| 【発明の名称】 |
油圧緩衝器の減衰力調整装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】小島 茂
【氏名】日高 俊彦
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| 【要約】 |
【課題】走行初期には安定した減衰力を発生させる一方、油温が上昇した後は、微低速〜低速域の減衰力をピストン速度に比例して立ち上がらせ、路面のうねり等を通過する際の車体のゆっくりとした揺動を抑制する。
【解決手段】伸側ソフトバルブSVeと圧側ソフトバルブSVcは、伸側ハードバルブと圧側ハードバルブのクラッキング圧より小さく設定され、ピストンロッド1にはバイパス通路と伸側通路及び圧側通路とを下部室に連通する中空孔を設け、中空孔にはバイパス通路の開口面積を選択あるいは遮断するロータリーバルブ103を回動自在に嵌着した油圧緩衝器において、ロータリーバルブには、上部室に開口するバイパス通路を下部室に連通するオリフィス通路103Aとチョーク通路103Bとを円周方向に分離して開設し、ロータリーバルブを回動させることにより、いずれか一方の通路を選択あるいは双方を遮断できるようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】シリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンはシリンダ内を上部室と下部室とに区画し、ピストンには二つの室を連通する伸側ポートと圧側ポートを形成し、伸側ポート下端の下面開口窓には伸側ハードバルブを、また圧側ポート上端の上面開口窓には圧側ハードバルブが開閉自在に対向して設けられ、更にピストン上方には前記ピストンロッドに組み付けられたディスクを設け、このディスクには上部室に開口するバイパス通路と伸側通路及び圧側通路とを形成し、当該伸側通路上端の上面開口窓には伸側ソフトバルブを、また圧側通路下端の下面開口窓には圧側ソフトバルブを開閉自在に設ける一方、当該伸側ソフトバルブと圧側ソフトバルブは、前記伸側ハードバルブと圧側ハードバルブのクラッキング圧よりそれぞれ小さく設定されるとともに、前記ピストンロッドには前記バイパス通路と伸側通路及び圧側通路とを下部室に連通する中空孔を設け、当該中空孔には前記バイパス通路の開口面積を選択あるいは遮断するロータリーバルブを回動自在に嵌着した油圧緩衝器において、上記ロータリーバルブには、上部室に開口するバイパス通路を下部室に連通するオリフィス通路とチョーク通路とを円周方向に分離して開設し、ロータリーバルブを回動させることにより、いずれか一方の通路を選択あるいは双方を遮断できるようにしたことを特徴とする油圧緩衝器の減衰力調整装置。 【請求項2】シリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンはシリンダ内を上部室と下部室とに区画し、ピストンには二つの室を連通する伸側ポートと圧側ポートを形成し、伸側ポート下端の下面開口窓には伸側ハードバルブを、また圧側ポート上端の上面開口窓には圧側ハードバルブが開閉自在に対向して設けられ、更にピストン上方には前記ピストンロッドに組み付けられたディスクを設け、このディスクには上部室に開口するバイパス通路と伸圧共用通路とを形成し、当該伸圧共用通路上端の上面開口窓には伸側ソフトバルブを、また伸圧共用通路下端の下面開口窓には圧側ソフトバルブを開閉自在に設ける一方、当該伸側ソフトバルブと圧側ソフトバルブは、前記伸側ハードバルブと圧側ハードバルブのクラッキング圧よりそれぞれ小さく設定されるとともに、前記ピストンロッドには前記バイパス通路と伸圧共用通路とを下部室に連通する中空孔を設け、当該中空孔には前記バイパス通路の開口面積を選択あるいは遮断するロータリーバルブを回動自在に嵌着した油圧緩衝器において、上記ロータリーバルブには、上部室に開口する伸側バイパス通路を下部室に連通する伸側オリフィス通路及び当該伸側オリフィス通路とは円周方向に分離して開設された伸側チョーク通路と、上部室に開口する圧側バイパス通路を下部室に連通する圧側オリフィス通路及び当該圧側オリフィス通路とは円周方向に分離して開設された圧側チョーク通路とを開設する一方、前記伸側バイパス通路には上部室から下部室方向にのみ開通する伸側チェックバンドを、前記圧側バイパス通路には下部室から上部室方向にのみ開通する圧側チェックバンドを配設し、伸縮作動に対応して前記伸側バイパス通路と圧側バイパス通路を連通又は遮断することにより、伸側減衰力と圧側減衰力を独立して設定できるようにしたことを特徴とする油圧緩衝器の減衰力調整装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、車両の車体と車軸間に介装されて路面からの衝撃エネルギーを吸収緩和させる二輪車、四輪車等における油圧緩衝器の減衰力調整装置に関する。 【0002】 【従来の技術】この種の油圧緩衝器としては、例えば図6に示す様なものが知られている。シリンダ10内にピストン18を介してピストンロッド1が移動自在に挿入され、ピストンロッド1は図示を省略したベアリングとパッキンを貫通して外部に突出している。ピストンロッド1は上端が車体側に連結され、シリンダ10と図示を省略したその外側の外筒はロアキャップとブラケットを介して車軸側に連結される。 【0003】シリンダ10内にはピストン18によって上下二つの室A,Bが区画され、シリンダ10の外側にはこれと同芯状に配置した外筒が設けられている。シリンダ10と図示を省略した外筒との間には作動油を蓄えたリザーバが区画され、上部室Aはベアリングに設けた通路とチェックシールを介してリザーバと連通し、同じく下部室Bは図示を省略したベースバルブを介してリザーバと連通している。 【0004】ピストンロッド1の下部段付き部には、Cピン11に保持されたストッパ12,バルブストッパ13,環座14,ディスク15の順に組み付けられ、当該ディスクの上面開口窓15Fには、伸側ソフトバルブSVeが内周側上面を前記バルブストッパ13の外周に、又外周側下面を上面開口窓15Fの外周シート面に当接して自由支持されている。前記上面開口窓15Fと連通孔15Dを介して連通するディスクの下面開口窓15Eには、内周側下面を環座16に固定支持された圧側ソフトバルブSVcが対向している。 【0005】前記環座16の下側には、バルブストッパ17を挟んで同じく環座16が組み付けられ、更にその下側には、下部室Bに圧側ポート18Bを介して連通するピストンの上面開口窓18Dに、圧側ハードバルブHVcが対向して組み付けられている。一方、上部室Aに伸側ポート18Aを介して連通するピストンの下面開口窓18Cには、伸側ハードバルブHVeが対向して組み付けられ、これらの部品がバルブストッパ19と共にピストンナット20により、ピストンロッド1に締結されている。 【0006】図6(A)に示すように、円周上一定の間隔且つ異なる孔径で穿設されたロータリーバルブ3の大径オリフィス3Aが、ピストンロッドの通孔1Aに連通している所謂ソフトモードでピストンロッド1が伸長方向に作動すると、伸長速度の遅い微低速〜低速域においては、上部室Aと下部室B間の圧力差は小さいので、伸側ソフトバルブSVeは開かない。そこで上部室Aの作動油は、図2(A)の右半断面図の実線で示すように、ディスクの連通孔15A,環状溝15B,通孔1Aからなるバイパス通路を通り、更にロータリーバルブの大径オリフィス3A(通路面積A1),中空孔3C,ピストンロッドの中空孔1Dを通過して下部室Bへ流出し、この際の通路抵抗により伸長速度のほぼ二乗に比例する微低速〜低速域の伸側減衰力を発生する。 【0007】上記ロータリーバルブ3は、ピストンロッドの中空孔1Dに圧入支持された支持環5及び7の間に、スラストワッシャ4及び6を介在させて挟持され、上端部に結合されたコントロールロッド2を介して、図示を省略したロータリーソレノイドにより駆動される。 【0008】伸長速度の中速域以上においては、前記ロータリーバルブの大径オリフィス3Aの通路抵抗が大きくなり上部室Aの圧力が増大するので、上部室Aの作動油は、図2(A)の左半断面図の実線で示すように、伸側ソフトバルブSVeの内周側をバルブストッパ13の下面から押し開いて、ディスクの上面開口窓15Fに流入し、ディスクの連通孔15D,環状溝15C,ピストンロッドの通孔1Bからなる伸圧共用通路を通り、更にロータリーバルブの通孔3D,中空孔3C,ピストンロッドの中空孔1Dを経て、前記大径オリフィス3Aを通る流れと並列に下部室Bへ流出する。