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【発明の名称】 ダンパ装置
【発明者】 【氏名】沼尻 進

【要約】 【課題】ダンパ装置の耐久性及び信頼性を向上する。

【解決手段】エンジンのクランク軸等、捩り振動が発生する回転軸と一体に回転するダンパハブに、環状ラバー部材を介して慣性リングを接着してトーショナルダンパを形成する。Aを慣性リング側の放熱面積、αを慣性リング側の熱伝達率、Aをダンパハブ側の放熱面積、αをダンパハブ側の熱伝達率としたとき、(A×α)/(A×α)=0.7〜1.3とする。これによりダンパハブ及び慣性リングと環状ラバー部材との接着部の温度上昇量を略等しくすることができ、耐久性及び信頼性を向上することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンのクランク軸等に取付けられた円板状のダンパハブと、同ダンパハブの一側面の外周部分に円周方向に適宜の間隔を存し、半径方向に延在して多数突設された冷却フインと、上記ダンパハブの他側面に環状ラバー部材を介して固着された慣性リングとを備え、上記環状ラバー部材が上記ダンパハブの他側面及び慣性リングの対向する側面に、夫々接着固定されたものにおいて、:慣性リング側放熱面積 A:ダンパハブ側放熱面積 α:慣性リング側熱伝達率 α:ダンパハブ側熱伝達率としたとき、(A×α)/(A×α)=0.7〜1.3としたことを特徴とするダンパ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンのクランク軸等に生起する捩り振動を低減するダンパ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、車両用エンジンのクランク軸に、エンジン運転中発生する捩り振動を制振するために、例えば、実公平7−52986号公報に開示されているようなトーショナルダンパ装置が広く採用されている。
【0003】上記実用新案公報所載のダンパ装置の構造を、図7の断面図及び図8の部分的背面図を参照して説明する。図中、符号10は総括的にダンパ装置を示し、同ダンパ装置10は、エンジンのクランク軸(図示せず)に連結されて一体的に回転する円板状のダンパハブ12と、同ダンパハブ12の外周部分に環状ラバー部材14を介して上記クランク軸に対し同心的に連結された慣性リング又は慣性部材16を備えている。
【0004】上記慣性リング16には、図8に詳細に示されているように、円周方向に適宜の間隔を存して半径方向外方に延在した多数の凹溝18が設けられ、隣接する凹溝18間の半径方向に延びた隆起部によって冷却フイン20が形成されている。また、ダンパハブ12の環状ラバー部材14より半径方向内方の部分に、同ダンパハブ12をクランク軸に結合されて一体に回転するクランクプーリ等に対し固着するボルトを挿入するボルト孔22が穿設されている。
【0005】エンジンの運転中に、そのクランク軸系に捩り振動が生起すると、クランク軸と一体に回転するダンパハブ12に対して、慣性リング16が、環状ラバー部材14に歪を発生させながら相対回転することにより振動エネルギを吸収して制振機能を生起する。このとき、上記環状ラバー部材14は歪の発生により発熱し、発生した熱の大部分は、ダンパハブ12及び慣性リング16に伝達されて両者の表面から雰囲気内に放散され、残部は、環状ラバー部材14の外周面及び内周面から直接雰囲気に伝達され放散される。
【0006】上記環状ラバー部材14は、ダンパハブ12及び慣性リング16との接着面に、先ず下塗りを施し、次にその上に上塗りを行ったのち、所要の加硫接着型を取付けて型内に予め調整されたラバー部材を注入し、加熱下に所要時間保持して加硫接着されるのであるが、ダンパ装置10の耐久性を向上するためには、環状ラバー部材14それ自体の高温による耐久性の劣化を防止することと、ダンパハブ12及び慣性リング16と環状ラバー部材14との接着部の高温に対する耐久性を確保することが重要であり、環状ラバー部材14とダンパハブ12との接着部、及び環状ラバー部材14と慣性リング16との接着部の何れか一方が他方より早く劣化して剥離することによってダンパ装置