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【発明の名称】 格子梁解析システム
【発明者】 【氏名】渡部 雄二
【課題】コンクリート上に配設したラス筋及び該トラス筋の間に軽量型枠を設けて薄肉PC板を作成し、この薄肉PC板を複数枚敷設して下床を形成するボイドスラブ構築設計手法において、格子梁の解析を半自動的に行うようにして、熟練者でなくとも平易且つ短時間で格子梁の解析設計ができるシステムを提供する。

【解決手段】一対の長尺梁及び短尺梁で形成されるボイドスラブの面積のうち段差部分を除いた領域に、異なった大きさのボイド型枠を割り付け配置する割付配置手段と、この割り付け配置したボイド型枠に基づいて構築されたボイドスラブの荷重を設定する荷重設定手段と、この設定された荷重のデータに基づいてボイドスラブの支持状態を格子梁に置換して応力及び変形を計算する格子梁置換手段とからなり、この格子梁置換手段による計算の結果が予め設定されている所定のデータと適合しない場合には、割付配置手段、荷重設定手段、格子梁置換手段の一連の行為を適合するまで繰り返し行うようにしたことである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】コンクリート上に配設したトラス筋と、該トラス筋の間に軽量型枠を設けて薄肉PC板を作成し、該薄肉PC板を複数枚敷設して下床を形成するボイドスラブ構築設計手法であって、該ボイドスラブ構築設計手法は、一対の長尺梁及び短尺梁で形成されるボイドスラブの面積のうち段差部分を除いた領域に、異なった大きさのボイド型枠を割り付け配置する割付配置手段と、該割り付け配置したボイド型枠に基づいて構築されたボイドスラブの荷重を設定する荷重設定手段と、該設定された荷重のデータに基づいて前記ボイドスラブの支持状態を格子梁に置換して応力及び変形を計算する格子梁置換手段とからなり、該格子梁置換手段による計算の結果が予め設定されている所定のデータと適合しない場合には、前記割付配置手段、荷重設定手段、格子梁置換手段の一連の行為を適合するまで繰り返し行うようにしたことを特徴とする格子梁解析システム。
【請求項2】請求項1において、前記割付配置手段における異なった形状のボイド型枠は、該ボイド型枠の平面形状の長さが10種類、幅が4種類の計40種類の組み合せからなることを特徴とする格子梁解析システム。
【請求項3】請求項2において、前記割付配置手段は、前記40種類の組み合せからなるボイド型枠の割付設定の他に、ボイドスラブの厚みの設定、コンクリート強度の設定、鉄筋強度の設定をも行うようにしたことを特徴とする格子梁解析システム。
【請求項4】請求項1において、前記荷重設定手段は、自重、仕上げ、積載荷重、水平荷重、ボイドスラブ周辺支持条件の設定を行うようにしたことを特徴とする格子梁解析システム。
【請求項5】請求項1において、前記格子梁置換手段における応力及び変形の計算は、長期たわみの算定、せん断力の算定、曲げモーメントの算定、面内せん断力の算定、ひび割れ幅の算定であることを特徴とする格子梁解析システム。
【請求項6】請求項5において、前記長期たわみの算定においては、該算定の結果が所定のデータと適合するまでボイドスラブの厚みを変更するようにしたことを特徴とする格子梁解析システム。
【請求項7】請求項1又は5において、前記格子梁置換手段は、段差部の部分を長方形、ボイド型枠の間の梁部材芯の部分をI型、段差部周辺補強梁部分をユ型の3種類のモデル化にした断面形状で表すようにしたことを特徴とする格子梁解析システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、格子梁解析システムに関するものであり、詳しくは薄肉PC板上に配置するパターン化された種々の大きさからなるボイド型枠を、先ず配置してから、ボイドスラブの格子梁の解析設計を行うようにした格子梁解析システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来技術における天井面が平滑であるボイドスラブの基本設計及び格子梁解析をするための設計、即ち、ボイドスラブ構築設計手法は、コンピュータシステムを駆使して行う。先ず、コンピュータシステムに躯体寸法、段差寸法及びスラブ断面形状のデータの入力を行った後に、ボイドスラブの外郭の寸法の計算、プリキャストコンクリート(PC)板形状の計算及びボイド型枠の選別の作業を行う。
