トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 ポリオレフィン樹脂組成物
【発明者】 【氏名】松田 祐之

【氏名】原 正雄

【氏名】安達 大三郎

【要約】 【課題】人間、使用環境等を考慮しつつ、衝撃吸収性能を高めることができるポリオレフィン樹脂組成物を提供する。

【解決手段】ポリオレフィン樹脂組成物は、MFRが16(g/10分)より大なるポリプロピレン又はプロピレンーエチレンブロック共重合体からなる成分Aと、エチレン系ゴムからなる成分Bと、成分Bと相容する成分Dとからなる。そして、成分Aと成分Bと成分Dとの和に対する該成分A中のプロピレンーエチレン共重合部と該成分Bと該成分Dとの和の割合が、25重量%以上45重量%以下であり、成分Bの配合量と成分Dの配合量との和に対する該成分Dの配合量の割合が、0.8未満とされている。これにより、曲げ弾性率と引張破断伸びとを所望の領域に入れるようにしつつ、引張破断伸びを向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 メルトフローレート(MFR)が16(g/10分)より大なるポリプロピレン又はプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる成分(A)と、エチレン系ゴムからなる成分(B)と、前記成分(B)と相容する成分(D)とからなり、前記成分(A)と前記成分(B)と前記成分(D)との和に対する該成分(A)中のプロピレン−エチレン共重合部と該成分(B)と該成分(D)との和の割合が、25重量%以上45重量%以下であり、前記成分(B)の配合量と前記成分(D)の配合量との和に対する該成分(D)の配合量の割合が、0.8未満とされている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】 請求項1において前記成分(A)のメルトフローレート(MFR)が、45(g/10分)より大である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】 請求項1又は2において前記成分(A)のタクティシティが、93以上である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかにおいて前記成分(B)が、少なくともスチレン骨格とエチレン骨格との両方を含む共重合体である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】 請求項4において前記成分(B)が、プロピレン骨格を含む、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】 請求項5において前記成分(B)が、スチレン−エチレン−プロピレンの3元共重合体である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項7】 請求項4において前記成分(B)が、ブチレン骨格を含む、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項8】 請求項7において前記成分(B)が、スチレン−エチレン−ブチレンの3元共重合体である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかにおいて前記成分(B)が、エチレンを含むα−オレフィン共重合体を含んでいる、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項10】 請求項9において前記α−オレフィン共重合体のゴム硬さが、JIS Aで73以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項11】 請求項9において前記α−オレフィン共重合体のゴム硬さが、JIS Aで55以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項12】 請求項9において前記α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)が、8.6(g/10分)以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項13】 請求項9において前記α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)が、0.5(g/10分)以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項14】 請求項4〜8のいずれかにおいて、前記成分(B)の共重合体のメルトフローレート(MFR)が、0.5(g/10分)以上140(g/10分)以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項15】 請求項4〜8のいずれかにおいて、前記成分(B)の共重合体中のスチレン骨格含有量が、該成分(B)に対して13重量%以上35重量%未満である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項16】 請求項1〜15のいずれかにおいて、前記成分(D)が芳香族ビニル重合体である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項17】 請求項16において、前記成分(D)としての芳香族ビニル重合体が芳香族ビニル共重合体である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項18】 請求項16において、前記成分(D)のメルトフローレート(MFR)が、6(g/10分)以上である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項19】 請求項16において、前記成分(D)がポリスチレンである、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項20】 請求項17において、前記成分(D)が、アクリロニトリル−ブチレン−スチレン共重合体である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項21】 請求項17において、前記成分(D)が、変性ポリフェニレンエーテルである、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項22】 請求項17において、前記成分(D)が、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項23】 請求項1〜22のいずれかにおいて、前記(D)を前記成分(B)が取り囲みそれらが前記成分(A)中に分散された微細構造を有している、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項24】 