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【発明の名称】 糸芭蕉の水中への漬け込みと煮沸による繊維採取方法
【発明者】 【氏名】喜納 千津子

【要約】 【課題】糸芭蕉の原皮より繊維本来の色(白系)の繊維と素材のもつ、艶、張りを損なわず繊維を採取する。

【解決手段】糸芭蕉の原皮を一定期間、水中又は塩水中に空気に触れないように漬け込み、その後、取り出し煮沸する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 糸芭蕉の原木(図1)から剥ぎ採った原皮(1・2・3・4)中より、繊維本来の色(白系)の繊維を傷めず、水中(A)又は塩水中(A)に一定期間漬け込み(図4)、煮沸して繊維を採取する。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する分野】本発明は、糸芭蕉の原皮から繊維本来の色(白系)、艶、張りを損なわず簡単に引き出すことを前提にした、繊維採取方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の繊維採取方法においては、糸芭蕉の原皮は肉厚で張りがあり、1本の糸芭蕉は約20数枚の原皮で輪層をなし、表層から内層にいくにしたがって柔らかく、また、原皮中に含まれているアク(樹液)が空気に触れると茶色に変色する原木は約1m内外に切り倒され、1本の原木の外側から1枚ずつ原皮を剥いで硬軟によって約4枚から5枚ずつの4種類の原皮に剥ぎ分けられる。外側から1番層の4・5枚が最も硬い原皮(沖縄方言名・ワーハー)、2番層(沖縄方言名・ナハウー)、3番層(沖縄方言名・ナハグー)、4番層(沖縄方言名・キヤギ)と呼ばれ、繊維の硬軟の種類の名称にもなっている。剥ぎ採って分けられた原皮は煮沸する鍋の大きさに合わせて、2つ折りか3つ折りにして束ねる。その原皮は、この日のうちに木灰汁(強アルカリ成分)で約20分〜30分煮沸するが、木灰汁の加減は大変難しく、アルカリ度が強いと繊維が切れて糸が採れない。アルカリ度が弱いといくら時間をかけても煮えないため、扱いが難しく、熟練された人の勘が必要とされている。また、強アルカリで煮るため、繊維の色は黄色味がかった肌色系で、繊維の採り出し作業は、原皮を竹ばさみで挟みしごいて繊維を採る。(例えば、沖縄県大宜味村字喜如嘉の芭蕉布保存会・編集・発行の『喜如嘉の芭蕉布』テキスト、沖縄県立博物館友の会・編集・発行の『芭蕉布と平良敏子』参照)。
【0003】
【発明が解決しょうとする課題】従来の繊維採取方法は、木灰汁で煮沸するため、アルカリ度の強弱で左右されたり、苛性ソーダ灰等の補助剤を使用することもあり、そのため、繊維の表層を傷め、繊維ぎれや変色もともない、繊維本来の色(白系)の繊維が採れない問題と生の原皮は張りがあり、樹液(アク)は空気に触れると茶色に変色し、簡単には繊維の採取ができないため、木灰汁(木灰)や苛性ソーダ灰等の補助剤を使用しないと繊維の採取ができない問題点があった。
【0004】本発明は、繊維採取の手段として、糸芭蕉の原木より剥ぎ採った原皮中から、自然法則によって、繊維本来の色(白系)、艶、張りのある繊維を採るため、変色の要因にもなる樹液(アク)を取り除き、また、原皮の繊維質と皮肉質の分離を簡単にし、原皮の張りを取り除くため、水中又は塩水中に一定期間漬け込み、その後、水中より取り出して、原皮を煮沸することによって、さらに柔らかくし樹液(アク)をぬき、傷めず簡単に竹ばさみでしごいて繊維を採取することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の水中又は塩水中への漬け込みにおいて、糸芭蕉の原木より剥ぎ採った原皮は、硬軟によって4種類(図3)に分ける。それをポリ桶(E)等に硬い原皮(1・2・3・4)から重ね入れ、その上に重石(C)をし、水又は塩水を原皮が空気に触れない程度、4番層(4)の原皮から約20cm以上(B)の量を入れて一定期間原皮を漬け込む(4)。
