| 【発明の名称】 |
ボルト及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】太田 洋次
【氏名】鈴木 竜治
|
| 【要約】 |
【課題】ボルト・ナット等の初期螺合時における噛み合いを良好なものにする。
【解決手段】ナットのボルト挿入側の開口端部に、その雌ねじ部のフランク角と等しい角度の第1のテーパ状の面取り部を、またはその外側にフランク角より大きな角度の第2のテーパ状の面取り部を形成する一方、ボルトの先端部には、ナット側の第1の面取り部7と角度の等しいボルト側面取り部22を形成する。そのボルト側面取り部22を、ナットの第1の面取り部7に着座させることにより、ボルトとナットの互いの軸線がより一致するように姿勢調整する。また、ナットの第1の面取り部7及びボルトの面取り部22がいずれもねじのフランク角とほぼ等しくされていることから、不完全ねじ部の長さが短くなり、これによって噛み合い不良も生じにくくなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボルトの螺合開始側における先端部に、そのボルトの雄ねじ部のフランク角とほぼ等しい角度のテーパ状外周面が面取り部として形成され、その面取り部を残しつつその面取り部を基点として雄ねじ部が形成されていることを特徴とするボルト。 【請求項2】 請求項1の面取り部の内周側の直径は、そのボルトが螺合されるナット等の雌ねじ部材の雌ねじ部の内径とほぼ等しいか、それより小さくされれくされているボルト。 【請求項3】 ボルト素材の先端部に、予めそのボルトの雄ねじ部のフランク角とほぼ等しい角度のテーパ状外周面を面取り部として形成しておき、その面取り部を含んで雄ねじ部を形成することを特徴とするボルトの製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、ボルト及びその製造方法に関する。 【0002】なお、ここでボルトとは、主にナットと組んで用いる雄ねじをもった雄ねじ部材を総称する用語として用いる。またナットとは、主に軸心部に雌ねじが形成された雌ねじ部材を総称する用語として用いる。 【0003】 【従来の技術】従来より、ボルト先端部にテーパ状の面取りが形成されるのが普通である。これは一般に、ボルトをナットに入れやすくするものであるが、その面取り部の角度は、個々のボルトで異なり、雄ねじ部との相関を取ったものはない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来のボルトでは、ナットへの組付けの際に、ナットの軸心とボルトの軸心がずれたり、傾斜したりして、必ずしも噛み合わせが容易とは言えず、またその状態で無理に螺合しようとすると、ナットの不完全ねじ山とボルトのそれとが噛み込みを生じる場合もあり、ボルトとナットとを注意深く同心的に噛み合わせる必要がある。 【0005】 【課題を解決するための手段及び発明の効果】この発明のボルトは、ボルトの螺合開始側における先端部に、そのボルトの雄ねじ部のフランク角とほぼ等しい角度のテーパ状外周面が面取り部として形成され、その面取り部を残しつつその面取り部を基点として雄ねじ部が形成されていることを特徴とする。 【0006】ここで好ましくは、そのボルトの面取り部の内周側の直径(内径)は、そのボルトが螺合されるナットの雌ねじ部の内径とほぼ等しいか、それより小さくされる。 【0007】別の言い方をすれば、そのボルトの面取り部の内径は、ボルトの雄ねじ部のねじ内径とほぼ等しいか、それより小さくされる。 【0008】このようなボルトを製造する方法として、ボルト素材の先端部に、予めそのボルトの雄ねじ部のフランク角とほぼ等しいテーパ状外周面を面取り部として形成しておき、その面取り部を含んで雄ねじ部を形成することができる。。 