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【発明の名称】 |
降伏点の歪み速度依存性の小さい低降伏点鋼およびその製造方法 |
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【氏名】渡部 義之 【氏名】吉江 淳彦 【氏名】児島 明彦 |
【課題】C、N量に応じた適正なTi、Nb、Vの添加により、硬質第二相生成に関わる実質的なC量およびフェライト中の固溶C量を低減することで、建築物の地震時のエネルギー吸収デバイス用として降伏点の歪み速度依存性の小さい低降伏点鋼およびその製造方法を得る。
【解決手段】重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、Ti:0.005〜0.4%、N:0.006%以下に加え、ExcessC=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcessC量が、−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、鋳造後直接もしくは1250℃以下に再加熱後750℃以上で熱間圧延し、必要に応じ焼き戻しあるいは焼きならし処理を行う。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼。 【請求項2】 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、鋳造後直接もしくは1250℃以下の温度に再加熱後、750℃以上の温度で熱間圧延を終了し、その後放冷することを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼の製造方法。 【請求項3】 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、鋳造後直接もしくは1250℃以下の温度に再加熱後、750℃以上の温度で熱間圧延し、さらにAc1点以下の温度で焼き戻しすることを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼の製造方法。 【請求項4】 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、鋳造後直接もしくは1250℃以下の温度に再加熱後、750℃以上の温度で熱間圧延し、さらにAc3点以上の温度で焼きならしすることを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主として地震による建物への入力エネルギーを特定の部位に吸収させ耐震性能を確保するためのエネルギー吸収デバイス用鋼として、降伏点の歪み速度依存性の小さい低降伏点鋼およびその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来より行われている耐震設計は、大地震時に柱や梁の構造体が塑性化することによりエネルギーを吸収しようとするものであり、建築物の倒壊を防ぎ人的被害の防止を大前提としながら、建設コストも比較的低く抑えることができる非常に合理的な設計法である。 【0003】一方、近年の耐震設計技術の発展により、制振・免震構造の開発と実用化が進み、地震による建物への入力エネルギーを特定の部位(エネルギー吸収デバイス)に吸収させ耐震性能を確保するとともに、主要構造である柱、梁の損傷を防止する設計技術が注目されている。 【0004】このようなエネルギー吸収デバイス用として低降伏点鋼が利用される。その原理は、通常の柱や梁の構造材よりも降伏点が低いことにより、地震時に早期に降伏し、地震による振動エネルギーを塑性エネルギーに変換することで振動応答を抑えるというものである。 【0005】低降伏点化するためには、特開平3−31467号公報に開示されているように添加元素のほとんどない純鉄に近いものとし、場合によっては特開平5−214442号公報、特開平5−320760号公報、特開平5−320761号公報などに開示されているように純鉄に近い成分をさらに高温で焼準処理される。これらはいずれもCを0.005%以下とする必要があり、製鋼工程への負荷が高く、添加元素はほとんどないにも関わらず製造コスト的には必ずしも有利ではないという問題があった。 【0006】また、一般に、鋼材の降伏点は歪み速度が高くなると上昇する傾向にあり、特に降伏点が低いものほどその傾向は顕著である。エネルギー吸収デバイスは、地震時に早期に降伏させることが本来の機能であり、地震時の高歪み速度下で降伏点が上昇することは好ましくないが、従来の低降伏点鋼では考慮されていなかった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、Cを極端に低減することなくCおよびN量に応じてTi、Nb、Vを適正量添加することにより、実質的なCを低減して低降伏点化するとともに、固溶Cを固定することにより、降伏点の歪み速度依存性を小さくした靭性に優れた低降伏点鋼及びその製造方法を提供することを課題とする【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、C、N量に応じた適正なTi、Nb、Vの添加により、硬質第二相生成に関わる実質的なC量およびフェライト中の固溶C量を低減することで、建築物の地震時のエネルギー吸収デバイス用として降伏点の歪み速度依存性の小さい低降伏点鋼とするもので、本発明によれば、建築物のエネルギー吸収デバイス用として低降伏点で、かつ、地震(高歪み速度)時の降伏点上昇を極力抑えることにより、本来の機能を十分に発揮し得る鋼材を大量かつ安価に供給できるようになった。 【0009】本発明の要旨は、以下の通りである。 【0010】(1) 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼。 【0011】(2) 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、鋳造後直接もしくは1250℃以下の温度に再加熱後、750℃以上の温度で熱間圧延を終了し、その後放冷することを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼の製造方法。 【0012】(3) 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、鋳造後直接もしくは1250℃以下の温度に再加熱後、750℃以上の温度で熱間圧延し、さらにAc1点以下の温度で焼き戻しすることを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼の製造方法。 【0013】(4) 重量%で、C:0.1%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.5%以下、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.06%以下、N:0.006%以下に加え、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%を満足するようにTi、Nb、Vのうち1種単独もしくは2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼を、鋳造後直接もしくは1250℃以下の温度に再加熱後、750℃以上の温度で熱間圧延し、さらにAc3点以上の温度で焼きならしすることを特徴とする靭性の優れた低降伏点鋼の製造方法。 