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【発明の名称】 複合糸の製造装置
【発明者】 【氏名】三浦 紀男

【要約】 【課題】絹糸と合成繊維との複合糸、特に合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて合成繊維に繭糸を接着させた複合糸を安定して生産でき、また生産性を高めるための製造装置、又は製造方法を提供すること。

【解決手段】絹糸と合成繊維との複合糸の製造装置であって、合成繊維を送出する送出手段と、前記送出手段から送出された合成繊維に絹糸を付着させた複合糸を巻き取る巻取手段と、前記送出手段と前記巻取手段とを異なる速度で駆動可能な駆動手段とを備え、前記駆動手段は、前記送出手段と前記巻取手段との速度比を一定に保持した状態で、速度を変更可能な構成とした複合糸の製造装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 絹糸と合成繊維との複合糸の製造装置であって、合成繊維を送出する送出手段と、前記送出手段から送出された合成繊維に絹糸を付着させた複合糸を巻き取る巻取手段と、前記送出手段と前記巻取手段とを異なる速度で駆動可能な駆動手段とを備え、前記駆動手段は、前記送出手段と前記巻取手段との速度比を一定に保持した状態で、速度を変更可能な構成としたことを特徴とする複合糸の製造装置。
【請求項2】 絹糸と合成繊維との複合糸の製造方法であって、合成繊維を送出する送出手段と、前記送出手段から送出された合成繊維に絹糸を付着させた複合糸を巻き取る巻取手段と、前記送出手段と前記巻取手段とを異なる速度で駆動可能な駆動手段とを備え、前記駆動手段によって、前記送出手段と前記巻取手段とを一定の速度比で駆動するとともに、運転開始からの所定時間は、回転数を徐々に上げることを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項3】 絹糸と合成繊維との複合糸の製造装置であって、合成繊維を巻いたボビンを回転させて合成繊維を送出する送出手段と、前記送出手段から送出された合成繊維に絹糸を付着させた複合糸を巻き取る巻取手段と、前記送出手段と前記巻取手段を駆動する駆動手段とを備え、前記送出手段は、前記ボビンを載置可能な2本の並行な送出ローラで構成し、前記ボビンを、合成繊維が該ボビンの上部位置から離れて送出されるように前記送出ローラ上に載置することを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項4】 前記ボビンを保持するボビンホルダーを設け、前記ボビンホルダーは、前記ボビンの回転軸を挿入可能な垂直方向の長孔を備えていることを特徴とする請求項3記載の複合糸の製造装置。
【請求項5】 2本の前記送出ローラ間の下方に、上方に向かって突出可能なピストンを設け、前記ボビンホルダーは、前記ボビンと一時的に接触して前記ボビンの回転を停止するストッパーを備え、前記ボビンは、前記ピストンによって上方へ跳ね上げられたときに瞬時に回転を停止し、その後にフリー状態となることを特徴とする請求項4記載の複合糸の製造装置。
【請求項6】 合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて前記合成繊維に前記繭糸を接着して複合糸とし、前記複合糸を小枠にて巻き取る複合糸の繰糸方法であって、前記小枠周囲の雰囲気温度を56℃〜70℃としたことを特徴とする複合糸の繰糸方法。
【請求項7】 合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて前記合成繊維に前記繭糸を接着して複合糸とし、前記複合糸を小枠にて巻き取る複合糸の繰糸方法であって、前記小枠に巻き取られる前記複合糸の表面温度を54℃〜69℃としたことを特徴とする複合糸の繰糸方法。
