向き且つ軸心方向の一部に縮径部を形成した第1筒状部材を介して結合し、前記第1筒状部材を第2筒状部材で外嵌して前記縮径部の外周面と前記第2筒状部材の内周面との間に環状空間を画成し、前記第2筒状部材に開口部を形成し、この開口部を閉塞して前記環状空間内の径方向内方に膨出するようにダイアフラムを配設し、前記第1筒状部材の内側と前記支持弾性体の内周面とで囲まれた空間を主流体室とし、前記縮径部に前記主流体室及び前記ダイアフラムに向けて連通する連通開口部を形成して当該連通開口部をオリフィスとし、前記オリフィスに対向して前記ダイアフラムの一部に囲まれた領域を容積可変の前記副流体室として画成し、前記主流体室、前記オリフィス及び前記副流体室に流体を封入するとともに、前記主流体室の隔壁の一部を形成し且つその流体室の容積を変化させる方向に変位可能な可動部材と、この可動部材を前記方向に変位させるアクチュエータとを備えた防振支持装置において、前記第1筒状部材の外周に、前記ダイアフラムを外部から閉塞するダイアフラムカバーを装着し、且つ、当該ダイアフラムカバーを、前記ダイアフラムが前記環状空間より外側の径方向外方に膨出しようとする際に、前記ダイアフラムの膨出を許容しつつ自身も径方向外方に変形する構造とした。
【0013】また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の防振支持装置において、前記ダイアフラムカバーを、前記第1筒状部材の外周に沿って装着したゴム材などの弾性体からなる筒体により形成した。さらに、請求項3記載の発明は、請求項1記載の防振支持装置において、前記ダイアフラムカバーを、前記第1筒状部材の外周に沿って拡径或いは縮径自在な拡縮筒部が位置している合成樹脂などの可撓性部材からなる筒体により形成した。
【0014】
【発明の効果】請求項1記載の発明によると、流体共振時に主流体室の容積の減少によって主流体室側から副流体室に流体が流れ込んでくると、ダイアフラムは環状空間内の膨出が減少するように変形して副流体室の容積が増大していく。そして、ダイアフラムが環状空間より外側の径方向外方に膨出しようとすると、ダイアフラム野外側に装着されているダイアフラムカバーは、ダイアフラムの膨出を許容しつつ自身も径方向外方に膨出(変形)するので、副流体室の容積がさらに増大していく。
【0015】このように、本発明では、ダイアフラムカバーがダイアフラムとともに径方向外方に変形することで副流体室の容積を増大させており、主流体室の容積変動と同時に副流体室も所望の容積で変動するので、主流体室及び副流体室間の流体移動が確実に行われ、良好な防振効果を得ることができる。
【0016】また、本発明は、第2筒状部材の高さ寸法を大きくしなくても、副流体室の容積を増大することができるので、防振支持装置全体の高さを低く設定して装置の小型化を図り、設計自由度を高めることができる。また、請求項2記載の発明によると、ダイアフラムが環状空間より外側の径方向外方に膨出しようとすると、ゴム材などの弾性体からなるダイアフラムカバーが弾性変形してダイアフラムの膨出を許容するので、副流体室の容積を確実に変動させることができる。
【0017】また、ダイアフラムカバーは軽量部材なので、防振支持装置の小型軽量化を図ることができる。さらに、請求項3記載の発明によると、ダイアフラムが環状空間より外側の径方向外方に膨出しようとすると、ダイアフラムカバーの拡縮筒部が拡径してダイアフラムの膨出を許容するので、副流体室の容積を確実に変動させることができる。
【0018】また、ダイアフラムカバーは合成樹脂などの可撓性部材からなる軽量部材なので、防振支持装置の小型軽量化を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る防振支持装置を搭載した車両の概略側面図である。この車両の構成を説明すると、横置きに搭載したエンジン(振動体)17が、車体前後方向の後方に配置した防振支持装置20を介して、サスペンションメンバ等から構成される車体(支持体)18に支持されている。なお、実際には、エンジン17及び車体18間には、防振支持装置20の他にエンジン17及び車体18間の相対変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジンマウントも介在している。受動的なエンジンマウントとしては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常のエンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウントインシュレータ等が適用できる。
