トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 鉄道車両用ブレーキディスク
【発明者】 【氏名】櫻井 市蔵

【氏名】宮川 博文

【氏名】井上 力弥

【要約】 【課題】高速走行中に非常用に使用しても、過大な熱応力の発生を防止できる鉄道車両用ブレーキディスクを提供することである。

【解決手段】フィン6の先端と車輪2側面の間に0.2〜1.5mmの隙間9を設け、摺動面4での過大な発熱による熱膨張をディスク1の厚み方向に逃がすことにより、周方向の熱応力を緩和してクラックや変形の発生を防止するとともに、パッド5の押し付け力による摺動面4の逃げも最小限として、摺動面4での摩擦係数も高い値に保持できるようにしたのである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉄道車両の車輪側面両側に取り付けられ、表面側にパッドとの摺動面が、裏面側に放熱用のフィンが設けられた2枚一対のディスクより成る鉄道車両用ブレーキディスクにおいて、前記フィンの先端と車輪側面の間に0.2〜1.5mmの隙間が設けられたことを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。
【請求項2】 前記隙間が、前記ディスクの外周側ほど大きくなるように形成された請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
【請求項3】 前記ディスクが鋳鉄または粒子分散アルミニウム合金鋳物で形成された請求項1または2に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、一体型の鉄道車両用ブレーキディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄道車両用のブレーキには、電気式ブレーキと機械式ブレーキが用いられており、機械式ブレーキとしてはディスクブレーキが多く採用されている。通常、高速からの減速に電気ブレーキが使用され、ある程度減速してからディスクブレーキが使用される。但し、走行中に何らかの原因で電気系統のトラブルが発生して、電気式ブレーキが使用不能となったときは、高速走行中でもディスクブレーキを使用する必要がある。
【0003】前記ディスクブレーキには、車輪側面取り付け型のものと車軸取り付け型のものとがあり、車輪側面取り付け型のディスクブレーキは、車輪側面の空間を利用して、この空間にブレーキディスクを納める方式のため、コンパクトな設計とすることができる。
【0004】前記ブレーキディスクには、ディスクを一体に形成した一体型と、ディスクを複数の扇形形状に分割した分割型とがある。分割型ディスクは、ブレーキをかけた際の摩擦発熱による熱応力を緩和できるとともに、取り付けの際に車輪を車軸から取り外す必要がなく、交換が容易である利点を有するが、摺動面の分割部に生じるわずかの段差でパッドが消耗し易く、騒音も大きい欠点がある。一体型ディスクは、摺動面を平坦に形成でき、パッドの寿命を長く、かつ騒音も小さくできるとともに、加工が簡単で製造コストを安価にできる利点を有するが、熱応力が大きくなる。
【0005】上述したように、分割型ディスクは熱応力が小さいので、その素材としては、靱性には劣るが摺動特性に優れる鋳鉄や粒子分散アルミニウム合金鋳物が通常用いられている。一方、熱応力が大きくなる一体型ディスクには、通常、靱性の優れた鋳鋼や鍛鋼が用いられている。
【0006】図5は、従来の一体型ブレーキディスクを示す。このブレーキディスクは、2枚一対のディスク11より成り、この一対のディスク11が車輪12の側面両側に、ボルト13で締結されている。各ディスク11の表面側には平坦な摺動面14が、裏面側には放熱用のフィン15が設けられ、各摺動面14の両側からパッド16が押し付けられるようになっている。
【0007】前記各ディスク11は、車輪12側面の限られた空間に納めるために、厚みを薄くする必要があり、パッド16の押し付け力による弾性変形でディスク11が車輪12側面側に逃げて、摺動面14でのパッド16との摩擦力が低下しないように、前記フィン15の先端は車輪12の側面にほぼ接するように設計されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の一体型ブレーキディスクは、前記トラブル等により高速走行状態で非常用に使用されると、過大な発熱による熱応力で、クラックや変形が生じる問題がある。
【0009】すなわち、摺動面での過大な発熱でディスクが熱膨張すると、摺動面が設けられたディスク外周側では周方向の圧縮応力が、締結用ボルト孔が設けられたディスク内周側では周方向に引張応力が発生する。従来のディスクは、前述したように、フィンが設けられた裏面側が車輪側面で厚み方向を拘束されているため、周方向の圧縮応力と引張応力の絶対値が大きくなる。
【0010】前記引張応力が過大になると、応力集中しやすいディスクの内周側端面や締結用ボルト孔を起点としてクラックが発生する。このクラックは繰返の熱応力で成長し、ディスクの破壊に至る場合がある。ディスク素材の靱性が高いときは、クラックの替わりに熱変形が生じ、パッドとの当たりが不均一となる。極端な場合は、ディスクが常時パッドと接触するようになり、交換を余儀なくされる。
【0011】そこで、この発明の課題は、高速走行中に非常用に使用しても、過大な熱応力の発生を防止できる鉄道車両用ブレーキディスクを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、この発明は、鉄道車両の車輪側面両側に取り付けられ、表面側にパッドとの摺動面が、裏面側に放熱用のフィンが設けられた2枚一対のディスクより成る鉄道車両用ブレーキディスクにおいて、前記フィンの先端と車輪側面の間に0.2〜1.5mmの隙間を設けた構成を採用したのである。
【0013】すなわち、フィンの先端と車輪側面の間にわずかの隙間を設けることにより、摺動面での過大な発熱による熱膨張をディスクの厚み方向に逃がし、前記周方向の圧縮と引張の熱応力を低減できるようにしたのである。前記隙間の下限値0.2mmと上限値1.5mmは、後述するブレーキ試験結果に基づいて決定したものであり、隙間が0.2mm未満では熱応力を十分に低減できず、1.5mmを越えると、パッドの押し付け力でディスクが車輪側面側に逃げ、摺動面でのパッドとの摩擦力を十分に確保できない。
【0014】前記隙間を、前記ディスクの外周側ほど大きくなるように形成することにより、前記周方向熱応力の半径方向の応力勾配をより小さくすることができる。すなわち、摺動面での発熱量は摺動距離の長い外周側の方が大きいため、ディスク外周側ほど熱膨張量は大きくなる。前記半径方向の隙間の変化は、テーパ状や段差状等とすることができる。
【0015】前記ディスクを鋳鉄または粒子分散アルミニウム合金鋳物で形成することにより、摺動面での摺動特性を高めることができる。
【0016】
【実施の形態】以下、図1乃至図4に基づき、この発明の実施形態を説明する。このブレーキディスクは、図1に示すように、2枚一対のSiC粒子分散アルミニウム合金鋳物製ディスク1より成り、この一対のディスク1が、車輪2の側面両側に形成された空間に納められ、ボルト3で締結されている。各ディスク1の表面側には平坦な摺動面4が設けられ、各摺動面4の両側からパッド5が押し付けられるようになっている。
【0017】前記ディスク1の裏面側には、図2および図3に示すように、放射状に多数の放熱用フィン6が設けられ、これらのフィン6の内周側には、前記締結ボルト3用の孔7が設けられている。なお、最外周部には、車輪2との接触を避けるために、逃げ面8が設けられている。
【0018】前記フィン6の先端と車輪2の側面の間には、図4に拡大して示すように、外周側にテーパ状に拡がる隙間9が設けられている。この隙間9は0.2mm以上に形成され、前記逃げ面8の部分を除く外周端で1.1mmになっている。
【0019】この実施形態では、ディスク素材にSiC粒子分散アルミニウム合金鋳物を用いたが、その他の粒子分散アルミニウム合金鋳物も採用することができる。勿論、鋳鉄や鋼系の素材を用いることもできる。
【0020】以下に実施例および比較例を上げる。
【0021】
【実施例】図1乃至図4に示した逃げ面8の部分を除く外周端で隙間9が1.1mmのブレーキディスクを用意した。
【0022】
【比較例】実施例と同じ寸法と素材で、前記隙間を1.6mmと大きくしたブレーキディスク(比較例1)と、前記隙間が0.1mmの従来のブレーキディスク(比較例2)を用意した。
【0023】上記実施例と比較例のブレーキディスクを、高速回転軸に車輪が取り付けられたブレーキ試験機に装着し、種々の回転速度でブレーキ試験を行った。試験時のパッド押し付け力と高速回転軸のトルク増量からディスク摺動面での摩擦係数を算出した。
【0024】
【表1】