【0003】そして、ボイド型枠が配置出来ない範囲、即ち、段差部及び段差周辺補強梁部のボイドを消去する作業を行う。具体的には、設計者は段差周辺補強梁の最低幅とボイド型枠位置の関係から、段差周辺補強梁の形状を決定し、不要なボイド型枠を消去又は形状の変更を行う。次に、ボイド型枠位置、段差位置及びスラブ厚さから格子梁部材断面を作成し、格子梁の節点座標、断面性能等を計算する。そして、架構図の作成、曲げせん断及び変位図の作成及びたわみ量を計算し、それぞれの計算結果を図化する。応力から必要鉄筋量や応力度を計算し、場合によってはひび割れ幅の計算を行う。このようにしてボイドスラブの基本設計及び格子梁の解析を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来技術における薄肉PC板にボイド型枠を配列させるには、先ずボイドスラブを作成する面積に対応させて、ボイド型枠の数及びその大きさを決定するというもので、設計の迅速化が図れないばかりか入力ミス等に対応できないと云う問題がある。
【0005】具体的には、薄肉PC板及びボイド型枠の形状設定は、或る程度の知識が必要であり、設計者によってばらつきが生じているという問題点、荷重条件や境界条件を生成するのに格子梁の節点座標、断面性能等を計算する必要があるという問題点、必要鉄筋量や応力度を計算してその断面算定を行うためにデータを転記する必要があり、計算ミスや転記ミスが発生するという問題がある。
【0006】従って、ボイド型枠を配置させて下床を作成する場合において、種々の広さからなるボイドスラブの床面積に対応した一定のルールに従って、所定のパターン化された大きさからなるボイド型枠を選択して配置した後に、その格子梁の解析が半自動的に行うことができるようにすることに解決しなければならない課題を有している。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る格子梁解析システムは、コンクリート上に配設したトラス筋と、該トラス筋の間に軽量型枠を設けて薄肉PC板を作成し、該薄肉PC板を複数枚敷設して下床を形成するボイドスラブ構築設計手法であって、該ボイドスラブ構築設計手法は、一対の長尺梁及び短尺梁で形成されるボイドスラブの面積のうち段差部分を除いた領域に、異なった大きさのボイド型枠を割り付け配置する割付配置手段と、該割り付け配置したボイド型枠に基づいて構築されたボイドスラブの荷重を設定する荷重設定手段と、該設定された荷重のデータに基づいて前記ボイドスラブの支持状態を格子梁に置換して応力及び変形を計算する格子梁置換手段とからなり、該格子梁置換手段による計算の結果が予め設定されている所定のデータと適合しない場合には、前記割付配置手段、荷重設定手段、格子梁置換手段の一連の行為を適合するまで繰り返し行うようにしたことである。
【0008】又、前記割付配置手段における異なった形状のボイド型枠は、該ボイド型枠の平面形状の長さが10種類、幅が4種類の計40種類の組み合せからなること;前記割付配置手段は、前記40種類の組み合せからなるボイド型枠の割付設定の他に、ボイドスラブの厚みの設定、コンクリート強度の設定、鉄筋強度の設定をも行うようにしたこと;前記荷重設定手段は、自重、仕上げ、積載荷重、水平荷重、ボイドスラブ周辺支持条件の設定を行うようにしたこと;請求項1において、前記格子梁置換手段における応力及び変形の計算は、長期たわみの算定、せん断力の算定、曲げモーメントの算定、面内せん断力の算定、ひび割れ幅の算定であること;前記長期たわみの算定においては、該算定の結果が所定のデータと適合するまでボイドスラブの厚みを変更するようにしたこと;前記格子梁置換手段は、段差部の部分を長方形、ボイド型枠の間の梁部材芯の部分をI型、段差部周辺補強梁部分をユ型の3種類のモデル化にした断面形状で表すようにしたことである。