この通路抵抗と前記大径オリフィス3Aの通路抵抗とにより所謂ソフトモードの伸側減衰力を発生する。 【0009】伸側ソフトバルブSVeの開き始める圧力(以下クラッキング圧と略称)は、伸側ハードバルブHVeのクラッキング圧より低く設定されているため、ソフトモードの伸側減衰力は、ロータリーバルブ3の大径オリフィス3Aの通路面積と、伸側ソフトバルブSVeの撓み剛性とにより設定され、図5に示す減衰力特性Seとなる。この際ピストンロッド1の退出体積分に相当する油は、リザーバより図示を省略したベースバルブに設けられたチェック弁を開いて下部室Bへ補充される。 【0010】一方収縮作動時には、ピストンロッド1の侵入体積分に相当する作動油が、図示を省略したベースバルブを通りリザーバ室に流れ、この際の通路抵抗により圧側減衰力のベースとなる圧側ベース減衰力を発生する。このベースバルブの通路抵抗により下部室Bの圧力が高くなるので、収縮速度の遅い微低速〜低速域においては前記伸長作動時とは逆に、下部室Bの作動油は、図2(A)の右半断面図の点線で示すように、ピストンロッドの中空孔1D,ロータリーバルブの中空孔3C,大径オリフィス3Aを通り、更にピストンロッドの通孔1A,ディスクの環状溝15B,連通孔15Aからなるバイパス通路を経て上部室Aに還流し、この際の通路抵抗により収縮速度のほぼ二乗に比例する微低速〜低速域の圧側背面減衰力を発生する。下部室Bと上部室A間の圧力差は小さいので、圧側ソフトバルブSVcは開かない。 【0011】圧側ソフトバルブSVcのクラッキング圧は、圧側ハードバルブHVc及び伸側ソフトバルブSVeの外周側を押し開くクラッキング圧より低く設定されている。収縮速度の中速域以上においては、図2(A)の左半断面図の点線で示すように、下部室Bの作動油がピストンロッドの中空孔1D,ロータリーバルブの中空孔3C,通孔3Dを通り、更にピストンロッドの通孔1B,ディスクの環状溝15C,連通孔15Dからなる伸圧共用通路を経てディスクの下面開口窓15Eに流入し、環座16の外径が撓みの支持径となる圧側ソフトバルブSVcの外周側を押し開いて上部室Aに還流し、この際の通路抵抗によりソフトモードの圧側背面減衰力を発生する。 【0012】これら微低速〜中速域以上の圧側背面減衰力が前記圧側ベース減衰力に合成され、所謂ソフトモードの圧側減衰力となる。従ってソフトモードの圧側減衰力は、ロータリーバルブの大径オリフィス3Aの通路面積と圧側ソフトバルブSVc及びベースバルブの撓み剛性とにより設定され、図5に示す減衰力特性Scとなる。 【0013】ピストンロッド1及びロータリーバルブ3のR−R矢視図を表す図6(B)及びS−S矢視図を表す図6(C)に示すソフトモードから、ロータリーバルブ3を時計方向に120度回転すると、図6(A)の左半断面図に示すように、小径オリフィス3B(通路面積A2)がピストンロッドの通孔1Aに連通し所謂ミディアムモードとなる。このモードでは通路面積が上記ソフトモードよりも小さく(A2<A1)なった分だけ、伸長側及び収縮側の減衰力が高くなり、図5に微低速〜低速域の減衰力のみ点線で示すミディアムモードの減衰力特性Me,Mcとなる。減衰力の値が異なるだけで、作動油の流れは上記ソフトモードと同様であるので詳細な説明は省略する。 【0014】上記ミディアムモードから、ロータリーバルブ3を更に時計方向に120度回転すると、ピストンロッドの通孔1A,1Bがロータリーバルブ3により閉塞されるので、前記バイパス通路及び伸圧共用通路が双方とも遮断され所謂ハードモードとなる。このモードでピストンロッド1が伸長方向に作動すると、上部室Aの作動油がピストンの伸側ポート18Aを経て、ピストンの下面開口窓18Cに流入し、当該下面開口窓18Cに対向する伸側ハードバルブHVeの外周側を押し開いて下部室Bに流出し、この際の通路抵抗により図5の減衰力特性Heに示す所謂ハードモードの伸側減衰力を発生する。 