【0009】この雄ねじ部のフランク角とほぼ等しい角度のテーパ状外周面(面取り部)を端として雄ねじ部がらせん状に形成されるが、そのテーパ状外周面の少なくとも一部はボルトの先端部に残っていて、ここにナット(雌ねじ部材の総称)の開口端部のテーパ状内周面が着座することで、ボルトはナットと同心的に位置決めされやすい。特に、ナットの開口端部にそのボルトのテーパ状外周面とほぼ等しい角度のテーパ状内周面が形成されていれば、いっそうボルト・ナットの同心性を高めやすいが、螺合の相手方が一般的なナットであっても、そのナットの雌ねじ部のフランク面が、それとほぼ対応する角度のボルト側の上記面取り部に係合しやすいので、同心的な位置決め機能は発揮される。 【0010】また、雄ねじ部のフランク角とほぼ等しい角度のテーパ状外周面(面取り部)を基点(始端又は終端)として雄ねじ部が形成されることで、不完全ねじ部の長さを従来に比べて、例えば1/2ないし1/3程度に短くすることができる。これによりたとえボルトとナットが傾斜状態でも、噛み込みが生じにくくなり、噛み合い不良を減少させる上で有効である。 【0011】上記のようにボルトの面取り部の内径を、ボルトの雄ねじ部のねじ内径とほぼ等しいか、それより小さくすれば、このボルトと相手側のナットとの芯ずれや傾斜があっても、ボルトの上記面取り部が広いために、ナットの開口端部のテーパ状内周面と安定に係合しやすい利点がある。また、上記の製造方法により、上述のようにボルトとナットの初期螺合時の芯ずれや傾斜状態を緩和ないし解消できるボルトを容易に得ることができる。 【0012】なお、面取り部内径をボルト雄ねじ部のねじ内径より小さくすれば、ねじ先端に若干ながら非ねじ形成部が突出形成されることとなり、搬送時等においてその突出部が他部材との緩衝機能を果たすため、先端の雄ねじ山が他部材との当接等による変形から防護される効果も得られる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、図面に示す実施例を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。図1に示すナット1は、例えば袋ナットの形態をなす。もちろん、袋ナット以外の単純なナットでもよい。ナット1は軸状の本体2を備え、それを貫通するように同心的に雌ねじ部3が形成され、その出口側の開口を覆う(塞ぐ)ようにカバー4が溶接等により本体2と一体化されている。本体2の中間部にはフランジ5が形成され、このフランジ5と隣り合うようにワッシャ6が本体2の外周に装着されている。ワッシャ6は、フランジ5に対し雌ねじ部3の入口側に隣接し、本体2の外周に形成された図示しないセレーション等により本体2から抜けないようにされている。 【0014】このナット1には例えばボルト20が螺合されるが、ナット1のボルト挿入側の端部、言い換えればナット1の雌ねじ部(ねじ穴)3の螺合開始側の開口部Aには、図2(b)に示すように、テーパ状内周面からなる第1の面取り部7と、これとは異なる角度のテーパ状内周面からなる第2の面取り部8とが形成されている。ここで、φDは雌ねじ谷径(螺合されるボルトを基準にすれば、ねじ外径)、φdは雌ねじ山径(ねじ内径)を示す。そして、ナット1の軸線を含んだ断面における第1の面取り部7(の表面)と、そのナット1の軸線に直角な直線又は平面とのなす角度θ1は、ナット1の雌ねじ山のフランク角(ねじの軸線を含んだ断面において測った個々のフランクが、ねじの軸線と直角な直線となす角度(θf))と実質的に等しくされている。 【0015】例えばフランク角が30°の雌ねじ山を有するナットでは、第1の面取り部7の角度θ1は約30°程度とされる。一般的に言えば、第1の面取り部7の角度θ1は、ナット1の雌ねじ部3のフランク角をθfとすれば、θ1はθfの約±20%、より好ましくは±10%程度、言い換えればθ1は、0.8〜1.2θf、より望ましくは0.9〜1.1θf程度に設定することができる。 