【0009】このように、下床を形成するボイドスラブ構築手法において、作成するボイドスラブの面積に応じて大きさの異なったボイド型枠を配置させては、種々の荷重及び設定を半自動的に行うようにしたことにより、ボイドスラブの設計が極めて迅速に行えると共に、その配列したことによる断面及び荷重等の計算も予め設定されているデータを利用することができるため、極めて迅速且つ正確に行うことができるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る格子梁解析システムの実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】格子梁解析システムは、ボイドスラブを設計する際の荷重の設定、格子梁の解析等を半自動的に行うようにしたシステムである。この設計の対象となるボイドスラブ10は、図1に示すように、薄肉PC板11を建築物の柱12の間の大梁13、小梁、耐力壁14からなる横架材の間に架設して、その上面にボイド型枠15の割り付け及び所要の配筋16を行い、現場打ちコンクリート(トップコンクリート)17を打設して一体とした、所謂、スラブ上面に段差部25を持つ中空合成床版である。
【0012】このような構造からなるボイドスラブは、図2及び図3に示すように、所謂、二方向ボイドスラブであって、段差のある段差部25とボイド型枠15で形成されているボイド部26とからなり、所定間隔を持って整列状態に配設したトラス筋20と格子状に配設した下端筋21とからなる薄肉PC板11と、この薄肉PC板11上にボイド型枠15及び補強筋22を配置し、その上部に現場打ちコンクリート17を打設した構造となっている。この中で薄肉PC板11は工場等で予め完成された状態で建設現場に持ち込まれて組み立てられ、ボイド型枠15、補強筋22、上端筋23及び現場打ちコンクリート17が建設現場で作成される。
【0013】建設現場で組み立てられる薄肉PC板11は、図4に示すように、躯体形状データ、即ち、設計の対象となる構造物の面積(長尺梁30×短尺梁31)からボイドスラブ外郭を計算する。実施例の場合は、5750×11250の面積である。この計算により得られたボイドスラブ外郭寸法から薄肉PC板11の寸法、枚数を計算する。実施例の場合には5750×2350の薄肉PC板PC2が3枚、5750×1800の薄肉PC板PC1が2枚必要となる。この2種類の薄肉PC板11(PC1、PC2)を工場等で作成する。尚、図示しないがこの薄肉PC板11の内部には格子状の下端筋21(図2、図3参照)が埋設された構造となっている。
【0014】この配設される薄肉PC板11の上部へのボイド型枠15の割り付け、即ち、割付配置手段は、図5に示すように、段差部を除いた領域(ボイド部)に割り付けられる。この割り付ける形状の大きさは配設される薄肉PC板PC1、PC2の面積によって異なり、唯一一致しているのは縦横の直交する二方向に沿った直方体の大きさを変えるようになっている。この直方体の大きさは、ボイド型枠15の平面形状の長さが320、420、520、600、700、800、900、1000、1100、1200mmの10種類(例えば15a、15b、15c)、幅が430、215又は400、200mmの4種類(例えば、15d、15e、15f)からなり、合計40種類のパターンにより作成されている。このような40種類のパターンを有するスラブ型枠15は、ボイドスラブの面積に応じて適宜組み合わせて配置する構造となっている。
【0015】このようにしてボイド型枠15の割り付けた後に、補強筋(上端筋)が配置される。補強筋22は、図6に示すように、長尺梁30を跨いだ状態で連設する。即ち、薄肉PC板PC2と長尺梁30と隣接する建築物の薄肉PC板とを連設する第一の補強筋22aと、段差部25と長尺梁30とを連設する第二の補強筋22bと、段差部25の薄肉PC板PC1との間を連設する第三の補強筋22cと、薄肉PC板PC2と短尺梁31とを連設する第四の補強筋22dと、ボイド部26における薄肉PC板PC1の間に連設する第五の補強筋22eと、段差部25の周辺に配設する第六の補強筋22fとから構成されている。
