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【発明の名称】 ナット装置
【発明者】 【氏名】山崎 秀雄

【要約】 【課題】座体による締め付け力の設定が容易にできながら、木痩せが原因となる座体の緩みを確実に防止でき、その上、ナットの緩みも確実に阻止できるナット装置を得ること。

【解決手段】主ナット部21に円筒部22を連設したナット体2と、皿バネ5…5の受部33とテーパー受面3bを有する座体3を備え、これらナット体2と座体3の間で円筒部22の外周上にコイル状のスプリング4とスプリング4の挿通を許す挿通孔5aを有する複数の皿バネ5…5とテーパー割りカラー6を介装すると共に、スプリング4の弾性力でくさび部材6を該スプリング4とテーパー受面3bとの間に挟持状態で介装するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 主ナット部21とその長さ方向一端部に連設される円筒部22とを有するナット体2と、ボルト挿通孔3aを有する座体3と、円筒部22の外周に挿嵌されるコイル状のスプリング4と、スプリング4の挿通を許す挿通孔5aを有する複数の皿バネ5…5と、円筒部22の外周に挿嵌されるくさび部材6とから成り、ナット体2はその主ナット部21と円筒部22との中心部に一連に延びる螺子孔2aを有しており、座体3はその主ナット部21との対向部に皿バネ5…5の受部33を有していると共に、挿通孔3aに受部33側へ行くに従って拡径するテーパー受面3bが形成されており、複数の皿バネ5…5はスプリング4の外周上で主ナット21と座体3との間に介装されており、くさび部材6はスプリング4とテーパー受面3bとの間に挟持状態で介装されていることを特徴とするナット装置。
【請求項2】 ナット体2はその主ナット部21の長さ方向他端に所定の締付トルクで破断する破断溝24を介して連設される副ナット部23を有していることを特徴とする請求項1に記載のナット装置。
【請求項3】 ナット体2における主ナット21はその円筒部22側にフランジ21aを有しており、座体3の受部33は円筒状を呈していると共に、受部33の先端部がフランジ21aに外嵌され、かつ、その先端がフランジ21aの外壁面内方にカシメられて、座体3とナット体2とがその長さ方向に対して近接離反可能で分離不能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のナット装置。
【請求項4】 くさび部材6が外周にテーパー受面3bと対応するテーパー面6aを有するテーパー割りカラーであることを特徴とする請求項1に記載のナット装置。
【請求項5】 くさび部材6が複数のボール60…60と、これらボール60…60を保持し、かつ、一端部にスプリング4との当り部61aを有するリティーナ61とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のナット装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、座体の緩みを防止するナット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ボルト、ナットで例えば木材同志を締結して家などを組建てる場合に、木材の乾燥や圧力によって起こる木材の縮みつまり木痩せが原因となる座金の緩みや、家全体の耐震力を維持する手段として、図6に示したような座金の緩み止め装置が知られている。
【0003】この座金の緩み止め装置は、中心部にテーパー孔70aを有する座金70と外周にテーパー面71aを有するC形のリング71とコイル状のスプリング72とナット73とから成り、木材A,Aに挿通されたボルトBに座金70、リング71、スプリング72を入れ、ナット73をボルトBの螺子部bに締め付けることにより、スプリング72を介してリングを座金70のテーパー孔に押し込みながら座金70を木材Aに押し付けて締結する構成となされている。