請求項1〜23のいずれかにおいて、前記成分(A)における混合前の粘度に対する前記成分(B)における混合前の粘度の比(成分(B)の粘度/成分(A)の粘度)が、2.6〜10である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項25】 請求項24において、前記成分(B)における混合前の粘度に対する前記成分(D)における混合前の粘度の比(成分(D)の粘度/成分(B)の粘度)が、0.4以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項26】 請求項1〜25のいずれかにおいて、クロロホルムを用いるソックスレー分別により抽出残成分と抽出成分とに分別し、前記抽出成分を、メチルエチルケトンを用いる溶解分別により、メチルエチルケトン不溶成分とメチルエチルケトン可溶成分とに分別し、前記メチルエチルケトン可溶成分を、ヘキサンを用いる溶解分別により、ヘキサン可溶成分とヘキサン不溶成分とに分別し、前記抽出残成分に対してn−デカンによる加熱溶解分別により、n−デカン可溶成分を分別し、前記ヘキサン不溶成分の極限粘度η1、前記ヘキサン可溶成分と前記メチルエチルケトン不溶成分とを混合した混合物の極限粘度η2、前記n−デカン可溶成分の極限粘度η3を求めたとき、前記n−デカン可溶成分の極限粘度η3に対する前記混合物の極限粘度η2の比η2/η3が、0.6以上0.9以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項27】 請求項1〜26のいずれかにおいて、クロロホルムを用いるソックスレー分別により抽出残成分と抽出成分とに分別し、前記抽出成分を、メチルエチルケトンを用いる溶解分別により、メチルエチルケトン不溶成分とメチルエチルケトン可溶成分とに分別し、前記メチルエチルケトン可溶成分を、ヘキサンを用いる溶解分別により、ヘキサン可溶成分とヘキサン不溶成分とに分別し、前記抽出残成分に対してn−デカンによる加熱溶解分別により、n−デカン可溶成分を分別し、前記ヘキサン不溶成分の極限粘度η1、前記ヘキサン可溶成分と前記メチルエチルケトン不溶成分とを混合した混合物の極限粘度η2、前記n−デカン可溶成分の極限粘度η3を求めたとき、前記混合物の極限粘度η2に対する前記ヘキサン不溶成分の極限粘度η1の比η1/η2が、0.5以下である、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項28】 請求項1において、前記成分(A)として、リサイクルされたポリプロピレン又はプロピレン−エチレンブロック共重合体が含有され、前記成分(D)として、リサイクルされた芳香族ビニル重合体が含有され、前記成分(B)として少なくともスチレン骨格とエチレン骨格との両方を含む共重合体が、含有割合調整材として、含有されている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項29】 請求項1〜28のいずれかにおいて、比表面積が3.5m2/g以上であるタルクが、該タルクを含む全体の30%以下となるように配合されている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項30】 請求項1〜28のいずれかにおいて、曲げ弾性率が0.5GPa以上であり60(1/s)の歪速度における引張破断伸びが80%以上であるように設定されている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項31】 請求項1〜28のいずれかにおいて、曲げ弾性率が0.5GPa以上であり60(1/s)の歪速度における引張破断伸びが145%以上であるように設定されている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項32】 請求項1〜31のいずれかにおいて、人体に作用する力を低減させるエネルギ吸収部材として用いられる、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項33】 請求項32において、前記エネルギ吸収部材が自動車部品に用いられている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項34】 請求項1〜31のいずれかにおいて、板状のリブ部が交差状態をもって一体化されている樹脂製エネルギ吸収体として用いられている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項35】 請求項1〜31のいずれかにおいて、衝突時に人体とぶつかるおそれがある自動車部品に用いられている、ことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、曲げ弾性率との調和を図りつつ高速引張破断伸びに優れた特性を示すポリオレフィン樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近時、人間の保護を図る観点から、種々の個所で衝撃吸収構造が用いられる傾向にある。この衝撃吸収構造は、一般に、樹脂製エネルギ吸収体を備え、その衝撃吸収構造に人間がぶつかっても、樹脂製エネルギ吸収体が、そのときの衝撃エネルギを吸収することになっており、近時、その樹脂製エネルギ吸収体による衝撃エネルギの吸収能力を増大させることが望まれている(例えば、人間のよりよい保護(傷害の低減等)の観点からは、衝突時のつぶれ加速度を小さい状態(速度変化が小さい状態)にしつつ長い時間に亘って衝撃エネルギを吸収できるようにすること)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のように衝撃エネルギの吸収能力を増大させる場合には、樹脂製エネルギ吸収体の厚みを厚くして衝突時の衝突ストロークを増大しなければならず、このことは、衝撃吸収構造の使用(取付け)環境等の低下を招くことになる。
【0004】具体例をもって説明する。上記衝撃吸収構造は、特開平10−129377号公報、特開平10−76893号公報に示すように、衝突する可能性がありその衝突に伴って乗員(頭部等)がボディにぶつかるおそれがある自動車等のような乗物に適用できるが、乗員のよりよい保護の観点から、樹脂製エネルギ吸収体のつぶれ時の最大加速度を下げようとした場合には、そのつぶれ時の最大加速度を下げて吸収しきれなくなった衝撃エネルギを、樹脂製エネルギ吸収体の厚みを厚くして衝撃吸収ストロークを確保しなければならず、そのような構成は、限られた乗物空間を考慮した場合、採用し難い状況にある。