【0016】この第1の面取り部7は、ねじ軸線に直角な平面を基準とする以外に、その円錐内周面のテーパ角度(ねじの軸断面における円錐の二つの母線の間の角度)α1で表すこともできる。その場合、第1の面取り部7のテーパ角度α1は、フランク角が30°のナットであれば、例えば約120°程度とされる。また、この第1の面取り部7の、ナット1のねじ軸線方向の長さ(深さ)をLとすれば、Lは雌ねじ部3の例えば1/2ピッチ程度とすることができる。上記Lは、この他に、雌ねじ部3の例えば1/5〜2ピッチ分、好ましくは1/3〜1ピッチ分の範囲で適宜設定することができる。 【0017】第1の面取り部7の内周縁は、雌ねじ部3のボルト螺合側の開口縁となり、第1の面取り部7の外周縁に続いて、第2の面取り部8がその外周側に位置する。第2の面取り部8の、ねじ軸線に直角な平面又は直線とのなす角度θ2は、第1の面取り部7の角度θ1より大きくされ、例えば第1の面取り部7の角度θ1が30°くらいであれば、第2の面取り部8の角度θ2は、約45°程度に設定することができる。その場合、第2の面取り部8をテーパ角度α2でみれば、約90°になる。第2の面取り部8の外周縁は、ナット1のボルト挿入側の円環状の端面9に連なり、その端面9の外周側には、ナット端部の外周面取り部10としてテーパ状外周面が形成されている。この外周面取り部10は、例えばナット1が自動車の車輪ホイールをハブに固定するハブナットとして使用される場合、図示しないホイールに形成されたナット挿入孔へのナット1の挿入を容易にする。 【0018】 上記第1、第2の面取り部7、8の角度θ1及びθ2の関係(テーパ角度α1及びα2との関係に置き換えてもよい)は、θ2/θ1(又はα1/α2)が、例えば1.1ないし2.5程度、望ましくは1.2ないし2.0程度がよい。第2の面取り部8の角度θ2は90°以下とされ、この第2の面取り部8がボルト先端をねじ軸線側にガイドするボルトガイドの役割を果たすことを考慮すれば、その角度θ2は90°未満とされる。 【0019】いま、第1の面取り部7及び第2の面取り部8を、ナットのねじ軸線に直角な平面へ投影したときの各面取り部7及び8の幅寸法をそれぞれw1及びw2とすれば、第1の面取り部7の幅寸法w1は、雌ねじ部3のねじ山高さにほぼ等しくされている。言い換えれば、第1の面取り部7の外径は、ナット1の雌ねじの谷径(φD)にほぼ等しくされ、の第2の面取り部8の幅寸法w2は、第1の面取り部7の幅寸法w1より大きくすることができる。あるいはそれらw1及びw2を同じ位にすることもできる。第2の面取り部8の角度θ2が相当大きくなった場合は、w1がw2より大きくなることもあり得るが、好適な態様では、w1/w2は0.1ないし0.9、なかでも0.2ないし0.5程度に設定することができる。 【0020】なお、従来は図2(a)に示すように、ナット1’の雌ねじ部3’のボルト挿入側の開口部に、単一の面取り部8’を備えるものがあるが、その面取り部8’の角度θ’は、そのナット1’のフランク角が例えば30°とすれば、そのフランク角より大きく、例えばθ’=45°となっている。また、この面取り部8’をテーパ角度で表せば、90°となる。これに対し、本発明の好ましい実施の態様では、θ1がフランク角とほぼ等しい約30°の第1の面取り部7と、θ2がフランク角より大きな約45°とされた第2の面取り部8(テーパ角度で言えば、約120°と90°)との、2重の(2段の)面取り部を有する。 【0021】図3(a)は、従来のナット1’の、単一でフランク角より大きな角度の面取り部8’に、そこを基点として雌ねじ部3’が形成された例を示すものであるが、雌ねじ部3’の基点(不完全ねじ部の始端)R1から不完全ねじ部の終端R2までは約270°位あり、不完全ねじ部長が長いものとなる。