【0020】前述した防振支持装置は、図2に示すように、上部に小径筒部43aを形成した円筒状の装置ケース43を有しており、前記小径筒部43aと、円筒下端を内周側に折曲して形成した下部かしめ部43bとの間の内部に以下に述べるマウント部品が収納されている。
【0021】装置ケース43内の上方には、ゴム材にて構成した支持弾性体32が配置されており、この支持弾性体32にエンジン側連結部材30が埋設状態で固定されている。このエンジン側連結部材30には上方に突出する連結ボルト30aが設けられている。この連結ボルト30aは防振支持装置20の軸心P1 位置に配設され、この連結ボルト30aにエンジン(図示せず)がねじ締結によって固定されている。
【0022】また、支持弾性体32の下部は下方に向かうに従って径を大きくした円錐筒状に形成されており、この円錐筒状の下側端面が前述した装置ケース43の小径筒部43aの内面に固定されている。支持弾性体32は後述する主液室84の隔壁の一部として構成され、流体室84の液圧によって弾性バネとしてバネ定数が可変となる。
【0023】前記小径筒部43aは、同一外周径とした上端筒部43a1 及び下端筒部43a2 の間に縮径部43a3 を連続して形成した部材であり、この小径筒部43aの外周側に、互いの間に環状空間を設けるように外筒34が嵌合している。外筒34はダイアフラム開口部34aが形成されており、このダイアフラム開口部34aを閉塞し、外筒34の内側(環状空間)に向けて膨出するようにゴム製の膜状弾性体からなるダイアフラム42が固着されている。ここで、ダイアフラム42の外縁部は、図3にも示すように、ダイアフラム開口部34aのすぐ近くの内周面34bに薄膜42aが固着しており、外筒34を小径筒部43aの外周側に嵌合する際に、前記薄膜42aが外筒34と、上端及び下端筒部43a1、43a2 の間に介在して外気との液密が保持されている。
【0024】また、装置ケース43の小径筒部43aの外周には、外筒34全体を包み込んで小石などの飛散物がダイアフラム42に衝突するのを防止するためのダイアフラムカバー36が装着されており、このダイアフラムカバー36とダイアフラム42との間に空気室42cが画成されている。
【0025】すなわち、前記ダイアフラムカバー36は、ゴム材により形成した弾性体であり、外筒34の上部及び小径筒部43aの上端筒部43a1 を上部から閉塞する環状部36aと、環状部36aの外周縁部から垂下して下部の内周面が外筒34の下部に当接している円筒状のカバー部36bとを備えている。ここで、カバー部36bの下部は、弾性収縮した状態で外筒34の下部に当接している。
【0026】そして、ダイアフラム42と小径筒部43aとの間の領域が副液室40となっており、この副液室40はダイアフラム42の形状変化によってその容積が可変となる。また、図2に示すように、小径筒部43aの内周側には内筒37が固定されており、この内筒37と小径筒部43aとの間の領域がアイドル共振用オリフィス45となっている。このアイドル共振用オリフィス45は、小径筒部43aに形成した第1開口部(図示せず)を介して副液室40に連通している。また、内筒37の内周側で、前記支持弾性体32の内周面や後述する隔壁形成部材78A及びシール部材86に囲まれた領域に主液室84が設けられている。この主液室84とアイドル共振用オリフィス45とは、内筒37に形成した第2開口部37dを介して連通している。
【0027】つまり、主液室84及び副液室40とはアイドル共振用オリフィス45を介して連通しており、双方の室84、40及びアイドル共振用オリフィス45内には液体が封入されている。主液室84の容積変化(液圧変化)によって液体がアイドル共振用オリフィス45を介して双方の室84、40を流出入し、これによって振動がダンピングされる。
【0028】また、装置ケース43の下方位置の内周に嵌合しているスペーサ70は、円筒形状の上部筒体70a及び下部筒体70bと、これらを連結するゴム製の薄膜弾性体からなるダイアフラム70cとで構成されている。そして、上部筒体70の内周側に、上から順にリング状のシールリング72、バネ支持リング74及びギャップ保持リング76が嵌合している。スペーサ70はこれらリング72、74、76や後述するヨーク52aに対して軸心P1 への位置決めを行っている。
