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【発明の名称】 地盤掘削工事における被圧対策工法
【発明者】 【氏名】喜多 直之

【要約】 【課題】引張材と底版との間の一体性を確実に確保すること。

【解決手段】支圧体22を装着した引張材20のセットが終了すると、削孔内にグラウトを注入して硬化させることにより、定着部20bを地盤18に固定定着させる。引張材20の下端側の定着が終了すると、ガイドパイプ14を上方に引上げて、支圧体22をガイドパイプ14の下端から外方に突出させて、支圧プレート22bを拡開させる。そして、支圧体22の支圧プレート22bが水平方向を指向するように拡開すると、土止め壁10内に水中コンクリートを打設して、底版24を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 地盤中に構築した土止め壁の内部を掘削し、根切り掘削面以深に下端が定着された引張材を設置した後に、前記土止め壁内に底版を形成して内部を排水する地盤掘削工事において、前記引張材の上端側に一体に設けられ、前記底版内に位置する支圧体を配置することを特徴とする地盤掘削工事における被圧対策工法。
【請求項2】 前記支圧体は、前記底版の厚み方向の中心よりも上方に配置することを特徴とする地盤掘削工事における被圧対策工法。
【請求項3】 前記支圧体は、前記引張材を設置する際に、前記土止め壁内の上下方向に設置されるガイドパイプ内に収縮状態で収納されていて、前記ガイドパイプを上方移動させることにより、前記ガイドパイプから突出して、水平方向に延びるように拡開することを特徴とする請求項1または2記載の地盤掘削工事における被圧対策工法。
【請求項4】 前記支圧体は、前記ガイドパイプ内に挿通される引張材の上部側に固設された定着具と、この定着具の外周に拡縮自在に枢着された複数の支圧プレートと、前記各支圧プレートを拡開方向に付勢するバネとからなることを特徴とする請求項3記載の地盤掘削工事における被圧対策工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、地盤掘削工事における被圧対策工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シールド掘進機の発進ないしは到達立坑などを始めとして、地盤中に円形,多角形などの閉合された断面形状の土止め壁を構築し、内部の地盤を掘削する地盤掘削工事がある。
【0003】このような地盤掘削工事においては、地盤を掘削すると被圧を受ける場合があって、盤膨れやボイリングなどの不都合が発生する。このような場合の被圧対策工法として、従来、地下水位を低下させて、被圧自体を小さくする地下水位低下工法、地盤改良を施し、改良体の重量で上向きの圧力に対抗させる地盤改良工法、底版の浮き上りを引張材で抑制する引張材による抑止工法が知られている。
【0004】しかし、地下水位低下工法は、地盤条件や構造物の規模にもよるが、一般的にコストが低いという有利性があるものの、周辺地盤に変化を生じさせるなど環境面で問題がある。
【0005】また、地盤改良工法は、コスト高になることが多く、改良体の信頼性にも不安が残る。一方、引張材による抑止工法は、環境や信頼性の問題が少なく、コストも比較的安いという有利性があるものの、以下に説明する技術的な課題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、引張材による抑止工法は、例えば、その一例が特開平4−272388号公報に開示されているのように、根切り掘削面以深に下端が定着された引張材の上端側周面と、水中打設するコンクリトーにより形成される底版とを一体化させて、底版の浮き上りを防止する。
【0007】ところが、この場合、底版と引張材との間の一体性は、水中に打設されるコンクリートの付着力に依存しているので、確実性に乏しく、底版に浮き上り力が作用した際に、この作用力に対して、引張材を効果的に抵抗させることが難しいという問題があった。