【0006】上記漬け込みによって、柔らかく、しんなりとした原皮を、水中より取り出して水洗いし、さらに水又は食塩を入れて沸騰させた鍋に入れて煮る。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の水中又は塩水中の一定期間の漬け込みと煮沸に関して、糸芭蕉の原皮は約1m内外に切り倒した原木(図1)の外側から1枚ずつ剥ぎ(図2)、硬軟によって各種類約4枚から5枚ずつの4種類の原皮に剥ぎ分ける。剥ぎ分けられた原皮はその日の内に、煮沸する鍋の広さに合わせて、2つ折りか3つ折りにして束ね(図3)、外側の1番層(1)の硬い原皮から、順番に2番層(2)、3番層(3)、4番層(4)とポリ桶(E)等に重ね入れ、最も柔らかい4番層が上にくるようにする。(原皮を入れる桶等が余分にある場合は、種類別に入れるとよい。)その上に重石(C)をし、原皮が空気に触れないように、水又は塩水を注ぎ入れ、柔らかく、しんなりするまで蓋(F)をして置く。
【0008】上記漬け込みによって、原皮が空気に触れないようにすることによって、水中の原皮と繊維本来の色(白系)を維持させることができる。
【0009】また、漬け込んだ原皮に水分を十分含ませて柔らかく、しんなりさせることにより原皮の皮肉質と繊維質の分離をしやすくする。漬け込み日数は約4日〜20日前後。日数は、原皮の硬軟と季節の気温に左右される。
【0010】また、漬け込んだ原皮の状態を確認する目安として、水面上に原皮から出たゼラチン状の樹液(アク)が膜(D)を張るので、水中の原皮の状態を知ることができる。
【0011】さらに、早いものでは、4・5日経つと原皮が十分水分を含み、柔らかく、しんなりしてくる。その時期から原皮の皮肉質の部分の腐食が始まり、原皮の柔らかいものから皮肉質の部分が腐食し、崩れて痩せていく。
【0012】そして、上記の理由から、原皮の皮肉質の部分が腐食して崩れない前に、水中又は塩水中より取り出す。この工程で、一番早く柔らかくなる原皮は、4番層と3番層である。取り出す順序は、原皮の硬軟によって決まる。
【0013】また、取り出した原皮は水で汚れを洗い流し、水又は食塩を入れて沸騰させた鍋で煮る。
【0014】また、上記煮沸により原皮は、さらに柔らかく、しんなりとし、樹液(アク)も抜く、約10分〜15分と短時間で煮える。時間は原皮の硬軟で決まる。
【0015】そして、煮えた原皮を水洗いし、適当な幅に裂き、竹ばさみでしごいて皮肉質を取り除き、繊維本来の白系統の繊維を採取することができる。ここで皮肉質が崩れない前に水中より取り出すため、竹ばさみでしごく作業の場合、残した皮肉質が竹ばさみの滑りをよくし繊維を痛めず、簡単に繊維を採取することができる。腐食させて皮肉質のない痩せた原皮を竹ばさみでしごいても滑りが悪く、繊維がからみ傷める原因と採取作業の価値をなくする。
【0016】上記したように、採取した繊維は蔭干しにして乾燥させる。
【0017】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0018】糸芭蕉の原皮を、水又は塩水に一定期間の漬け込みと煮沸により、原皮の張りを取り除き柔らかくすることができ、繊維採取作業が容易にできる。
【0019】そして、原皮の変色の原因にもなる、樹液(アク)、空気の影響を押さえることができ、繊維本来の色(白系)の繊維採取ができる。
【0020】また、本発明は原皮や繊維に影響を与えるものがない自然採取のため、繊維の色、艶、張りが際立っている。
【0021】また、木灰汁(木灰)、苛性ソーダ等の添加物を使用する必要がない。例えば、使用する場合があっても原皮が水分を十分含んでいるため、アルカリ成分の影響を押さえることができ、木灰汁は、生の原皮を柔らかく煮る目的と、色の誘発作用があるために使用されるが、この発明においては、色の誘発剤としてだけ使用することができる。
【0022】本発明は、原皮の炊き時間を短縮することもできるが、炊き時間はあまり重要ではないため楽にできる。
【0023】また、繊維採取作業で原皮からでる汁で鍋や手が染まらず汚れない。
【0024】また、本発明は、糸芭蕉の原木と水があれば繊維採取が可能にできる。
【0025】さらに、本発明によって、艶、張りのある白い芭蕉布を生産することが可能にできる。
【0026】本発明が、左右されるものは、糸芭蕉の原皮の硬軟だけである。
【出願人】 【識別番号】399010327
【氏名又は名称】喜納 千津子
【出願日】 平成11年3月1日(1999.3.1)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−248417(P2000−248417A)
【公開日】 平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願番号】 特願平11−97975