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【発明の名称】 自在継手装置
【発明者】 【氏名】鈴木 善博

【氏名】稲垣 和也

【氏名】鈴木 学

【要約】 【課題】簡単な構造で容易にダストカバーを確実に位置決め固定できる自在継手装置を提供する。

【解決手段】鋼板をプレス加工して厚さ方向に軸方向を有し先端にドーム状に縮径する開口部5を開口し基端に取付開口部6を開口する略円筒状のソケット部7を突出形成する。ソケット部7の外周面に開口部5側からプレス加工にて略円筒状の筒状部10を形成して余肉流動させ、外周面にフランジ状の鍔部8を突設する。ベアリングシート31を球頭部24に取り付けたボールスタッド21の軸部22を取付開口部6から挿入して開口部5に挿通し、球頭部24を収容する。取付開口部6に閉塞板11をかしめ加工にて取り付ける。ダストカバー41を鍔部8に位置決めしつつソケット部7の筒状部10と軸部22とに嵌着し、自在継手装置本体1を形成する。高精度のソケット部7に鍔部8を容易に形成でき、製造性を向上できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端に球頭部を有した軸部を備えたボールスタッドと、前記球頭部を摺動可能に収容し前記軸部が挿通される挿入孔を開口したベアリングシートと、略板状に形成されプレス加工により厚さ方向に沿って軸方向を有する略円筒状で前記ベアリングシートを収容し先端に前記軸部を挿通する開口部を有したソケット部が形成されたアーム部と、このアーム部のソケット部の基端側の開口を閉塞して取り付けられ前記ボールスタッドの球頭部に所定のプレロードを付与する閉塞部材と、一端が前記ボールスタッドの軸部に嵌着され他端が前記アーム部のソケット部に嵌着される略筒状のダストカバーとを備え、前記アーム部のソケット部は、外周面に先端側から余肉流動されて外方に向けて突出形成され前記ソケット部の先端側に向けて面する位置決め段差部にて前記ダストカバーを位置決めする鍔部を有したことを特徴とする自在継手装置。
【請求項2】 位置決め段差部は、ソケット部の軸方向に対して略垂直であることを特徴とする請求項1記載の自在継手装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、球頭部を摺動可能に収容するソケット部を備えたアーム部にダストカバーを取り付けた自在継手装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の自在継手装置としては、例えば特開平10−19032号公報および特開平10−37944号公報に記載の構成が知られている。
【0003】そして、これら特開平10−19032号公報および特開平10−37944号公報に記載の自在継手装置は、略板状の鋼板をプレス加工してボールスタッドの軸部を挿通する開口部近傍が一面側に折り返された凹状で、開口部近傍がさらに縮径状にプレス加工されてボールスタッドの球頭部を収容するベアリングシートを収容するソケット部を形成している。そして、折り返しによりソケット部の外周面に設けられた段差部分に、ボールスタッドの軸部に一端が嵌着されるダストカバーの他端が位置決めされてソケット部に嵌着される構成が採られている。
【0004】しかしながら、これら特開平10−19032号公報および特開平10−37944号公報に記載の鋼板を折り返し加工してソケット部を形成する構成では、ボールスタッドに一定のプレロードを付与するためのソケット部の寸法精度を得ることが困難であるとともに、ソケット部の外径寸法精度の向上も困難でダストカバーを一定の固定強度で嵌着固定することが困難となり、ダストカバーのシール性の向上が図りにくい。
【0005】一方、一定のプレロードの付与が容易でかつダストカバーを取り付ける外周面の寸法精度も容易に向上できるソケット部の構造として、例えば特開平10−100628号公報に記載の構成が知られている。
【0006】この特開平10−100628号公報に記載のものは、鋼板をプレス加工して一面側に略円筒状に突出し先端側の開口を縮径加工したソケット部を設け、このソケット部内にボールスタッドの球頭部を収容したベアリングシートを縮径した開口からボールスタッドの軸部を導出して収容する。そして、ソケット部の縮径する開口と反対側の開口に、球頭部に所定のプレロードを付与して閉塞板を取り付けて閉塞する構成が採られている。