【0004】そして、木材A,Aが木痩せしたときには、スプリング72により座金70が木痩せに追従して木材A側に移動して密着状態を維持し、また、地震などの力が木材Aに加わって座金70がナット73側に押し戻されるようなときには、リング71がくさび作用により縮径してボルトBを締め付け、これによりナット73側へ戻される力を締め付ける力に変え、座金70の戻りを抑えるようになされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記した座金の緩み止め装置にあっては、ナット73の締め付けによりコイル状のスプリング72を介して座金70を締め付ける構造であるから、バラツキの多いスプリング72ではナット73による締め付け力を一定に設定しにくく、また、ナット73に外力がかかった場合にスプリング72端部からの弾発力だけではナット73に緩みが生じ易い構造となっている。さらに、リング71がくさび作用により縮径してボルトを締め付ける時、リング71の内面がボルトBの螺子部bの先端に点接触する構造であるため、大きな締め付け力が得られにくいものであった。
【0006】そこで、本発明は座体による締め付け力の設定が容易にできながら、木痩せが原因となる座体の緩みを確実に防止でき、その上、ナットの緩みも確実に阻止できるナット装置の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本願の請求項1に記載の発明は、主ナット部21とその長さ方向一端部に連設される円筒部22とを有するナット体2と、ボルト挿通孔3aを有する座体3と、円筒部22の外周に挿嵌されるコイル状のスプリング4と、スプリング4の挿通を許す挿通孔5aを有する複数の皿バネ5…5と、円筒部22の外周に挿嵌されるくさび部材6とから成り、ナット体2がその主ナット部21と円筒部22との中心部に一連に延びる螺子孔2aを有し、座体3がその主ナット部21との対向部に皿バネ5…5の受部33を有していると共に、挿通孔3aに受部33側へ行くに従って拡径するテーパー受面3bを形成し、複数の皿バネ5…5がスプリング4の外周上で主ナット21と座体3との間に介装され、くさび部材6がスプリング4とテーパー受面3bとの間に挟持状態で介装されていることを特徴とする。
【0008】また、本願の請求項2に記載の発明は、所定の締付トルクが簡単かつ正確に得られるようにするため、上記した請求項1に記載の構成に加えて、ナット体2における主ナット部21の長さ方向他端に所定の締付トルクで破断する破断溝24と、破断溝24を介して連設される副ナット部23とを設けたことを特徴とする【0009】また、本願の請求項3に記載の発明は、各部品をセット化するため、上記した請求項1に記載の構成に加えて、ナット体2における主ナット21の円筒部22側にフランジ21aを設け、座体3の受部33を円筒状とすると共に、受部33の先端部をフランジ21aに外嵌し、その先端をフランジ21aの外壁面内方にカシメて、座体3とナット体2とをその長さ方向に対して近接離反可能で分離不能に連結したことを特徴とする。
【0010】さらに、本願の請求項4に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明におけるくさび部材6の具体的な構成として、外周にテーパー受面3bと対応するテーパー面6aを有するテーパー割りカラーを用いたことを特徴とする。
【0011】また、本願の請求項5に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明におけるくさび部材6の具体的な構成として、複数のボール60…60と、これらボール60…60を保持し、かつ、一端部にスプリング4との当り部61aを有するリティーナ61とで成る構成としたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜3は、本実施の形態に係るナット装置を示し、該ナット装置1は図1に示すように、木材A,Aを締結するボルトBに螺合するナット体2と、ボルト挿通孔3aを有する座体3と、コイル状のスプリング4と、複数の皿バネ5…5とテーパー割りカラー6とで成る。
【0013】ナット体2は、図2に示したように、フランジ21aをもつ主ナット部21と、その長さ方向一端部でフランジ21a側に一体に連設される円筒部22と、他端部に一体に連設されるトルク設定用の副ナット23とで成り、これら主ナット部21、円筒部22、副ナット部23の中心部には、一連に延びるねじ孔2aが形成されている。主ナット部21と副ナット部23との間には所定のトルクが作用したときに両者を破断するための破断溝24が形成されている。