【請求項8】 合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて前記合成繊維に前記繭糸を接着して複合糸とする複合糸の繰糸装置であって、前記繰糸装置の本体下部の前方に、前記合成繊維を巻いたボビンを回転させて前記合成繊維を上方に送出する送出ローラを設け、前記送出ローラの後方に光源を設けたことを特徴とする複合糸の繰糸装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絹糸と合成繊維との複合糸の製造装置、又はこの複合糸の製造方法に関し、特に合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、繭糸が有するセリシンを用いて合成繊維に繭糸を接着して複合糸とする複合糸の繰糸装置、又はこの複合糸の繰糸方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の複合糸の製造方法としては、特公平7−33609号公報にて提案された方法がある。この製造方法は、絹糸と、この絹糸の破断伸度の3倍よりも大きな破断伸度を有する合成繊維弾性糸とを用い、送出速度の2〜5倍の速度で巻き取ることで、合成繊維弾性糸に張力を与えた状態で、絹糸と接着させるものである。また、この接着には、生糸が有するセリシンを用いている。そしてこの方法によれば、柔軟性と滑らかさとを有し、緊張させた後に緩めても両糸が容易には分離せず、肌着用に好適で、取扱性に優れた弾性複合糸を製造することができる。また、繭糸以外の糸よりなる芯糸の周囲に繭糸を集束させ、ケンネルを経て小枠に巻き取る繰糸方法において、繰糸速度が330m/分以上の高速度で巻き取ることにより、繰糸張力17g/20d以上を付与させ、小枠の周囲から50℃以上の熱風を吹き付けて小枠乾燥を図ることにより、繭糸と芯糸の集束を高め、引揃性をよくした複合糸の製造方法が提案されている(特公平3−57203号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特公平7−33609号公報にて提案された方法は、糸離れが少ない非常に優れた方法ではあるが、複合糸を得るための基本的な提案であり、安定した生産を行い、また生産性を高めるための改良が更に必要である。一方、特公平3−57203号公報にて提案されたものには、小枠の周囲から50℃以上の熱風を吹き付けて小枠乾燥を図ることが提案されているが、50℃以上の温度でも糸離れが随所に見られたり、又逆に温度が高くなりすぎると複合糸同士が固着してしまうことが判明した。
【0004】そこで本発明は、絹糸と合成繊維との複合糸、特に合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて合成繊維に繭糸を接着させた複合糸を安定して生産でき、また生産性を高めるための製造装置、又は製造方法を提供することを目的とする。また、このような複合糸の中でも特に、合成繊維に張力を加えた状態で得られる複合糸の安定した生産、又は生産性の向上を図ることを目的とする。より具体的な本発明の目的の一つは、合成繊維への張力を変更することなく、運転の速度を変更可能とすることで、運転開始時等の不安定な状態での生産を安定させ、生産が安定した状態では生産性を高めることにある。また、より具体的な本発明の目的の一つは、合成繊維の送り出しをスムーズに行うことで、生産性を高めることにある。また、より具体的な本発明の目的の一つは、異常発生時にこの合成繊維の送り出しを迅速に停止し、その後フリー状態とすることで、異常発生時の修復を容易に行えるようにすることにある。また、より具体的な本発明の目的の一つは、複合糸とした後の巻き取り段階での乾燥温度を最適に保持することで、糸離れを少なくするとともに、複合糸同士の固着を防止して、複合糸の安定した生産を行うことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明の複合糸の製造装置は、絹糸と合成繊維との複合糸の製造装置であって、合成繊維を送出する送出手段と、前記送出手段から送出された合成繊維に絹糸を付着させた複合糸を巻き取る巻取手段と、前記送出手段と前記巻取手段とを異なる速度で駆動可能な駆動手段とを備え、前記駆動手段は、前記送出手段と前記巻取手段との速度比を一定に保持した状態で、速度を変更可能な構成としたことを特徴とする。請求項2記載の本発明の複合糸の製造方法は、絹糸と合成繊維との複合糸の製造方法であって、合成繊維を送出する送出手段と、前記送出手段から送出された合成繊維に絹糸を付着させた複合糸を巻き取る巻取手段と、前記送出手段と前記巻取手段とを異なる速度で駆動可能な駆動手段とを備え、前記駆動手段によって、前記送出手段と前記巻取手段とを一定の速度比で駆動するとともに、運転開始からの所定時間は、回転数を徐々に上げることを特徴とする。