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【発明の名称】 防振支持装置
【発明者】 【氏名】青木 和重

【要約】 【課題】小型化を図りながら副流体室の容積を大きくすることで防振性能を安定させるとともに、封入した流体の放熱機能を備えた防振支持装置を提供する。

【解決手段】振動体側又は前記支持体側の一方と前記支持弾性体との間を、軸心が振動体支持方向を向くように筒状の収納体に結合し、この収納体の内部に主流体室、可動部材及びアクチュエータを配置する。また、副流体室40及びオリフィス通路38を前記収納体の外部に配置する。そして、前記オリフィス通路を流体管で構成して主流体室と副流体室との間に接続する。ここで、前記副流体室を、流体ケース20Bの内部空間を膜状弾性体からなるダイアフラム46で2つの部屋に仕切り、これら部屋の一方を、前記流体管と連通させて流体を封入し、且つ、前記ダイアフラムの拡張方向ばねにより容積が可変となる流体室として形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 振動体及び支持体間に介在する支持弾性体と、この支持弾性体と前記振動体間の相対変位に応じて容積が変化する主流体室と、容積可変の副流体室と、前記主流体室及び前記副流体室とを連通させるオリフィス通路と、これら主流体室、副流体室及びオリフィス通路内に封入された流体と、前記主流体室の容積を変化させる方向に変位可能な可動部材と、この可動部材を変位させるアクチュエータと、を備えた防振支持装置において、前記振動体側又は前記支持体側の一方と前記支持弾性体との間を、軸心が振動体支持方向を向くように筒状の収納体に結合し、この収納体の内部に前記主流体室、前記可動部材及び前記アクチュエータを配置するとともに、前記副流体室及びオリフィス通路を前記収納体の外部に配置し、前記オリフィス通路として構成する流体管を、前記主流体室と前記副流体室とが連通するように接続したことを特徴とする防振支持装置。
【請求項2】 前記主流体室、前記オリフィス通路及び前記副流体室間の流体移動による流体共振系の減衰が最大となる周波数を、前記振動体側で発生する比較的大振幅の周波数に一致又は略一致させたことを特徴とする請求項1記載の防振支持装置。
【請求項3】 流体ケースの内部空間を膜状弾性体からなるダイアフラムで2つの部屋に仕切り、これら部屋の一方を、前記流体管と連通させて流体を封入し、且つ、前記ダイアフラムの拡張方向ばねにより容積が可変となる流体室とし、当該流体室を前記副流体室としたことを特徴とする請求項1又は2記載の防振支持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば車両のエンジン等の振動体を車体等の支持体に防振しつつ支持する装置に関し、特に、流体がオリフィスを通過する際に発生する減衰力を利用して防振効果を得るとともに、支持弾性体によって画成された流体室の容積を積極的に変化させることにより能動的な支持力を発生することができる防振支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の先行技術としては、例えば本出願人が先に提案した特開平9−250590号公報に記載したものがある。即ち、特開平9−250590号公報の防振支持装置を、図4を参照して説明すると、この防振支持装置1は、例えばエンジン等の振動体側に固定される平板状の固定部材2を有し、この固定部材2の上面にはエンジンへの取り付け用のボルト2aが一体に設けられていて、この固定部材2の裏面には、支持弾性体3の上面中央部が加硫接着されている。
【0003】支持弾性体3は、その中央部が周縁部よりも上方に盛り上がって内面に断面山形状の空洞部3aが形成されている。この支持弾性体3の薄肉形状とした下端部は、中間筒4の内周面に加硫接着により結合されている。中間筒4は、小径筒部4aを形成して外周側に環状凹部を設けた部材であり、図示しないが、小径筒部4cに開口部を形成して中間筒4の内側及び外側が連通している。中間筒4の外側に嵌合している外筒5は、周面に形成した開口部5aの縁部にダイアフラム6が結合しており、このダイアフラム6は開口部5aを閉塞しながら中間筒4の環状凹部に向けて膨出している。
【0004】また、中間筒4の内側に嵌合しているオリフィス構成部材7は、中間筒4の小径筒部4aより小径に形成した最小径筒部7aと、最小径筒部7aの上部から径方向外方に向けて延在する環状の上部平坦部7bと、最小径筒部7aの下部から径方向外方に向けて延在する環状の下部平坦部7cとを備えた部材であり、中間筒4の内周面との間に環状空間が画成されている。