【0007】しかしながら、この特開平10−100628号公報に記載の構成において、ダストカバーを取り付ける際、仮にソケット部の外周面に嵌着させるのみでは、例えば飛び石などによる外部から応力やボールスタッドの揺動などにより、ダストカバーの嵌着位置が変動し、外れてしまうおそれがある。また、仮にソケット部の基端のアーム部にダストカバーを位置決めするように嵌着したのでは、ダストカバーが大型化するとともに、ソケット部の基端まで嵌挿させる煩雑な組み付け作業が必要となり、製造性の向上が図りにくい。さらに、確実にダストカバーを位置決めするためには、別途リングを嵌着固定するなど位置決めするための部材が必要となるなどの問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、特開平10−19032号公報および特開平10−37944号公報に記載の鋼板を折り返し加工してソケット部を形成する構成では、ボールスタッドに一定のプレロードを付与するためのソケット部の寸法精度を得ることが困難であるとともに、ソケット部の外径寸法精度の向上も困難でダストカバーを一定の固定強度で嵌着固定することが困難となり、ダストカバーのシール性の向上が図りにくい。
【0009】また、特開平10−100628号公報に記載のプレス加工して先端部が縮径する開口を有したソケット部内にボールスタッドの球頭部を収容したベアリングシートを収容してソケット部の反対側の開口を閉塞板にて閉塞するものでは、ベアリングシートを大型化することなく確実に簡単な構造で位置決め固定することが困難である問題がある。
【0010】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、簡単な構造で容易にダストカバーを確実に位置決め固定できる自在継手装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の自在継手装置は、一端に球頭部を有した軸部を備えたボールスタッドと、前記球頭部を摺動可能に収容し前記軸部が挿通される挿入孔を開口したベアリングシートと、略板状に形成されプレス加工により厚さ方向に沿って軸方向を有する略円筒状で前記ベアリングシートを収容し先端に前記軸部を挿通する開口部を有したソケット部が形成されたアーム部と、このアーム部のソケット部の基端側の開口を閉塞して取り付けられ前記ボールスタッドの球頭部に所定のプレロードを付与する閉塞部材と、一端が前記ボールスタッドの軸部に嵌着され他端が前記アーム部のソケット部に嵌着される略筒状のダストカバーとを備え、前記アーム部のソケット部は、外周面に先端側から余肉流動されて外方に向けて突出形成され前記ソケット部の先端側に向けて面する位置決め段差部にて前記ダストカバーを位置決めする鍔部を有したものである。
【0012】そして、ボールスタッドの軸部の一端に設けた球頭部を摺動可能に収容するベアリングシートを収容するアーム部のソケット部の外周面に、先端側から余肉流動して外方に向けて突出しソケット部の先端側に向けて面する位置決め段差部にてダストカバーを位置決めする鍔部を設けるため、高い寸法精度が得られるソケット部のボールスタッドの軸部を抜け止めして挿通する開口部近傍にダストカバーを位置決めする鍔部が容易に形成され、球頭部に一定のプレロードを付与して確実にダストカバーが取り付けられ、製造性が向上する。
【0013】請求項2記載の自在継手装置は、請求項1記載の自在継手装置において、位置決め段差部は、ソケット部の軸方向に対して略垂直であるものである。
【0014】そして、鍔部の位置決め段差部をソケット部の軸方向に対して略垂直に形成するため、ダストカバーは確実に位置決めされて取り付けられる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の自在継手装置の実施の一形態を図面を参照して説明する。
【0016】図1において、1は自在継手装置本体で、この自在継手装置本体1は、例えば図示しない自動車の車高センサアームとサスペンションを繋ぐリンク機構などに用いられる。そして、この自在継手装置本体1は、アーム部2を有している。このアーム部2は、例えば細長板状の鋼板にて形成され、長手方向の一端側にボールジョイント部3が設けられている。
