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【発明の名称】 食酢及び食酢を用いた調味液
【発明者】 【氏名】畠中 茂

【要約】 【課題】食酢の改良及びその食酢を用いる調味液の改良を行う。

【解決手段】米酢又は穀物酢の原料米、麦、コーン、等の穀物原料の吸水工程又は蒸しの工程で脱塩海水を用いて処理し、この処理した穀物原料を用いて所定の醸造法により製造してなる食酢と、製造過程で配合水に代えて、又は配合水と共に海水、濃縮海水、脱塩海水のいずれかを用いてなる食酢である。この食酢と、海水、濃縮海水、脱塩海水のいずれかと、鹹(かん)味料、甘味料、酸味料、苦味料、旨味料、油味料の内の一種又は二種以上を配合調製して合わせ酢、味付けぽん酢、たたきのタレ、水産加工用調味酢等の調味液とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 米酢又は穀物酢の原料米、麦、コーン、等の穀物原料の吸水工程又は蒸しの工程で脱塩海水を用いて処理し、この処理した穀物原料を用いて所定の醸造法により製造してなる食酢。
【請求項2】 製造過程で配合水に代えて、又は配合水と共に海水、濃縮海水、脱塩海水のいずれかを用いてなる食酢。
【請求項3】 配合水が仕込み水であり、醸造により製造してなる請求項2記載の食酢。
【請求項4】 配合水が希釈水であり、合成酢酸より製造してなる請求項2記載の食酢。
【請求項5】 食酢と、海水、濃縮海水、脱塩海水のいずれかと、鹹(かん)味料、甘味料、酸味料、苦味料、旨味料、油味料の内の一種又は二種以上を配合調製してなる調味液。
【請求項6】 配合調製したものが合わせ酢、味付けぽん酢、たたきのタレ、水産加工用調味酢のいずれかである請求項5記載の調味液
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水、濃縮海水、脱塩海水を用いた食酢及び食酢を用いた調味液に関する。
【0002】
【従来の技術】食酢には大きく分けると合成酢と醸造酢がある。合成酢は合成された酢酸を水で希釈すると共に調味料、甘味料、着色料等を配合して製造されている。醸造酢は米酢、果実酢、アルコール酢等原料に基づく種類に分けられているが、いずれも酢酸菌(Acetobacter acetiなど)によってアルコールから酢酸を生じる酢酸発酵によって製造する。
【0003】食酢はまた、他の調味料や、水、アルコールなどと混合して調味液、例えば合わせ酢(寿司酢)、ドレッシング、漬物用混合液、味付けポン酢、タレ、ソース、ケチャップ、酢みそ、飲料(黒酢ドリンク、リンゴ酢ドリンク)、水産加工液、つゆ、甘酢、酢のもの酢等をつくることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】食酢もそれを用いた調味液も古くから製造され、用いられてきた。そこで、食酢の製造方法はほぼ改良すべきところがないまでに至っていると考えられていた。例えば、通常食酢の静置発酵では、発酵槽の形状、菌の性質、種菌の量、外気の温度、液量などに影響を受けるが、2週間〜2箇月の発酵期間を要している。さらに、これを用いた調味液も、味を良くすることの検討が加えられてはいるものの、もはや味を大きく変えるほどの改良が加えられることはないと考えられてきた。そこで、本発明者は食酢及び食酢を用いる調味液について味、保湿性等についての改良と、食酢については醸造を短期にすることと等についての改良を加えるべく検討した。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を検討した結果、米酢又は穀物酢の原料米、麦、コーン、等の穀物原料の吸水工程又は蒸しの工程で脱塩海水を用いて処理し、この処理した穀物原料を用いて所定の醸造法により製造してなる食酢とした。また、製造過程で配合水に代えて、又は配合水と共に海水、濃縮海水、脱塩海水のいずれかを用いた食酢とした。ここにいう海水、濃縮海水、脱塩海水を用いる配合水は、食酢が醸造により製造される場合は仕込み水である。また、食酢が合成酢酸より製造される場合(合成酢)は配合水が希釈水である。
【0006】濃縮海水は海水から水を除くことによって、含まれる各種成分の濃度を高めたものである。水を除く手段については、加熱蒸発、蒸留でもよいし、逆浸透膜その他の分離膜を使用する等の公知の手段でよい。更に、脱塩海水は塩の濃度を塩分濃度がNaCl=0.00863%と極力低くしたもので、イオン交換膜、逆浸透膜(中空糸)等の分離膜の使用によって脱塩することができる。
【0007】食酢を醸造によって製造する場合に、海水、濃縮海水、脱塩海水を用いると、醸造期間の短縮が可能となる。そこで、醸造のサイクルを多くすることができて、製造能率が上がる。加えて、醸造期間に入る雑菌が減り、酢酸以外の成分が含まれる機会が減少し、雑味の少ない、香りのよい食酢が得られる。また、食酢を合成酢酸から製造する合成酢でも味が良いし、合成酢独特の舌への刺激が減り、まろやかになる。
【0008】更に、本発明では、食酢と、海水、濃縮海水、脱塩海水のいずれかと、鹹(かん)味料、甘味料、酸味料、苦味料、旨味料、油味料の内の一種又は二種以上を配合調製してなる調味液とした。調味液の例としては、合わせ酢(寿司酢)、ドレッシング、漬物用混合液、味付けポン酢、タレ、ソース、ケチャップ、酢みそ、飲料(黒酢ドリンク、リンゴ酢ドリンク)、水産加工液、つゆ、甘酢、酢のもの酢等を挙げることができる。これらの調味液は海水、濃縮海水、脱塩海水のいずれかを用いたことによって、味がよくなるし、まろやかである。また、酸味が失われ難い。腐敗も遅い。
【0009】
【発明の実施の形態】(1)醸造酢の製造仕込み水を次のように調整した。
1)海水仕込みの場合(実施例)。
比較可能とするために、脱塩海水の塩分濃度(NaCl=0.00863%)と同じ塩分濃度とした。そのために海水73.6mlに水道水を加えて全量を29リットルとした。
2)濃縮海水仕込みの場合(実施例)。
この例では、1)と同じ理由により、濃縮海水(塩分4.2%)59.45mlに水道水を加えて全量を29リットルとした。
3)脱塩海水仕込みの場合(実施例)。
脱塩海水(塩分濃度 NaCl=0.00863%、市販品)を29リットル用いた。
4)水道水仕込みの場合(比較例)。
水道水を29リットル用いた。なお、水道水はカルキをなくするために24時間放置したものを用いた。
【0010】仕込み原料は上記1)〜4)の各仕込み水29リットルと下記共通の原料である。
原料もろみ(酒かす) 0.2キログラム 種酢(酸度5%) 16.3リットル 変性アルコール(酸度5% アルコール47.5%) 3.7リットル【0011】仕込み方法上記原料もろみの酒かすと、変性アルコール及び、仕込み水を混ぜて加温したものをステンレス製発酵槽に入れ、種酢とよく混合した。加温は種酢と混合した時に、30℃〜34℃となるようにした。液温が38℃を越えないように注意しながら3日に一度発酵中の液をサンプリングして酸度を測定した。酸度が5%になった時点で発酵を終了させた。
【0012】図1に仕込み水の種類別の醸造経過日数と酸度の関係を示す。脱塩海水仕込みの場合が最も早く19日間で醸造を終えている。海水仕込みと、濃縮海水仕込みの場合22日で醸造を終えている。水道水仕込みの場合は32日を要している。この結果から海水、濃縮海水、脱塩海水を仕込み水に使用すると、効果的に酢酸の醸造を速めることが明らかとなった。また、海水、濃縮海水、脱塩海水を仕込み水に使用した場合、味も良いし、香味に優れたものとなった。
【0013】(2)合成酢の製造希釈水を次のように調整した。
1)海水希釈の場合(実施例)。
浮遊物のない清浄な海水1リットルを用意した。
2)濃縮海水希釈の場合(実施例)。
濃縮海水(塩分4.2%)2ミリリットルを1リットルとした。
3)脱塩海水希釈の場合(実施例)。
脱塩海水(塩分濃度 NaCl=0.00863%)を1リットル用意した。
4)水道水希釈の場合(比較例)。
水道水はカルキをなくするために24時間放置したものを1リットル用意した。
【0014】製造方法合成によって得られた氷酢酸25mlと化学調味料(グルタミン酸ソーダ)2.5g、甘味料(砂糖)5gを加え、上記希釈水1)〜4)で希釈して500mlとした。
【0015】これによって得られた合成酢は酸度が4.5%であった。海水、濃縮海水、脱塩海水を希釈水に使用した実施例では、室内放置試験で、比較例の水道水を使用したものに比べ、酸の蒸発が少ない結果も得られている。
【0016】(3)食酢を用いた調味液の製造合わせ酢の実施例食酢を用いた調味液として、下記表1に示す6種の合わせ酢(寿司酢)を調製した。配合に使用した水は、水道水、脱塩海水、海水であり、食酢は高酸度酢(酸度15%)と有機純米酢(酸度10%)を用いた。これらを用いて表1に示す6種の合わせ酢を調製した。
【0017】
【表1】