【0029】前記リング72、74、76の内側には可動部材78が配設されており、この可動部材78は、隔壁形成部材78Aと、この隔壁形成部材78Aの下部にねじ締結されている磁路形成部材78Bとで構成されている。隔壁形成部材78Aは、外周端部を上方に折曲した円板部材であり、この部材の外周とシールリング72との間の全周に、リング状に形成されたゴム製のシール部材86が介在している。これにより、隔壁形成部材78Aとシール部材86によって主液室84の下方が画成されているとともに、隔壁形成部材78Aの上下方向の変位がシール部材86の弾性変形で許容されている。
【0030】磁路形成部材78Bは、隔壁形成部材78Aより大径な円板部材であり、上部中央に凸部78B1 が形成されている。そして、凸部78B1 を隔壁形成部材78Aの下面に当接してねじ締結すると、隔壁形成部材78Aと磁路形成部材78Bとの間にくびれ空間79が設けられる。
【0031】ここで、磁路形成部材78Bの配置スペースは、ギャップ保持リング76によって設定され、また、磁路形成部材78Bの上下方向の変位は、ストッパ部材78Cがバネ支持リング74、または後述するヨーク52aに突き当たることによってそれぞれ上方又は下方の変位が規制される。
【0032】図中符号82は、中心部が切り欠かれた円板状の板ばねであり、この板ばね82は、隔壁形成部材78Aと磁路形成部材78Bとの間のくびれ空間79に配置されている。この板ばね82の外周部下面はバネ支持リング74に当接し、板ばね82の上面は隔壁形成部材78Aの下面に当接している。つまり、可動部材78は、後述する電磁アクチュエータ52の通電による磁力が作用しない状態では主液室84の液体の重量や後述する永久磁石52cの磁力等と板ばね82のバネ力とが釣り合う中立位置に位置する。
【0033】図中符号52は電磁アクチュエータであり、この電磁アクチュエータ52は、、装置ケース43内部の下部に配置したヨーク52aと、ヨーク52aの上面に配置した永久磁石52cと、ヨーク52aの上面に臨む位置で永久磁石の52cの外周側にリング状に配置した励磁コイル52bとで構成されている。
【0034】ヨーク52aは、上ヨーク部材53aと下ヨーク部材53bとを組み合わせた部材であり、上ヨーク部材53aの上面外周端部はギャップ保持リング76の下面に当接している。また、上ヨーク部材53aと下ヨーク部材53bとの外周面には凹部52dが形成されており、この凹部52dに前述したダイアフラム70cが配置されている。
【0035】ダイアフラム70cと装置ケース43との間には空気室70dが画成されており、この空気室70dは装置ケース43に設けた空気孔(図示せず)を介して外気と連通している。また、ダイアフラム70cとヨーク52aとの間にも空気室70eが画成されており、この空気室70eは磁路形成部材78Bとヨーク52aとの間のギャップ空間71と連通している。そして、可動部材78の変位に追従してダイアフラム70cが変動し、このダイアフラム70cの変動によって前述したギャップ空間71の圧力変動が防止されて可動部材78の移動がスムーズに行われるようになっている。
【0036】永久磁石52cは円板状を有し、その上面がギャップ空間71を介して磁路形成部材78Bの下面に対向している。永久磁石52cの磁力は上下方向を向いており、この磁力線はギャップ空間71を介して磁路形成部材78Bに入る。磁路形成部材78Bに入った磁力線は、磁路形成部材78Bの外周端より出て、ギャップ空間71及びギャップ保持リング76を介してヨーク52aに戻る磁気回路となる。
【0037】励磁コイル52bには、図1に示したコントローラ25から駆動電流が供給されるようになっており、励磁コイル52bへの通電によって永久磁石52cの磁力と逆方向の磁力が発生すると可動部材78は液体の圧力等に抗して上方に移動し、永久磁石52cの磁力と同方向の磁力が発生すると可動部材78は板ばね82のバネ力に抗して下方に移動する。
【0038】図中符号64で示す荷重センサは、ヨーク52aとこの下方に配置した蓋部材62との間に配置されており、圧電素子,磁歪素子,歪ゲージ等が使用されている。荷重センサ64は、その中心が軸心P1 に位置するように配置され、荷重センサ64の上面は下ヨーク部材53bの下面中央部に当接している。
【0039】また、蓋部材62は略円板状を有し、その外周端部62aが下ヨーク部材53bに当接している。この蓋部材62には下方に突出する連結ボルト60が固定され、この連結ボルト60に車体18側が締結によって固定される。つまり、荷重センサ64は、ヨーク52aと蓋部材62間に伝達される振動(伝達力)を検出し、この検出結果を残留振動信号e(図1参照)としてコントローラ25に出力する。