【0015】上記ハードモードの収縮作動時には、ピストンロッド侵入量体積分の作動油が下部室Bよりベースバルブを介してリザーバに流出し、下部室Bの圧力が上昇するとともに、この際のベースバルブの通路抵抗で圧側ベース減衰力が発生する。一方、下部室Bの一部の作動油は、ピストンの圧側ポート18Bを経て上面開口窓18Dに流入し、当該上面開口窓18Dに対向する圧側ハードバルブHVcの外周側を押し開いて上部室Aに還流し、この際の通路抵抗による圧側背面減衰力が、上記圧側ベース減衰力に合成され、図5の減衰力特性Hcで示す所謂ハードモードの圧側減衰力となる。 【0016】 【発明が解決しようとする課題】ソフトモードを選択して伸長(又は収縮)作動をすると、伸長(又は収縮)速度の遅い微低速〜低速域においては、上部室A(又は下部室B)の作動油は、ロータリーバルブの大径オリフィス3A又は小径オリフィス3B(通路面積A1又はA2)を通過して下部室B(又は上部室A)へ流れ、この際の通路抵抗により伸長(又は収縮)速度のほぼ二乗に比例する微低速〜低速域のソフトモード又はミディアムモードの伸側(又は圧側)減衰力を発生する。 【0017】作動油がオリフィスを通過する際の通路抵抗は、作動油の温度による影響が少なく安定した減衰力を発生することができる反面、伸縮速度(=ピストン速度)の遅い微低速〜低速域における減衰力Fは、通路面積をA,ピストン速度をVとすると、比例常数をkとして、 F=k(V/A)2 ■となる。すなわち減衰力Fは、ピストン速度Vの2乗に比例するため、特に路面のうねり等を通過する際の微低速域の減衰力が小さく、車体のゆっくりとした揺動(所謂ふわふわ感)を抑制することが難しい。 【0018】他方、ピストン速度が微低速〜低速域にあるときの減衰力をピストン速度に比例してリニアに立ち上がらせるには、従来技術で説明したオリフィスを、巾b,深さhの矩形状に置き換え,作動油の通過長Lを、 d=2bh/(b+h)で表される水力直径dよりも十分長く(例えばL>5d)し、流体力学で言う所謂チョーク通路にすればよいことが知られている。すなわち通路抵抗である減衰力Fは、ピストン速度をV,作動油の粘度をμ,比例常数をkとして、 F=kμV ■となるので、微低速〜低速域の減衰力をピストン速度に比例してリニアに立ち上がらせることができる。 【0019】ここで作動油の粘度μは、作動油の温度によって変化し、油温の低下とともに増大するので、前述したオリフィス通路とは逆に、冬季の走行初期においては微低速〜低速域の減衰力が高くなりすぎて、特に路面の継ぎ目等を通過する際の衝撃を車体に伝達してしまう所謂ごつごつ感を抑制することが難しい。 【0020】本発明は以上のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作動油の温度の低い走行初期においては、オリフィス通路を有するソフトモードを選択して油温の影響の小さい安定した減衰力を発生させる一方、ある程度走行して油温が上昇した後は、チョーク通路を有するミディアムモードに切り替えることにより、微低速〜低速域の減衰力をピストン速度に比例してリニアに立ち上がらせ、特に路面のうねり等を通過する際の車体のゆっくりとした揺動(ふわふわ感)を抑制することである。 【0021】 【課題を解決するための手段】本発明の油圧緩衝器は、「シリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンはシリンダ内を上部室と下部室とに区画し、ピストンには二つの室を連通する伸側ポートと圧側ポートを形成し、伸側ポート下端の下面開口窓には伸側ハードバルブを、また圧側ポート上端の上面開口窓には圧側ハードバルブが開閉自在に対向して設けられ、更にピストン上方には前記ピストンロッドに組み付けられたディスクを設け、このディスクには上部室に開口するバイパス通路と伸側通路及び圧側通路とを形成し、当該伸側通路上端の上面開口窓には伸側ソフトバルブを、また圧側通路下端の下面開口窓には圧側ソフトバルブを開閉自在に設ける一方、当該伸側ソフトバルブと圧側ソフトバルブは、前記伸側ハードバルブと圧側ハードバルブのクラッキング圧よりそれぞれ小さく設定されるとともに、前記ピストンロッドには前記バイパス通路と伸側通路及び圧側通路とを下部室に連通する中空孔を設け、当該中空孔には前記バイパス通路の開口面積を選択あるいは遮断するロータリーバルブを回動自在に嵌着した油圧緩衝器」を前提とするものである。