【0005】そして、支持弾性体3、中間筒4、外筒5、ダイアフラム6及びオリフィス構成部材7の一体部品を装置ケース8の下端開口部から内部に挿入し、上端かしめ部8aに中間筒4及び外筒5の上部を当接させた状態で装置ケース8上部に配設されている。
【0006】また、装置ケース8の下部には、シールリング9、可動部材10と一体化した板ばね11、ギャップ保持リング12、永久磁石及び電磁コイルを備えた電磁アクチュエータ13、荷重センサ14が順次組み込まれており、これら部品の組み込みが完了した後に、装置ケース8の下端開口部を蓋部材15で閉塞して装置ケース8の下端部を径方向内方に向けてかしめていくことにより、上記部品が装置ケース8内に内蔵される。
【0007】そして、支持弾性体3の空洞部3aからダイアフラム6が膨出している空間までの連通路に油等の流体が封入されているが、支持弾性体3の空洞部3aからオリフィス構成部材7と中間筒4の間の環状空間までの連通路を主流体室とすると、中間筒4に形成した開口部の近傍をオリフィスとし、ダイアフラム6に囲まれながら前記開口部に対向している領域を副流体室とした流体共振系が形成されている。
【0008】そして、この防振支持装置1は、前記流体共振系のオリフィスを通じての主流体室及び副流体室間の流体の移動が可能な比較的低周波数の振動入力に対しては、オリフィス内の流体共振による防振支持装置となる。一方、前記オリフィスを通じての流体の移動が不可能になる比較的高周波数の振動が入力した場合には、その振動入力による流体の圧力変動が相殺される様な制御信号を電磁アクチュエータ13に供給して可動部材10を変位させることにより流体室内の容積を変化させた(実際には変化させないようにして)防振支持装置となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、アイドル振動等のように比較的大振幅の振動低減に有効な流体共振を発生させるには、容積の大きな副流体室を設ける必要がある。しかし、上述した防振支持装置1は、主流体室の外側に副流体室を設けた構造としているので、副流体室の容積を増大すると装置の高さ寸法や外径寸法が大きくなって装置の大型化につながってしまう。このため、搭載スペース上の制約が大きい車両にあっては、大きな減衰力を発生することができる防振支持装置を適用することが困難であるという問題がある。
【0010】また、防振支持装置1は、エンジンの近くに配置するため装置の使用環境が高温状態となって主流体室及び副流体室に封入した流体も高温となりやすい。ここで、含水率が高い通常の流体を使用すると、高温時に流体内にスラッジ等の不純物が発生して流体が早期に劣化してしまうので、現状では含水率を略ゼロとした高品質の流体を使用している。しかし、高品質の流体を使用すると装置コスト高の面で問題があり、流体の高温状態を抑制する改善策が望まれていた。
【0011】そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、小型化を図りながら副流体室の容積を大きくすることで防振性能を安定させるとともに、封入した流体の放熱機能を備えた防振支持装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、振動体及び支持体間に介在する支持弾性体と、この支持弾性体と前記振動体間の相対変位に応じて容積が変化する主流体室と、容積可変の副流体室と、前記主流体室及び前記副流体室とを連通させるオリフィス通路と、これら主流体室、前記副流体室及びオリフィス通路内に封入された流体と、前記主流体室の容積を変化させる方向に変位可能な可動部材と、この可動部材を変位させるアクチュエータとを備えた防振支持装置において、前記振動体側又は前記支持体側の一方と前記支持弾性体との間を、軸心が振動体支持方向を向くように筒状の収納体に結合し、この収納体の内部に前記主流体室、前記可動部材及び前記アクチュエータを配置するとともに、前記副流体室及びオリフィス通路を前記収納体の外部に配置し、前記オリフィス通路として構成する流体管を、前記主流体室と前記副流体室とが連通するように接続した装置である。
【0013】また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の防振支持装置において、前記主流体室、前記オリフィス通路及び前記副流体室間の流体移動による流体共振系の減衰が最大となる周波数を、前記振動体側で発生する比較的大振幅の周波数に一致又は略一致させた。
【0014】さらに、請求項3記載の発明は、流体ケースの内部空間を膜状弾性体からなるダイアフラムで2つの部屋に仕切り、これら部屋の一方を、前記流体管と連通させて流体を封入し、且つ、前記ダイアフラムの拡張方向ばねにより容積が可変となる流体室とし、当該流体室を前記副流体室とした。
【0015】