【0017】すなわち、アーム部2の長手方向の一端側には、厚さ寸法に沿って軸方向を有し突出する先端に略ドーム状に縮径する開口部5を開口するとともに基端側に取付開口部6を開口する略円筒状のソケット部7が設けられている。そして、このソケット部7は、開口部5側がプレス加工にて縮径加工されている。また、ソケット部7の外周面には、外方に向けてフランジ状に突出する鍔部8が設けられ、この鍔部8の開口部5側がソケット部7の軸方向に対して略垂直の面となる位置決め段差部9となっている。さらに、ソケット部7の外周面には、鍔部8から先端側に位置して略円筒状の筒状部10が設けられている。
【0018】さらに、アーム部2のソケット部7の取付開口部6には、略円板状に形成された閉塞板11が取付開口部6を閉塞して一体的に取り付けられている。そして、ソケット部7の取付開口部6側の内周面には、閉塞板11の外径と略同寸法となるように径大に形成されて当接部12が段差状に形成され、ソケット部7の取付開口部6の縁には内方に向けてフランジ状に突出し閉塞板11の周縁に係止する係止部13が設けられている。また、この閉塞板11は、略中央部分が例えばエンボス加工にて一面側に膨出するように形成され、他面側に向けて拡開するように略円錐凹状の載置面部14が形成されている。
【0019】そして、ソケット部7には、金属製のボールスタッド21が取り付けられている。このボールスタッド21は、ソケット部7の開口部5に嵌挿してソケット部7から一端側が導出する棒状の軸部22の他端に小径部23を介してソケット部7内に収容される略球状の球頭部24を設けて構成されている。なお、軸部22の一端側である先端部には、雄ねじ部25が設けられている。
【0020】また、ソケット部7内には、ボールスタッド21の球頭部24とソケット部7の内面との間に位置して合成樹脂製のベアリングシート31が配設されている。このベアリングシート31は、ボールシート32とクッション33とにて構成され、ボールシート32は、ポリアセタール樹脂などの良好なベアリング特性を有する耐荷重性の高い剛性および弾性を有した硬質合成樹脂にて成形され、クッション33は、ポリウレタン樹脂などの比較的軟質の樹脂材料で成形されている。
【0021】そして、このボールシート32は、一端にボールスタッド21の球頭部24が挿入される挿入孔35を開口する円筒状の円筒胴体部36を有し、この円筒胴体部36の他端縁に内方にフランジ状に一体に設けられた底部37を有し、略有底円筒状に形成されている。
【0022】また、クッション33は、ボールシート32の底部37に嵌挿可能な略環状に形成され、一縁にはソケット部7に取り付けられる閉塞板11の載置面部14に当接する載置部38が設けられ、他縁には外面側が底部37の内面側に載置され内面側に球頭部24が摺動可能に当接する摺動部39が一体的にフランジ状に突設されている。
【0023】そして、ベアリングシート31は、ボールシート32の底部37に摺動部39が重なり合うようにクッション33が嵌挿されて、略有底円筒状に一体的にソケット部7内に組み付けられて収容される。さらに、ボールスタッド21の軸部22がベアリングシート31のボールシート32の挿入孔35およびソケット部7の開口部5から外方に突出して、ベアリングシート31内にボールスタッド21の球頭部24が摺動可能に収容されている。
【0024】一方、ダストカバー41は、一端に略環状で端面がソケット部7の位置決め段差部9に当接してソケット部7の筒状部10の外周面に嵌着する第1の嵌着部42を有し、他端に略環状でボールスタッド21の軸部22に嵌着する第2の嵌着部43を有した略円筒状に形成されている。そして、ダストカバー41の第1の嵌着部42がソケット部7の筒状部10に嵌着するとともに、第2の嵌着部43がボールスタッド21の軸部22に嵌着してダストカバー41が取り付けられ、ボールジョイント部3がアーム部2の一端部に構成されている。
【0025】次に、上記実施の一形態の自在継手装置本体1を製造する動作を説明する。
【0026】まず、例えば細長板状の鋼板の一端部を厚さ方向にプレス加工して、図2に示すように、鋼板の一面側に厚さ方向に軸方向を有し先端にドーム状に縮径する開口部5を開口するとともに基端側に取付開口部6を開口するとともに、取付開口部6側の内周面に当接部12を形成して、ソケット部7を突出形成する。
【0027】そして、このソケット部7の開口部5側をプレス加工により開口部5が開口する先端側から外周面の一部を削り取るように略円筒状に加工し、外周面の一部を余肉流動させて、ソケット部7の外周面に外方に向けてフランジ状に鍔部8を突出形成し、アーム部2を形成する。