10としての寿命が決まることとなるので、ダンパ装置10の耐久性確保の観点から、環状ラバー部材14とダンパハブ12及び慣性リング16との接着部の耐久性が略同時に消尽するように構成することが重要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑み創案されたもので、上記環状ラバー部材と、ダンパハブ及び慣性リングとの接着部の耐久性を略等しくすることによって、ダンパ装置の耐久性及び信頼性を向上することを、主たる目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、エンジンのクランク軸等に取付けられた円板状のダンパハブと、同ダンパハブの一側面の外周部分に円周方向に適宜の間隔を存し、半径方向に延在して多数突設された冷却フインと、上記ダンパハブの他側面に環状ラバー部材を介して固着された慣性リングとを備え、上記環状ラバー部材が上記ダンパハブの他側面及び慣性リングの対向する側面に、夫々接着固定されたものにおいて、:慣性リング側放熱面積 A:ダンパハブ側放熱面積 α:慣性リング側熱伝達率 α:ダンパハブ側熱伝達率としたとき、(A×α)/(A×α)=0.7〜1.3としたことを特徴とするダンパ装置を提案するものである。
【0009】上記本発明の構成により、環状ラバー部材とダンパハブ、及び環状ラバー部材と慣性リングの各接着部の温度上昇量を略等しくして、何れか一方の接着部が他方の接着部より著しく早期に剥離し破損する不具合を解消することにより、ダンパ装置全体としての耐久性、信頼性を向上することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明の好ましい実施形態を、図1ないし図6を参照して説明する。(なお、図7及び図8を参照して説明した従来のダンパ装置と、実質的に同一又は対応する部材及び部分には、同一の符号を用い重複説明は省略する。)図1の断面図及び図2の正面図に示された第1の実施形態において、ダンパハブ12の外周部分一側面には、円周方向に適宜の間隔を存して多数の冷却フイン24が突設され、複数の冷却フイン24間に、円周方向の幅が広い台状の冷却フイン26が配置され、各台状冷却フイン26には、環状ラバー部材14を成形する上記型内に予め調製されたラバー材料を注入する注入孔28が設けられている゜【0011】また、慣性リング16は、前記従来のダンパ装置10と同様の構造を備え、多数の半径方向に延びた凹溝18間に形成された多数の冷却フイン20が設けられている。上記ダンパハブ12は、多数の冷却フイン24を形成することの容易さ、及び良好な熱伝導性、及び鋳造性等の観点からアルミニウム合金で作ることが好ましく、また、慣性リング16は、性質上、比重が大きく、強度が優れ、かつ鋳造性が優れた球状黒鉛鋳鉄等によって作られることが好ましい。
【0012】エンジンの運転中、クランク軸系に捩り振動が生じると、クランク軸と一体に回転するダンパハブ12に対し慣性リング16が相対回転し、環状ラバー部材14が歪むことによって振動エネルギを吸収して制振作用が生起され、振動エネルギは熱に変換される。この結果、環状ラバー部材14が発熱し、発生熱は大部分ダンパハブ12及び慣性リング16を介して外気に放散されると共に、残部は環状ラバー部材14の外周面及び内周面から直接外気に放散される。
【0013】図3は、上記ダンパ装置10の熱発生及び熱伝達状態を示した模式図である。上述したように、振動エネルギを吸収して発熱した環状ラバー部材14内の温度分布は、図示のように厚さ方向の中央部分で、かつ半径方向中間部分が最も高い温度Tであり、ダンパハブ12及び慣性リング16との接着部でT,Tとなり、ダンパハブ12及び慣性リング16内で若干温度降下して夫々表面温度T′及びT′となり、さらに熱伝達率α及びαをもって外気即ち雰囲気温度Tに達する。
【0014】上記熱伝達率α及びαは、主としてダンパハブ12及び慣性リング16の表面形状即ち冷却フイン24,26及び冷却フイン20の配置、形状等によって異る。いま、ダンパハブ12の放熱面積をAとし、慣性リング16の放熱面積をAとすると、ダンパハブ12側の放熱量は(α×A)となり、慣性リング16側の放熱量は(α×A)となる。従って、環状ラバー部材14とダンパハブ12との接着部の温度T、及び環状ラバー部材14と慣性リング16との接着部の温度Tは、実質的に上記放熱量(α×A)及び(α×A)によって定まることとなる。