【0018】上記合わせ酢をそれぞれ、直径5.5cmの円筒状の容器に150mlずつ入れて酸の揮発性を調べた。容器にゴミなどが入らないように目の粗いガーゼで軽く覆いをして、同じ場所で室温に放置した。容器から経日的に同量ずつサンプリングして全酸度を測定し、各々の酸の揮発性を調べた。図2が高酸度酢(酸度15%)の場合であり、図3が有機純米酢(酸度10%)の場合である。いずれの場合も酸の揮発のし易さが水道水>脱塩海水>海水であった。図4に合成酢の場合を示す。前記2例の醸造酢の場合と同様な傾向がみられる。しかし、醸造酢の例よりも酸の揮発が全体に早い。これらのことにより、合わせ酢に海水、濃縮海水、脱塩海水を使用すると、寿司に使用した場合に、長時間酸味が残り、保湿性があり、腐敗が遅くなる。
【0019】合わせ酢に海水、濃縮海水を配合した場合の特徴を列挙すると以下のようになる。
1)寿司の酢飯をシャリ切り(しやもじで切るように混ぜる)すると、米がベタつかず、一粒一粒の艶が向上する。
2)保温しても米糠臭や褐変が遅く、風味の低下が極めて遅く、飯が硬くなり難い。
3)飯として輸送運搬してもトラックなどの振動で固まったり、ダンゴ状になりにくい。
4)冷凍して解凍しても風味の低下が少ない(冷凍耐性の向上)。
5)ミネラル添加により、ミネラルそのものの補給ができる。と同時に、米のクセを消し、酸化物の中和をはかることができる。
6)合わせ酢(寿司酢)を多く使ってもベタつかず、加水率が10〜20%増加する。
7)保湿性があるので、干涸びない。
8)酸味が長く残り、日もちがする(鮮度維持)。腐敗が遅い。
【0020】味付けポン酢の実施例実施例として海水、濃縮海水、脱塩海水、比較例として水道水をそれぞれ用いて製造した食酢を用い、これに味付けポン酢の調合に必要な水に代えて海水、濃縮海水、脱塩海水(比較例として水道水)を調味料、果汁と共に加えて表2に示す組成で調合した。
【0021】
【表2】

