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【発明の名称】 ブレーキパッド
【発明者】 【氏名】水越 浩之

【要約】 【課題】使用初期から使用限界まで全体を通じてブレーキ鳴きを小さくしたブレーキパッドを提供する。

【解決手段】本ブレーキパッド1は、金属製の背面板2と該背面板2の一面に一体的に成形され相手側ロータと摺接する摩擦材3とからなる。摩擦材3は、相手側ロータと摺接する表面下にその表面と平行に延びる内孔4をもつ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製の背面板と該背面板の一面に一体的に成形され相手側ロータと摺接する摩擦材とからなるブレーキパッドであって、前記摩擦材は、前記相手側ロータと摺接する表面下にその表面と平行に延びる内孔を有することを特徴とするブレーキパッド。
【請求項2】 前記内孔の直径は、前記摩擦材の厚さをAmmとすると、(1/4)Ammないし(3/4)Ammの範囲にある請求項1記載のブレーキパッド。
【請求項3】 前記相手側ロータと摺接する前記表面と前記内孔との距離は、前記摩擦材の厚さをAmmとすると、 (1/4)A−1 mmないし (3/4)A−1 mmの範囲にある請求項1記載のブレーキパッド。
【請求項4】 前記背面板を接合された前記摩擦材の面と前記内孔との距離は、該摩擦材の厚さをAmmとすると、 0.5〜(1/3) Ammの範囲にある請求項1記載のブレーキパッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等のブレーキ装置に用いられるブレーキパッドに関する。
【0002】
【従来の技術】乗用車や小型トラックのブレーキ装置として用いられるディスクブレーキは、鋳鉄製の円板(ディスクロータ)の両面に、油圧、空圧等で駆動されるピストンでブレーキパッドを押しつけ、ディスクとブレーキパッドに生じる摩擦によって制動力を発生させる構造となっている。
【0003】ブレーキパッドは、金属製の背面板と該背面板の一面に一体的に成形され相手側ロータと摺接する摩擦材とから構成される。摩擦材は、効き、耐摩耗性、耐鳴き性等数多くの性能が要求され、これらの性能の満足のため、樹脂等の結合剤を主成分に有機系、無機系、金属系等の各種の摩擦調整剤や有機繊維、無機繊維、金属繊維等の補強材が、これらの数十種類を選択して配合されている。有機系摩擦調整剤の代表的なものは、ゴム、カシューダスト等であり、無機系では、黒鉛、MoS2、BaSO4、CaCO3、SiO2、MgO、金属系では、銅、黄銅、亜鉛等が用いられる。また、補強材として、鋼繊維を用いたセミメタリック摩擦材も普及している。
【0004】ところで、上記ブレーキパッドにおいて、従来、ブレーキ鳴きの対策としては、例えば特開平8−277866号公報に記載されているように、相手側ロータと摩擦する摩擦材の表面に溝を形成したり、特開平10−009311号公報に記載されているように、摩擦材の表面から背面板の0.5mm上部の深さにまで斜めに延びたスリット、特に摩擦材の中央位置の任意の1点を頂点として内周側及び外周側の背面板方向に徐々に深さが深くなるようなスリットを設けることが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ブレーキ鳴きはその原因が明確ではなく、上記公報に記載されたブレーキ鳴き対策でも、完全には阻止することができないのが現状である。ブレーキ鳴きは、一般には摩擦材が相手側ロータに押しつけられ変形した状態で摩擦することにより摩擦材の履歴と摩耗が進行するほど多くなる。従って、摩擦材に履歴や摩耗が小さい使用初期の間は、補強材や摩擦調整剤の配合によりある程度抑えられていると考えられている。
【0006】従って、本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたもので、摩擦材の履歴と摩耗がある程度進行した後に発生率が高くなる鳴きを低減し、使用初期から使用限界までブレーキ鳴きの小さいブレーキパッドを提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく本発明の発明者等は種々検討を重ね、表面が平坦な摩擦材と表面に溝がある摩擦材とで使用初期においてブレーキ鳴きの発生率がほとんど同じであることに着目し、摩擦材の摩耗や履歴が進行していない使用初期の鳴き低減効果を享受すると共に摩耗がある程度進行した後には溝による鳴き低減効果を享受することを考え本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明のブレーキパッドは、金属製の背面板と該背面板の一面に一体的に成形され相手側ロータと摺接する摩擦材とからなるブレーキパッドであって、該摩擦材は、該相手側ロータと摺接する表面下にその表面と平行に延びる内孔を有することを特徴とするものである。