これに対し、図2(b)に示す本発明の好適な実施の形態では、雌ねじ部3のフランク角とほぼ等しい第1の面取り部7の1箇所を始端S1として不完全ねじ部が形成され、その終端S2から完全ねじ部になり、不完全ねじ部長が従来のナット1’に比べて半分以下となり、ねじ穴全周の約1/3程度に抑えることができる。 【0022】また、同図(b)に示すように、ナット1のフランク角とほぼ等しい角度の第1の面取り部7は、多点状で表すように、雌ねじの形成に拘らず、その大半の部分はナット1の螺合開始側の開口端部(ボルト挿入側の開口端部)に残っている。つまり、不完全ねじ部の始端S1から終端S2までは、部分的に螺旋状に削り取られたような形態となるが、それ以外の範囲では第1の面取り部7はテーパ状内周面として存在し、部分的に欠けた一部残っているところを加えれば、ほぼナット1の全周又は全周に近い範囲で現れる。 【0023】図4は、図2のA部分を立体的な断面で示すもので、雌ねじ部3の不完全ねじ部は仮想線で概念的に表している。そして、図2の従来のナット1’のA’部分の構造では、図5(a)のように、転造ダイス12で面取り部8’からねじを転造する際に、開口側に押し出された盛り上がり部13(不完全ねじ部といえる)が顕著に生じ、この盛り上がり部13がボルト挿入時にねじ軸方向の障害となりやすい。つまり、ナットとボルトを軸方向に同心的に接近させた際に、ボルトの先端外周縁がこの盛り上がり部13と干渉しやすい。これに対し、本発明では図5(b)に示すように、転造の場合、ねじのフランク角とほぼ等しい第1の面取り部7を基点にねじの転造が開始され、結果的に転造ダイス12のフランク角と第1の面取り部7の角度とがほぼ等しいため、上述のような大きな盛り上がり部13が生じにくい。よって、ナットへの相対的なボルトの挿入がスムーズに行い得る。 【0024】以上のようなナット1の第1、第2の面取り部7、8を、第1、第2のナット側面取り部とすれば、図1のボルト20の雄ねじ部21の先端部に、ボルト側面取り部(以下、単に面取り部ともいう)22としてテーパ状外周面を形成することができる。このボルト20は頭部23を有するが、頭部のないボルト(例えば植え込みボルト等)でもよい。図6に模式的に示すように、ボルト20の先端部にテーパ状外周面として形成された面取り部22は、ボルトの軸線に直角な直線又は平面とのなす角度θBが、そのボルト20のねじ山のフランク角をθfBとしたとき、そのフランク角θfBとほぼ等しくされている。例えば、ボルト側面取り部22の角度θBは、フランク角θfBが30°であれば、ほぼ30°に設定される。 【0025】より一般的に言えば、ボルト側面取り部22の角度θBは、ボルト雄ねじ部21のフランク角θfB(これはボルトが螺合される相手方のナット1の雌ねじ部3のフランク角θfとみなすこともできる)の約±20%、より好ましくは±10%程度、言い換えればθBは、0.8〜1.2θfB(又はθf)、より望ましくは0.9〜1.1θfB(又はθf)程度に設定することができる。また、ボルト側面取り部22の外周縁はボルト雄ねじ部21のねじ山円筒につながり、ボルト側面取り部22の内周縁は、雄ねじ部21のねじ谷円筒と一致させることもできるし、あえてずらすこともできる。つまり、ボルト雄ねじ部21のねじ外径をφDB、ねじ内径をφdBとすれば、面取り部22の外径はねじ外径φDBに等しくなり、面取り部22の内径はねじ内径φdBと一致させてもよいし、このねじ内径φdBより小さく又は大きくすることもできる。 【0026】一例として、図6に示すように、面取り部22の内径φd1は、ねじ内径φdBより一定量小さくされる。言い換えれば、面取り部22はねじ内径を越えるようにされ、ボルト20の軸直角平面に面取り部22を投影したとき、その軸直角方向の幅寸法WBは、雄ねじ部21のねじ山高さ(谷深さ)より大きく(例えば1〜20%程度、より好ましくは2〜10%程度)することができる。