【0005】一方、特開平8−127298号公報に示すように、衝突時に、樹脂製エネルギ吸収体をつぶすだけでなく、その樹脂製エネルギ吸収体により強度部材としてのピラーを変形させて、衝撃吸収ストロークを増加させる内容が提案されているが、近時、ボディ剛性向上のため、ピラーの肉厚増加、レインフォースメントの追加、ハイテン化等が行われており、上記提案に基づき強度部材としてのピラーをも変形させて衝撃吸収ストロークを増加させることは困難な状況にある。
【0006】本発明はこのような事情に鑑み、衝撃吸収に関し、構造面からの改善には限界があり材料面(樹脂組成物)からの改善を図る必要があるとの認識の下になされたもので、その技術的課題は、人間、使用環境等を考慮しつつ、衝撃吸収性能を高めることができるポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記技術的課題を達成するために本発明(請求項1の発明)にあっては、メルトフローレート(MFR)が16(g/10分)より大なるポリプロピレン又はプロピレンーエチレンブロック共重合体からなる成分(A)と、エチレン系ゴムからなる成分(B)と、前記成分(B)と相容する成分(D)とからなり、前記成分(A)と前記成分(B)と前記成分(D)との和に対する該成分(A)中のプロピレン−エチレン共重合部と該成分(B)と該成分(D)との和の割合が、25重量%以上45重量%以下であり、前記成分(B)の配合量と前記成分(D)の配合量との和に対する該成分(D)の配合量の割合が、0.8未満とされている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【0008】
【発明の効果】請求項1に記載された発明によれば、成分Aのメルトフローレート(MFR)を16(g/10分)より大とすること、成分A、Bの他に、成分Bと相容する成分Dを含有させること、成分Aと成分Bと成分Dとの和に対する該成分A中のプロピレン−エチレン共重合部と該成分Bと該成分Dとの和の割合を25重量%以上45重量%以下とすること、成分Bの配合量と成分Dの配合量との和に対する該成分Dの配合量の割合を0.8未満とすることの各要素等に基づき、或いはその各要素等の結合関係に基づき、引張破断伸びと曲げ弾性率とを所望の領域(例えば、曲げ弾性率0.5GPa以上、歪速度60(1/s)の下で高速引張破断伸びが80%以上の領域)に入るようにしつつ、引張破断伸びを向上させることができることになり、当該オレフィン樹脂組成物を用いたエネルギ吸収部材に基づき、衝突変形初期に発生荷重(つぶれ加速度)を一定レベルまで立ち上げた後、樹脂材料自体の伸びを増加させて衝撃エネルギの吸収量の増加を図ることができ、衝撃吸収ストロークの増大を回避できることになる。このため、当該ポリオレフィン樹脂組成物を用いることにより、人間、使用環境等を考慮しつつ、衝撃吸収性能を高めることができることになる。
【0009】請求項2〜29に記載された発明によれば、その各請求項記載の要素に基づき、所望の領域において、具体的に、曲げ弾性率とのバランスをとりながら引張破断伸びを向上させて、衝撃吸収性能を高めることができることになる。
【0010】請求項30に記載された発明によれば、曲げ弾性率が0.5GPa以上であり60(1/s)の歪速度における引張破断伸びが80%以上であるように設定されていることから、一般的剛性程度の剛性を確保しつつ、通常の場合(曲げ弾性率が0.5GPa以上、60(/s)の歪速度の下で引張破断伸びが30%以下)よりも引張破断伸びを向上させることができることになり、具体的に、人間、使用環境等を考慮しつつ、衝撃吸収性能を高めることができることになる。
【0011】請求項31に記載された発明によれば、曲げ弾性率が0.5GPa以上であり60(1/s)の歪速度における引張破断伸びが145%以上であるように設定されていることから、上記請求項30の場合よりも、一層、衝撃吸収性能を向上させることができることになる。
【0012】請求項32に記載された発明によれば、人体に作用する力を低減させるエネルギ吸収部材として用いられることから、エネルギ吸収部材は、優れた衝撃吸収性能を有することになり、その衝撃吸収性能に基づき、人体を有効に保護することができることになる。
【0013】請求項33に記載された発明によれば、エネルギ吸収部材が自動車部品に用いられていることから、優れた衝撃吸収性能を有することになるエネルギ吸収部材を介して乗員或いは歩行者を有効に保護することができることになる。
【0014】請求項34に記載された発明によれば、板状のリブ部が交差状態をもって一体化されている樹脂製エネルギ吸収体として用いられていることから、単に、重量、使用材料の軽減を図れるだけでなく、衝突変形初期における発生荷重(つぶれ加速度)の立ち上げ、その立ち上げ勾配等の調整を各リブ部により調整でき、さらには、破断し易いリブ部交差部分と、当該樹脂組成物の材料特性とを巧みに利用して、衝撃エネルギの吸収の増加を図ることができることになる。
【0015】請求項35に記載された発明によれば、衝突時に人体とぶつかるおそれがある自動車部品に用いられていることから、衝突があったとしても、優れた衝撃吸収性能に基づき、人体を有効に保護することができることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】先ず、本発明が適用される衝撃吸収構造について説明する。図1は自動車における衝撃吸収構造を示すものである。その図1において、符号1は自動車における各ピラー(ピラーインナ)、符号2はピラートリムであり、その自動車における各ピラー1とピラートリム2との間に、樹脂製エネルギ吸収体3が設けられている。エネルギ吸収体3は、図2、図3に示すように、格子形状の格子状体を形成しており、その格子形状は、板状の複数のリブ部4により構成され、その各リブ部4は、隣り合うリブ部4に対して略直角な配置関係をとるように配設されている。本実施形態においては、このエネルギ吸収体3(各リブ部4の基端部)は、同じ樹脂を用いた一体成形により、各リブ部4がピラートリム2内面から起立するように一体化されており、エネルギ吸収体3の各リブ部4の先端部4aはピラー1に当接されている。このエネルギ吸収体3の形状は、外見上、通常のものと変わりないようにされており、リブ部高さ(ピラートリム2の内面からリブ4先端までの長さ)は15mm程度、リブ部間隔(対向するリブ部間の長さ)は20mm程度、リブ部厚み(肉厚)は1mm程度とされている。
【0018】上記エネルギ吸収体3は、その材質性能として、高速引張破断伸び(伸び率)が、通常の場合(曲げ弾性率が0.5GPa以上であることを前提として、30%程度)よりも高められている。隣り合うリブ部4先端部4aの交差部分(交わる部分)において破断が生じた場合、エネルギ吸収体3に対する発生荷重が大きく落ち込むことに着目し(図7の従来材料線参照)、隣り合うリブ部4に衝撃荷重が加わることに伴い該隣り合うリブ部4を破断させる方向の引張力が作用したとき、各リブ部4が伸びて、隣り合うリブ部4における先端部及び基端部の交差部分において破断が生じることを抑制するためである。これにより、図7(改良材料線参照)に示すように、衝突変形初期に発生荷重(つぶれ加速度)が一定レベルまで立ち上がった後に、発生荷重(加速度)が略一定状態で続く変位(時間)が長くなり、衝撃吸収ストロークを増大させなくても、エネルギ吸収体3による衝撃エネルギの吸収が増加することになる。