【0008】本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、引張材と底版との間の一体性を確実に確保することができる地盤掘削工事における被圧対策工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、地盤中に構築した土止め壁の内部を掘削し、根切り掘削面以深に下端が定着された引張材を設置した後に、前記土止め壁内に底版を形成して内部を排水する地盤掘削工事において、前記引張材の上端側に一体に設けられ、前記底版内に位置する支圧体を配置するようにした。このように構成した地盤掘削工事における被圧対策工法によれば、引張材の上端側に支圧体が一体に設けられているので、底版と引張材との一体性が確実に確保され、底版に浮き上り力が作用した際に、この作用力に対して、引張材を効果的に抵抗させることができる。前記支圧体は、前記底版の厚み方向の中心よりも上方に配置することが望ましく、この構成を採用すると、底版の厚みを有効に活用して、より一層効果的に引張材を作用力に対して抵抗させることができる。前記支圧体は、前記引張材を設置する際に、前記土止め壁内の上下方向に設置されるガイドパイプ内に収縮状態で収納されていて、前記ガイドパイプを上方移動させることにより、前記ガイドパイプから突出して、水平方向に延びるように拡開させることができる。この構成によれば、ガイドパイプの設置と上方移動とにより、簡単に支圧体を底版の厚み方向の所定位置に設置することができる。前記支圧体は、前記ガイドパイプ内に挿通される引張材の上部側に固設された定着具と、この定着具の外周に拡縮自在に枢着された複数の支圧プレートと、前記各支圧プレートを拡開方向に付勢するバネとで構成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照にして詳細に説明する。図1から図6は、本発明にかかる地盤掘削工事における被圧対策工法の一実施例を示している。
【0011】同図に示した被圧対策工法では、まず、図1に示すように、水平断面が閉合された筒状の土止め壁10が地盤中に構築される。この土止め壁10は、例えば、地中連続壁工法やSMW工法,TRD工法などにより地下水位(WL)以深まで形成される。
【0012】土止め壁10が所定深度まで構築されると、土止め壁10の内部の水中掘削および排土が行われ、この掘削が所定深度の根切り掘削面12に到達すると、内部の水中掘削を停止する。
【0013】次に、図2に示すように、下端が根切り掘削面12に到達する両端が開口した中空円筒状のガイドパイプ14を設置する。このとき、各ガイドパイプ14の上端側は、地上に設置した係止部材16により、ほぼ鉛直になるように支持する。
【0014】そして、ガイドパイプ14内に図示省略のボーリングロッドを挿入して、根切り掘削面12以深の地盤18を削孔する。この削孔が所定深度まで行われると、ガイドパイプ14内を挿通させてその下端が削孔の先端に到達する引張材20を、各ガイドパイプ14内に挿入する。
【0015】本実施例の引張材20は、例えば、PC鋼棒,PC鋼線,H型鋼などで構成されたアンカー本体20aと、このアンカー本体20aの下端に一体に設けられ、拡径された定着部20bとを備えており、アンカー本体20aは、ガイドパイプ14内を挿通して上端に突出する長さを有している。
【0016】また、この引張材20には、図5,6にその詳細を示す支圧体22が取付けられている。同図に示した支圧体22は、定着具22aと、支圧プレート22bと、コイルバネ22cとを備えている。
【0017】定着具22aは、軸方向にアンカー本体20aの挿通孔22dが貫通形成され、下端側の挿通孔22dの開口端の外周に略十字状に配置された4枚の支圧プレート22bが拡縮自在(揺動自在)に枢着されている。なお、支圧ブレート22bの数は、4に限ることはなく、これ以上ないしは以下であってもよい。
【0018】コイルバネ22cは、拡縮自在に枢着された各支圧プレート22bを拡開方向に付勢し、フリーな状態では、各支圧プレート22bは、図5,6に実線で示すように、ほぼ水平方向を指向するように延設される。
【0019】このように構成された支圧体22は、その定着具22aが、図3に示すように、底版24の厚み方向の中心から上方になる位置に固設される。
【0020】そして、引張材20をガイドパイプ14内に挿通する際には、図5に仮想線で示すように、各支圧プレート22bをバネ22cの付勢力に抗して収縮させた状態で挿入する。
【0021】支圧体22を装着した引張材20のセットが終了すると、削孔内にグラウトを注入して硬化させることにより、定着部20bを地盤18に固定定着させる。
【0022】この定着が終了すると、引張材20には、原則的には、緊張力を与えないが、施工条件,引張材20の材質,構造物の規模などを考慮して、緊張力を与える場合もある。