【0016】この補強筋22a〜22fが配設されると、次に格子状の上端筋(図2及び図3参照)が配設され、現場打ちコンクリート17が打設される。このようにして完成したボイドスラブは、図7に示すように、応力変形等を計算することに重点をおいた領域(ゾーン)に分けられる。第一のゾーン40、45は、短尺梁31に隣接した領域であり、第二のゾーン41は、第一のゾーン40と段差部25との間の領域であり、第三のゾーン42は、段差部25と長尺梁30との間の領域であり、第四のゾーン43は段差部25の領域である。
【0017】さて、このようにした組み立て構築することができるボイドスラブ10は、予め薄肉PC板11(PC1、PC2)の配置、ボイド型枠15(15a〜15f)の割り付け、補強筋22(22a〜22f)の配設等を応力変形等を計算して設定する。即ち、格子梁を解析及び設計は、ボイドスラブ10の面積に40種類のパターンからなるボイド型枠15の割り付けをしてから行われる。以下、その手法について、図8に示すフローチャートに則して説明する。
【0018】先ず、格子梁の解析を行うためには、割付配置手段であるボイドスラブの厚さの設定、コンクリート強度の設定、鉄筋強度の設定、ボイド型枠の割り付け、鉄筋強度の設定を行う(ステップST100)。
【0019】実施例において、ボイドスラブ10の全厚さT=280mm、薄肉PC板11のの厚さt=70mm、現場打ちコンクリート17のシエル部=80mm、段差部25のスラブ厚さ=170mmに設定されている。
【0020】又、これら材料の許容応力度は、スラブ筋=2000kg/cm2、現場打ちコンクリート17の強度=210kg/cm2、薄肉PC板11の重量=350kg/cm2に設定されている。
【0021】荷重は、仕上げ荷重=60kg/m2、積載荷重=180kg/m2に設定されている。
【0022】ボイド型枠15の割り付けは、図5を参照して説明したように、二方向ボイドスラブを形成するため、ボイド型枠15の配列関係が整列状態に形成されている。即ち、40種類のパターン化された直方体の大きさに対応させて縦横に並べられている幅が同じ大きさに形成され、縦横への配筋がし易い構造となっている。ここでボイド型枠15の重量は最も厚いもの、例えば260mmのもので2.3kg/m2程度であり、他の荷重に比べると極めて小さな値であるので無視することができる。
【0023】次に、図8において、割り付け配置したボイド型枠に基づいて構築されたボイドスラブの荷重を設定する荷重設定手段、即ち、自重、仕上げ、積載荷重、水平荷重、スラブ周辺支持条件の設定を行う(ステップST101)。
【0024】これら条件の設定が入力されると、この設定された荷重のデータに基づいてボイドスラブの支持状態を格子梁に置換した応力及び変形を計算する格子梁置換手段、即ち、架構データ及び荷重データにより応力、変形の計算が行われる(ステップST102)。この計算は後述する計算式によって自動的に行われる。
【0025】格子梁は、図9に示すように、線材に置換されて架構図として示され、番号付けがなされている。即ち、長尺梁との節点(A点のラインの94、88、82、・・・、)と短尺梁との節点(B点のライン95、96、97、98、・・・)、A点及びB点の節点(C点のライン93、92、、87・・・)と、丸印の中の数字(D点の例えば175、170、165、・・・)とから構成されている。これらA〜D点の数字は、後述する断面算定で使用する断面番号である。
【0026】このようにして作成された架構図に基づいて主方向断面算定及び直交方向断面算定が行われる。この断面算定は、長期たわみ、曲げ応力、せん断応力、ひび割れについて算定する。
【0027】この断面算定を行うに際し、図10に示すように、薄肉PC板11と現場打ちコンクリート17との間に割り付けられたボイド型枠15とによって、3種類の断面形状に置換するようになっている。即ち、ボイド型枠15との間であるボイドスラブ一般部であるボイド型枠15の間の梁部材芯の部分は「I型」50に置換、ボイド部26のボイド型枠15と段差部25との間である段差部周辺補強梁部分である補強梁部は「ユ型」51に置換、段差部25の部分は「長方形」52に置換する。
【0028】主方向断面算定は、図11に示すように、現場打ちコンクリート17を打設した端部上端、薄肉PC板11の中央下端の応力(モーメントとせん断力)について行う。応力は、架構図の番号(図9参照)の位置における主方向モーメントと主方向せん断力が計算により算出される。