【0014】座体3は、一端に鍔状座部31をもち、中心部にボルト挿通孔3aを有する筒状の座本体32と、座本体32の他端外周部から長さ方向外方に一体に延びる薄肉の円筒状の受部33とで成る。ボルト挿通用3aの円筒部側には受部33側へ行くに従って拡径するテーパー受面3bが形成されている。受部33はナット体2における円筒部22とフランジ21aの外周を覆うよう外嵌されると共に、その先端がフランジ21aの外壁面内方にカシメられて、座体3とナット体2とがその長さ方向に対して近接離反可能で分離不能に連結されている。
【0015】スプリング4は円筒部22の外周に挿嵌される。皿バネ5は中心部にスプリング4の挿通を許す挿通孔5aを有し、フランジ21aの内壁面と座本体31の他端面との間に介装されると共に、座本体31の受部33で皿バネ5の外周が覆われる。テーパー割りカラー6は、外周にテーパー受面3bと対応するテーパー面6aを有し、円筒部22の外周に挿嵌されると共にスプリング4とテーパー受面32bとの間に挟持状態で介装されている。
【0016】そして、これらのスプリング4、皿バネ5…5、テーパー割りカラー6は上記した座体3の受部33の先端部をナット体2のフランジ21aにカシメ止めする際に、予め円筒部22の外周に挿嵌されていて、そのカシメ止めにより、ナット体2、座体3、スプリング4、皿バネ5…5、テーパー割りカラー6が一つにセットされる。
【0017】次に以上のようにセットされたナット装置1を用いて、本材A,Aを締結する場合の動作を説明する。まず、図1に示すように重ね合わせた木材A,Aの挿通孔a,aを貫通するボルトBの螺子部bに、ナット装置1の座体3を通してそのナット体2を螺合する。このナット体2の締め付けにより、ナット体2と共に座体3が木材A側に移動して、木材Aに座体3が当接することになる。当接後も続けてナット体2を締め付けることによりナット体2がスプリング4と皿バネ5…5とを圧縮しながら、座体3を木材Aに押圧して木材A,Aを締結することができる。
【0018】その場合、締付トルク設定用の副ナット部23を設けているので、この副ナット部23をスパナやトルクレンチなどの締付具で締め付ける。そして、その締め付けが所定の締め付けトルクになるとトルク設定用の破断溝24が破断する。この破断は目視により確認することができるので、その確認時点で副ナット23の締め付けを停止する。これにより所定の締め付けトルクが簡単かつ正確に得られることになる。
【0019】また、締め付け後には、スプリング4の弾発力と、皿バネ5…5による大きな弾発力との組合せによる主ナット21の緩み止め作用が得られると共に、分断された主ナット21と副ナット23とのダブルナット機能によるの緩み止め効果も期待することができる。その結果、これら両緩み止め作用が相俟って主ナット部21の緩みをより確実に防止することができる。
【0020】そして、木材Aが木痩せしたときには、図3に示したようにスプリング4と、皿バネ5…5の伸張により座体3が木痩せに追従して木材A側に移動し常に締め付けることになる。その結果、木痩せが原因となる座体3の緩みを防止でき、耐震性を向上できる。また、地震などにより、木材A側からボルトBとナット装置1に大きな力が加わって座体3がナット体側に移動しようとした場合には、座本体32のテーパー受面3bとテーパー割りカラー6のテーパー面6aとの係合関係で、座体3のナット体側への移動力がテーパー割りカラー6を縮径する力に変えれることになる。これにより、テーパー割りカラー6が円筒部22を締め付けて座体3の上記移動を阻止し、木材Aと座体3との間における隙間の発生を防止することになる。その場合、テーパー割りカラー6の内周面とナット体2における円筒部22の外周面とが面接触することになるのでテーパー割りカラー6、つまり座体3のナット体側への移動をより確実に阻止でき、耐震力の低下を防止できる。
【0021】また、上記した実施の形態では、くさび部材としてテーパー割りカラー6を用いたけれども、サビの多発する締結部は、例えば図4に示すように、複数のボール60…60を備えたリティーナ61を用いてもよい。その場合、ボール60としては、例えばステンレス製のものを用い、また、リティーナ61は、その一端部にスプリング4との当り部61aを有しており、また、他端側にボール60…60を保持する溝61b…61bが形成されている。