【0015】一方、上記環状ラバー部材14の発熱量をLとし、同環状ラバー部材の体積をV、捩り振動の制振時における歪率をγ、環状ラバー部材のロスファクタをη環状ラバー部材の貯蔵弾性率をGとすると、発熱量L∝V×γ×η×Gとなる。また、外気即ち雰囲気温度Tに対するダンパハブ12及び慣性リング16との接着部の温度T及びTの温度上昇量をΔT、α及びAをダンパハブ12及び慣性リング16の熱伝達率及び放熱面積とすると、ΔT∝L/(α×A)となる。
【0016】慣性リング16側のラバー接着部の温度上昇量ΔTと、ダンパハブ12側のラバー接着部の温度上昇量ΔTとの比は、発熱量Lが共通であるので、ΔT/ΔT=(α×A)/(α×A)となる。図4は、上記ダンパ装置10のダンパハブ12側のラバー接着部の温度上昇量及び慣性リング16側のラバー接着部の温度上昇量の温度上昇量ΔTを縦軸にとり、比β=(α×A)/(α×A)を横軸にとって、夫々の温度上昇量を調べたものである。
【0017】図中、右上りの曲線Xは、ダンパハブ12側のラバー接着部の温度上昇量ΔTを示し、右下りの曲線Xは、慣性リング16側のラバー接着部の温度上昇量ΔTを示す。図示のように、上記比β=(α×A)/(α×A)が0.7〜1.3の領域Yにおいて、ダンパハブ側ラバー接着部の温度上昇量ΔTと慣性リング側ラバー接着部の温度上昇量ΔTとが温度差が少なくて略等しくなり、特にβ=1近傍では温度上昇量が実質的に同一となる。
【0018】また、上記領域Y以外の部分、即ちβが0.7未満では、慣性リング側ラバー接着部の温度上昇量ΔTが、ダンパハブ側と較べて著しく大きく、慣性リング16側のラバー接着部が、ダンパハブ12側のラバー接着部より早期に剥離し破損する。一方、βが1.3を超える部分では、逆にダンパハブ側ラバー接着部の温度上昇量ΔTが、慣性リング側と較べて著しく大きく、ダンパハブ12側のラバー接着部が、慣性リング16側のラバー接着部より早期に剥離し破損することとなり、何れの場合も、ダンパ装置10の耐久性が損なわれる。
【0019】次に、図5の断面図及び図6の背面図(図5の矢印VI方向から視た)は、本発明をダブルマスダンパ装置100に適用した実施形態を示すものである。図示のように、ダンパハブ112は、上記第1実施形態と実質的に同一の構成を備えており、冷却フイン等の各部分には同一符号に100を加えて示し、詳細な説明は省略する。
【0020】上記ダンパハブ112の冷却フイン124を設けた側とは反対側の側面に、慣性質量が相対的に大きい第1慣性リング116aと、慣性質量が相対的に小さい第2慣性リング116bとが、ダンパハブ112の軸線O−Oに対し実質的に同心的に配置され、上記第1及び第2慣性リング116a及び116bは、第1及び第2の環状ラバー部材114a及び114bを介して夫々加硫接着されている。上記第1及び第2環状ラバー部材114a及び114bの接着手法は、前記第1実施形態と実質的に同一である。また、第1及び第2環状ラバー部材114a及び114b間には、円環状の空間130が形成され、第1環状ラバー部材114a及び第1慣性リング116aと、第2環状ラバー部材114b及び第2慣性リング116bとは、上記環状空間130によって互いに離隔されている。
【0021】図6の背面図に示されているように、第1慣性リング116aの第1環状ラバー部材114aとは反対側の環状側面には、円周方向に適宜の間隔を存して配置された多数の凹溝118aと、隣接する凹溝118a間に形成され半径方向に延在した多数の冷却フイン120aとが設けられている。同様に、第2慣性リング116bの第2環状ラバー部材114bとは反対側の環状側面には、円周方向に適宜の間隔を存して配置された多数の凹溝118bと、隣接する凹溝118b間に形成され半径方向に延在した多数の冷却フイン120bとが設けられている。