【0029】主方向モーメントは、架構データ及び荷重データから立体骨組弾性解析により算出され、図12に示すように、架構図の断面番号(図9参照)に基づいて算出される。又、下記の計算式は、立体骨組弾性解析によるものであり、断面算定時に部材にかかる曲げ応力(モーメント)に対する鉄筋量を算出するために用いる。
MD<Ma=Σ(at・ft・j)・・・・・・(1)
j=(7/8)dMD;設計荷重による曲げモーメント(kgf・cm)
Ma;ボイドスラブ10の許容曲げモーメント(kgf・cm)
at;引張り鉄筋の断面積(cm2
ft;鉄筋の許容引張応力度(kgf/cm2
d;ボイドスラブの有効せい(ボイド型枠15と現場打ちコンクリート17の和、cm)
である。
【0030】このような計算式により算出されたデータは、例えば、図11に示すように、第二のゾーン44(図7参照)の補強梁で断面番号130(図9のa点)の場合は、断面形状が「ユ型」51でモーメント2.835M(t.m)、第三のゾーン42(図7参照)のボイド部26で断面番号131(図9のb点)の場合は、断面形状が「I型」50でモーメント1.739M(t.m)、第四のゾーン(図7参照)の段差部25で断面番号140(図9のc点)の場合は、断面形状が「長方形」52でモーメント0.573M(t.m)、第一のゾーン40(図7参照)のボイド部26で断面番号155(図9のd点)の場合は、断面形状が「I型」50でモーメント1.278M(t.m)である。このようにして算出された主方向モーメントは、図12に示すように、一覧表として表示することができる。
【0031】又、図11に示すように、薄肉PC板PC1、PC2についても、その断面算定が行われる。例えば薄肉PC板PC1の断面番号128(図9のe点、図4のe点)の補強梁の場合は、断面形状が「ユ型]51で主方向モーメント1.503M(t.m)、薄肉PC板PC2の断面番号153(図9のf点、図4のf点)のボイド部26の場合は、断面形状が「I型」50で主方向モーメント0.649M(t.m)である。
【0032】主方向せん断力は、架構データ及び荷重データから立体骨組弾性解析により算出され、図13に示すように、主方向モーメントと同じく架構図の断面番号(図9参照)に基づいて算出される。又、下記の計算式は、立体骨組弾性解析によるものであり、断面算定時にPCa板と後打ちコンクリート間に生じるせん断力に対し、PCa板と後打ちコンクリートが一体性を保てるか否かをチエックするために用いる。
τ=Q/(b・j)<fs’・・・・・(2)
j=(7/8)dτ;打ち継ぎ面に生じるせん断応力度(kgf/cm2
Q;主方向梁部材に生じるせん断力(kgf)
b;主方向のリブ幅(cm):トラス筋が複数配列される場合は、本数を乗じた幅とする。
d;有効せいfs’;打ち継ぎ面の単位面積に対するみかけの許容せん断応力度で下記の式(3)による。
【0033】又、下記の計算式は上記(2)式のfs’に採用するものである。
fs’=(fs1’、fs2’)・・・・・・(3)
fs1’=0.105・Fc/3.Am/Afs2’=(Dou/2+Ten)/ADou=1.656・as√(Fc/3・σy/1.5)・sinθ・sinαTen=as・ρy/1.5・cosθ・sinαFc;現場打ちコンクリートの設計基準強度(kgf/cm2
Am;現場打ちコンクリートの割り裂き面積(cm2
Am=L’×2×単位長さL’=√(H2+(bo/2)2)−tR/sinαA;トラス筋一本当たりの支配面積(cm2
as;ラチス筋の断面積(cm2
ρy;ラチス筋の引張強度(kgf/cm2
θ、α;ラチス筋の角度【0034】このような計算式により算出されたデータは、例えば、図11に示すように、第二のゾーン44(図7参照)の補強梁で断面番号130(図9のa点)の場合は、断面形状が「ユ型」51で主方向せん断力2.964Q(t)、第三のゾーン(図7参照)のボイド部26で断面番号131(図9のb点)の場合は、断面形状が「I型」50で主方向せん断力1.739Q(t)、第四のゾーン42(図7参照)の段差部25で断面番号140(図9のc点)の場合は、断面形状が「長方形」52で主方向せん断力0.750Q(t)、第一のゾーン40(図7参照)のボイド部26で断面番号155(図9のd点)の場合は、断面形状が「I型」50で主方向せん断力1.261Q(t)である。このようにして算出された主方向せん断力は、図13に示すように、主方向モーメント(図12参照)と同様に一覧表として表示することができる。
