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【発明の名称】 ポリベンゾオキサゾール前駆体及びポリベンゾオキサゾール樹脂
【発明者】 【氏名】江口 敏正

【氏名】東田 進弘

【氏名】水本 陽子

【要約】 【課題】半導体用途に優れた熱特性、電気特性、低吸水性に優れた耐熱性樹脂を提供する。

【解決手段】一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体及びこのポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環した構造を有するポリベンゾオキサゾール樹脂。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体。
【化1】

(式中、nは1〜1000までの整数を示す。R1、R2、R3、R4はCm2m+1で表されるフルオロアルキル基であり互いに同じであっても異なってもよい。mは1〜10までの整数を示す。Xは一般式(2)で表される2価の有機基であり、Yは2価以上の有機基を表す。)
【化2】

(式中、各々のR5はFまたはフルオロアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっても良い。ZはOまたは単結合であり、iは1〜6の整数を、jは0〜6の整数を表す。)
【請求項2】 請求項1に記載のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環した構造を有するポリベンゾオキサゾール樹脂。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気特性、熱特性、機械特性、物理特性に優れたポリベンゾオキサゾール樹脂に関するものであり、半導体用の層間絶縁膜、保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜などとして適用できる。
【0002】
【従来の技術】半導体用絶縁材料に求められている特性のなかで電気特性、特に誘電率と耐熱性は最も重要な特性である。この2つの特性を両立させるために耐熱性の高い有機系の絶縁膜が期待されている。例えば従来から用いられている二酸化シリコン等の無機の絶縁膜は高耐熱性を示すが誘電率が高く、前述の特性について両立が困難になりつつある。ポリイミド樹脂に代表される有機系の絶縁膜は電気特性、耐熱性に優れ2つの特性の両立が可能であり、実際にソルダーレジスト、カバーレイ、液晶配向膜などに用いられている。しかしながら近年の半導体の高機能化、高性能化にともない、電気特性、耐熱性について著しい向上が必要とされているため更に高性能な樹脂が必要とされるようになっている。特に誘電率について2.5を下回るような低誘電率材料が期待されており、ポリイミド樹脂においてもフッ素並びにトリフルオロメチル基を高分子内に導入することにより電気特性と耐熱性を両立することが試みられているが、現時点では必要とされる水準まで達していない。
【0003】ポリイミド樹脂以外の樹脂ではポリベンゾオキサゾール樹脂が期待されている。ポリイミド樹脂はイミド環にカルボキシル基を2個有していることで電気特性に悪影響を及ぼしている。従って、一般にポリベンゾオキサゾール樹脂はポリイミド樹脂よりも電気特性に優れ、かつ耐熱性も同等であるため、極めて有用な樹脂である。しかし、要求されている電気特性の水準が非常に高く、これまでのポリベンゾオキサゾール樹脂では要求されている水準まで達していない。さらに低吸水性も重要な特性の一つである。というのも樹脂が吸水すると、電気特性と耐熱性の片方または両方が悪化するからである。この点に於いてもポリベンゾオキサゾール樹脂はポリイミド樹脂よりも一般に低吸水性を示すためより優れた樹脂である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は電気特性、耐熱性、低吸水性に優れた耐熱性樹脂を提供する事を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記従来の問題点を鑑み、鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体、及びこのポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環した構造を有するポリベンゾオキサゾール樹脂を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
【化1】

(式中、nは1〜1000までの整数を示す。R1、R2、R3、R4はCm2m+1で表されるフルオロアルキル基であり互いに同じであっても異なってもよい。mは1〜10までの整数を示す。Xは一般式(2)で表わされる2価の有機基であり、Yは2価以上の有機基を表す。)
【0007】
【化2】

(式中、各々のR5はFまたはフルオロアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっても良い。ZはOまたは単結合であり、iは1〜6の整数を、jは0〜6の整数を表す。)
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法は、一般式(3)で表されるビスアミノフェノール化合物と一般式(4)で表されるジカルボン酸を酸クロリド法やポリリン酸やジシクロヘキシルジカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下での縮合反応等の方法により得ることができる。
【0009】
【化3】

