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【発明の名称】 可変ばね定数スプリングキット
【発明者】 【氏名】土佐 隆

【要約】 【課題】

【解決手段】スプリング1の一端をオープンエンドとし、これをスパイラル溝部2aを有するアジャスタカラー2にねじ込んで自由高さを調整することにより任意のばね定数が得られるようにしてある。アジャスタカラーの溝部の両側の突部の要所にロック手段取付部を設け、スプリング1のオープンエンドの近傍をロック手段3で固定するすることにより、スプリングとアジャスタカラー2との両者を一体化し、ロック位置に対応してアジャスタカラーの上方に位置するスプリングの高さを自由高さとするばね定数が得られる。車のサスペンションなどに採用すると、スプリング交換に代えてロック位置の調整だけで、しかも多種類のスプリング交換と同様の効果を生じさせることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の線径の線材を所定の平均径及び所定の自由高さを有し、一端をオープンエンドとし、他端をクローズドエンドとしてある圧縮コイルスプリングと、円筒体の外周部に上記オープンエンド側から一端部が進入可能なスパイラル溝部が設けてあり、当該スパイラル溝部の所定位置には複数のロック手段取付部が設けてあるアジャスタカラーと、いずれかの上記ロック手段取付部において上記オープンエンド側の先端部を上記アジャスタカラーにロックするロック手段とを備え、上記ロック手段取付部の位置を選択して上記ロックすることにより所望のばね定数を取得可能としてあることを特徴とする可変ばね定数スプリングキット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車のサスペンション用スプリングのばね定数を単一のばねによって変化可能にするいわゆる可変ばね定数スプリングキットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知の通りスプリングの種類及び用途は多種多様であり、最も重要な機械要素としての地位は揺ぎないものがある。このようなスプリングの中にあって圧縮コイルスプリングは多種の緩衝用または付勢手段ないしは計器の要素として重要な地位を占めている。
【0003】圧縮コイルスプリングで重要な規格として自由高さとばね定数を挙げることができるが、ばね定数は荷重に対する変位の比を示す数値であり、自由高さとも密接な関係を有している。
【0004】ところで圧縮コイルスプリングの用途の1つとして自動車のサスペンションスプリングがある。このサスペンションスプリングは車の走行性や乗り心地を左右する重要な要素となっているが、これらは結局は最適なばね定数を有するサスペンションスプリングを装着してあるか否かによってきまってくるものである。例えば高速車両ならばばね定数を高くすることが望ましく、悪天候の下で走行するときにはばね定数を低くすることが望ましいなどである。
【0005】特に競技用車両はコースの性質に対応してサスペンションスプリングのばね定数を変化させることが要求されている。例えばカーブの多いコースを走行する場合にはばね定数を高くし、ストレートの多いコースを走行する場合にはばね定数を低いものにすることが要求される。したがってレース等に際してはコースに対応したばね定数のサスペンションスプリングに交換して走行している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、サスペンションスプリングの交換作業は手間がかかり面倒である。特にレース中にスプリングの交換をするような場合には時間に追われながらの交換作業となるため、短時間でスプリングの交換を可能にする方策が望まれている。
【0007】そこで本発明の目的は、簡単な作業によりスプリングを交換したのと同様にばね定数を変化させることを可能にしたいわゆる可変ばね定数スプリングキットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の可変ばね定数スプリングキットは以下の手段を採用している。
【0009】本発明は、圧縮コイルスプリングのばね定数の値を定める一要素として、スプリングの自由高さが挙げられることに着目して、ばね定数の変化が要求された時にスプリングの交換に代えて、圧縮コイルスプリングの自由高さを変化させるようにしてあるところに特徴がある。
【0010】圧縮コイルスプリングの自由高さの変化は、コイルスプリングの一端部側をオープンエンドとし、このオープンエンド側から円筒体の外周部にスパイラル溝部が設けてあるアジャスタカラーにねじ込んで、このアジャスタカラーにねじ込まれていない線材の部分の高さを自由高さとするものである。コイルスプリングのアジャスタカラーへのねじ込み量は、スプリングが進入したオープンエンド側の先端部近傍をアジャスタカラーにロックすることにより設定され、これにより自由高さすなわちばね定数が選択される。
【0011】本発明の可変ばね定数スプリングキットは、上記した圧縮コイルスプリングとオープンエンド側の一端部が進入可能なアジャスタカラー及びこのスプリングが所定量だけ進入した位置に固定するロック手段とにより構成される。
【0012】ロック手段は、アジャスタカラーのスパイラル溝部の所定位置にロック手段取付部を介して設けることにより所定値のばね定数が得られるようにしてある。ばね定数の変化を要求された時には、ロック手段を緩めて、圧縮コイルスプリングを回してアジャスタカラーの上に出ている線材の部分の高さすなわち自由高さを調整し、ロック手段でスプリングをアジャスタカラーに固定するだけでスプリングの交換と同様の効果が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態の一例について図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明に係る可変ばね定数スプリングキットは、圧縮コイルスプリング1と、このスプリングと係合可能なアジャスタカラー2及びこのスプリングをアジャスタカラーに固定するロック手段3の三者により構成されている。
【0014】図2に示すように、スプリング1は所定の線径(d)のばね用線材Sを所定のコイル平均径(D)で所定の有効巻数とし、一端部(図面下方)をオープンエンドとし、他端をクローズドエンドとする圧縮コイルスプリングからなる。スプリング1の線材Sの他端部(オープンエンド部)の近傍には、上部側に半月状の凹部1aが形成してある。この凹部1aは後述するように、アジャスタカラーへのロック手段3によるスプリング1の固定を容易にするためのものである。線材Sの表面はショットピーニング加工を施して強化するとともに、任意色の焼付塗装による防食処理を施してある。