【0022】このリティーナ61を用いた場合にも、上記したくさびリング6の場合と同様にスプリング4の伸張作用で常にボール60…60を座体3に押し付けて座体3を木材側に押圧するのである。また、地震などにより、座体3がナット体側に移動しようとした場合には、座本体32のテーパー受面3bと円筒部22との間にボール60…60が食い込むくさび作用で、ボール60…60を座体3のナット体2側への移動を阻止する力に変えられ、座体3のナット体2側への移動を阻止する効果が期待できる。
【0023】なお、本発明のナット装置1は、木材の締結に限られるものではなく、金属部材や樹脂部材或いはこれら部材の組合せによる締結にも適用できることは勿論である。
【0024】また、上記した実施の形態では、ナット体2の主ナット部21の長さ方向他端に所定の締付トルクで破断する破断溝24を介して副ナット部23を連設したけれども、ナット体2に副ナット部23を設けなくても、使用することは可能である。なお、その場合、例えば図5に示すように、主ナット21の各対向辺の中央外面に締結完了目視用のマーク溝21b…21bを設けておくのが好ましい。つまり、ナット体2にマーク溝21bを設けるに際し、締結完了時において、マーク溝21bにおけるフランジ21a側端部21cと座体3における受部33の先端部33aとが一致するのように設定しておく。
【0025】このようにマーク溝21bを設けたナット体2を用いれば、ナット体2のボルト締付時、マーク溝21bにおけるフランジ21a側端部21cと座体3における受部33の先端部33aとが一致するのを目視することにより締結完了を確認でき、それでいて、該ナット体2を圧造成形により低コストで量産が可能となる。
【0026】
【発明の効果】以上のように本願の発明によれば、主ナット部21に円筒部22を連設したナット体2と、皿バネ5…5の受部33とテーパー受面3bを有する座体3を用い、これらナット体2と座体3の間で円筒部22の外周上にコイル状のスプリング4とスプリング4の挿通を許す挿通孔5aを有する複数の皿バネ5…5とくさび部材6を介装すると共に、スプリング4の弾性力でくさび部材6を該スプリング4とテーパー受面3bとの間に挟持状態で介装するようにしたから、該ナット装置1のボルトへの締め付け時には、スプリング4の弾発力と、皿バネ5…5による大きな弾発力との組合せで座体による締め付け力の設定が容易にできて、木痩せが原因となる座体の緩みを確実に防止できる。また、地震などにより、座体3がナット体側に移動しようとした場合にも、くさび部材6がボルトの螺子部ではなくナット体2における円筒部22の外周面を締め付けて座体3の移動をより確実に阻止することが可能となる。その上、スプリング4の弾発力と、皿バネ5…5による大きな弾発力との組合せで座体による締め付け力を設定するため、外力によるナット体の緩みも確実に阻止することができる。
【0027】また、ナット体2の主ナット部21の長さ方向他端に所定の締付トルクで破断する破断溝24を介して副ナット部23を連設すれば、副ナット23を介して主ナット21を締め付けることにより、所定の締め付けトルクで破断溝24が破断することになり、これを目視により確認してその破断時に締め付けを停止することで所定の締め付けトルクを簡単かつ正確に設定することが可能となる。また、破断後には、副ナット23が主ナット21の緩み止めナットとしての機能を発揮して主ナット部21の緩みを防止することになる。
【0028】さらに、ナット体2における主ナット21の円筒部22側にフランジ21aを設け、座体3の受部33を円筒状とすると共に、受部33の先端部をフランジ21aに外嵌し、その先端をフランジ21aの外壁面内方にカシメて、座体3とナット体2とをその長さ方向に対して近接離反可能で分離不能に連結すれば、スプリング4、皿バネ5…5、くさび部材6をカバーした状態で、ナット体2、座体3、スプリング4、皿バネ5…5、テーパー割りカラー6が一つにナット装置としてセットでき、ボルトへの組み込み作業が楽に行えると共に、その管理が容易となる。
【出願人】 【識別番号】591255933
【氏名又は名称】株式会社アプト
【出願日】 平成11年5月10日(1999.5.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−320520(P2000−320520A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−167274