【0019】尚、曲げ弾性率の下限としての0.5GPaは、一般的な部材としての要求剛性から導かれるもので、曲げ弾性率が大きくなればなるほど、曲げにくくなる傾向を示すことになる。
【0020】上記内容に関し、より具体的に説明する。高速引張破断伸びが通常とされた材質性能をもって、前記エネルギ吸収体3と同じ格子形状のエネルギ吸収体を形成し、そのエネルギ吸収体にピラートリム2を介して衝撃荷重を加えると、先ず、図4に示すように、エネルギ吸収体3は、圧縮弾性変形を起こし、続いて、図5、図6に示すように、隣り合うリブ部先端部4aの交差部分において、衝撃荷重が加わることに伴って、衝撃荷重の作用方向に対して略直交する方向(図5中、例えば矢印H方向参照)に引張力が作用し、その隣り合うリブ部先端部4aの交差部分は破断すると共に、各リブ部4の平板部4bが座屈変形することになる。このような状態は、図7(従来材料線参照)においては、衝突当初の立ち上がり点までが圧縮弾性変形領域を示し、その点から横軸の端付近までが、隣り合う各リブ部先端部4aにおける交差部分の破断と、各リブ部4における座屈変形の混在領域を示すことになる。
【0021】このような過程における各変形毎に歪速度と歪量とを計測してみると、圧縮弾性変形においては、歪速度が約90(1/s)、歪量が1〜2%を示し、隣り合うリブ部4の交差部分の引張変形(破断)においては、歪速度が1700〜3500(1/s)、歪量が約100%を示し、リブ部4の平板部4bの座屈変形においては、歪速度が約900(1/s)、歪量が30〜40%を示した。このことから、隣り合うリブ部4における交差部分の引張変形(破断)が、衝撃エネルギの吸収に大きく影響を与えるとの認識を得、この破断を抑制すべく、上記歪速度、歪量に基づき、歪速度2000(1/s)の下で高速引張破断伸び100%を得んとしている。
【0022】但し、上記歪速度2000(1/s)の領域は計測が困難である。このため、図8に示すように、図8において、仮目標値として、上記値(歪速度2000(1/s)、高速引張破断伸び(伸び率)を100%)を設定し、その仮目標値を基準として、エネルギ吸収体の一般的素材の傾向を考慮しつつ(歪速度が低下するに従って伸び率が増加する傾向、その傾向程度等(一点鎖線参照))、計測可能な上限としての60(1/s)付近で、伸び率を求め、その値200%程度を、実際に取り扱う目標値とした。
【0023】具体的には、上記高速引張破断伸び(伸び率)を得るべく、配合材料、条件等の観点から種々の実験を行って、図9に示す結果を得、その図9に示す結果により、下記知見(樹脂組成物)を見い出した。尚、この図9において、ホモPPはポリプロピレン、ブロックPPはプロピレン−エチレンブロック共重合体、ランダムPPはプロピレン−エチレンランダム共重合体を示す。
【0024】前記エネルギ吸収体3を構成する樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)が0.4(g/10分)よりも大なるポリプロピレン又はプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる成分Aと、エチレン系ゴムからなる成分Bとからなり、成分Aと成分Bとの和に対する成分A中のプロピレン−エチレン共重合部と成分Bとの和の割合が、25重量%以上45重量%以下とされるのが好ましい。成分Aと成分Bとの和に対する成分A中のプロピレン−エチレン共重合部と成分Bとの和の割合、すなわち{(成分A中のプロピレン−エチレン共重合部)+成分B}/(成分A+成分B)が、25重量%以上45重量%以下としたのは、図10、図11(図9のデータをプロット)に示すように、25%重量未満では高速引張破断伸びを確保することができず、45重量%を越えると、曲げ弾性率(0.5GPa)を確保することができない一方、上記25重量%以上45重量%以下の範囲内の実施例は、曲げ弾性率0.5GPa以上の下で、高速引張破断伸び80%以上を確保することができ、改善が見られる所望領域に入ることができるからである。以下、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとが両立する所望の領域を、曲げ弾性率0.5GPa以上、歪速度60(1/s)の下で高速引張破断伸びが80%以上の領域とする。
【0025】成分AのMFRを0.4(g/10分)よりも大としたのは、図12(図9のデータからプロット)に示すように、成分AのMFRが0.4(g/10分)以下では、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとを、改善が見られる所望の領域で両立させることが困難であるからである。この場合、成分AのMFRが21(g/10分)より大であることが好ましく、MFRが45(g/10分)よりも大きい場合には、より好ましい。図12(図9のデータからプロット)に示すように、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとを所望の領域で両立させつつ、高速引張破断伸びを高めることができるからである。ここで、、MFRは、流れ易さを介して分子量傾向を示すもので、MFRが大きくなればなるほど、低分子量化傾向を示すものである。
【0026】上記成分Aのタクティシティは93以上であることが好ましい。図13(図9中、配合No7、17参照)に示すように、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとを所望領域で両立させつつ、高速引張破断伸びを高めることができるからである。ここで、タクティシティは、立体規則性を示すものであり、NMR(核磁気共鳴)を用いた常法により測定される。
【0027】上記成分Bは、その少なくとも一部が架橋されていることが好ましい。図14(図9中、配合No6、7、16参照)に示すように、成分Bに関し、少なくとも一部が架橋されていれば、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとを所望領域で両立させつつ、高速引張破断伸びを高めることができるからである。
【0028】上記成分Bは、オレフィン系熱可塑性エラストマーで、そのオレフィン系熱可塑性エラストマーのゴム成分がエチレン−プロピレン系3元共重合体であり、そのオレフィン系熱可塑性エラストマー中のゴム成分配合量が、40〜60重量%であることが好ましい。特にこの場合、成分Bが一部架橋されているものは、高速引張破断伸びを高める観点から、より好ましい(図9中、配合No7参照)。