【発明の効果】請求項1から3記載の防振支持装置によると、支持弾性体、主流体室、可動部材及びアクチュエータを配置している収納体の外部に副流体室を設けたので、収納体の高さ寸法や外径寸法が小さくなって小型化を図ることができ、搭載スペース上の制約が大きい車両であっても容易に搭載することができる。
【0016】また、主流体室内の流体が高温状態となっても、この主流体室の流体がオリフィス通路を介して副流体室に流れ込む際に、流体の熱量が外部に放出されていく。したがって、主流体室の流体を常に冷却することができるので、通常の流体(含水率が高い流体)を使用しても流体の早期の劣化を防止することができ、装置コストの低減化を図ることができる。
【0017】また、請求項2記載の防振支持装置によると、収納体の外部に設けたオリフィス通路としての流体管を、内部断面積や管長を適宜選択して前記主流体室及び副流体室の間に接続すればよいので、最適な流体共振が発生するように容易にチューニング作業を行うことができる。
【0018】さらに、請求項3記載の防振支持装置によると、流体ケース内の副流体室の容積を可能な限り増大させることで、オリフィス通路内の流体がスティック状態とならずに主流体室及び副流体室の間に流体共振を確実に発生させ、良好な防振効果を得ることができる。また、流体ケースが、高温状態となった流体の熱量を大気に放出する放熱部材として機能するので、流体の冷却効果をさらに高めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る防振支持装置を搭載した車両の概略側面図である。本実施形態の防振支持装置20は、横置に搭載したエンジン(振動体)16の車体前後方向に一対配設されており、上部がエンジン16に固定したブラケット17に、下部が車体に固定したメンバ(支持体)18に取り付けられている装置本体20Aと、流体ホース22を介して装置本体20Aと接続し、ブラケット17上に固定されている流体ケース20Bとで構成されている。
【0020】なお、実際には、エンジン17及びメンバ18間には、前記防振支持装置20の他にエンジン17及び車体間の相対変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジンマウントも介在している。受動的なエンジンマウントとしては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常のエンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウントインシュレータ等が適用できる。
【0021】防振支持装置20の装置本体20Aは、図2に示すように、円筒状の装置ケース43を有し、この装置ケース43の上端と下端とを内周側に折曲して上部かしめ部43a、下部かしめ部43bが形成されており、この上部かしめ部43a及び下部かしめ部43bによって以下に述べるマウント部品が装置ケース43内部に収納されている。
【0022】装置ケース43内の上方には、ゴム材にて構成した支持弾性体32が配置されており、この支持弾性体32にエンジン側連結部材30が埋設状態で固定されている。このエンジン側連結部材30には上方に突出する連結ボルト30aが設けられており、この連結ボルト30aに、前述したブラケット17がねじ締結によって固定されている。
【0023】支持弾性体32の下部は下方に向かうに従って径を大きくした円錐筒状を有しており、この円錐筒状の下側端面が内筒36の内面に固定されている。支持弾性体32は主流体室84の隔壁の一部として構成され、主流体室84の液圧によって弾性バネとしてバネ定数が可変となる。
【0024】ここで、エンジン側連結部材30及び支持弾性体32の軸心位置には貫通孔35が形成されており、この貫通孔34の上部に固定したホース継手37に流体ホース38が接続し、前記主流体室84及び流体ホース38が連通している。また、装置ケース43の下方位置の内周に嵌合しているスペーサ70は、その上部に内筒36の下端が当接している。このスペーサ70は、円筒形状の上部筒体70a及び下部筒体70bと、これらを連結するゴム製の薄膜弾性体からなるダイアフラム70cとで構成されており、上部筒体70の内周側に、上から順にリング状のシールリング72、バネ支持リング74及びギャップ保持リング76が嵌合している。スペーサ70はこれらリング72、74、76や後述するヨーク52aに対して軸心P1 への位置決めを行っている。
【0025】前記リング72、74、76の内側には可動部材78が配設されており、この可動部材78は、隔壁形成部材78Aと、この隔壁形成部材78Aの下部にねじ締結されている磁路形成部材78Bとで構成されている。隔壁形成部材78Aは外周端部を上方に折曲した円板部材であり、この部材の外周とシールリング72との間の全周に、リング状に形成されたゴム製のシール部材86が介在している。これにより、隔壁形成部材78Aとシール部材86によって主流体室84の下方が画成されているとともに、隔壁形成部材78Aの上下方向の変位がシール部材86の弾性変形で許容されている。