このようにすれば、螺合のための組付けの際に、ボルト22とナット1の軸が多少ずれたり傾いたりしても、ボルト22の面取り部22がナット側の第1の面取り部7に安定に着座しやすくなり、芯ずれ又は芯傾斜の矯正作用を行わせる上でより好ましい。 【0027】また、ボルト側面取り部22のねじ軸方向の長さ寸法Qは、雄ねじ部21のねじ山の望ましくは1/2ピッチ以上がよいが、面取り部22の内径φd1をねじ内径φdBより大きくする(ねじ外径φDBとねじ内径φdBの中間にもってくる)ような場合は、1/2ピッチ未満の場合も生じ得る。一般的には、ボルト側面取り部22のねじ軸方向の長さ寸法Qは、雄ねじ部21のねじ山ピッチの1/5〜1.5、より望ましくは1/3〜1.0程度に設定できる。また、そのボルト側面取り部22を前記テーパ角度で規定すれば、雄ねじ部21のフランク角が30°の場合、ボルト側面取り部22のテーパ角度は約120°となる。 【0028】ボルト20の雄ねじ部21は、上記面取り部22の1箇所を基点として転造又は切削で形成されるが、この面取り部22の角度が雄ねじ部21のフランク角にほぼ等しくされているため、不完全ねじ部長を従来のものより短くできる。すなわち、ナットでの説明に使用した図3をボルトにも援用して説明すれば、従来のボルトの不完全ねじ部(同図(a))がねじの全周の約3/4の範囲で生じるのに対し、フランク角にほぼ等しいボルト側面取り部22を有するボルト20では、それがねじの全周の1/4程度(多くても1/2以下)となる。 【0029】また従来では、図8(a)、図9(a)に示すように、ボルト20’をナット1’に螺合(挿入)する際、ボルト20’の先端には面取り部29があるものの、その角度はナット1’の面取り部8’とは対応せず、また雄ねじ部21’のフランク角とも無関係に設定されるため、組付け時にボルト・ナットの軸がずれたり、互いの軸線が傾斜状態になった場合、それを矯正する作用は充分でなく、ボルト・ナットの各軸線を容易に同心的状態にできるとは言い難い。また、ボルト20’、ナット1’の双方の不完全ねじ部が長いので、上記傾斜状態等でかみ込みが生じやすい。 【0030】これに対して本発明では、図7及び図8(b)、図9(b)に示すように、ナット1とボルト20を螺合させる(相対的にボルト20をナット1に挿入する)過程で、ナット1の第2の面取り部8にボルト20の先端部が接して、ボルト20がナット1の中心側にガイドされ、さらに、互いにフランク角に等しいボルト側面取り部22とナット側面取り部7とが係合し、ボルト20とナット1の各軸線が一致しやすい状況となる。言い換えれば、ボルト20の面取り部22がナット1の中心側の面取り部7に着座すれば、双方の面取り部7及び22は角度がほぼ等しいため、いわば互いに対応する角度のテーパ外周面及びテーパ内周面同士が嵌合したような格好になり、その状態ではボルト20とナット1の軸線は一義的にほぼ同心(同軸)的な姿勢になりやすい。 【0031】これによりナット1の軸芯とボルト20の軸芯とがより一致した状態に姿勢調整されて、両者の位置合わせ(姿勢調整)があたかも自動的に行われ、ボルト20がナット1に容易に挿入される。しかも、ボルト20及びナット1共に、不完全ねじ部が短いため、両者がたとえ傾斜状態となっても、従来に比べて噛み込みが生じにくい。これらのことから、ボルト20とナット1の初期螺合時において、噛み合い不良の発生が有効に回避されるとともに、両者のねじ山の軸芯がより一致した状態が得られ、初期螺合時の噛み合いが従来より良好に行われることとなる。 【0032】図10及び図11は、以上のボルト20・ナット1による(これらをセット(ユニット)として組み合わせたボルト・ナット締結装置24を示すものである。