【0028】このプレス加工されたアーム部2のソケット部7に、ベアリングシート31を球頭部24に取り付けたボールスタッド21の軸部22を取付開口部6から挿入してソケット部7の開口部5から挿通し、ベアリングシート31を取り付けた球頭部24をソケット部7内に収容する。この後、取付開口部6に閉塞板11の周縁をソケット部7の当接部12に当接させて取付開口部6を閉塞し、取付開口部6の周縁を内方にプレス加工である圧印加工にて係止部13をかしめ形成して閉塞板11を取り付け、アーム部2にボールジョイント部3を構成する。
【0029】この後、ダストカバー41の第1の嵌着部42をソケット部7の鍔部8の位置決め段差部9に当接させて位置決めしつつソケット部7の外周面の筒状部10に嵌着させるとともに、他端の第2の嵌着部43をボールスタッド21の軸部22に嵌着させてボールジョイント部3にダストカバー41を取り付け、自在継手装置本体1を形成する。
【0030】上述したように、ボールスタッド21の軸部22の一端に設けた球頭部24を摺動可能に収容するベアリングシート31を収容するアーム部2のソケット部7の外周面に、プレス加工によりボールスタッド21の軸部22を挿通する開口部5が開口形成される側の先端側から外周面を削り取るように余肉流動させて、ソケット部7の軸方向の先端側に向けて面する位置決め段差部9にダストカバー41の第1の嵌着部42を位置決めして削り取った部分に嵌着させる鍔部8を設けるため、高い寸法精度が得られるソケット部7にダストカバー41を位置決めする鍔部8を容易に形成でき、球頭部24に一定のプレロードを付与して確実にダストカバー41を取り付けでき、製造性を向上できるとともに、鍔部8にてダストカバー41の第1の嵌着部42の端部が保護される状態となり、例えば飛び石などのダストカバー41の嵌着方向と反対側の取り外される側に向けた外部からの力によりダストカバーが外れるなどを確実に防止できる。
【0031】また、鍔部8の位置決め段差部9をソケット部7の軸方向に対して略垂直に形成するため、ダストカバーを確実に位置決めして取り付けできる。
【0032】さらに、鋼板からアーム部2を形成する工程が全て高精度加工できるプレス加工ででき、製造性を向上できるとともに、自在継手装置本体1の安定した特性が得られ、歩留まりも向上できる。
【0033】なお、上記実施の形態において、自動車のリンク機構に用いられるリンク機構の自在継手装置について説明したが、他のいずれの自在継手装置に適用できる。
【0034】また、一端に開口部5を開口するソケット部7をプレス加工し、このソケット部7の外周面に鍔部8を設けて説明したが、ソケット部7を開口部5が開口しないドーム状に形成し、鍔部8を設けた後に開口部5を開口形成したり、鋼板をプレス加工する際にソケット部7を略円筒状に突出形成し、先端側をドーム状に縮径加工するとともに鍔部8を形成するなどしてもよく、ダストカバー41を確実に安定して取り付けるために高精度にソケット部7の外周面をプレス加工にて筒状に形成することにより余肉流動させて鍔部を形成するいずれの構成でもできる。
【0035】
【発明の効果】請求項1記載の自在継手装置によれば、ボールスタッドの球頭部を収容するアーム部のソケット部の外周面に、先端側から余肉流動して外方に向けて突出しソケット部の先端側に向けて面する位置決め段差部にてダストカバーを位置決めする鍔部を設けるため、高い寸法精度が得られるソケット部にダストカバーを位置決めする鍔部を容易に形成でき、球頭部に一定のプレロードを付与して確実にダストカバーを取り付けでき、製造性を向上できる。
【0036】請求項2記載の自在継手装置によれば、請求項1記載の自在継手装置の効果に加え、鍔部の位置決め段差部をソケット部の軸方向に対して略垂直に形成するため、ダストカバーを確実に位置決めして取り付けできる。
【出願人】 【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
【出願日】 平成11年4月9日(1999.4.9)
【代理人】 【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄 (外2名)
【公開番号】 特開2000−291627(P2000−291627A)
【公開日】 平成12年10月20日(2000.10.20)
【出願番号】 特願平11−102696