【0014】 【発明の実施の形態】本発明が、請求項の通りに鋼組成を限定した理由について説明する。 【0015】Cは、強度を上昇させるパーライトなどの硬質第二相の生成や歪み速度依存性に関わる固溶C量に大きな影響を及ぼすもので、本発明鋼においては低いほど好ましく、下限については特に限定しない。ただし、過度のC量の低減は、製鋼工程への負荷が高いばかりでなく、強度低下も招くため、得ようとする降伏点レベルによっては合金添加による強度補償が必要となって、製造コストを押し上げる要因となることが懸念されるので、好ましくは0.005%以上とすべきである。必要以上にC量を低減しなくても、Ti、Nb、Vの適正添加でCの固定は可能である。一方、上限は、後述するTi、Nb、V、N量との間の関係を適正に保つことで、実質的なC量の低減が可能であり、0.1%まで許容できる。 【0016】Siは脱酸上鋼に含まれる元素であるが、多く添加すると溶接性、HAZ靭性が劣化するため、上限を0.4%に限定した。鋼の脱酸はTi、Alのみでも十分可能であり、HAZ靱性、焼入性などの観点から低いほど好ましく、必ずしも添加する必要はない。 【0017】Mnは固溶強度元素として母材の強度を上昇させるため、必要とする強度レベルに応じて、任意に添加できる。しかし、Mn量が多すぎると焼入性が上昇して溶接性、HAZ靭性を劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助長するので上限を1.5%とした。 【0018】Pは本発明鋼においては不純物であり、P量の低減はHAZにおける粒界破壊を減少させる傾向があるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.025%とした。 【0019】SはPと同様本発明鋼においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.015%とした。 【0020】Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本発明鋼においては、その下限は限定しない(0%を含む)。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接金属の靭性が劣化するので上限を0.06%とした。 【0021】Ti、Nb、VはいずれもCを固定し、実効的なC量を低減させる上で本発明においては不可欠な元素である。実際の添加量は、後述するExcess C量の制約(本発明の限定範囲)から自ずと限定される。その際、Ti、Nb、Vは単独添加でも、2種以上の複合添加であってもよい。 【0022】Nは不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、Cを固定するためのTi、Nb、Vを窒化物として消費してしまうため、上限を0.006%に限定した。 【0023】鋼の個々の成分を上記の通り限定した上で、Excess C=C−[(Ti+Nb/2+V)−3.4N]/4と定義するExcess C量が−0.02%≦Excess C≦0.005%となるように限定する。Excess C量はTi、Nb、VがC、Nを固定した後、化学量論的に残存するC量を表し、パーライトなどの硬質相生成やフェライト中に固溶残存するC量に直接関わる実質的なC量である。硬質相は強度を増加させ、固溶C量は降伏点の歪み速度依存性(歪み速度が大きいほど、降伏点が上昇)を増大させるため、Excess C量は0.005%以下とする必要がある。Excess C量が負ということはTi当量が過剰であることを意味し、Ti、Nb、Vのコストや過剰添加による粗大析出物による靭性劣化の点から−0.02%以上に限定した。 【0024】鋼成分を上記の通り限定した上で、低降伏点化を達成し、歪み速度依存性に関わる固溶Cを低減するためには、製造方法も限定する必要がある。 【0025】基本的には、本発明の通り成分を限定した鋼(鋼片あるいは鋳片)を熱間圧延しその後放冷する。このとき、加熱は必ずしも必要ではなく、圧延温度が確保されれば、鋳造後直接圧延を行ってもよいが、1250℃以下の温度に再加熱することで容易に圧延温度が確保できる。上限を1250℃とする理由は、それ以上の高温再加熱は必要以上に組織が粗大となることや、圧延温度確保の上では十分なため省エネルギーを考慮したものである。また、特にTiが添加された場合には、最終的なTiの析出形態が変化し、靭性を劣化させる場合があるため、再加熱時の上限温度を1250℃以下に限定した。 【0026】熱間圧延は750℃以上の温度で行う必要がある。これは、Excess C量が本発明の範囲に制御された鋼では変態点(Ar3)が比較的高く、圧延温度が750℃を下回ると表層近傍ではα/γ二相域圧延となって加工フェライトが生ずる場合があるためである。加工フェライト、すなわち二相域圧延では、靭性の劣化や各種性質の異方性などの問題が生ずる場合があり、可能な限り避けるべきである。 【0027】圧延後は放冷することで、フェライトから固溶Cが十分に吐き出され、すなわち固溶C量が低減し、歪み速度依存性が小さくなるが、得ようとする強度レベルへの調整などの目的で必要に応じて、圧延後、Ac1以下の温度での焼き戻しやAc3以上の温度での焼きならしを行っても何ら問題はない。 【0028】 【実施例】転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の鋼板(厚さ9〜40mm)を製造し、通常の歪み速度および地震時を想定した高歪み速度での下降伏点(降伏点の出ないものについては0.2%耐力)、引張強さを調査した。 【0029】表1に比較鋼(No.9〜13)とともに本発明鋼(No.1〜8)の鋼成分を、また表2に鋼板の製造プロセスおよび引張試験結果を示す。 【0030】表2から明らかなように、本発明に則った鋼板(本発明鋼)は、いずれも低降伏点で、かつ高歪み速度時の降伏点の上昇代が小さい。 【0031】これに対し、本発明によらない比較鋼は、降伏点が高いか、高歪み速度時の降伏点の上昇代が大きい。これらはいずれも、C、N量が高かったり、C、N量に対するC固定元素(Ti、Nb、V)量が適正でなく、Excess C量が本発明の限定範囲を超えた、いわゆるExcess C量が過剰なためである。加えて、比較鋼11は圧延終了温度が低く、いわゆる二相域圧延となって、通常の引張試験である低歪み速度域での下降伏点は高目である。 【0032】 【表1】
【0033】 【表2】
【0034】 【発明の効果】本発明により、建築物の地震時のエネルギー吸収デバイス用として、降伏点の歪み速度依存性の小さい低降伏点鋼が安価に供給可能となり、地震時の建物の安全性をより一層高めることが可能となった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年6月18日(1998.6.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100105441 【弁理士】 【氏名又は名称】田中 久喬
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| 【公開番号】 |
特開2000−1737(P2000−1737A) |
| 【公開日】 |
平成12年1月7日(2000.1.7) |
| 【出願番号】 |
特願平10−186998 |
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