だだし、このようなボルト・ナット締結装置24において、ボルト側面取り部22の角度θB(図6)と、ナット側(第1の)面取り部7の角度θ1(図2)とは、互いにねじのフランク角にそれぞれほぼ等しい形態でθ1とθBとをほぼ等しくすることが、不完全ねじ部を短くすること等を考慮すると望ましい態様ではあるが、必ずしもそれに限らず、上記フランク角とは無関係に、ボルト側面取り部22とナット側面取り部7の角度θ1とθBとをほぼ等しくすること(例えば±20%、望ましくは±10%以内の範囲で)もできる。その場合は上記角度θ1及びθBは、ねじのフランク角より大きい場合も、小さい場合もあり得、フランク角とは必ずしも一致しない。この態様でも、ボルトとナットの各軸芯を一致させるように姿勢制御することができる。 【0033】また、図12(a)、(b)に示すように、ナット側の第1の面取り部7を正確な円錐面(テーパ面)ではなく、例えば外側に凸状の(膨らむ)断面の曲面7’で形成すること、あるいは内側に凸状の(膨らむ)断面の曲面7''で形成することもできる(ナット16、17)。この場合、元の面取り部7がそれらの曲面7’又は7''に対し、接線(接面)とすることもできる。さらに同図(c)に示すように、第1の面取り部7から第2の面取り部8にまたがるような、内側にわずかにくぼんだ滑らかな曲面7'''で形成して、実質的に面取り部7、8に相当する位置に、互いに傾きの異なる(面取り部7ではフランク角とほぼ等しく、面取り部8ではそのフランク角より傾斜の大きな)テーパ状の各内周面を形成することも可能である(ナット18)。実際に、鍛造等でナット素材を形成する場合は、第1、第2の面取り部7、8の境界がシャープに現れるとは限らず、その境界がアール状に丸みが付く場合もある。 【0034】なお、ボルト側面取り部22についても、図示はしないが事情は同様であり、その面取り部22を厳密な円錐面としなくても、外側にやや膨らんだ、又は内側にややくぼんだ曲面で構成し、これを実質的にテーパ状外周面としてもよい。 【0035】さらに、図13に示すナット19のように、ボルトの挿入方向が一義的に決まっておらず、ナットの両側開口のいずれからでもボルトが挿入可能なナットの場合は、ナット19の雌ねじ部3の両側開口部にそれぞれ第1、第2の面取り部7、8を設けることができる。 【0036】また、ナットに第1の面取り部7及び第2の面取り部8の双方を設けて中間に段を形成する形態以外にも、図14に示すように、第2の面取り部8を省略して、単一で段差のない一つのナット側面取り部7とし、この面取り部7の外周縁を、ナット15の端面10まで延長することもできる。この場合、ナット側面取り部7は、前述のように雌ねじ部3のフランク角とほぼ等しくされるか、あるいはそのフランク角と関係なく、ボルト側面取り部22(図7等)とほぼ一致させられることとなる。 【0037】次に、以上のようなナット及びボルトの製造方法について説明する。図15(a)は、第1の金型31(下型)のキャビティ32内に、予め冷間鍛造等で成形されたナット素材N1が収容され、これが第2の金型30(上型)により打撃され、(b)のようなナット素材N2となる。ここで、ナット素材N2の下孔の一方の開口となるべき部分は、パンチ33でくぼみ33’がつけられ、他方の開口部となるべき部分が、前述のA部分(図1、図2等)に示した部分である。このA部分には、第2の金型30と一体的又は別体に形成されたパンチ34が入り込んで、前述の第1のナット側面取り部7、第2のナット側面取り部8の形態を、予め冷間鍛造等で形成しておく。なお、A部分の拡大図から示すように、第1の面取り部7の内周縁から軸方向にほぼ平行に浅いくぼみ34’が形成され、このくぼみ34’が後工程の下孔打抜きの基準となる。上述の反対側のくぼみ33’と、くぼみ34’とは、同じ大きさで、かつ同心的に形成される。 【0038】その後(c)に示すように、ナット素材N2に対して打抜きパンチ37で、中心部のねじ下孔40’が打抜かれる。N3’は、打抜かれたかすであり、打抜きパンチ37は、第1の金型(下型)35の筒状部36内に移動可能に配置され、第2の金型38がナット素材N2を押さえ付け、打抜反力を受ける。