【0029】上記一部架橋された成分Bのゴム硬さは、JIS Aで75以下であることが好ましく、JIS Aで55以下がより好ましい。図15(図9中、配合No8、9、7参照)に示すように、成分Bのゴム硬さが75以下において、そのゴム硬さを小さくすればするほど、所望領域の下で、高速引張破断伸びを高めることができるからである。
【0030】上記成分Bは、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)であることが好ましい。図16(図9の配合No6、21のデータからプロット)に示すように、SEPSは、曲げ弾性率と高速引張破断とが両立する所望領域の下で、他の成分よりも、高速引張破断伸びを高めることができるからである。
【0031】成分Cとして、成分AよりもMFRが10以上大きいポリプロピレンが配合され、その成分Cが、前記成分A、B、Cの和全体に対して5〜20重量%の配合割合で配合されていることが好ましい。図17(図9の配合No19、20のデータからプロット)に示すように、成分Cは、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとが両立する所望領域の下で、高速引張破断伸びを高めることができるからである。この場合、配合量が5重量%未満では効果が出ず、20重量%を越えると、成分AのMFRを単に大きくしたのと同様となって効果はでない。
【0032】比表面積が3.5m2/g以上であるタルクを、該タルクを含む全体の30重量%以下となるように配合するのが好ましく、10重量%〜20重量%とするのが特に好ましい。図18(図9の配合No8、10のデータからプロット)に示すように、タルクは、上記範囲では、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとが両立する所望領域の下で、高速引張破断伸びを高めることができるからである。すなわち、比表面積が3.5m2/g未満の場合、配合がタルクを含む全体の30重量%を越える場合には、高速引張破断伸びは、混ざりにくくなる等の理由により、大きく低下し、また、10重量%未満では曲げ弾性率の向上が少なく、20重量%を越えると、伸びが低下すると共に比重が大きくなってしまうからである。
【0033】また、上記エネルギ吸収体3は、射出成形により形成されている。これは、射出成形時の樹脂流れに基づき低分子量が流れの外側(金型面側)に集まることを利用し、板状体としてのピラートリム2の外側層(車室内側)に低分子量からなる硬い成分を偏在させて、ピラートリム2の曲げ弾性率を高めようとしているのである。これにより、前述の配合成分と補完し合って、図7の改良材料線に示すように、図7の従来材料線に比して、初期発生荷重の立ち上がり勾配を急勾配にすると共に、初期発生荷重を高い状態に維持しつつ変位することができることになる(衝撃エネルギ吸収量の増大)。
【0034】また、上記エネルギ吸収体3は、別の態様として、下記のようなポリオレフィン樹脂組成物を用いても形成することができる。この樹脂組成物も、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とが両立する所望の領域(前述の如く、曲げ弾性率0.5GPa以上、歪速度60(1/s)の下で高速引張破断伸びが80%以上の領域、以下同じ)において、高速引張破断伸び(伸び率)を向上させるべく、種々の配合材料、条件等について実験を行って得られたものであり、その具体的内容は、実験結果を示す図19、図20から導き出されたものである。尚、この図19、図20において、前記図9において用いた略語の定義の他に、SEBSはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、SEPSはスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、SEEPSはスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、PSはポリスチレンを示す。また、図19中、タルクマスターバッチは、タルクとポリプロピレン樹脂とを70:30の割合で混ぜ込んだ樹脂ペレットであり、その割合を考慮して、全体に対するタルク、ポリプロピレン樹脂の割合が算出されている。
【0035】この樹脂組成物は、MFRが16(g/10分)より大なるポリプロピレン又はプロピレンーエチレンブロック共重合体からなる成分Aと、エチレン系ゴムからなる成分Bと、成分Bと相容する成分Dとからなり、成分Aと成分Bと成分Dとの和に対する該成分A中のプロピレンーエチレン共重合部と該成分Bと該成分Dとの和の割合が、25重量%以上45重量%以下であり、成分Bの配合量と成分Dの配合量との和に対する該成分Dの配合量の割合が、0.8未満とされている。高速引張破断伸びと曲げ弾性率とを所望の領域に入るようにしつつ、高速引張破断伸びをできるだけ向上させるためである。以下、具体的に説明する。
【0036】上記成分Aは、そのMFRを16〜120(g/10分)とするのが好ましく、より好ましくは、MFRを45(g/10分)以上とするのがよい。図21、図22に示すように、成分AのMFRを16(g/10分)よりも大きくした場合には、曲げ弾性率が所望の領域内において多少、低下するものの、成分AのMFR16(g/10分)を境にその値が大きくなるにつれて、高速引張破断伸びが増加傾向に転じ、MFRが45(g/10分)以上となると、高速引張破断伸びが高い値で安定することになるからである。一方、成分AのMFRは高いほど好ましいが、成分Aの上限は、一般的に入手できるものの制約に基づき、上述の通り120程度となる。尚、この場合、MFRは、JIS K7210に準じて測定され、その測定条件は、230℃、2.16kgである。
【0037】成分A、Bの他に、成分Bと相容する成分Dを含有させているのは、図23、図24(図19、図20のデータだけでなく図9のデータをも利用してプロット)に示すように、成分Dを含有させた場合の方が、成分Dを含有させない場合に比べて、所望の曲げ弾性率(例えば0.5PGa以上)の下で、高速引張破断伸びを効果的に高めることができるからである。
【0038】成分Aと成分Bと成分Dとの和に対する該成分A中のプロピレンーエチレン共重合部と該成分Bと該成分Dとの和の割合、すなわち、{(成分A中のプロピレン−エチレン共重合部)+成分B+成分D}/(成分A+成分B+成分D)が25重量%以上45重量%以下としたのは、図25に示すように、その割合を増やしていけば、高速引張破断伸びが高まっていく一方、曲げ弾性率が低下することになり、その割合が25重量%以上45重量%以下のときに、図26に示すように、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とを所望の領域で両立させることができるからである。