ここで、上記伸側通路及び圧側通路は、双方を一体化した伸圧共用通路としてもよい。上記の問題を解決するために本発明の採った第1の手段は、「上記ロータリーバルブには、上部室に開口するバイパス通路を下部室に連通するオリフィス通路とチョーク通路とを円周方向に分離して開設し、ロータリーバルブを回動させることにより、いずれか一方の通路を選択あるいは双方を遮断できるようにしたこと」である。また、第2の手段は、「上記ロータリーバルブには、上部室に開口する伸側バイパス通路を下部室に連通する伸側オリフィス通路及び当該伸側オリフィス通路とは円周方向に分離して開設された伸側チョーク通路と、上部室に開口する圧側バイパス通路を下部室に連通する圧側オリフィス通路及び当該圧側オリフィス通路とは円周方向に分離して開設された圧側チョーク通路とを開設する一方、前記伸側バイパス通路には上部室から下部室方向にのみ開通する伸側チェックバンドを、前記圧側バイパス通路には下部室から上部室方向にのみ開通する圧側チェックバンドを配設し、伸縮作動に対応して前記伸側バイパス通路と圧側バイパス通路を連通又は遮断することにより、伸側減衰力と圧側減衰力を独立して設定できるようにしたこと」である。 【0022】 【発明の実施の形態】以下本発明に係る油圧緩衝器の減衰力調整装置について図1に示す第1実施形態に基づいて説明する。従来技術と同じ部分には同一の部品番号を付与し、特に必要がない限り説明を省略する。本発明の最大の特徴は、ピストンロッドの伸縮速度の遅い微低速〜低速域におけるミディアムモードの減衰力をピストン速度にほぼ比例して立ち上がるように改善したことである。 【0023】図1(A)の右半断面は、ピストンロッド1とロータリーバルブ103のR−R矢視図を表す図1(B),S−S矢視図を表す図1(C)及びT−T矢視図を表す図1(D)に示すように、ピストンロッドの通孔1Aにロータリーバルブ103のオリフィス通路103Aが連通する所謂ソフトモードとなっている。このモードは、従来技術で説明したソフトモードと同様であるので詳細な説明は省略する。 【0024】ロータリーバルブ103を、図1(B)〜(D)に示す位置から時計方向に120度回転させ、図1(A)の左半断面に示すように、ピストンロッドの通孔1Aにロータリーバルブのチョーク通路103Bを連通させると、所謂ミディアムモードになる。このモードでピストンロッドが伸長する伸長行程においては、前述したオリフィス通路に替わって、通孔1Aと通孔103Cの間が「発明が解決しようとする課題」欄で説明した所謂チョーク通路103Bとなる。 【0025】伸長速度の遅い微低速〜低速域においては伸側ソフトバルブSVeは開かないので、上部室Aの作動油は、図2(B)の右半断面図の実線で示すように、ディスク15の連通孔15A,環状溝15B,通孔1Aからなるバイパス通路を通り、チョーク通路103Bを経て下部室Bへ流出する。当該チョーク通路103Bを通過する際の通路抵抗により、図5の実線で示すような微低速〜低速域が伸縮速度にほぼ比例したミディアムモードの伸側減衰力Meを発生させることができる。 【0026】伸長速度が中速域に近づくにつれ、前記ロータリーバルブのチョーク通路103Bの通路抵抗が大きくなり上部室Aの圧力が増大する。このため図2(B)の左半断面図の実線で示すように、上部室Aの作動油が伸側ソフトバルブSVeの内周側を押し開いてディスクの上面開口窓15Fに流入し、ディスクの連通孔15D,環状溝15C,ピストンロッドの通孔1Bからなる伸圧共用通路を通り、更にロータリーバルブの通孔103D,中空孔103E,ピストンロッドの中空孔1Dを経て、前記チョーク通路103Bを通る流れと並列に下部室Bへ流出する。この際の通路抵抗と前記チョーク通路103Bの通路抵抗とによりミディアムモードの中速域以上の伸側減衰力を発生する。 【0027】また、このミディアムモードでピストンロッドが収縮する収縮行程においては、図2(B)の右半断面図の点線で示すように、伸長行程と同じチョーク通路103Bを作動油が下部室Bから上部室Aに還流するため、微低速〜低速域の圧側背面減衰力が、収縮速度にほぼ比例したチョーク特性となる。 