【0026】また、磁路形成部材78Bは、上部中央に凸部を形成した隔壁形成部材78Aより大径な円板部材であり、前記凸部を隔壁形成部材78Aの下面に当接してねじ締結することにより、隔壁形成部材78Aの下部との間にくびれ空間79を設けて一体化される。なお、磁路形成部材78Bの外周端部の全周は、弾性体からなるストッパ部材78Cで覆われている。
【0027】そして、磁路形成部材78Bの配置スペースは、ギャップ保持リング76によって設定され、また、磁路形成部材78Bの上下方向の変位は、ストッパ部材78Cがバネ支持リング74、または後述するヨーク52aに突き当たることによってそれぞれ上方又は下方の変位が規制される。
【0028】図中符号82は、くびれ空間79に配設されている円板状の板ばねである。この板ばね82の外周部下面はバネ支持リング74に当接し、板ばね82の上面は隔壁形成部材78Aの下面に当接している。つまり、可動部材78は、後述する電磁アクチュエータ52の通電による磁力が作用しない状態では主流体室84の流体の重量や後述する永久磁石52cの磁力等と板ばね82のバネ力とが釣り合う中立位置に位置する。
【0029】図中符号52は電磁アクチュエータであり、この電磁アクチュエータ52は、、本体ケース43の下部に配置したヨーク52aと、ヨーク52aの上面に配置した永久磁石52cと、ヨーク52aの上面に臨む位置で永久磁石の52cの外周側にリング状に配置した励磁コイル52bとで構成されている。
【0030】ヨーク52aは、上ヨーク部材53aと下ヨーク部材53bとを組み合わせた部材であり、上ヨーク部材53aの上面外周端部はギャップ保持リング76の下面に当接している。また、上ヨーク部材53aと下ヨーク部材53bとの外周面には凹部52dが形成されており、この凹部52dに前述したダイアフラム70cが配置されている。
【0031】ダイアフラム70cと本体ケース43との間には空気室70dが画成されており、この空気室70dは本体ケース43に設けた空気孔(図示せず)を介して本体ケース43の外部と連通している。また、ダイアフラム70cとヨーク52aとの間にも空気室70eが画成されており、この空気室70eは磁路形成部材78Bとヨーク52aとの間のギャップ空間71と連通している。そして、可動部材78の変位に追従してダイアフラム70cが変動し、このダイアフラム70cの変動によって前述したギャップ空間71の圧力変動が防止されて可動部材78の移動がスムーズに行われるようになっている。
【0032】永久磁石52cは円板状を有し、その上面がギャップ空間71を介して磁路形成部材78Bの下面に対向している。永久磁石52cの磁力は上下方向を向いており、この磁力線はギャップ空間71を介して磁路形成部材78Bに入る。磁路形成部材78Bに入った磁力線は、磁路形成部材78Bの外周端より出て、ギャップ空間71及びギャップ保持リング76を介してヨーク52aに戻る磁気回路となる。
【0033】励磁コイル52bには、図示しないコントローラから駆動電流が供給されるようになっており、励磁コイル52bへの通電によって永久磁石52cの磁力と逆方向の磁力が発生すると可動部材78は流体の圧力等に抗して上方に移動し、永久磁石52cの磁力と同方向の磁力が発生すると可動部材78は板ばね82のバネ力に抗して下方に移動する。
【0034】図中符号64で示す荷重センサは、ヨーク52aとこの下方に配置した蓋部材62との間に配置されており、圧電素子,磁歪素子,歪ゲージ等が使用されている。荷重センサ64は、その中心が軸心P1 に位置するように配置され、荷重センサ64の上面は下ヨーク部材53bの下面中央部に当接している。
【0035】また、蓋部材62は略円板状を有し、その外周端部62aが下ヨーク部材53bに当接している。この蓋部材62には下方に突出する連結ボルト60が固定され、この連結ボルト60にメンバ18がねじ締結によって固定される。一方、ブラケット17上に固定されている流体ケース20Bは、開口部の外周に設けた鍔部42a、44aを当接し、これらを係合部材45で固定することにより内部空間を形成しているカップ形状の上ケース42及び下ケース44と、外周が鍔部42a、44aの間に挟まれて保持され、撓んだ状態となりながら内部空間を上下に仕切って配設されているゴム製の膜状弾性体からなるダイアフラム46と、下ケース44の底部に形成された貫通孔47及び流体注入口48とを備えている。また、貫通孔47にホース継手37が固定され、このホース継手37に装置本体20Aから延在している流体ホース38が接続されている。