これにより、ナット素材N3の下孔40’の一方の開口部に、第1のナット側面取り部7(後に形成される雌ねじのフランク角にほぼ等しい)と、このフランク角より傾斜の大きな第2の面取り部8とを有するナット素材N3を得る。 【0039】さらに、図16(a)〜(b)に示すように、このナット素材N3を型39に固定して、例えば転造ダイス40を回転させつつ、ナット素材N3のねじ下孔40’にねじ込んでいくことにより(図17(c)〜(d)参照)、ねじ下孔40’の内周面に雌ねじ部3を転造する。その際、図16(b)のように、転造ダイス40の先端がナット素材N3の上記第1、第2の面取り部7及び8が形成された開口に達すると、その転造ダイス40のフランク角と、第1の面取り部7の角度とがほぼ等しいため、前述のような外側に盛り上がった部分が生じにくく、かつ不完全ねじ部も短い形態で初期の転造が行われる。図17(c)、(d)を経て転造が完成することにより、そのねじ下孔40’には雌ねじ部3が形成され、その状態において、A部分には第2の面取り部8はもちろん、第1の面取り部7も相当部分がその開口部に残る。 【0040】転造に代えて切削で雌ねじ部3を形成する場合も、基本的には転造ダイス40がねじ切りダイスに代わるほかは、工程的に大きな違いはない。ただし、転造ダイス40の場合は、ねじ下孔40’の肉の移動により雌ねじ部が形成されるため、転造ダイス40の外径は予定される雌ねじ部の、ねじ山径とねじ谷径のほぼ中間に位置するのに対し、ねじ切りダイスの場合は、その外径がねじ谷径と実質的に一致することとなる。 【0041】図18は、ボルトの製造方法の工程の一例を示すものである。この例で、第1の金型42(例えば下型)の鍛造キャビティ形成部43には、ボルト素材B1の、ボルト先端部となるべき部分(B部分)に、図6及び7等に示したボルト側面取り部22が形成されるように、その面取り部22に対応する型面を有するキャビティ44が形成されている。このキャビティ44で、ボルト素材B1は、第2の金型(例えば上型)45側のパンチ50により、軸方向に打撃され、その結果ボルト素材B1の先端部にボルト側面取り部22となるべき部分が形成される。この面取り部22は、前述のように後に形成される雄ねじ部のフランク角とほぼ等しくされる。上型45には、ボルト素材B1に対し、さらに頭部を形成するためのキャビティ47を備えたキャビティ形成部46を有している。そして、図18(b)のように、第2の型45が第1の型42に対して相対的に移動し、キャビティ47内でパンチ50により鍛造された頭部を有するボルト素材B2となる。 【0042】さらに図19(a)〜(c)に示すように、このボルト素材B2の脚部(胴部)に対し雄ねじ部を転造ダイス52、53により形成する。転造ダイス52、53は、ボルト素材B2の胴部を挟み付けて相対的に矢印のように移動し、ボルト素材B2は、転動しながらその外周に雄ねじ部が転造されて、ボルト素材B3となる。そして、そのボルト素材B3の先端部には、図6、7等で述べたボルト側面取り部22が、そのねじ山のフランク角とほぼ等しい角度で残ることとなる。なお、このようなボルトの転造に加えて、雄ねじ部を切削形成してもよい。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000147109 【氏名又は名称】株式会社杉浦製作所
|
| 【出願日】 |
平成11年4月5日(1999.4.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100095751 【弁理士】 【氏名又は名称】菅原 正倫
|
| 【公開番号】 |
特開2000−291617(P2000−291617A) |
| 【公開日】 |
平成12年10月20日(2000.10.20) |
| 【出願番号】 |
特願平11−98227 |
|