【0028】収縮速度が中速域に近づくにつれ、前記ロータリーバルブのチョーク通路103Bの通路抵抗が大きくなり下部室Bの圧力が増大する。このため下部室Bの作動油は、図2(B)の左半断面図の点線で示すように、前記チョーク通路103Bと並列に形成された通路、すなわちピストンロッドの中空孔1D,ロータリーバルブの中空孔103E,通孔103Dを通り、更にピストンロッドの通孔1B,ディスクの環状溝15C,連通孔15Dからなる伸圧共用通路を経てディスクの下面開口窓15Eに流入し、圧側ソフトバルブSVcの外周側を押し開いて上部室Aに還流する。この際の通路抵抗と前記チョーク通路103Bの通路抵抗とにより中速域以上の圧側背面減衰力を発生する。 【0029】従って図5の実線で示すように、これら圧側背面減衰力と前記圧側ベース減衰力とを合成したミディアムモードの圧側減衰力Mcのうち、微低速〜低速域を収縮速度にほぼ比例した圧側減衰力とすることができる。ここで、上記伸圧共用通路は、ピストンロッドの通孔1B,ロータリーバルブの通孔103D,ディスクの環状溝15C,連通孔15Dを軸方向に2分割し、2分割した一方をディスクの上面開口窓15Fに、他方を下面開口窓15Eに連通させ、それぞれ独立した伸側通路と圧側通路とすることによって、伸側ソフトバルブSVeと圧側ソフトバルブSVcの減衰力設定自由度を向上させることができる。 【0030】油温の高い夏期等においては、作動油の粘度も低いため走行初期からミディアムモードで走行してもよいが、油温の低い冬期等の走行初期においてミディアムモードを選択すると、増大した粘度の影響を受けて減衰力が高くなりすぎ、路面の継ぎ目等を通過する際の衝撃を車体に伝達してしまう所謂ごつごつ感を増大させてしまう。これを避けるためには、まず油温の影響を比較的受けにくいオリフィス通路を選択して、ソフトモードで走行する。つぎに、ある程度走行して油温が上昇した後にチョーク通路を有するミディアムモードを選択することによって、微低速〜低速域の減衰力をピストン速度に比例してリニアに立ち上がらせ、特に路面のうねり等を通過する際の車体のゆっくりとした揺動(ふわふわ感)を抑制する。 【0031】このように、ソフトモードとミディアムモードを適宜選択することによって、路面の継ぎ目等を通過する際の衝撃を車体に伝達してしまう所謂ごつごつ感を抑制しつつ、路面のうねり等を通過する際の車体のゆっくりとした揺動(ふわふわ感)を抑制し、好ましい乗り心地を実現することができるのである。 【0032】ロータリーバルブ103を図1(B)〜(C)に示すソフトモードから時計方向に240度回転し、ロータリーバルブを通る流れを遮断した所謂ハードモードの伸側減衰力及び圧側減衰力の発生については、従来技術で説明したハードモードの減衰力と同様であるので詳細な説明は省略する。 【0033】つぎに、図3に示す第2実施形態について説明する。従来技術と同じ部分には同一の部品番号を付与し、特に必要がない限り説明を省略する。本実施形態の特徴は、微低速〜低速域におけるソフトモード及びミディアムモードの伸側減衰力と圧側減衰力を、それぞれ独立に設定できるようにしたことである。 【0034】図3(A)の右半断面は、ピストンロッド201及びロータリーバルブ203のR−R矢視図又はこれとほぼ同様なV−V矢視図を表す図3(B),S−S矢視図又はこれとほぼ同様なU−U矢視図を表す図3(C),T−T矢視図を表す図3(D)に示すように、ピストンロッドの通孔201A,201B,201Cに、ロータリーバルブの伸側オリフィス203A,伸圧共用の通孔203B,圧側オリフィス203Cが連通する所謂ソフトモードを示す。このモードで伸長速度の遅い微低速〜低速域においては伸側ソフトバルブSVeは開かない。 【0035】そこでディスク215の連通孔215A,環状溝215Bに僅かな張り代を与えられて嵌着された例えばゴム製の伸側チェックバンド216,環状溝215B,ピストンロッドの通孔201Aからなる伸側バイパス通路に流入した上部室Aの作動油は、図4(A)の右半断面図の実線で示すように、伸側チェックバンド216を僅かな圧力で押し開き、ロータリーバルブの伸側オリフィス203A,連通孔203H,ピストンロッドの通孔201Dを経て下部室Bに流出する。 