【0035】次に、直交方向断面算定について説明する。直交方向断面算定は、図14に示すように、現場打ちコンクリート17を打設した端部上端、薄肉PC板11の中央下端、薄肉PC板11(PC1、PC2)の継目部配筋の応力(モーメントとせん断力)が算出される。この応力は、架構図の番号(図9参照)の位置における直交方向モーメント(図15)と直交方向せん断力(図16)が計算により算出される。
【0036】直交方向モーメントは、主方向モーメントを算出する上記式(1)により算定することができるが、打ち継ぎ面に生じるせん断応力度が5kgf/cm2を超える場合は現場打ちコンクリート17のみで断面積算定を行う。即ち、上記式(1)の有効性は、現場打ちコンクリート17のみとする。又、下端引張の場合は、現場打ちコンクリート17の下部に引張鉄筋を配置する構造となっている。
【0037】上記式(1)の計算式により算出されたデータは、例えば、図14に示すように、現場打ちコンクリート17の端部上端において、ボイド部26の断面番号130(図9のg点)の場合は、断面形状が「I型」50でモーメント1.140M(t.m)(図15のg点)である。薄肉PC板11の中央下端における補強梁においては、断面番号534(図9のh点)の場合は、断面形状が「ユ型」51でモーメント0.398M(t.m)(図15のh点)である。薄肉PC板11の中央下端における段差部25においては、断面番号535(図9のi点)の場合は、断面形状が「長方形」52でモーメント0.145M(t.m)(図15のi点)である。薄肉PC板11の継目配筋における補強梁においては、断面番号534(図9のh点)の場合は、断面形状が「ユ型」51でモーメント0.398M(t.m)(図15のh点)である。薄肉PC板11の継目部配筋における段差部25においては、断面番号535(図9のi点)の場合は、断面形状が「長方形」でモーメント0.145M(t.m)(図15のi点)である。薄肉PC板11の継目部配筋におけるボイド部26においては、断面番号542(図9のj点)の場合は、断面形状が「I型」50でモーメント0.149M(t.m)(図15のj点)である。このようにして得られたデータは、図15に示すように、架構図の断面番号(図9参照)に基づいて一覧表として表すことができる。
【0038】直交方向せん断力は、図14に示すように、直交方向モーメントと同じく架構図の断面番号(図9参照)に基づいて立体骨組弾性解析により算出される。又、下記に示す計算式は、断面算定時にPCa板と場所打ちコンクリートの一体性が保たれるか否かを判定するものである。
τ=Q/(B・j)<fs”・・・・・・(4)
j=(7/8)dτ;打ち継ぎ面に生じるせん断応力度(kgf/cm2
Q;主方向梁に直交する梁部材に生じるせん断力(kgf)
B;主方向に直交する方向のリブ幅、補強梁幅、床段差部梁幅(cm)
d;有効せい(ボイド型枠と場所打ちコンクリートの打ち継ぎ面の許容せん断応力度で5kgf/cm2とする)
である。
【0039】上記式(4)が満足しない場合は、せん断応力度は現場打ちコンクリート17のみとし、下記の式(5)による。
τ=Q/(B・j’)<fs・・・・・(5)
j’=(7/8)d’τ;リブに生じるせん断応力度(kgf/cm2
Q;主方向梁に直交する梁部材に生じるせん断力(kgf)
B;主方向に直する方向のリブ幅、補強梁幅、床段差梁幅(cm)
d’;有効せい(現場打ちコンクリート17のみ、cm)
fs;現場打ちコンクリート17の許容せん断応力度(kgf/cm2
【0040】このような計算式により算出されたデータは、例えば、図14に示すように、現場打ちコンクリート17の端部上端のボイド部26で断面番号502(図9のg点)の場合は、断面形状が「I型」50で直交方向せん断力1.370Q(t)(図16のg点)である。このようにして算出された直交方向せん断力は、図16に示すように、直交方向モーメント(図15参照)と同様に一覧表として表示することができる。