【0040】ここで、エンジン17で発生するアイドル振動やこもり音振動は、例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2次成分のエンジン振動が車体18に伝達されることが主な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期して駆動信号yを生成し出力すれば、車体側振動の低減が可能となる。そこで、本実施の形態では、エンジン17のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転する度に一つの)インパルス信号を生成し基準信号xとして出力するパルス信号生成器19(図1参照)を設けていて、その基準信号xが、コントローラ25に供給される。
【0041】コントローラ25は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,RAM等の記憶媒体等を含んで構成されている。このコントローラ25は、図1に示すように、供給される残留振動信号e及び基準信号xに基づき、逐次更新型の適応アルゴリズムの一つである同期式Filtered−X LMSアルゴリズムを実行することにより、エンジン17で発生する振動を低減できる能動的な支持力が防振支持装置20に発生する駆動信号yを演算して防振支持装置20に出力し、電磁アクチュエータ52の励磁コイル52bが前記駆動信号yに応じた所定の電磁力を発生するになっている。
【0042】具体的には、コントローラ25は、フィルタ係数Wi (i=0,1,2,…,I−1:Iはタップ数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、最新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリング・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力する一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新する処理を実行するようになっている。
【0043】適応ディジタルフィルタWの更新式は、Filtered−X LMSアルゴリズムに従った下記の(1)式のようになる。
i (n+1)=Wi (n)−μRT e(n) ……(1)
ここで、(n),(n+1)が付く項はサンプリング時刻n,n+1における値であることを表し、μは収束係数である。また、更新用基準信号RT は、理論的には、基準信号xを、防振支持装置1の電磁アクチュエータ52及び荷重センサ64間の伝達関数Cを有限インパルス応答型フィルタでモデル化した伝達関数フィルタC^でフィルタ処理した値であるが、基準信号xの大きさは“1”であるから、伝達関数フィルタC^のインパルス応答を基準信号xに同期して次々と生成した場合のそれらインパルス応答波形のサンプリング時刻nにおける和に一致する。また、理論的には、基準信号xを適応ディジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるため、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力しても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ結果になる。
【0044】そして、エンジンの駆動によって振動すると、このエンジンの振動が連結ボルト30aを介して防振支持装置20に伝達される。防振支持装置20は、上記振動が支持弾性体32等にて減衰されるが、減衰されなかった振動伝達力がシールリング72、バネ支持リング74、ギャップ保持リング76を介して振動伝達体であるヨーク52aに伝達されると、荷重センサ64が車体18側に伝わろうとする残留振動信号eを検出する。
【0045】この残留振動信号eが入力したコントローラ25は、車体18側に伝わろうとする振動と同じ周期で且つ位相が逆相の制御振動が防振支持装置20に発生し、車体18への振動の伝達力が“0”となるように(より具体的には、エンジン17側の振動によって防振支持装置20に入力される加振力が、電磁アクチュエータ52の電磁力に得られる制御力で相殺されるように)、駆動信号yが生成し励磁コイル52bに供給される。そして、電磁アクチュエータ52には、励磁コイル52bへの通電に応じた磁力が発生し、この磁力によって主液室84の容量変化で液圧が変化する。この液圧変化により上記伝達力を打ち消すためのキャンセル力が発生し、このキャンセル力で上記伝達力が相殺されて、車体に伝わる力がゼロ又は低減されるようになっている。
【0046】ここで、エンジン17側から防振支持装置20に入力する振動の周波数が車両停車中のアイドル振動周波数の近傍となると、支持弾性体32の拡縮により主流体室84内の容積が変動する。この主流体室84内の容積変動により、主流体室84及び副流体室40間の流体移動による流体共振が発生する。