請求項3記載の本発明の複合糸の製造装置は、絹糸と合成繊維との複合糸の製造装置であって、合成繊維を巻いたボビンを回転させて合成繊維を送出する送出手段と、前記送出手段から送出された合成繊維に絹糸を付着させた複合糸を巻き取る巻取手段と、前記送出手段と前記巻取手段を駆動する駆動手段とを備え、前記送出手段は、前記ボビンを載置可能な2本の並行な送出ローラで構成し、前記ボビンを、合成繊維が該ボビンの上部位置から離れて送出されるように前記送出ローラ上に載置することを特徴とする。請求項4記載の本発明は、請求項3記載の複合糸の製造装置において、前記ボビンを保持するボビンホルダーを設け、前記ボビンホルダーは、前記ボビンの回転軸を挿入可能な垂直方向の長孔を備えていることを特徴とする。請求項5記載の本発明は、請求項4記載の複合糸の製造装置において、2本の前記送出ローラ間の下方に、上方に向かって突出可能なピストンを設け、前記ボビンホルダーは、前記ボビンと一時的に接触して前記ボビンの回転を停止するストッパーを備え、前記ボビンは、前記ピストンによって上方へ跳ね上げられたときに瞬時に回転を停止し、その後にフリー状態となることを特徴とする。請求項6記載の本発明の複合糸の繰糸方法は、合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて前記合成繊維に前記繭糸を接着して複合糸とし、前記複合糸を小枠にて巻き取る複合糸の繰糸方法であって、前記小枠周囲の雰囲気温度を56℃〜70℃としたことを特徴とする。請求項7記載の本発明の複合糸の繰糸方法は、合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて前記合成繊維に前記繭糸を接着して複合糸とし、前記複合糸を小枠にて巻き取る複合糸の繰糸方法であって、前記小枠に巻き取られる前記複合糸の表面温度を54℃〜69℃としたことを特徴とする。請求項8記載の本発明の複合糸の繰糸方法は、合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて前記合成繊維に前記繭糸を接着して複合糸とする複合糸の繰糸装置であって、前記繰糸装置の本体下部の前方に、前記合成繊維を巻いたボビンを回転させて前記合成繊維を上方に送出する送出ローラを設け、前記送出ローラの後方に光源を設けたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明による第1の実施の形態は、送出手段と巻取手段とを異なる速度で駆動可能な駆動手段とを備え、この駆動手段は、送出手段と巻取手段との速度比を一定に保持した状態で、速度を変更可能な構成とした複合糸の製造装置である。本実施の形態によれば、送出手段と巻取手段とを異なる速度で駆動可能なため、送出手段の速度よりも巻取手段の速度を速くすることができ、送出手段から送出される合成繊維に張力を加えることができる。従って、本製造装置は、絹糸には張力をかけず、合成繊維だけに張力をかけた状態で複合糸を製造することができる。また、本製造装置の駆動手段は、送出手段と巻取手段との速度比を一定に保持した状態で、速度を変更可能な構成としているので、回転速度を変更しても、合成繊維の張力を一定に保った状態で複合糸を製造することができる。従って、例えば、本製造装置の立ち上げ時の糸切れ等が多発する不安定な状態では、低速で運転を行い、安定した状態では、生産性を高めるために高速で運転することができ、安定した生産を実現することができる。
【0007】本発明による第2の実施の形態は、送出手段と巻取手段とを一定の速度比で駆動するとともに、運転開始からの所定時間は、回転数を徐々に上げる複合糸の製造方法である。このように、送出手段と巻取手段との速度比を一定に保持した状態で速度を変更可能としているので、回転速度を変更しても、合成繊維の張力を一定に保った状態で複合糸を製造することができる。従って、運転開始からの所定時間は、回転数を徐々に上げることによって、運転立ち上げ時の糸切れ等が多発する不安定な状態では、低速で運転を行い、安定した状態では、生産性を高めるために高速で運転することができ、安定した生産を実現することができる。