【0041】次に、図8に戻って、格子梁置換が行われて応力及び変形の計算が行なわれた後に、長期たわみの検討が行われる(ステップST103)。
【0042】長期たわみ(δL)の算定は、下記の式(5)、(6)により算出される。即ち、格子梁解析による弾性たわみ(δE)に、長期たわみ増大率(κ)を乗じて算定する。
【0043】このようにして算出されたデータは架構図の断面番号(図9参照)毎に行われ、図17に示すように、その一覧表として表すことができる。例えば、断面番号130(図9のa点)でのたわみは0.028(図17のa点)である。尚、実施例においては、長期たわみは主方向の有効内法長さ(lX)の1/250以下でOKとするようになっている。
δL=κ×δE・・・・・・(5)
δ<lX/250・・・・・(6)
長期たわみ増大率;12【0044】実施例において、図5に示す3DKタイプのボイドスラブ10の場合は、スパンLx=605cm最大弾性たわみ(最大変位)δe=0.097cm長期たわみδL=12×δe=1.164cmδL/Lx=1/520<1/250 OKとなる。
【0045】この長期たわみ増大率は、段差部25、周辺補強梁及びボイド型枠15を有する段差付きボイドスラブ10の主方向の長期たわみ実験によると、載荷250日で、6.4〜7.5である。これらの増大率より50年後以降の増大率を推定すると、7.4〜11.9で、平均は8.3となる。実施例においては最大値を採用して、長期たわみ増大率は12となっている。
【0046】ここで、長期たわみに問題がある場合には、ボイドスラブ厚の変更が行われ、上述したステップST101に戻り、自重、スラブ周辺支持条件の再設定が行われ、再度長期たわみの検討が行われ,この長期たわみが適合するまで上述した計算等の一連の行為が適合するまで繰り返し行われる(ステップST104、ST101、ST102、ST103)。
【0047】次に、図5に戻って、格子梁置換がされたデータによる長期たわみが適合すると、次にせん断力の検討を行われ、ここで適合しないと、ステップST100に戻り、スラブ厚の設定等の初期条件の設定からやり直すようになっている(ステップST105)。
【0048】せん断力の検討は、図11及び図14に示したボイドスラブ10の断面算定に基づいてせん断力に対する設計を行い、その結果に基づいて曲げモーメントの設計を行うようになっている。断面算定用のボイドスラブせいは全スラブ厚さであるが、主方向に直交する方向において、ボイド型枠15と現場打ちコンクリート17との打ち継ぎ面のせん断応力度の大きさによっては、現場打ちコンクリート17のみで断面の算定を行うようになっている。
【0049】次に、図8に戻って、せん断力の検討が行われた後に、曲げ筋の検討及び配筋の検討が行われ、曲げ筋の検討において適合しない場合には、ステップST100に戻って、スラブ厚等の初期条件の設定をやり直すようになっている(ステップST106)。
【0050】次に、曲げ筋及び配筋の設定が行われた後に、面内せん断力及び開口部の検討が行われ、面内せん断力に不適合である場合には配筋の変更が行われ再度面内せん断力、開口部の検討が行われる(ステップST107、ST108))。
【0051】開口は、トラス筋を切断しなように配置し、開口補強を行う。但し、トラス筋を切断しなければならない場合は、曲げモーメント及びせん断力に対する安全性を確認する。トラス筋20(図2、図3参照)を切断した場合は、せん断力に対する補強を行う。この補強は開口部に隣接した新たなリブに設け、主方向には切断したトラス筋20と同本数以上のトラス筋20を配筋する。
【0052】次に、開口部の設定が行われた後に、ひび割れの検討が行われ、ひび割れが生じる場合には、ひび割れ幅の検討が行われ、このひび割れ幅が所定の幅(実施例において0.2mm>w≦0.2mm)の場合には配筋の変更が行われて再度ひび割れの検討が行われる(ステップST109、ST110、ST111)。
【0053】ここでひび割れ幅が所定の幅(実施例においてw≦0.2mm)の場合は施行時における検討が行われる、所定の幅(実施例においてw>0.2mm)の場合はステップST100に戻ってスラブ厚等の条件設定が行われる(ステップST110、ST113orST100)。