(式中、nは1〜1000までの整数を示す。R1、R2、R3、R4はCm2m+1で表されるフルオロアルキル基であり互いに同じであっても異なってもよい。mは1〜10までの整数を示す。Xは一般式(2)で表される2価の有機基であり、Yは2価以上の有機基を表す。)
【0010】
【化2】

(式中、各々のR5はFまたはフルオロアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっても良い。ZはOまたは単結合であり、iは1〜6の整数を、jは0〜6の整数を表す。)
【0011】
【化4】

(式中、Yは2価以上の有機基を表す。)
【0012】本発明に用いる前記一般式(3)で表されるビスアミノフェノール化合物の例としては、化学式(5)〜(22)の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのビスアミノフェノール化合物は単独、または組み合わせて使用することができる。また、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシー5ートリフルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の前記一般式(3)で表されるビスアミノフェノール化合物以外のビスアミノフェノール化合物を併用することも性能を損なわない範囲で可能である。
【0013】
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0014】本発明に用いるジカルボン酸の例を挙げるとイソフタル酸、テレフタル酸、3−フルオロイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、3−フルオロフタル酸、2−フルオロフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2、4、5、6−テトラフルオロイソフタル酸、3、4、5、6−テトラフルオロフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、パーフルオロスベリン酸、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸、4,4’−オキシビス安息香酸等であるが、必ずしもこれらに限られるものではない。また2種類以上のカルボン酸を組み合わせて使用することも可能である。
【0015】酸クロリド法によるポリベンゾオキサゾール前駆体の合成の例を挙げると、まず前記ジカルボン酸を、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒に溶解し、過剰の塩化チオニル存在下で室温から75℃で反応させ、過剰の塩化チオニルを加熱及び減圧により留去する。その後析出物をヘキサン等の溶媒で再結晶することにより、酸クロリドであるジカルボン酸クロリドを得る。次いで前記ビスアミノフェノール化合物を、通常N−メチル−2−ピロリドン等の極性溶媒に溶解し、ピリジン等の酸受容剤存在下で、ジカルボン酸クロリドと−30℃から室温で反応することによりポリベンゾオキサゾール前駆体を得ることができる。
【0016】本発明のポリベンゾオキサゾール樹脂は、このようにして得られたポリベンゾオキサゾール前駆体を従来法の通り、加熱または脱水剤で処理することにより脱水・閉環反応し、得ることができる。これに、必要により各種添加剤として、界面活性剤やカップリング剤等を添加し、半導体用層間絶縁膜、保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として用いることができる。
【0017】また、本発明におけるポリベンゾオキサゾール樹脂は、その前駆体と感光剤としてナフトキノンジアジド化合物を用いることで、感光性樹脂組成物として用いることが可能である。
【0018】本発明のポリベンゾオキサゾール前駆体は、通常、これを溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチレエーテル、ジプロピレングリコールモノメチレエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等を1種、または2種以上混合して用いることが出来る。
【0019】本発明のポリベンゾオキサゾール前駆体の使用方法は、まず該樹脂およびその他化合物を上記溶剤に溶解し、適当な支持体、例えばガラス、金属、シリコーンウエハーやセラミック基盤等に塗布する。塗布方法は、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等が選ばれる。このようにして、塗膜を形成した後、加熱処理をして、ポリベンゾオキサゾール樹脂に変換し用いることが好ましい。また、ジカルボン酸成分を選択することにより溶剤に可溶なポリベンゾオキサゾール樹脂として用いることもできる。
【0020】
【実施例】以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、実施例の内容になんら限定されるものではない。