【0022】表2に示す組成によると、濃縮海水、海水、脱塩海水を用いたものが、水道水を用いた場合よりも記載順に下記に示すような効果が現われている。すなわち、(1)風味(ゆず、かつお、こんぶ等の)が長持ちする。特にかんきつ系の香りが長持ちする。(2)酸味が長持ちする。(3)味付けポン酢(と食材)の味がまろやかとなる。(4)食材の湿度、鮮度が長く維持される。(5)合成樹脂製袋(アルミ蒸着フイルム製を含む)、ペット容器等から風味が失われない。
【0023】水産加工用調味酢の実施例実施例として海水、濃縮海水、脱塩海水、比較例として水道水をそれぞれ用いて製造した食酢を用い、これに水産加工用調味酢の調合に必要な水に代えて海水、濃縮海水、脱塩海水(比較例として水道水)を調味料(砂糖、食塩、みりん)と共に加えて表3に示す組成で調合した。
【0024】
【表3】

【0025】その水産加工用調味酢はしめさば、たいたこの酢漬け、ままかりの酢漬けなどに使用でき、濃縮海水、海水、脱塩海水を用いたものが、水道水を用いた場合よりも記載順に下記に示すような効果が現われている。すなわち、(1)魚のくさみが消え、身の締まり、色の持続が改善される。(2)鮮度が長く保持される。(3)雑菌の増殖が少ない。(4)味がまろやかになる(調味酢、肉質共)。
【0026】たたきのたれの実施例実施例として海水、濃縮海水、脱塩海水、比較例として水道水をそれぞれ用いて製造した食酢を用い、これにたたきのたれの調合に必要な水に代えて、海水、濃縮海水、脱塩海水(比較例として水道水)を調味料(醤油、みりん、かつおエキス、こんぶエキス)、香味料(ゆず果汁)などと共に加えて表4に示す組成で調合した。
【0027】
【表4】

【0028】このたたきのたれは、かつお、牛肉などのたたきに使用する。濃縮海水、海水、脱塩海水を用いたものが、水道水を用いた場合よりも記載順に、下記に示すような効果が現われている。すなわち、(1)ゆず、かつお、こんぶ等の風味が長持ちする。特にかんきつ系の香りが長持ちする。(2)酸味も長持ちする。(3)たたきのたれ(と食材)の味がまろやかとなる。(4)合成樹脂製袋(アルミ蒸着フイルム製を含む)、ペット容器等から風味が失われない。
【0029】
【発明の効果】本発明によって、食酢の醸造を短期化することができ、味も良くなり、香味に優れたものとなった。また、食酢を用いる調味液について味、香み、保湿性、日もち等についての改良が可能となった。
【出願人】 【識別番号】597177507
【氏名又は名称】有限会社畠中醤油醸造場
【出願日】 平成11年1月6日(1999.1.6)
【代理人】 【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
【公開番号】 特開2000−197474(P2000−197474A)
【公開日】 平成12年7月18日(2000.7.18)
【出願番号】 特願平11−882