【0015】図3に示すように、アジャスタカラー2は、円筒状のアルミニウム合金の外周部に、スプリング1の線材Sのオープンエンド側が進入可能なスパイラル溝部2aが形成してある。このスパイラル溝部2aはスプリング1の線材と同じスパイラルの傾斜角度にしてあり、下端部から上端部近傍まで連続するように形成してある。スパイラル溝部2aの深さは、スプリングの線材Sの径(d)よりもやや浅くしてある。したがってスプリング1をスパイラル溝部に装着するとアジャスタカラーの外周部から、線材の外周部がやや突出した状態となる(図1参照)。
【0016】本発明を自動車用サスペンションスプリングとして用いるものについては、アジャスタカラーの内部を上下に貫通する貫通孔2bを、ショックアブソーバが貫通可能な内径としてある。また内径とスパイラル溝部との間の肉厚は、スプリングに加わる荷重を受けるのに十分な厚さとしてある。アジャスタカラー2の上端部は、スプリングの内径より小さな径の円筒状に形成してなるガイド部2cとしてスプリングの挿入を容易にしてある。
【0017】スパイラル溝部2aの両側の突部2dの外周部には、欠円状の凹部からなるロック手段取付部2eが4か所に設けてある(図3では1か所だけ図示)。取付凹部2eの底面中心部にはめねじ孔2fが設けてある。ロック手段取付部2eは、スパイラル溝部2aに部分的にかかるため下部が欠円状になっている。
【0018】ロック手段3は、上述のロック手段取付部2eに係合可能なフランジ付きスリーブ4と、取付部の底面中心部のめねじ孔2fに螺合してこのスリーブを固定する取付ねじ5とからなる。
【0019】図4に示すように、フランジ付きスリーブ4は、胴部4aの一端部(図4右端)にフランジ部4bが形成してあり、このフランジ部の端面中心部には、取付ねじ5の頭部を収納可能な凹部4cが設けてある。凹部4cの底面中央部には取付ねじ5のねじ部を貫通させる透孔4dが設けてある。上述したスプリング1の凹部1aの曲率半径は、このスリーブの胴部4aの外周の曲率半径とほぼ同一に形成してあり、この胴部4aが部分的に凹部1aに係合した状態でロック手段取付凹部2eに固定されることにより、スプリング1をアジャスタカラー2にロック可能である。
【0020】図5に示すように、取付ねじ5はねじ部5aと円柱状の頭部5bとからなり、頭部の端部には六角レンチを係合可能な六角孔5cが設けてある。
【0021】スプリング1のアジャスタカラー2への固定は、ガイド部2cに沿ってスプリングのオープンエンド側の一端部を挿入し、スプリングを回して線材Sをスパイラル溝部2aの上端から下方へ向けて進入させる。スプリング1の一端部近傍の凹部1aが所定値に設けてあるロック手段取付部2eと対向する位置までスプリングを進入させたら、ロック手段3を用いて両者をロックする。スプリング1のアジャスタカラー2へのロックは、六角レンチを用いて取付ねじ5を回し、スリーブ4を取付凹部2eとスプリングの凹部1aとに係合させることにより行われる(図1参照)。
【0022】このようにして固定されたスプリング1のばね定数は、スプリングが固定されている部分は荷重が作用しても変形しないため、スパイラル溝部2aとスプリングの線材との接触が離れた位置から上の部分の高さ(H)によって定められる。したがって、ばね定数を定める要素となるスプリングの自由高さは、この部分の高さ(H)に対応するものとなる。この形態例では、ロック手段取付部2eが、図3の正面に表れているもののほかいずれも図示されていないが、この図の右側部の1か所及び背部の2か所に設けてある。したがってこれらの4か所のいずれかの取付凹部を選択し、スプリングの凹部1aをこれに合わせてロックすることにより4種類のばね定数が得られることになる。
【0023】ばね定数を切り換える時は、六角レンチで取付ねじを緩めてロック手段を取り外し、スプリング1を回転させ、次いで凹部1aの位置を他のロック位置へ移動させ、再びロック手段で固定すればよい。したがって従来ならばレースの途中でスプリング交換をしなければならない時に、この交換に代えてスプリングのロック位置を変えるだけで済むため、ばね定数を変化させる手間が著しく短縮することができる。
【0024】図6に上述の形態例についてロック手段の取付位置(ロック位置)におけるばね定数の測定結果を示してある。ここではアジャスタカラー2に設けられた取付凹部2eが最も上に位置するものをロック位置1とし、最も下に位置するものをロック位置4としてある。またこの測定は自動車のフロントサスペンションに適用したもので、右(R)及び左(L)を別々に測定した結果を示してある。このグラフによってロック位置が上になる程スプリングの自由高さ(H)が高くなるためこれに対応してばね定数が低くなっていることがわかる。
【0025】表1は、他の形態例についての多数のロック位置におけるばね定数の変化を示すものである。
【0026】
【表1】

この表からも明らかなように、ロック位置を変えるだけで多様なばね定数が得られることを示している。
【0027】なお、本発明は自動車のサスペンション以外の他にも種々の機械要素として採用可能である。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、ロック手段によってスプリングのロック位置を変えるだけで、所望のばね定数が得られる。したがってスプリング交換に代えてロック位置を変化させるだけでよいので、カーレースなど緊急にばね定数の変化を求められる場合に面倒なスプリングの交換を要することなく容易にばね定数を変化させることができる。特にカーレースのコースの途中におけるスプリング交換が容易化するためレースにおける車の整備を迅速に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】398028846
【氏名又は名称】株式会社ジーベック
【出願日】 平成10年12月7日(1998.12.7)
【代理人】 【識別番号】100065709
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 三夫 (外2名)
【公開番号】 特開2000−170810(P2000−170810A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−346887