【0008】本発明による第3の実施の形態は、送出手段を、ボビンを載置可能な2本の並行な送出ローラで構成した複合糸の製造装置である。本実施の形態によれば、送出ローラ上に載置するだけでボビンを駆動することができるため、ボビンの設置や交換が容易になるだけでなく、異常時に、ボビンへの駆動伝達を迅速に中断することができる。また、巻取手段側の異常によって合成繊維に大きな張力が加わる場合や速度むらが発生しても、ボビンが送出ローラ上でスリップすることで、糸切れや張力の大きな変動を防止することができる。また、ボビンに巻かれた合成繊維の巻数が変化しても、常にボビンの自重によって送出ローラと接触しているため、巻数の変化に伴う伝達力の変化が生じにくい。また、ボビンを合成繊維が該ボビンの上部位置から離れて送出されるように送出ローラ上に載置することで、送出される合成繊維が送出ローラとボビンとの間に挟まれることがなくなる。従って、巻取手段側の異常によって合成繊維に大きな張力が加わる場合や速度むらが発生しても、糸切れや張力の大きな変動の発生を防止することができる。
【0009】本発明による第4の実施の形態は、第3の実施の形態による複合糸の製造装置において、ボビンを保持するボビンホルダーに、ボビンの回転軸を挿入可能な垂直方向の長孔を設けたものである。本実施の形態は、ボビンホルダーにこのような長孔を設けることで、ボビンへの合成繊維の巻数が減少しても送出ローラとの確実な接触を保持することができる。また、ボビンを上方へ移動させることで、送出ローラから容易に離すことも可能となる。
【0010】本発明による第5の実施の形態は、第6の実施の形態による複合糸の製造装置において、2本の送出ローラ間の下方に、上方に向かって突出可能なピストンを設けるとともに、ボビンホルダーに、ボビンと一時的に接触してボビンの回転を停止するストッパーを設け、このボビンは、ピストンによって上方へ跳ね上げられたときに瞬時に回転を停止し、その後にフリー状態となるものである。本実施の形態は、このようなピストンと、ストッパーを有するボビンホルダーを設けることで、ボビンへの送出ローラの駆動力伝達を迅速に停止するとともに、送出ローラから離れた後にも慣性力によって回転しているボビンの回転も即座に停止することができる。また本実施の形態によれば、更に回転を停止したボビンは、ストッパーによる拘束を受けることなく、フリー状態となるため、異常発生時の修復を容易に行うことができる。
【0011】本発明による第6の実施の形態は、小枠周囲の雰囲気温度を56℃〜70℃とした複合糸の繰糸方法である。本実施の形態は、小枠周囲の雰囲気温度をこのような範囲に設定することで、合成繊維からの繭糸の糸離れを防止することができるとともに、複合糸同士の固着現象を防止することができる。従って、本実施の形態によれば、合成繊維の周囲に、繭糸が有するセリシンを用いて、繭糸を収束させた状態で確実に接着して複合糸とすることができる。
【0012】本発明による第7の実施の形態は、小枠に巻き取られる複合糸の表面温度を54℃〜69℃とした複合糸の繰糸方法である。本実施の形態は、小枠に巻き取られる複合糸の表面温度をこのような範囲に設定することで、合成繊維からの繭糸の糸離れを防止することができるとともに、複合糸同士の固着現象を防止することができる。従って、本実施の形態によれば、合成繊維の周囲に、繭糸が有するセリシンを用いて、繭糸を収束させた状態で確実に接着して複合糸とすることができる。
【0013】本発明による第8の実施の形態は、繰糸装置本体下部の前方に、合成繊維を巻いたボビンを回転させて合成繊維を上方に送出する送出ローラを設け、送出ローラの後方に光源を設けた複合糸の繰糸装置である。本実施の形態は、このような位置に光源を設けることで、合成繊維を光らせることができる。従って、ボビンから送出される合成繊維が糸切れを生じていないかの確認や、糸切れが発生したときの修復作業が容易になり、複合糸の生産性を高めることができる。
【0014】
【実施例】以下本発明の一実施例を繰糸装置を示す図1に基づいて説明する。図1は、同実施例における複合糸の繰糸装置の概略構成を示す側面図である。同図に示すように、繰糸装置本体10は、合成繊維1を送出する送出手段20、繭糸2を供給する集緒手段30、集緒手段30で集束された合成繊維1と繭糸2とを撚合わせるケンネル部40、このケンネル部40を通過した複合糸3に油を付着させるオイリング部50、複合糸3を巻き取る巻取手段60、巻取手段60の周囲の雰囲気温度を制御する熱源部70、送出手段20と巻取手段60とを駆動する駆動手段80、合成繊維1の送り出しを停止する停止手段90を備えている。ここで、合成繊維1としては、ナイロン等の熱可塑性フィラメント糸でもよいが、ポリウレタンフィラメント糸のように、絹糸に対して大きな破断伸度を有したものであれば、合成繊維1に大きな引っ張り力を加えた状態で絹糸を付着させることができる。