【0009】
【作用】本発明のブレーキパッドにおいては、摩擦材の使用初期の間は、補強材や摩擦調整剤の配合によるブレーキ鳴きの低減効果を享受でき、摩耗が内孔の上部深さを超えて内孔が表面に表れると、摩擦材の表面に溝を形成したのと同等の鳴き低減効果が発揮される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のブレーキパッドにおいて、内孔の直径は、摩擦材の厚さをAmmとすると、(1/4)Ammないし(3/4)Ammの範囲にあることが好ましい。(1/4)Ammより小さいと、溝による鳴き低減効果を享受できる期間が短く、(3/4)Ammより大きいと摩擦材の変形が著しく破損するおそれが高くなる。
【0011】相手側ロータと摺接する摩擦材の表面と内孔との距離は、図4に示すように、摩擦材の厚さをAmmとすると、 (1/4)A−1 mmないし (3/4)A−1mmの範囲にあることが好ましい。すなわち、内孔の深さ方向の位置は、内孔の直径が(1/4)Ammの場合でも(3/4)Ammの場合でも比較的背面板側に寄せ、摩擦材の表面と内孔との距離を(内孔が現れるまでの厚み)、背面板を接合された摩擦材の面と内孔との距離(内孔が消失したときの摩擦材の残りの厚み)より大きくするのがよい。これにより、摩擦材としての適正な弾性を確保することができる。
【0012】背面板を接合された摩擦材の面と内孔との距離は、図4に示すように、摩擦材の厚さをAmmとすると、 0.5〜(1/3) Ammの範囲にあることが好ましい。これより大き過ぎると鳴き発生率が高い状態で使用される期間が長くなる。これより小さくすると、ブレーキパッドの交換時期を過ぎることになる。内孔の向きは、背面板の内周側と外周側とに延びる方向でも、該方向に直交する背面板の長手方向(相手側ロータとの摺接方向)でもよい。また、内孔の位置は、背面板の中央でも長手方向あるいは内周側から外周側に寄っていてもよい。
【0013】また、内孔は、貫通孔でも、一端が摩擦材の内部で止り他端が側部に貫通していても、両端共に内部で止っていてもよい。摩擦材は、セミメタリック系でもノンスチール系等いずれも適用できる。摩擦材の素材は、一般の公知の材料を用いることができ、例えばスチール繊維、黄銅繊維、銅繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、フェノール繊維、セラミック繊維、ロックウール、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維等の繊維状物質、カシュー樹脂等の熱硬化性樹脂やNBR、SBR等のゴム組成分を含む結合剤、フリクションダスト等の有機質摩擦調整剤等が用いられる。さらに、必要に応じて黄銅、真鍮、銅等の金属粉が添加される。
【0014】
【実施例】本発明のブレーキパッドを更に実施例を列挙して詳細に説明する。
実施例1図1〜図3に示すブレーキパッド1は、鋼鉄製の背面板2と、該背面板2に一体的に接合された摩擦材3とから構成されている。摩擦材3には、背面板2の中央位置で該摩擦材3の表面と平行で内周側と外周側とに延びる内孔4が形成されている。内孔4は摩擦材3の内周端面と外周端面に貫通して貫通孔である。
【0015】摩擦材3はアラミド繊維を5重量%、チタン酸カリウムを10重量%、スラグウール10重量%からなる基材繊維と、摩擦調整剤としてカシューダストを5重量%、固体潤滑剤としてグラファイトを5重量%、結合剤としてフェノール樹脂を10重量%、充填剤として硫酸バリウムを5重量%からなる原料粉末とを混合し、加熱成形型内で背面板2をインサートした状態で圧縮成形したものである。
【0016】内孔4は、上記成形後、摩擦材3の表面を研磨する前又は後に、フライス盤等による機械加工によって貫設した。具体的に内孔4は、図4に示すように、断面形状が円形であり、摩擦材3の厚みAをA=9mmとし、その直径dをd=4mmとした。また、摩擦材3の表面から内孔4までの距離bはb=4mmとし、内孔4から摩擦材3が接合された背面板2の面までの距離を1mmとした。