【0036】そして、流体注入口48から油等の流体を注入し、流体ホース38を介して連通している装置本体20Aの主流体室84、流体ホース38及びダイアフラム46の下部空間に流体を封入した後に、流体封入口48に栓49を装着する。これにより、ダイアフラム46の下部空間が副液室40となり、ダイアフラム46の形状変化によって副液室40の容積が可変となるとともに、流体ホース38内がアイドル共振用オリフィス(以下、アイドル共振用オリフィス38と称する。)となり、主液室84及び副液室40がアイドル共振用オリフィス38を介して連通する流体共振系が形成されている。この流体共振系の特性、すなわち、アイドル共振用オリフィス38内の流体の質量と、支持弾性体32の拡張方向ばねと、副流体室40のダイアフラム46の拡張方向ばねとで決まる特性は、エンジン16が発生する比較的大振幅のアイドル振動時に高動バネ定数、高減衰力を示すように調整されている。
【0037】ここで、エンジン16で発生するアイドル振動やこもり音振動は、例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2次成分のエンジン振動が車体に伝達されることが主な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期して駆動信号yを生成し出力すれば、車体側振動の低減が可能となる。そこで、本実施の形態では、エンジン16のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転する度に一つの)インパルス信号を生成し基準信号xとして出力するパルス信号生成器16a(図1参照)を設けていて、その基準信号xがコントローラ25に供給される。
【0038】また、装置本体20Aの荷重センサ64は、車体の振動状況を荷重の形で検出し、残留振動信号e1 、e2 としてコントローラ25に出力する。コントローラ25は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,RAM等の記憶媒体等を含んで構成されており、供給される残留振動信号e1 、e2 及び基準信号xに基づき、逐次更新型の適応アルゴリズムの一つである同期式Filtered−X LMSアルゴリズムを実行することにより、エンジン16で発生する振動を低減できる能動的な支持力が防振支持装置20に発生可能な駆動信号y1 、y2 を演算して各防振支持装置20に出力し、電磁アクチュエータ52の励磁コイル52bが前記駆動信号y1 、y2 に応じた所定の電磁力が発生するようになっている。
【0039】具体的には、コントローラ25は、フィルタ係数Wi (i=0,1,2,…,I−1:Iはタップ数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、最新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリング・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力する一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新する処理を実行するようになっている。
【0040】適応ディジタルフィルタWの更新式は、Filtered−X LMSアルゴリズムに従った下記の(1)式のようになる。
i (n+1)=Wi (n)−μRT e(n) ……(1)
ここで、(n),(n+1)が付く項はサンプリング時刻n,n+1における値であることを表し、μは収束係数である。また、更新用基準信号RT は、理論的には、基準信号xを、防振支持装置1の電磁アクチュエータ52及び荷重センサ64間の伝達関数Cを有限インパルス応答型フィルタでモデル化した伝達関数フィルタC^でフィルタ処理した値であるが、基準信号xの大きさは“1”であるから、伝達関数フィルタC^のインパルス応答を基準信号xに同期して次々と生成した場合のそれらインパルス応答波形のサンプリング時刻nにおける和に一致する。また、理論的には、基準信号xを適応ディジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるため、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力しても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ結果になる。