【0039】成分Bの配合量と前記成分Dの配合量との和に対する該成分Dの配合量の割合、すなわち、成分Dの配合量/(成分Bの配合量+成分Dの配合量)が0.8未満とされているのは、図27に示すように、その割合が0.8未満側へ値が小さくなる方向に進むにつれて、高速引張破断伸びが高まる傾向にあるからである。この場合、図27からも明らかなように、上記割合は、0.1以上0.5以下が望ましい。高速引張破断伸びが高い値領域に存在するだけでなく、その値の範囲において、最も高い高速引張破断伸びが得られるからである。
【0040】上記成分Aのタクティシティは、93以上であることが好ましい。図28、図29(図19、図20中の実施例15、比較例17よりプロット)に示すように、成分Aのタクティシティの増加に伴い、高速引張破断伸びを向上させることができるからである。この場合、この成分Aのタクティシティの値は、NMR(核磁気共鳴)を用いた常法により求められる。
【0041】前記成分Bとしては、少なくともスチレン骨格とエチレン骨格との両方を含む共重合体、すなわち、水素添加スチレン系樹脂エラストマーであるものが好ましい。具体的には、プロピレン骨格を含んで、スチレン−エチレン−プロピレンの3元共重合体(例えばスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、或いはスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS))をなすものや、ブチレン骨格を含んで、スチレン−エチレン−ブチレンの3元共重合体(SEBS)をなすものであってもよい。さらに、成分Bとしては、上記内容成分の他に、エチレンを含むα−オレフィン共重合体を含んでいるものでもよく(例えば、SEPSとα−オレフィン共重合体(非架橋タイプ)とを含むもの等)、その場合、そのエチレンを含むα−オレフィン共重合体は、少なくとも一部が架橋されていてもよい(例えば、SEPSと部分架橋されたα−オレフィン共重合体とを含むもの等)。図30、図31に示すように、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とが、所望の領域内において、バランスよく好ましい値をだすからである。
【0042】上記成分B中に含まれるα−オレフィン共重合体のゴム硬さが、JIS Aで73以下が好ましく、JIS Aで55以下であることがさらに好ましい。図32(図19、図20中の実施例21〜23よりプロット)に示すように、JIS Aで73以下であれば、高速引張破断伸びを高い状態で維持でき、JIS Aで55以下であれば、値が上昇に転じて高速引張破断伸びを一層、高くすることができるからである。一方、α−オレフィン共重合体は、JIS Aで小さければ小さいほど好ましいが、そのゴム硬さの下限は、入手できるものによる制約から、JIS Aで40程度とされる。
【0043】上記成分B中に含まれるα−オレフィン共重合体のMFRは、8.6(g/10分)以下が好ましく、より好ましくは0.5(g/10分)以下であるのがよい。図33(図19、図20中の実施例21〜23よりプロット)に示すように、MFRが8.6(g/10分)以下であれば、高速引張破断伸びを所望の領域内における値に安定して維持でき、MFRを0.5(g/10分)以下とすれば、高速引張破断伸びを上昇に転じて高くすることができるからである。一方、α−オレフィン共重合体のMFRの下限値は、測定法上の理由から、0.05程度と考えられる。この場合のMFRも、JIS K7210に準じて測定され、その測定条件は、230℃、2.16kgである。
【0044】上記成分Bの共重合体のMFRは、0.5〜140(g/10分)の範囲が好ましく、より好ましくは4.5〜50(g/10分)、よりさらに好ましくは12〜20(g/10分)とするのがよい。図34(図19、図20中の実施例15、19、24〜29、比較例15、16よりプロット)に示すように、上記範囲において、高速引張破断伸びに関し、大きい値を得ることができるからである。この場合も、MFRは、JIS K7210に準じて測定され、その測定条件は、230℃、2.16kgである。
【0045】上記成分Bの共重合体中のスチレン骨格含有量が、13重量%以上35重量%未満であることが好ましく、より好ましくは18重量%以上30重量%未満がよく、よりさらに好ましくは22重量%以上25重量%未満とするのがよい。図35(図19、図20中の実施例15、19、24〜29、比較例15、16よりプロット)に示すように、上記範囲で、高速引張破断伸びに関し、大きい値を得ることができ、特に好ましい範囲では、ピーク値を得ることができるからである。
【0046】前記成分Dとしては、芳香族ビニル重合体を用いることができ、具体的には、ポリスチレン(PS)や、芳香族ビニル共重合体であるアクリロニトリル−ブチレン−スチレン共重合体(ABS)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SBS)等を用いるのが好ましい。図36、図37に示すように、いずれの成分も、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とが、所望の領域内において、バランスよく好ましい値をだすからである。
【0047】上記成分DのMFRは、6(g/10分)以上が好ましく、より好ましくは10(g/10分)以上であるのがよい。図38(図19、図20中の実施例15、31、32よりプロット)に示すように、MFRが6(g/10分)以上で、高速引張破断伸びに関し、高い値を得ることができ、MFRが10(g/10分)以上となると、さらに、高速引張破断伸びが高まることになるからである。この場合、MFRは、JIS K7210に準じて測定され、その測定条件は、200℃、5kgである。
【0048】前記Dを前記成分(B)が取り囲んでおり、それらが前記成分(A)中に分散された微細構造となっているものが好ましい。実施例を示す図39(実施例34の顕微鏡写真図(倍率30000倍))、図40(実施例31の顕微鏡写真図(倍率30000倍))と、比較例を示す図41(比較例18の顕微鏡写真図(倍率30000倍))、図42(比較例14の顕微鏡写真図(倍率30000倍))との対比から明らかなように、実施例においては上述のような微細構造を示し、それに基づき、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とに関し、そのような微細構造となっていない比較例に比して、所望の領域内において、バランスよく好ましい値をだすことになるからである。この場合、図39〜図42において、符号Aが成分A、符号Bが成分B、符号Dが成分Dを示している。実施例を示す図39、図40においては、白い部分が成分Aを示し、その成分A中において、成分Bが黒く小さい多数の各塊として分散し、その成分B中に成分Dがグレー部分として存在しており、成分Dを成分Bが取り囲む構造となっている。一方、比較例を示す図41、図42においては、成分Bと成分Dとが独立且つ肥大化して存在する微細構造となっており、実施例に係るような微細構造は得られないことになっている。