【0036】ここで連通孔215Aは円周方向に複数穿設され、その通路面積の和は前記伸側オリフィス203Aよりも大きく設定されている。このモードの伸側減衰力の発生については、チェックバルブとしての伸側チェックバンド216が装着されていることを除き、従来技術で説明したソフトモードの伸側減衰力と同様であるので詳細な説明は省略する。 【0037】一方、収縮作動時には、ピストンロッド201の侵入体積分に相当する作動油が、図示を省略したベースバルブを通りリザーバ室に流れ、この際の通路抵抗により圧側ベース減衰力を発生する。このベースバルブの通路抵抗により下部室Bの圧力は高くなるが、収縮速度の遅い微低速〜低速域においては圧側ソフトバルブSVcは開かない。 【0038】このため下部室Bの作動油は、図4(A)の右半断面図の点線で示すように、ピストンロッドの中空孔201D,ロータリーバルブの中空孔203H,圧側オリフィス203Cを通り、更にピストンロッドの通孔201C,ディスク215の環状溝215D,圧側連通孔215E,環状溝215F,当該環状溝215Fに僅かな締め代を与えられて嵌着された例えばゴム製の圧側チェックバンド217からなる圧側バイパス通路に流入し、圧側チェックバンド217を僅かな圧力で押し開き上部室Aに還流する。 【0039】ここで圧側連通孔215Eは円周方向に複数穿設され、その通路面積の和は前記圧側オリフィス203Cよりも大きく設定されている。このモードの圧側減衰力の発生については、チェックバルブとしての圧側チェックバンド217が装着されていることを除き、従来技術で説明したソフトモードの圧側減衰力と同様であるので詳細な説明は省略する。 【0040】なお上記収縮作動時に、伸側オリフィス203A,ピストンロッドの通孔201Aを経てディスクの環状溝215Bに流入した作動油は、伸側チェックバンド216が連通孔215Aを塞いでいるので、ここで行き止まりとなり伸側バイパス通路は遮断される。一方、下部室Bと上部室A間の圧力差は小さく、圧側ソフトバルブSVcは開かないので、微低速〜低速域の圧側背面減衰力は、伸側減衰力とは独立して圧側オリフィス203Cのみにより設定することができる。 【0041】収縮速度の中速域以上においては、前記ロータリーバルブの圧側オリフィス203Cの通路抵抗が大きくなり下部室Bの圧力が増大する。そこでピストンロッドの中空孔201D,ロータリーバルブの中空孔203H,伸圧共用の通孔203Bを通り、更にピストンロッドの通孔201B,ディスクの環状溝215C,連通孔215Gからなる伸圧共用通路を経てディスクの下面開口窓215Kに流入した下部室Bの作動油が、圧側ソフトバルブSVcの外周側を押し開き、前記圧側オリフィス203Cを通る流れと並列に上部室Aへ流出し、この際の通路抵抗と前記圧側オリフィス203Cの通路抵抗とによりソフトモードの圧側背面減衰力を発生する。 【0042】これら圧側背面減衰力が前記圧側ベース減衰力に合成され、ソフトモードの圧側減衰力となる。従ってこのモードの圧側減衰力は、ロータリーバルブの圧側オリフィス203Cの通路面積と圧側ソフトバルブSVc及び図示を省略したベースバルブの撓み剛性とにより伸側減衰力とは独立して設定され、図5に示すようなソフトモードの圧側減衰力特性Scとなる。 【0043】つぎに、図3(A)の左半断面に示すように、ロータリーバルブ203を図3(B)〜(D)に示すソフトモードから時計方向に120度回転させ、ピストンロッドの通孔201A,201C及び通孔201Bに、ロータリーバルブのチョーク通路203D,203F及び伸圧共用の通孔203Bを連通させると、所謂ミディアムモードになる。 【0044】このモードの伸長行程においては、前述した伸側オリフィスに替わって、ピストンロッドの通孔201Aとロータリーバルブの通孔203Eの間が、「発明が解決しようとする課題」欄で説明した所謂チョーク通路203Dとなる。上部室Aの作動油は、伸側連通孔215A,環状溝215Bに僅かな締め代を与えられて嵌着された例えばゴム製の圧側チェックバンド216,環状溝215B,ピストンロッドの伸側通孔201Aからなる伸側バイパス通路を通り、ロータリーバルブのチョーク通路203D,伸側通孔203Eを経て下部室Bに流出する。