【0022】図5に一点鎖線で囲み符号Dで示したように、ダンパハブ112の上記環状空間130より半径方向外方の部分112aと、第1環状ラバー部材114aと、第1慣性リング116aとによって、第1のダンパが形成され、またダンパハブ112の上記環状空間130より半径方向内方の部分112bと、第2環状ラバー部材114bと、第2慣性リング116bとによって、第2のダンパDが形成されている。第1及び第2ダンパD及びDは、夫々の慣性質量に応じて、エンジンのクランク軸系の夫々相応した捩り振動周波数に主として応動し、良く知られているように、制振効果を生起する。
【0023】上記第1及び第2ダンパD及びDにおいても、基本的には、前記第1実施形態で説明した単一慣性質量を有するダンパ装置10と同様であって、第1ダンパDの場合、ダンパハブ112aの熱伝達率をαh1、放熱面積をAh1とし、第1慣性リング116aの熱伝達率をαi1、放熱面積をAi1としたとき、比β=(αi1×Ai1)/(αh1×Ah1)を0.7〜1.3とすることによって、第1環状ラバー部材114aとダンパハブ112aとの接着部、及び第1環状ラバー部材114aと第1慣性リング116aとの接着部の温度上昇量を略均等にし、第1ダンパDの耐久性を向上し信頼性を確保することができる。
【0024】同様に、第2ダンパDの場合、ダンパハブ112bの熱伝達率をαh2、放熱面積をAh2とし、第2慣性リング116bの熱伝達率をαi2、放熱面積をAi2としたとき、比β=(αi2×Ai2)/(αh2×Ah2)を0.7〜1.3とすることによって、第2環状ラバー部材114bとダンパハブ112bとの接着部、及び第2環状ラバー部材114bと第2慣性リング116bとの接着部の温度上昇量を略同等とし、第2ダンパDの耐久性を向上し、信頼性を確保することができる。
【0025】なお、上記ダブルマスダンパ装置100の場合、第1ダンパDと第2ダンパDの何れか一方が、他方より早期に破損すると、ダブルマスダンパ装置100全体としての耐久性が損なわれることとなるので、上記比βとβはなるべく等しいことが好ましく、β/β=0.7〜1.3程度とすることが望ましい。また同時に、第1ダンパD、第2ダンパDにおける第1及び第2環状ラバー部材114a及び114bの発熱量比を略同等とすることが生産上の観点から望ましく、既に述べたように、ラバー部材の発熱量L∝V×γ×η×Gであるので、第1環状ラバー部材114aの発熱量Lと、第2環状ラバー部材114bの発熱量Lの比が、L/L=0.7〜1.3程度となるように諸元(夫々のラバーの体積、歪率、ロスファクタ、貯蔵弾性率)を設定することが望ましい。
【0026】なお、本発明は、例示した上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更、修正を加え実施することができる。また、本発明は、エンジンのクランク軸以外の捩り振動を生起する種々の回転軸に広く適用し得ることは明らかである。
【0027】
【発明の効果】叙上のように、本発明に係るダンパ装置は、エンジンのクランク軸等に取付けられた円板状のダンパハブと、同ダンパハブの一側面の外周部分に円周方向に適宜の間隔を存し、半径方向に延在して多数突設された冷却フインと、上記ダンパハブの他側面に環状ラバー部材を介して固着された慣性リングとを備え、上記環状ラバー部材が上記ダンパハブの他側面及び慣性リングの対向する側面に、夫々接着固定されたものにおいて、:慣性リング側放熱面積 A:ダンパハブ側放熱面積 α:慣性リング側熱伝達率 α:ダンパハブ側熱伝達率としたとき、(A×α)/(A×α)=0.7〜1.3としたことを特徴とし、ダンパハブと環状ラバー部材との接着部、及び慣性リングと環状ラバー部材との接着部の何れか一方が、他方より早期に熱害により剥離してダンパ装置の耐久性が損なわれる不具合を解消して、ダンパ装置の耐久性及び信頼性を向上し得る効果がある。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【出願日】 平成10年7月24日(1998.7.24)
【代理人】 【識別番号】100065282
【弁理士】
【氏名又は名称】広渡 禧彰
【公開番号】 特開2000−46112(P2000−46112A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−242447