【0049】前記成分Aにおける混合前の溶融粘度に対する前記成分Bにおける混合前の溶融粘度の比、すなわち、(成分Bの溶融粘度/成分Aの溶融粘度)は、2.6〜10であることが好ましい。図43(図19、図20中の実施例31、34、比較例14、18よりプロット)に示すように、(成分Bの溶融粘度/成分Aの溶融粘度)は、高速引張破断伸びに関し、ピークを作る特性を示し、上記の範囲で高速引張破断伸びについて好ましい値をだすからである。この場合、粘度は、JIS K7199の下、キャピログラフを用いて、温度200℃、せん断速度364.8(1/s)、キャピラリー径1mmの測定条件で測定したものである。以下、粘度測定においては、同じ測定条件の下、同じ測定方法を用いている。
【0050】前記成分Bにおける混合前の溶融粘度に対する成分Dにおける混合前の溶融粘度の比、すなわち、(成分Dの溶融粘度/成分Bの溶融粘度)は、特に0.4以下であることが好ましい。図44(図19、図20中の実施例15、31、32よりプロット)に示すように、1.2以下であれば、高速引張破断伸びについて所望の値が得られるが、特に0.4以下であれば、高速引張破断伸びを高い値にすることができるからである。一方、この(成分Dの溶融粘度/成分Bの溶融粘度)の下限は、入手できるものによる制約から0.02程度とされている。
【0051】クロロホルムを用いるソックスレー分別により抽出残成分と抽出成分とに分別し、抽出成分を、メチルエチルケトンを用いる溶解分別により、メチルエチルケトン不溶成分とメチルエチルケトン可溶成分とに分別し、メチルエチルケトン可溶成分を、ヘキサンを用いる溶解分別により、ヘキサン可溶成分とヘキサン不溶成分とに分別し、前記抽出残成分に対してn−デカンによる加熱溶解分別により、n−デカン可溶成分を分別し、上記ヘキサン不溶成分の極限粘度η1、上記ヘキサン可溶成分と上記メチルエチルケトン不溶成分とを混合した混合物の極限粘度η2、上記n−デカン可溶成分の極限粘度η3を求めた場合に、n−デカン可溶成分の極限粘度η3に対する前記混合物の極限粘度η2の比、すなわちη2/η3が、0.6以上0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.6より大で且つ0.9未満であるのがよい。図45(図19、図20中の実施例15、26、27よりプロット)に示すように、高速引張破断伸びに関し、0.6〜0.9の範囲では所望の領域に存在しつつピークを作る特性を示すことになるからである。この場合、上記η2/η3が0.6以上0.9以下である関係は、具体的には、前記成分A、B、Dを含んでいる当該ポリオレフィン樹脂組成物が成形品粉砕物又は成形前のペレットである場合において、それを分別したものおいても成立することになっており、上記ヘキサン不溶成分としては、ポリスチレンが主成分となり、ヘキサン可溶成分としては、成分B(SEPS等)が主成分となる。また、上記メチルエチルケトン不溶成分としては、成分B(SEPS等)が主成分となり、上記n−デカン可溶成分としては、ポリプロピレンが主成分となる。
【0052】上記と同じようにして求めた前記ヘキサン不溶成分の極限粘度η1、前記混合物の極限粘度η2、前記n−デカン可溶成分の極限粘度η3については、混合物の極限粘度η2に対する前記ヘキサン不溶成分の極限粘度η1の比、すなわちη1/η2が0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.5未満とするのがよい。図46に示すように、η1/η2が0.5以下であれば、高速引張破断伸びを向上させることができるからである。この場合、下限値は0.05が好ましい。
【0053】当該樹脂組成物は、成分Aとして、リサイクルされたポリプロピレン又はプロピレン−エチレンブロック共重合体が含有され、成分Dとして、リサイクルされた芳香族ビニル重合体が含有され、成分Bとして少なくともスチレン骨格とエチレン骨格との両方を含む共重合体が、含有割合調整材として、含有されていてもよい。これにより、成分A、Dとしてリサイクルされたものが用いられるとしても(ポリプロピレン、芳香族ビニル重合体としてはポリスチレン、アクリロニトリル−ブチレン−スチレン共重合体(ABS)又は変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等)、含有割合調整材としての成分Bが、A、D、Bの含有割合を調整することになり、フレッシュな材料を用いる場合同様、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とを、所望の領域において、両立させることができることになる。
【0054】具体例をもって説明すれば、自動車においては、リサイクル性を考えて、インストルメントパネルの本体及び表皮にポリプロピレン樹脂(成分A)が使用されている一方、空気吹き出し口やスイッチ等にはABS樹脂が使われることが多く、センターパネル等にはABS樹脂又は変性PPE樹脂が使われることが多い。このため、これまでは、リサイクル性に優れているといわれるポリプロピレン製インストルメントパネルであっても、空気吹き出し口やスイッチ、センターパネルといった部品を分離しなくてはならず、解体の時間や費用がかかるという問題があった。しかし、上記のように、成分A、Dとしてリサイクルされたものが用いられるとしても、含有割合調整材としての成分Bが、A、D、Bの含有割合を調整することから、フレッシュな材料を用いる場合同様、本発明として、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とを、所望の領域において、両立させることができることになり、使用用途の拡大を図って、上記問題を解消できることになる。
【0055】この実施態様に係るポリオレフィン樹脂組成物においても、比表面積が3.5m2/g以上であるタルクが、該タルクを含む全体の0〜30重量%の範囲で配合されているのが好ましく、10重量%〜20重量%とするのが特に好ましい。タルクは、上記範囲では、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとが両立する所望領域の下で、高速引張破断伸びを高めることができるからである。すなわち、比表面積が3.5m2/g未満の場合、配合がタルクを含む全体の30重量%を越える場合には、高速引張破断伸びは、混ざりにくくなる等の理由により、大きく低下し、また、10重量%未満では曲げ弾性率の向上が少なく、20重量%を越えると、伸びが低下すると共に比重が大きくなってしまうからである。