【0025】試験結果を表1に示す。表中の摩擦係数比は、比較例2を基準としたものである。従来品の比較例2は高い摩擦係数を示すが、回転速度を230km/hとしたときに締結用ボルト孔の部分にクラックが発生した。
【0026】実施例のブレーキディスクは、最高試験速度の355km/hでもクラックは発生せず、従来品に対する摩擦係数比も90%以上の高い値を確保できることがわかる。一方、隙間の大きい比較例1は、クラックは発生しないが、170km/h以上の高速領域での摩擦係数比の低下が大きく、90%を割っている。
【0027】
【発明の効果】以上のように、この発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、フィンの先端と車輪側面の間に0.2〜1.5mmの隙間を設けたので、高速走行中に非常用に使用されても、摺動面での過大な発熱による熱膨張をディスクの厚み方向に逃がし、周方向の熱応力を緩和してクラックや変形の発生を防止できるとともに、パッドの押し付け力による摺動面の逃げも最小限として、摺動面での摩擦係数も高い値に保持することができる。また、この熱応力の緩和により、靱性の低い鋳鉄や粒子分散アルミニウム合金鋳物でディスクを形成することができ、摺動面での摺動特性に優れた一体型ブレーキディスクを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
【出願日】 平成10年12月10日(1998.12.10)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2000−170805(P2000−170805A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−351089