当該チョーク通路203Dを通る際の通路抵抗により、図5の実線で示すような伸縮速度にほぼ比例した微低速〜低速域の伸側減衰力Meを発生させることができる。 【0045】また、このミディアムモードでピストンロッドが微低速〜低速で収縮する収縮行程においては、下部室Bの作動油がピストンロッドの中空孔201D,ロータリーバルブの中空孔203H,圧側通孔203G,圧側チョーク通路203Fを通り、更にピストンロッドの圧側通孔201C,ディスクの環状溝215D,圧側連通孔215E,環状溝215Fに僅かな締め代を与えられて嵌着された例えばゴム製の圧側チェックバンド217からなる圧側バイパス通路の、圧側チェックバンド217を僅かな圧力で押し開いて上部室Aへ流出し、この際の通路抵抗により収縮速度にほぼ比例する微低速〜低速域の圧側背面減衰力を発生する。 【0046】伸側通孔203E,伸側チョーク通路203D,ピストンロッドの伸側通孔201Aを経てディスクの環状溝215Bに流入した作動油は、伸側チェックバンド216が伸側連通孔215Aを塞いでいるので、ここで行き止まりとなり前記伸側バイパス通路は遮断される。このため、収縮速度にほぼ比例したチョーク特性の圧側背面減衰力と前記圧側ベース減衰力とを合成した圧側減衰力を、図5の実線で示すような収縮速度にほぼ比例したミディアムモードの微低速〜低速域の圧側減衰力Mcとすることができる。 【0047】このミディアムモードにおいてピストンロッドが微低速〜低速で収縮する収縮行程においては、下部室Bと上部室A間の圧力差は小さく、圧側ソフトバルブSVcは開かないので、微低速〜低速域の圧側背面減衰力は、伸側減衰力とは独立して圧側チョーク通路203Fのみにより設定することができる。 【0048】ロータリーバルブ203を図3(B)〜(D)に示すソフトモード位置から時計方向に240度回動し、ロータリーバルブを通る流れを遮断した所謂ハードモードの伸側減衰力及び圧側減衰力の発生については、従来技術で説明したハードモードの減衰力と同様であるので詳細な説明は省略する。 【0049】以上、第2実施形態の伸側チョーク通路203D及び圧側チョーク通路203F,第1実施形態のチョーク通路103Bは、ロータリーバルブの軸線に平行な矩形溝である場合を説明したが、軸線方向に限定されたスペースでチョーク通路を長くしたい場合には、チョーク通路をロータリーバルブの外面に沿った螺旋状に形成し、螺旋の長さを調整することにより、通路長を自由に設定することができる。また、チョーク通路の断面も本実施形態の矩形に限定する必要はなく、例えば、円弧状,V字状であってもよい。 【0050】 【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の第1実施形態においては、ソフトモードとミディアムモードを適宜選択することによって、路面の継ぎ目等を通過する際の衝撃を車体に伝達してしまう所謂ごつごつ感を抑制しつつ、路面のうねり等を通過する際の車体のゆっくりとした揺動(ふわふわ感)を抑制することができる。また第2実施形態においては、ソフトモードの伸側及び圧側のオリフィス通路と、ミディアムモードの伸側及び圧側のチョーク通路を、それぞれチェックバルブとしてのチェックバンドを介してお互いに独立した通路としたので、伸側減衰力及び圧側減衰力をそれぞれ独立に設定することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000929 【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年11月23日(1998.11.23) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2000−161416(P2000−161416A) |
| 【公開日】 |
平成12年6月16日(2000.6.16) |
| 【出願番号】 |
特願平10−349363 |
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