【0017】実施例2実施例2のブレーキパッド5は、実施例1と同じ基材繊維、摩擦調整剤等を混合して加熱圧縮成形した摩擦材3に、図5及び図6に示すように、実施例1の中央位置から右側に偏った位置で該摩擦材3の表面と平行で内周側と外周側とに延びる内孔6をフライス盤等により形成した。内孔6の両端は、摩擦材3の内周端面及び外周端面に貫通している。
【0018】摩擦材3の厚みAは9mm、内孔6の直径dは4mm、内孔6から摩擦材3の表面までの距離bは4mm、内孔6から背面板2までの距離は1mmとし、実施例1と同じにした。実施例3実施例3のブレーキパッド7は、実施例1と同じ基材繊維、摩擦調整剤等を混合して加熱圧縮成形した摩擦材3に、図7〜図9に示すように、相手側ロータ(図示略)との摺接方向で摩擦材3の表面と平行に延びる内孔8をフライス盤等により形成した。内孔8の両端は、摩擦材3の摺接方向両端面から貫通している。
【0019】この実施例3の摩擦材3もその厚みAは9mmとし、内孔8の直径dは4mm、内孔6から摩擦材3の表面までの距離bは4mm、内孔6から背面板2までの距離は1mmとした。
比較例1実施例1で得たA=9mmの摩擦材3で内孔4をもたないブレーキパッドを比較例1として用いた。
【0020】比較例2実施例1で得たA=9mmの摩擦材3で図10〜図12に示すように、表面から深さ8mmの内周側と外周側に延びる中央位置の溝10をもつブレーキパッド9を比較例2として用いた。次に本発明の本発明のブレーキパッド1、5、7(実施例1〜実施例3)と、本発明に含まれないブレーキパッド(比較例1、2)を表1に示す実車でブレーキ鳴きの測定を行った。
【0021】
【表1】

鳴き発生率は、次式に示す制動回数に対する鳴き発生回数の百分率の式を用いた。
【0022】
【数1】鳴き発生率(%)=(鳴き発生回数/制動回数)×100【0023】
【表2】

表2に示すように、実施例1〜実施例3のブレーキパッド1、5、7と比較例1のブレーキパッドは、総厚時(使用初期)から2mm摩耗時の鳴き発生率にほとんど差がなく、その鳴き発生率も問題となる程度のものではなかった。そして、これら実施例1〜実施例3のブレーキパッド1、5、7と比較例1のブレーキパッドの総厚時の鳴き発生率は、比較例2のブレーキパッド9よりも格段に鳴き発生率が小さい。
【0024】また、3.5mm摩耗時になると、実施例1〜3のブレーキパッド1、5、7及び比較例1のブレーキパッドの鳴き発生率がやや大きくなる。これに対し、比較例2のブレーキパッド9の鳴き発生率が低下している。しかし、実施例1〜3のブレーキパッド1、5、7及び比較例1のブレーキパッドの鳴き発生率よりは大きい。
【0025】摩耗量が3.5mmを超え、それぞれ実施例1〜3の3、6、8が摩擦材3の表面に現れる半摩耗状態になると、実施例1〜3のブレーキパッド1、5、7の鳴き発生率は、比較例1のブレーキパッドが急激に大きくなるのに対し落ちており、内孔3、6、8の効果を見出すことができる。また、7mm摩耗時には、比較例1のブレーキパッドは、鳴き発生率が更に大きくなる。これに対し、実施例1〜3のブレーキパッド1、5、7の鳴き発生率は、鳴き発生率が大きくなる割合が、比較例1のブレーキパッドの鳴き発生率の大きくなる割合より小さい。
【0026】比較例2のブレーキパッド9は、摩耗が進行するほど鳴き発生率が低下する。上記表3からわかるように、実施例1〜3のブレーキパッド1、5、7は、総厚時から7mm摩耗時(使用限界時)まで全体的に鳴き発生率が比較例1、2より小さいことがわかる。すなわち、比較例1では摩耗の進行に応じて鳴き発生率が大きくなり、途中で減少することもない。また、比較例2のブレーキパッド9では、使用初期の鳴き発生率が大きいという欠点を生じた。
【0027】
【発明の効果】以上述べたように本発明のブレーキパッドは、使用初期から使用限界時まで全体的にブレーキ鳴きの頻度を小さくすることができた。
【出願人】 【識別番号】000100780
【氏名又は名称】アイシン化工株式会社
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
【出願日】 平成10年12月10日(1998.12.10)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開2000−170807(P2000−170807A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−351302