【0054】又、ひび割れの検討において、不都合な場合にはコンクリート強度の変更を行って再度ひび割れの検討が行われる(ステップST109、ST112)。
【0055】ボイドスラブ10のひび割れ幅wは、コンクリートの引張応力度が1.2√Fcを超えた梁部材について行う。この、ひび割れ幅wの算定は、下記の式(7)、(8)による。
w≦0.02cm・・・・・・(7)
w=1.08×10-6×β×sρt×3√(dc×Ac)・・・・(8)
w;設計用最大ひび割れβ;中立軸から引張縁までの距離の中立軸から引張鉄筋重心までの距離に対する比sρt;引張鉄筋の応力度(Kgf/cm2
dc;引張鉄筋の中心からコンクリートの引張縁までの距離(cm)
Ac;引張鉄筋と重心が一致するコンクリートの引張側部分の断面積を鉄筋本数で除した値(cm2
【0056】曲げひび割れモーメントの計算値(1.2√Fc)に対する比率の平均は1.46である。上記式(7)、(8)により算出されたデータは、例えば図18に示すように、第二のゾーン41(図7参照)の補強梁で断面番号130(図9のa点)の場合は、ひび割れ幅w=0.141mmである。第三のゾーン42(図7参照)のボイド部26で断面番号131(図9のb点)の場合は、ひび割れ幅w=0.166mmである。第四のゾーン43(図7参照)の段差部25で断面番号140(図9のc点)の場合は、ひび割れ幅w=0.173mmである。第一のゾーン40(図7参照)のボイド部26で断面番号155(図9のd点)の場合は、ひび割れ幅w=0.156mmである。このようにして架構図の断面番号(図9参照)に基づいて算出されたひび割れ幅が0.2mm以下であればOKである。
【0057】次に、図8に戻って、施工時の検討が行われ、そぐわない場合には、ステップST100に戻り、スラブ厚の設定、ボイド型枠の割付け設定等の初期条件の設定からやり直す(ステップST113)。
【0058】施工時における検討は、種々の面から行われ、施工計画書を作成する。この施工計画書には、所謂、薄肉PC板11等の部材の運搬、搬入から取り付け、配筋、現場打ちコンクリート17の打設に至るまでの工事計画及び検査計画が明示されている。
【0059】このようにして、格子梁解析システムは、所謂、二方向のボイド型枠15の割り付けを行い、その割り付けした状態に対応させて、配筋やたわみ、せん断力等の格子梁解析を行うようにしたことによって、一連の行為が略半自動的に行うことが可能になり、格子梁解析に費やす作業時間を短縮することができるばかりでなく、設計の正確性を熟練したものでなくとも維持することができるのである。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る格子梁解析システムは、一対の長尺梁及び短尺梁で形成されるボイドスラブの面積のうち段差部分を除いた領域に、異なった大きさのボイド型枠を割り付け配置してから、ボイドスラブの荷重を設定し、この設定されたボイドスラブの支持状態を格子梁に置換して応力及び変形を計算する行為を施工に適合できるまで繰り返し行うようにしたことにより、ボイド型枠の配列状態を適宜変更しては格子梁の設計ができるようになり、且つ要となる設計の計算は自動的に行うことができ、格子梁解析の計算結果のバラツキがなくなると共に設計時間の短縮及び作業量を減らすことができるという効果がある。
【0061】又、40種類のパターン化されたボイド型枠からなる、所謂、二方向ボイドスラブの配列状態を自動で行うため、ボイド型枠の配列状態を読取るだけの能力でよいから熟練した技術を必要としないで格子梁の解析設計が行うことができるという効果もある。
【出願人】 【識別番号】000228350
【氏名又は名称】日本カイザー株式会社
【出願日】 平成11年5月24日(1999.5.24)
【代理人】 【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功 (外1名)
【公開番号】 特開2000−328645(P2000−328645A)
【公開日】 平成12年11月28日(2000.11.28)
【出願番号】 特願平11−143065