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【発明の名称】 水不溶性の機能性物質を含有させてなる絹糸とその製造方法
【発明者】 【氏名】佐々木 安男

【氏名】芳村 劼志

【氏名】西村 利典

【要約】 【課題】水不溶性の機能性物質を含有してなる絹糸とその製造方法を提供することにある。

【解決手段】本発明によれば、水不溶性の機能性物質を絹糸を構成する蛋白質であるフィブロイン中に含有させてなる絹糸が提供される。このような絹糸は、本発明に従って、蚕の飼料に水不溶性の機能性物質を配合し、これを蚕に給餌して、フィブロイン中に上記機能性物質を含有する絹糸を吐糸させて繭を形成させ、煮繭して生糸を得、これを精錬することによって得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】水不溶性の機能性物質をフィブロイン中に含有させてなる絹糸。
【請求項2】機能性物質が防黴性、殺菌性、防臭性、生理活性、遠赤外線放射性若しくは蛍光性を有する物質又は着色剤である請求項1に記載の絹糸。
【請求項3】蚕の飼料に水不溶性の機能性物質を配合し、これを蚕に給餌して、絹糸を構成する蛋白質であるフィブロイン中に上記機能性物質を含有する絹糸を吐糸させて繭を形成させ、煮繭して生糸を得、これを精錬することを特徴とする水不溶性の機能性物質を絹のフィブロイン中に含有させてなる絹糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水不溶性の機能性物質を含有させてなる絹糸とその製造方法に関し、詳しくは、水不溶性の機能性物質を絹糸を構成する蛋白質であるフィブロイン中に含有させて、その機能を発現させるようにした絹糸とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合成繊維や半合成繊維は、その製造の段階において、種々の水不溶性の機能性の物質を繊維中に含有させることができる。一例として、繊維の製造に際して、水不溶性の酸化チタン顔料を繊維中に練り込むことによって、繊維に艶消し効果を付与することが古くより行なわれている。そして、近年に至って、同様の方法によって、合成繊維や半合成繊維中に防黴剤、防臭剤、殺菌剤、遠赤外線を放射するセラミック等、水不溶性の種々の機能性の物質を練り込んだ合成繊維や半合成繊維が製造されて、衣料用途のみならず、種々の用途に広く用いられている。
【0003】他方、天然繊維の分野においては、例えば、木綿については、古くより行なわれてきた樹脂加工法や樹脂による顔料捺染法等を応用して、上述したような水不溶性の種々の機能性物質を繊維の表面に付着させたり、又は繊維の表面の細孔にこのような機能性物質を押し込む等の手段によって、修飾した木綿製品が製造されるに至っている。
【0004】しかしながら、代表的な天然繊維の一つである絹については、従来、その固有の特性を損なうことなく、上述したような水不溶性の種々の機能性物質を繊維中に練り込んだり、また、繊維表面に強力に付着させたりして、いわば修飾を施した絹繊維は、知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとる課題】本発明者らは、繊維の修飾における上述した事情に鑑みて、絹糸に対する修飾について鋭意研究した結果、絹糸についても、種々の機能性物質にて修飾することができることを見出して、本発明に至ったものである。即ち、本発明は、水不溶性の機能性物質を含有してなる絹糸とその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、水不溶性の機能性物質をフィブロイン中に含有させてなる絹糸が提供される。このような絹糸は、本発明に従って、蚕の飼料に水不溶性の機能性物質を配合し、これを蚕に給餌して、絹糸を構成する蛋白質であるフィブロイン中に上記機能性物質を含有する絹糸を吐糸させて繭を形成させ、煮繭して生糸を得、これを精錬することによって得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】養蚕と製糸は、既に、5千年も前から中国で行なわれており、その産物である絹織物は、遠く西洋にまで運ばれ、同じ目方の金の価格で取引されたとさえいわれており、我が国へは2千年程前に中国から伝わったとされている(篠原勝彦著「繊維の知識」(株)アパレルファッション昭和57年改定第5刷発行)。