【0015】繰糸装置本体10は、集緒手段30、ケンネル部40、巻取手段60、及び停止手段90を、横方向に複数組並設し、複合糸3を同時に複数本繰糸できるように構成されている。一方、送出手段20、オイリング部50、熱源部70、及び駆動手段80は、横方向に連続して設けられている。このように一部の手段を共通させることで量産化を図ることができる。なお、送出手段20、オイリング部50、熱源部70、及び駆動手段80は、繰糸されるそれぞれの複合糸毎に別々に設けてもよく、それぞれの複合糸毎にそれぞれの手段を独立して有している場合には、異なる種類の複合糸を同時生産できる。送出手段20は、ボビン4を載置可能なように、2本の送出ローラ21,22を横方向に並行に配設している。ここで合成繊維1は、ボビン4に巻かれている。集緒手段30は、複数の繭玉5から引き出された繭糸2を合成繊維1の周囲に集束させる接緒器31と、内部に水を貯えて繭玉5を泳がす繰糸槽32を備えている。また、この繰糸槽32の前方には、供給用の繭玉5を保管する給繭器33を備えている。
【0016】ケンネル部40は、上鼓車41と下鼓車42とを備え、この上鼓車41と下鼓車42とによって、複合糸3をループ状に配置して撚掛け部43を形成している。ここで、上鼓車41は、繰糸装置本体10に取り付けた第一のアーム41Aの接合部41Bに前方へ突出させた第二のアーム41Cに取り付けている。なお、従来構成では、この上鼓車41は、第一のアーム41Aの接合部41Bに取り付けているが、このように第二のアーム41Cを追加することで、撚掛け部43の長さを長くすることができる。この撚掛け部43の長さは、13センチメートル以上であることが好ましく、15センチメートル以上確保することがより好ましい。 オイリング部50は、横方向に配置されたオイリングローラ51やこのオイリングローラ51の下部に配置されたオイル受け52の他に、図示しないが、このオイル受け52に油を供給する油供給装置やオイリングローラ51を回転駆動するローラ駆動装置を備えている。
【0017】巻取手段60は、小枠61と、この小枠61に駆動手段80の駆動を伝える回転軸62を備えている。小枠61は、それぞれの複合糸3毎に設けられているが、回転軸62は、横方向に連続して設けられている。ここで小枠61は、端面は複数本のリブ61Aにより、また外周面は複数本の連結部61Bにより構成されている。このとき、連結部61Bは、35本のものを用いている。ここで連結部61Bは、30本以上のものを用いることが好ましい。連結部61Bの本数を30本以上とすることで、隣り合う連結部61B間における、巻き取られる複合糸3の角度が小さくなる。従って、巻き取り時に、複合糸3の連結部61Bへの押圧力を弱めることができ、複合糸3同士の固着を防止することができる。熱源部70は、小枠61と乾糸カバー71との間にヒータ72を設けることで構成している。ここで乾糸カバー71は、横方向に連接して配置されたそれぞれの小枠61の後方、上方、及び前方上部を覆っている。ここで、ヒータ72は、温水又は蒸気を通す暖管を、小枠61の上方に3本、小枠61の下方に2本配置して構成している。このように暖管を少なくとも小枠61の上方と下方に配置することで、小枠61の全周をより均一に加熱することができる。
【0018】次に、駆動手段80について、図2を用いて説明する。駆動手段80は、送出手段20を駆動する駆動モータ81、巻取手段60を駆動する駆動モータ82、これら駆動モータ81,82のそれぞれの速度を制御する回転数制御部83、この回転数制御部83に速度変更を指示する回転数変更部84、回転数制御部83に速度比を指示する回転比設定部85から構成される。ここで、回転数変更部84は、駆動モータ81と駆動モータ82との速度比を一定に保持した状態で、速度変更を指示するものである。具体的には、運転開始時には低速で回転を指示し、その後段階的に速度を増すように指示する。回転比設定部85は、駆動モータ81と駆動モータ82との速度比を設定するものである。具体的には、送出手段20から送出される糸速をVm/分としたとき、巻取手段60の糸速がVm/分より大きくなるように、回転比設定部85によって、駆動モータ81と駆動モータ82との速度比を設定する。巻取手段60の糸速を2V〜5Vm/分となるように設定することがより好ましい。回転数制御部83は、あらかじめ回転比設定部85によって、駆動モータ81と駆動モータ82との速度比を設定しておき、運転時には、必要に応じて回転数変更部84によって回転数が変更される。なお、駆動モータ81と駆動モータ82とは、必ずしも別のモーターで構成する必要はなく、一つの駆動モータを用いて減速手段によって速度比を設定するものであってもよい。