【0041】そして、エンジンの駆動によって振動すると、このエンジンの振動が連結ボルト30aを介して防振支持装置20に伝達される。防振支持装置20は、上記振動が支持弾性体32等にて減衰されるが、減衰されなかった振動伝達力がシールリング72、バネ支持リング74、ギャップ保持リング76を介して振動伝達体であるヨーク52aに伝達されると、荷重センサ64が車体18側に伝わろうとする残留振動信号e1 、e2 を検出する。
【0042】この残留振動信号e1 、e2 が入力したコントローラ25は、メンバ18側に伝わろうとする振動と同じ周期で且つ位相が逆相の制御振動が防振支持装置20に発生し、メンバ18側への振動の伝達力が“0”となるように(より具体的には、エンジン16側の振動によって防振支持装置20に入力される加振力が、電磁アクチュエータ52の電磁力に得られる制御力で相殺されるように)、駆動信号y1 、y2 が生成し励磁コイル52bに供給される。そして、電磁アクチュエータ52には、励磁コイル52bへの通電に応じた磁力が発生し、この磁力によって主流体室84の容量変化で液圧が変化する。この液圧変化により上記伝達力を打ち消すためのキャンセル力が発生し、このキャンセル力で上記伝達力が相殺されて、車体に伝わる力がゼロ又は低減されるようになっている。
【0043】ここで、エンジン16側から防振支持装置20に入力する振動の周波数が車両停車中のアイドル振動周波数の近傍となると、支持弾性体32の拡縮により主流体室84内の容積が変動する。この主流体室84内の容積変動により、主流体室84及び副流体室40間の流体移動による流体共振が発生する。
【0044】図3の二点鎖線で示すダイアフラム46は、流体共振時に主流体室84の容積の減少によって主流体室84の流体がアイドル共振用オリフィス38を介して副流体室40に流れ込んでくる場合の変形状態を示しており、この場合には、ダイアフラム46が流体ケース20B内の上部空間側に大きく変形して副流体室40の容積を増大させている。
【0045】また、主流体室84の容積の増大によって副流体室40の流体が流体がアイドル共振用オリフィス38を介して主流体室84に流れ出ると、ダイアフラム46が下ケース44側に大きく変形して副流体室40の容積が減少する。このように、流体ケース20B内の副流体室40の容積を増大させることで、アイドル共振用オリフィス38内の流体がスティック状態とならずに主流体室84及び副流体室40の間で流体共振が確実に発生するので、アイドル振動に対して高動バネ定数、高減衰力を与えることができ、良好な防振効果を得ることができる。
【0046】また、本実施形態の防振支持装置20は、副流体室40を装置本体20Aに対して別体(流体ケース20B)に設けたことにより、副流体室40の容積を大きくしても、装置本体20Aの高さ寸法や外径寸法が小さくなって小型の装置となるので、搭載スペース上の制約が大きい車両であっても容易に搭載して大きな減衰力を発生することができる。
【0047】また、アイドル共振用オリフィス(流体ホース)38を装置本体20Aに対して別体に設けたことから、所定の内部断面積やホース長の流体ホース38を適宜選択して接続することによって流体共振系の共振周波数を簡単にチューニングすることができる。
【0048】さらに、本実施形態では、装置本体20Aから離れた位置に設置した流体ケース20Bが、内部(副流体室40)の流体の熱を大気に放熱することが可能な放熱部材として機能している。これにより、若し、主流体室84内の流体が高温状態となっていても、この主流体室84内の流体がアイドル共振用オリフィス(流体ホース)38を介して流体ケース20B内の副流体室40に流れ込むと、流体の熱量が流体ケース20Bに伝熱した後に大気中に放出される。したがって、主流体室84の流体を常に冷却することができ、通常の流体(含水率が高い流体)を使用しても早期の劣化を防止することができるので、装置コストの低減化を図ることができる。
【0049】なお、本実施形態のように流体ケース20Bをブラケット17上に設置したのは一例であり、他の風通しの良い車両位置に流体ケース20Bを設置すると、さらに流体の放熱効果を高めることができる。また、本実施形態では、車両前後方向に配置した一対の防振支持装置20のそれぞれに連結する流体ケース20Bを設けたが、一対の防振支持装置20に共通して連結する一つの流体ケースを設け、その流体ケース内に2つの副流体室40を設けても、同様の作用効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成10年12月8日(1998.12.8)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外3名)
【公開番号】 特開2000−170822(P2000−170822A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−349010