【0047】図4は、流体共振時に主流体室84の容積の減少によって主流体室84側から副流体室40に流体が流れ込んでくる際のダイアフラム42及びダイアフラムカバー36の形状を示しており、ダイアフラム42は径方向外方に変形して副流体室40の容積を増大させていき、このダイアフラム42がダイアフラムカバー36の内周面に当接すると、ダイアフラムカバー36を内側から押圧してダイアフラムカバー36を外側に弾性変形させながら副流体室40の容積をさらに増大させていく。
【0048】また、主流体室84の容積の増大によって副流体室40の流体が主流体室84側に流れ出ると、図3に示すように、ダイアフラム42が小径筒部43a側に膨出して副流体室40の容積が減少するとともに、ダイアフラムカバー36も初期の形状に戻る。
【0049】このように、ダイアフラム42は、ダイアフラムカバー36を外側に弾性変形させながら自身も径方向外方に脹らむことで副流体室40の容積を増大させており、主流体室84の容積変動と同時に副流体室40も所望の容積で変動するので、アイドル共振用オリフィス45内の流体がスティック状態とならず、主流体室84及び副流体室40間の流体移動が確実に行われてアイドル振動に対して高動バネ定数、高減衰力を与えることができ、良好な防振効果を得ることができる。
【0050】また、本実施形態の防振支持装置20は、ダイアフラムカバー36を外筒34全体を包み込むように装着して外筒34の高さ寸法H2 を大きくせずに副流体室40の容積を増大させており、防振支持装置1全体の高さを低く設定して小型化を図っているので、設計自由度を高めることができる。
【0051】また、ゴム材からなるダイアフラムカバー36は軽量部材なので、防振支持装置20の軽量化も図ることができる。次に、図5及び図6に示すものは、上述したダイアフラムカバー36の第2実施形態を示すものである。
【0052】本実施形態のダイアフラムカバー90は、合成樹脂により形成されており、外筒34の上部及び小径筒部43aの上端筒部43a1 を上部から閉塞する環状部90aと、蛇腹形状の胴部90bと、下外筒34の下部を覆っている下端円筒部90cとを備えている。
【0053】上記構成のダイアフラムカバー90を使用すると、流体共振時に主流体室84の容積の減少によって主流体室84側から副流体室40に流体が流れ込んでくると、図6に示すように、ダイアフラム42は径方向外方に変形して副流体室40の容積を増大させていくが、このダイアフラム42がダイアフラムカバー90の内周面に当接すると、ダイアフラムカバー90は胴部90bの蛇腹形状が延びた状態となる。これにより、ダイアフラム36はさらに径方向外方に変形していき、副流体室40の容積がさらに増大していく。
【0054】また、主流体室84の容積の増大によって副流体室40の流体が主流体室84側に流れ出ると、図5に示すように、ダイアフラム42が小径筒部43a側に膨出して副流体室40の容積が減少するとともに、ダイアフラムカバー90の胴部90bも初期の蛇腹形状に戻る。
【0055】このように、ダイアフラム42は、ダイアフラムカバー90の胴部90bの蛇腹形状を延ばして径方向外方に脹らむことで副流体室40の容積を増大させており、主流体室84の容積変動と同時に副流体室40も所望の容積で変動するので、アイドル共振用オリフィス45内の流体がスティック状態とならず、主流体室84及び副流体室40間の流体移動が確実に行われてアイドル振動に対して高動バネ定数、高減衰力を与えることができ、良好な防振効果を得ることができる。
【0056】また、本実施形態の防振支持装置20は、ダイアフラムカバー90を外筒34全体を包み込むように装着して外筒34の高さ寸法H2 を大きくせずに副流体室40の容積を増大させており、防振支持装置1全体の高さを低く設定して小型化を図っているので、設計自由度を高めることができる。
【0057】また、合成樹脂材からなるダイアフラムカバー90は軽量部材なので、防振支持装置20の軽量化も図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成10年12月7日(1998.12.7)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外3名)
【公開番号】 特開2000−170824(P2000−170824A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−347135