【0019】次に、停止手段90について、図3を用いて説明する。停止手段90は、ピストン91を内部に備えたエアシリンダ92と、このエアシリンダ92を動作させるための電磁バルブ93と、エアシリンダ92にガスを供給するエア管94とを備えている。このエアシリンダ92は、ボビン4の下方に配置されており、ピストン91の突出により、このボビン4を上方へ跳ね上げるように構成されている。エア管94内には、図示しないコンプレッサにより、繰糸装置10の運転中には高圧ガスが供給されている。一方、ボビン4は、繰糸装置10の基台11に固定された固定側ボビンホルダー12と、取り外し可能で高さ方向の寸法を変更可能な設置側ボビンホルダー13とによって、回動可能に保持される。なお、同図においては、図示を省略するが、このボビン4は、図1に示すように送出ローラ21,22上に載置される。固定側ボビンホルダー12は、底部12Aと両側部12Bとから略コの字状に形成され、底部12Aで基台11に固定されている。またこの底部12Aには、孔12Cを有し、エアシリンダ92が挿入されている。また、両側部12Bは、上端を開放した溝12Dを備えている。この溝12Dは、ボビン4の回転軸4Aを保持するものである。
【0020】設置側ボビンホルダー13は、固定側ボビンホルダー12の両側部12Bに同一のものがそれぞれ設けられる。なお、同図においては、説明の都合上、手前側の設置側ボビンホルダー13を省略して表している。この設置側ボビンホルダー13は、本体13Aと2本の足13Bとより構成されている。足13Bの端部には、調整ねじ13Cが設けられており、本体13Aの高さを調整可能としている。本体13Aは、略中央に下端を開放した溝13Dを備えている。ここで、固定側ボビンホルダー12に設けた溝12Dと、設置側ボビンホルダー13に設けた溝13Dとによって、長孔Dを構成している。ボビン4の回転軸4Aは、この長孔D内を摺動することができる。従って、ボビン4は、回転軸4Aが摺動可能な長孔Dの範囲内において上下動させることができる。ここで、調整ねじ13Cによって長孔Dの高さ寸法を変更することができる。設置側ボビンホルダー13の本体13Aには、更にストッパー13Eが設けられている。このストッパー13Eは、溝13Dの両側部に所定間隔を開けて設けられている。このストッパー13Eの高さは、ボビン4が通常の動作位置では当接せず、ピストン91の突出によって、ボビン4が跳ね上げられた時に当接するように配置されている。しかしボビン4は、ピストン91によって支持され、送出ローラー21,22から離れている場合には、このストッパー13Eにも当接しない。
【0021】なお、上記で説明した停止手段90の電磁バルブ93の開閉動作は、図1に示すスイングローラ15の動作によって、リミットスイッチ15Aが作動することによって行われる。またこのリミットスイッチ15Aの作動によって、対応する小枠61も停止するように構成されている。また、図1に示すように、合成繊維1は、通糸管16を通って集緒手段30に供給される。ここで通糸管16は、繰糸槽32の底部を貫通し、その上端は繰糸槽32内の水が流入しない位置まで、その下端は合成繊維1が繰糸装置本体10に接触しない位置まで突出して設けられている。また、送出ローラ21,22の後方には、光源17が設けられている。この光源17は、送出ローラ21,22上に載置されたボビン4から導出される合成繊維1の存在を視覚的に認識可能にするものである。このような光源17は、送出ローラ21,22の後方に設けることで、合成繊維1に光を反射させることができる。なお、より好ましくは、後方上部がよい。光源17の光が直接視界に入ることを防止でき、さらに合成繊維1の反射光を認識しやすくなるためである。