【0023】引張材20の下端側の定着が終了すると、図3に示すように、ガイドパイプ14を上方に所定距離だけ引上げる。この引き上げ距離は、底版24を形成する厚みに相当するものであって、ガイドパイプ14を引上げると、支圧体22がガイドパイプ14の下端から外方に突出する。
【0024】支圧体22がこのようにして突出すると、各支圧プレート22bがバネ22cにより拡開方向に付勢されているので、突出すると直ちに各支圧プレート22bは、開いてほぼ水平方向に延設する。
【0025】支圧体22の支圧プレート22bが水平方向を指向するように拡開すると、土止め壁10内に水中コンクリートを打設して、底版24を形成する。水中コンクリートが硬化すると、内部の水を排水した後に、ガイドパイプ14を撤去し、底版24の上方に延びている引張材20を切断撤去すると、図4に示すように、工事が完了する。
【0026】さて、以上のように構成した被圧対策工法によれば、引張材20の上端側に水平方向に延びる支圧体22が一体に設けられているので、底版24と引張材20との一体性が確実に確保され、底版24に浮き上り力が作用した際に、この作用力に対して、引張材20を効果的に抵抗させることができる。
【0027】また、本実施例の場合には、支圧体22は、底版24の厚み方向の中心よりも上方、より具体的には、底版24の上端近傍に配置しているので、底版24の厚みを有効に活用して、より一層効果的に引張材20を作用力に対して抵抗させることができる。
【0028】さらに、本実施例の場合には、支圧体22は、引張材20を設置する際に、土止め壁10内の上下方向に設置されるガイドパイプ14内に収縮状態で収納されていて、ガイドパイプ14を上方移動させることにより、ガイドパイプ14から突出して、水平方向に延びるように拡開させる。
【0029】このため、ガイドパイプ14の設置と上方移動とにより、簡単に支圧体22を底版24の厚み方向の所定の位置に設置することができる。
【0030】図7は、この発明にかかる被圧対策工法で用いることができる支圧体22’の他の例を示している。同図に示した支圧体22’は、上記実施例のガイドパイプ14を、引張材20の定着部20bを地盤18に定着した後に、上方に移動させることだけでなく、完全に撤去する場合に採用される構造であり、位置決め治具22dと、支圧効果用治具22eと、クサビ治具22fとを備えている。
【0031】位置決め治具22dは、ガイドパイプ14よりも小径のリング体であって、予め引張材20のアンカー本体20aの所定個所に固着される。
【0032】支圧効果用治具22eは、アンカー本体20aが上下方向に挿通される筒部220eと、この筒部220eの下端に突設され、水平方向に延びる円盤状のフランジ部221eと、筒部220eの上端側開口端に設けられたテーパ孔222eとを備えている。
【0033】この支圧効果用治具22eは、ガイドパイプ14を撤去した状態で、アンカー本体20aの上端側から挿入され、下端が位置決め治具22dに当接する位置にセットされる。
【0034】クサビ治具22fは、中心軸上にアンカー本体20aの挿通孔が貫通形成され、支圧効果用治具22eの上部側に装着されて、テーパ孔222e内に嵌着されることで、位置決め治具22dとの間に支圧効果用治具22eを挟み込んで固定する。
【0035】この場合、支圧効果用治具22eの固定位置は、上記実施例と同様に、底版24の厚み方向の中心から上方に設定される。このように構成した支圧体22’を用いる場合には、その設置が上記実施例よりも若干面倒になるが、支圧効果用治具22eを備えているので、底版24に浮き上り力が作用した際に、この作用力に対して、引張材20を効果的に抵抗させることができる。
【0036】
【発明の効果】以上、実施例で詳細に説明したように、本発明にかかる地盤掘削工事における被圧対策工法によれば、引張材と底版との一体性は、支圧体を介在させることにより確実に確保され、しかも、底版の浮き上りに対して、引張材を効果的に対抗させることができる。
【出願人】 【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【出願日】 平成10年11月6日(1998.11.6)
【代理人】 【識別番号】100087686
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 雅利
【公開番号】 特開2000−144742(P2000−144742A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平10−315963