【0056】この実施態様に係るポリオレフィン樹脂組成物においては、前述の各要素に基づき或いは各要素の結合関係に基づき、曲げ弾性率が0.5GPa以上であり60(1/s)の歪速度における引張破断伸びが80%以上であるように設定するのが好ましく、さらに、曲げ弾性率が0.5GPa以上であり60(1/s)の歪速度における引張破断伸びが145%以上であるように設定するのがより好ましい。樹脂組成物自体或いはエネルギ吸収体3の構造との協働作用により、所望の衝撃エネルギを的確に吸収するべく、高速引張破断伸びと曲げ弾性率とが両立する所望の領域内において、高速引張破断伸びを高めるためである。
【0057】図47は第2実施形態、図48〜図51は第3実施形態、図52、図53は第4実施形態、図54は第5実施形態を示すものである。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】図47に示す第2実施形態は、前記第1実施形態の変形例を示す。この第2実施形態においては、前記第1実施形態に係る格子形状に代えて、エネルギ吸収体3が波状に形成されており、その波状は、高速引張破断伸びが高められた板状の前記各リブ部4を交差するようにつなぎ合わせることにより得られることになっている。これにより、各リブ部4の交差部分(つなぎ合わせ部分)が、構造として、衝撃荷重に基づき破断しやすくなるけれども、各リブ部4(エネルギ吸収体3)の高速引張破断伸びが高められていることに基づき、各リブ部4の破断が抑制され、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができることになる。
【0059】図48〜図51に示す第3実施形態においては、エネルギ吸収体33が、格子状体35を拘束部材としてのピラートリム32と樹脂製支持板36とにより挟持一体化する構成とされている。
【0060】すなわち、格子状体35は、各リブ部4を隣り合うリブ部4に対して略直角な配置関係をとるように配設することにより格子状に形成されており、その格子状体35は、その各リブ部34がピラートリム32から起立するように一体化されている。この格子状体35とピラートリム32とは、通常用いられる一般的樹脂(一般的なポリプロピレン(曲げ弾性率0.5GPa以上、高速引張破断伸び(伸び率)30%程度))を用いて、射出成形により、同時に形成されることになっている。
【0061】支持板36は、上記格子状体35等と同種の樹脂材を用いて平板状に形成されており、その平板状の支持板36と各リブ部34(格子状体35)先端部(図20中、下側端部)とは、接着剤或いは溶着により、該各リブ部34を挟持するようにして一体化されている。
【0062】このエネルギ吸収体33が自動車(ピラー部分)にセットされた状態において、衝撃荷重が加われば、衝突変形初期において、最も破断し易く且つ破断を進行させる起因となる隣り合うリブ部34先端部及び基端部の交差部分が破断しにくくされたことに基づき、図50、図51の特性線f1に示すように、発生荷重(つぶれ加速度)が一気に大きく立ち上がるが、隣り合うリブ部34先端部及び基端部の交差部分以外の部分、すなわち該先端部と該基端部との間の中央部分における交差部分がその辺を中心として破断を開始して破断空間37を形成することになり(図49参照)、発生荷重(つぶれ加速度)は直ちに低下に転ずることになる。そして、その破断が生じた後は、その破断の進行が、隣り合うリブ部先端部及び基端部の交差部分からの破断の場合に比して遅いことから、発生荷重(つぶれ加速度)は図50の特性線f1に示すように、徐々に低下し、発生荷重(つぶれ加速度)の作用時間(人間が内装材に当接している時間)が増大して衝撃エネルギの吸収を増大させることができることになる。このため、ピラートリム32の張り出しがほとんど変わらない状態で所望の衝撃エネルギを吸収できることになる。尚、図50、図51中、特性線f2は、前記第1実施形態における特性を示す。勿論この場合、支持板36が平板状にされていることは、ピラートリム32の張り出しを抑制するために寄与することになっている。
【0063】図52、図53に示す第4実施形態は、第3実施形態の変形例を示すもので、支持板36と各リブ部34との一体化の別の態様を示すものである。すなわち、支持板36の内面には、各リブ部34の先端部形状に対応した溝38が嵌合部として形成されており、その溝38に各リブ部34先端部が嵌合されることになっている。これにより、接着剤を用いなくても、各リブ部34(格子状体35)を支持板36に簡単に一体化して、各リブ部34の先端部が破断のための引張方向に変形することを確実に拘束できることになる。
【0064】図54に示す第5実施形態は、第3実施形態の変形例を示すもので、支持板36と各リブ部34との一体化のさらに別の態様を示すものである。すなわち、各リブ部34先端部には、隣り合うリブ部34の交差部分近傍において突起部39が突設されている一方、支持板36には、各突起部39に対応して、嵌合孔40がそれぞれ形成されており、その各嵌合孔40に各突起部39が嵌合されている。これにより、突起部39を破断し易い個所近傍に配置して破断を的確に抑制できると共に、支持板36に対する加工を孔形成とし、支持板36に対する加工を容易にすることができることになる。この場合、嵌合孔40をピラー(ピラーインナ)に形成して、支持板36を省いてもよい。これにより、部品点数の低減を図ることができると共に、エネルギ吸収体33とピラーとの強固な一体化に基づき、各リブ部34の先端部が破断のための引張方向に変形することを確実に拘束できることになる。また、嵌合孔40は、貫通孔に限らず、凹所状のものを用いてもよい。
【0065】上記第3〜第5実施形態においては、理解を容易にするために、格子状体35等に、通常用いられる一般的樹脂(一般的なポリプロピレン(曲げ弾性率0.5GPa以上、高速引張破断伸び(伸び率)30%程度))を使用した場合を例にとって説明したが、勿論、前記第1実施形態におけるいずれかの樹脂組成物を用いてもよい。上述の構造だけでなく、樹脂自体の作用によっても、曲げ弾性率と高速引張破断伸びとを向上させることができることになるからである。
【0066】以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
1)本発明を、自動車のボンネット、フェンダ、カウルグリル、フロントピラーの外側等、歩行者の人体(例えば頭部)が当たる部位、ルーフサイド(ルーフサイドトリム、ルーフサイドを覆う天井材)の他、自動車以外の乗物にも適用すること。
2)交差状態とされたリブ部により、ハニカム形状、矩形形状等とすること。
3)ヘルメット等の頭部を保護するものに適用すること。
【出願人】 【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
【出願日】 平成11年7月2日(1999.7.2)
【代理人】 【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
【公開番号】 特開2000−170815(P2000−170815A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平11−188816