【0022】次に上記のように構成された繰糸装置本体10の運転方法について説明する。まず、繰糸装置本体10を運転する前に、暖管72に蒸気を通して、乾糸カバー71内の温度を上昇させ、小枠61を所定の温度に加熱しておく。また、回転比設定部85によって、駆動モータ81と駆動モータ82の速度比を設定しておく。このとき、送出手段20から送り出される糸速をVm/分としたとき、巻取手段60で巻き取られる糸速をV以上、更には2V〜5Vm/分となるように駆動モータ81と駆動モータ82の速度比を設定することが好ましい。より好ましくは、巻取手段60で巻き取られる糸速を2V〜3Vm/分とする。このように巻取手段60の糸速を送出手段20の糸速より大きくすることで、合成繊維1に張力を加えた状態で繭糸2を付着させることができる。
【0023】上記のような設定及び準備が終了した後、駆動モータ81と駆動モータ82の運転を開始する。このとき、回転数変更部84からの信号によって、運転開始時には低速で回転を開始する。このように運転開始時に、低速運転を行うことにより、糸切れ等の不良発生を少なくすることができる。運転開始後は、回転数変更部84からの信号によって、速度を徐々に高めていく。このとき、駆動モータ81と駆動モータ82の速度比は一定の状態を保持している。そして、運転開始から所定時間経過後に通常の運転速度とする。
【0024】次に、合成繊維1と繭糸2とが複合糸3となって、小枠61に巻き取られるまでの動作について説明する。合成繊維1は、ボビン4から送り出される。このときボビン4は、送出ローラ21,22によって回転させられているが、巻き取り速度の方が送出速度よりも速いため、実際には合成繊維1は、張力が加わった状態で引っ張られている。このボビン4から引き出された合成繊維1は、通糸管16内を通って、集緒器31に導かれている。そして、この集緒器31で、合成繊維1の周囲には、複数の繭糸2が付着する。ここで、繭糸2は、繰糸槽32に浮遊させられている繭玉5から引き出されている。なお、繭糸2は多量の水分を含んだ状態にある。このように繭糸2は、無撚の状態で合成繊維1の外周に付着する。このようにして形成された複合糸3は、上鼓車41と下鼓車42との間でループ状に移動し、撚掛け部43にて、繭糸2が含んでいた水分が除去される。このとき撚掛け部43は、水分を十分に除去するために所定長さ以上を確保することが好ましく、13cm〜15cm程度確保していることが好ましい。繭糸2は粘着性あるセリシンを多量に含んでいるため、繭糸2は合成繊維1の外周に接着される。そして、ストップレバー15に設けられた鼓車等を経由し、オイリングローラ51と接触させられた後、小枠61に巻き取られる。このようにオイリングローラ51にて油分を複合糸3に付着させることで、小枠61に巻き取られた時の複合糸3同士の固着を防止している。なお、乾糸カバー71で覆われた、小枠61の周囲の雰囲気温度は、56℃〜70℃に保ち、小枠61に巻き取られる複合糸3の表面温度を54℃〜69℃に保つことが好ましい。このような温度条件に保つことで、複合糸3の糸離れを防止するとともに、複合糸3同士が固着することを防止することができる。ここで、小枠61の周囲の雰囲気温度(乾糸部内温度)と小枠61に巻き取られる複合糸3の表面温度についての実験結果を表1に示す。ここで「糸離れ」とは、複合糸3における合成繊維1と繭糸2との接着状態を意味し、表1における「糸離れ」の欄において、二重丸印はほとんど完全に接着状態にあるものを、一重丸印はわずかに糸離れがあるものの支障無い程度の良好なものを、三角印は多少の糸離れを生じているものを、ばつ印はかなりの糸離れを生じているものを示している。「固着」と「糸切れ」については、小枠61から複合糸3を巻き出すときに、複合糸3同士が接着しているか否か、又はこの固着によって複合糸が切断してしまうか否かの状態を示している。従って、表1における「固着」と「糸切れ」の欄において、二重丸印はほとんど「固着」も「糸切れ」も生じないものを、一重丸印はわずかに「固着」や「糸切れ」の可能性があるものの支障無い程度の良好なものを、三角印は多少の「固着」や「糸切れ」の可能性があるものを、ばつ印は「固着」や「糸切れ」現象が実際に生じているものを示している。
【0025】
【表1】

【0026】次に、上記のような複合糸3の繰糸中に、糸切れや糸の引っかかり等による不良が発生した場合について説明する。繰糸中に、糸切れや糸の引っかかりが生じたときには、ストップレバー15の先端が上方へ移動し、このストップレバー15の動作をリミットスイッチ15Aが検知することにより異常を検知する。このリミットスイッチ15Aによって異常を検知すると、対応するボビン4及び小枠61を停止する。このとき、駆動手段80は、併設された複数の装置を動作させているために停止しない。小枠61は、図示しないがそれぞれの小枠61毎に設けられたブレーキによって停止する。