【0008】蚕の作った繭を煮繭(しゃけん)し、これによって得られた繭の緒(いとぐち)を必要とする糸の太さに応じて数本集めて捲き取ったものが生糸であり、これを製糸という(上掲)。この生糸は、通常、約70%前後のフィブロインと30%前後のセリシンよりなり、絹糸は、フィブロインからなる2本のフィラメントが膠質のセリシンで接着されている。そこで、このような生糸を熱水や希アルカリで処理し、セリシンを除くことによって(精錬)、ほぼ純粋のフィブロインからなる絹糸を得ることができる。これが通常の絹糸の製造方法である。
【0009】ここに、本発明によれば、水不溶性の機能性物質を含む飼料を蚕に給餌して養蚕し、繭を形成させ、この繭を上述したように煮繭して生糸を得、これを精錬することによって、上記水不溶性の機能性物質を絹糸を構成する蛋白質であるフィブロイン中に含む絹糸を得ることができる。即ち、本発明によれば、水不溶性の機能性物質を含む飼料を蚕に給餌して養蚕することによって、蚕が繭を形成するときに、上記水不溶性の機能性物質をフィブロイン中に含む絹糸を吐糸させることができ、かくして、上記水不溶性の機能性物質を含むフィブロインからなる絹糸を得ることができるのである。繭を煮繭して生糸を得、これを精錬する手法は、既に、よく知られている。
【0010】本発明において、機能性物質とは、機能性物質が防黴性、殺菌性、防臭性、生理活性、遠赤外線放射性若しくは蛍光性を有する物質又は着色剤(蛍光染料を含む。)を含むが、しかし、これらに限定されるものではない。
【0011】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0012】実施例1ポリエステル繊維用蛍光染料CIFB199を非イオン界面活性剤にて水に分散させた濃度約20%の染料分散液1重量部を蚕用人工飼料1重量部と水2.4重量部と共に練った後、60分間スチームしたものを蚕に給餌して、養蚕した。このようにして養蚕した蚕から得られた繭にブラックライトを照射したが、蛍光を発しなかった。次に、この繭を煮繭して生糸を得、これを5g/L濃度の炭酸ナトリウム水溶液中、85〜90℃にて40分間加熱して精錬した後、水洗し、かくして、セリシンを除去して、フィブロインからなる絹糸を得た。このようにして得られた絹糸にブラックライトを照射したところ、強力な蛍光を発した。
【0013】実施例240℃で遠赤外線を放射するセラミック粉末を桑葉に10重量%付着させ、これを蚕に給餌して、養蚕した。このようにして養蚕した蚕から得られた繭を実施例1と同様にして煮繭して生糸を得、これを精錬して、セリシンを除去して、フィブロインからなる絹糸を得た。この絹糸を坩堝で燃焼させたところ、上記セラミックと同じ色の黒褐色の粉末が絹糸の6〜6.5重量%得られた。比較例として、別に、桑葉のみを給餌して養蚕した蚕から得た絹糸からは、上記と同じ処理によって、白褐色の粉末が2〜2.5重量%得られた。
【0014】桑葉のみを給餌した蚕より得た絹糸とセラミック粉末を桑葉に付着させた飼料を給餌した蚕より得た絹糸について、それぞれ40℃における遠赤外線放射分布(波長2〜25μm)を測定して、図1に示す結果を得た。本発明による絹糸は、遠赤外線の放射量が比較例による絹糸よりも多く、従って、セラミック粉末を桑葉に付着させた飼料にて養蚕した蚕の繭から、上記セラミック粉末をフィブロイン中に含む絹糸を得ることができたことが示される。
【0015】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、合成繊維や半合成繊維と同様に、水不溶性の機能性物質を絹糸を構成する間であるフィブロイン中に含有させることができ、かくして、本発明による水不溶性の機能性物質を絹のフィブロイン中に含有させてなる絹糸は、本来の種々の特性を保持しながら、上記機能性物質の有する機能を新たに有する絹糸を得ることができる。例えば、蛍光染料を含有させれば、蛍光を発する絹糸を得ることができ、また、遠赤外線を放射するセラミック粉末を含有させれば、遠赤外線を放射する絹糸を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】599002294
【氏名又は名称】佐々木 安男
【識別番号】599002308
【氏名又は名称】ウイルビー株式会社
【出願日】 平成10年12月28日(1998.12.28)
【代理人】 【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
【公開番号】 特開2000−199121(P2000−199121A)
【公開日】 平成12年7月18日(2000.7.18)
【出願番号】 特願平10−374307