【0027】以下にボビン4の停止動作について、図3を用いて説明する。リミットスイッチ15Aの検知により、電磁バルブ93に信号が送られ、電磁バルブ93の弁が開放する。従って、エア管94内のガスがエアシリンダ92内に導かれ、ピストン91が突出する。このピストン91は、ボビン4を下部から押圧する。このとき、ボビン4の回転軸4Aは、固定側ボビンホルダー12の溝12Dと設置側ボビンホルダー13の溝13Dによって形成される垂直方向に長い長孔Dによって保持されている。従って、ボビン4は、ピストン91によって、下部から押圧されることによって、上方へ押し上げられる。なお、ピストン91は瞬間的に突出するため、ボビン4は跳ね上げられる。跳ね上げられたボビン4は、慣性力によって回転を継続しようとする力が働くが、跳ね上げられることによる上方への力でストッパー13Eに瞬時に当接するため、ボビン4は跳ね上げられ、ストッパー13Eに当接した瞬間に回転力を失う。従って、合成繊維1が不要に導き出されることがない。跳ね上げられたボビン4は、その後、突出状態にあるピストン91上に載置されるため、送出ローラ21,22からは、離れた状態に保持される。上記のように、異常を検知した時には、小枠61及びボビン4は、瞬時に停止し、特にボビン4から不要な合成繊維1が導き出されることもない。また、ボビン4は、ピストン91上に載置された状態で停止しているので、合成繊維1を必要に応じて引き出すことも容易であり、保守点検を容易に行うことができる。
【0028】ここで、ボビン4の交換作業の方法について説明する。一対の設置側ボビンホルダー13を、それぞれ上方へ移動させて、固定側ボビンホルダー12から取り外す。固定側ボビンホルダー12の溝12Dは上方が開放されているので、ボビン4を上方へ移動させ、固定側ボビンホルダー12から取り外す。そして新たなボビン4を逆の手順で固定側ボビンホルダー12に設置した後、設置側ボビンホルダー13を取り付ける。なお、ボビン4の種類が変更された場合など、例えばボビン4に巻かれた合成繊維1の厚みが異なる場合などは、設置側ボビンホルダー13の調整ねじ13Cによって設置側ボビンホルダー13の高さを変更する。本実施例のように、繰糸工程において、巻き取り側の糸速を送出側の糸速より速くして、合成繊維に張力を加えた状態で繭糸を付着させて複合糸をとすることにより、糸離れのほとんどない複合糸を得ることができ、その後の織編工程を安定して行うことができる。またこの織編を精錬してセリシンを除去しても、合成繊維の周りを絹糸が被覆した状態を確保することができる。なお、その後に一定の張力を加えて引き延ばした状態でヒートセットを行うことによって、弾性力を有する絹製品を得ることができる。
【0029】なお、合成繊維に繭糸を付着させる時、又は複合糸を得た後に、加撚又は合撚してもよい。また、上記実施例は、繰糸工程において複合糸を製造する方法について説明したが、必ずしも繰糸工程に限るものではなく、一旦繰糸した後に、複合糸を製造するものであってもよい。また、本実施例ではセリシンを用いて接着する方法について説明したが、他の接着材料を用いても構わない。
【0030】
【発明の効果】以上のように本発明は、絹糸と合成繊維との複合糸、特に合成繊維の周囲に繭糸を収束させ、前記繭糸が有するセリシンを用いて合成繊維に繭糸を接着させた複合糸を安定して生産でき、また生産性を高めるための製造装置、又は製造方法を提供することができる。また、このような複合糸の中でも特に、合成繊維に張力を加えた状態で得られる複合糸の安定した生産、又は生産性の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】599016590
【氏名又は名称】株式会社石西社
【出願日】 平成11年2月4日(1999.2.4)
【代理人】 【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善▲廣▼ (外2名)
【公開番号】 特開2000−226718(P2000−226718A)
【公開日】 平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願番号】 特願平11−27233