【0021】(実施例1)4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニル−1,1’ジカルボン酸25g、塩化チオニル45ml及び乾燥DMF0.5mlを反応容器に入れ、60℃で2時間反応させた。反応終了後、過剰の塩化チオニルを加熱及び減圧により留去した。析出物をヘキサンを用いて再結晶を行い、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニル−1,1’ジカルボン酸クロリドを得た。攪拌装置、窒素導入管、滴下漏斗を付けたセパラブルフラスコ中、化学式(7)で表されるビスアミノフェノール化合物15.57g(0.02mol)を乾燥したジメチルアセトアミド100gに溶解し、ピリジン3.96g(0.05mol)を添加後、乾燥窒素導入下、−15℃でジメチルアセトアミド50gに4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニル−1,1’ジカルボン酸クロリド8.46g(0.02mol)を溶解したものを30分掛けて滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、室温で5時間攪拌した。その後、反応液を蒸留水1000mlに滴下し、沈殿物を集め、乾燥することによりポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。
【0022】このポリベンゾオキサゾール前駆体をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、ワニスを得た。このワニスをガラス板上にギャップ300μmのドクターナイフを用いて塗布した。その後、オーブン中で70℃1時間乾燥し、はく離して膜厚20μmのポリベンゾオキサゾール前駆体フィルムを得た。そのフィルムを金枠で固定し、150℃/30分、250℃/30分、350℃/30分の順で窒素雰囲気下で加熱し、ポリベンゾオキサゾール樹脂を得た。この試験フィルムを用いて、各種特性を評価し、その結果を表1にまとめた。
【0023】(実施例2)1,2,3,5−テトラフルオロ−4,6−ジシアノベンゼン50gを65%硫酸水250gに加えた。加熱して溶解させたあと還流条件下3時間加熱した。析出した結晶を吸引濾過し、集めた結晶を濃塩酸で洗浄後風乾した。このようにしてテトラフルオロイソフタル酸を得た。化学式(7)で表されるビスアミノフェノール化合物15.57g(0.02mol)の代わりに化学式(9)で表されるビスアミノフェノール化合物16.57g(0.02mol)を、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニル−1,1’ジカルボン酸クロリド8.46g(0.02mol)の代わりにテトラフルオロイソフタル酸から合成したテトラフルオロイソフタル酸クロリド5.42g(0.02mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリベンゾオキサゾール樹脂を作製し、評価を行った。
【0024】(実施例3)化学式(7)で表されるビスアミノフェノール化合物15.57g(0.02mol)の代わりに化学式(10)で表されるビスアミノフェノール化合物17.57g(0.02mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリベンゾオキサゾール樹脂を作製し、評価を行った。
【0025】(実施例4)化学式(7)で表されるビスアミノフェノール化合物15.57g(0.02mol)の代わりに化学式(22)で表されるビスアミノフェノール化合物18.21g(0.02mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリベンゾオキサゾール樹脂を作製し、評価を行った。
【0026】(実施例5)化学式(7)で表されるビスアミノフェノール化合物15.57g(0.02mol)の代わりに化学式(20)で表されるビスアミノフェノール化合物12.16g(0.015mol)と2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン2.51g(0.005mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリベンゾオキサゾール樹脂を作製し、評価を行った。
【0027】(比較例1)化学式(7)で表されるビスアミノフェノール化合物15.57g(0.02mol)の代わりに3,3’−アミノ−4,4’−ヒドロキシビフェニル4.32g(0.02mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリベンゾオキサゾール樹脂を作製し、評価を行った。
【0028】(比較例2)攪拌装置、窒素導入管、原料投入口を備えたセパラブルフラスコ中、2,2−ビス[4、4’−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン10.36g(0.02mol)を乾燥したN−メチル−2−ピロリドン150gに溶解する。乾燥窒素下、10℃に溶液を冷却してピロメリット酸二無水物4.36を投入した。投入から5時間後に室温まで戻し、室温で2時間攪拌し、ポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体を孔径0.2μmのテフロンフィルターで濾過しワニスを得た。このワニスをガラス板上にギャップ300μmのドクターナイフを用いて塗布した。その後、オーブン中で70℃1時間乾燥し、はく離して膜厚20μmのポリイミド前駆体フィルムを得た。そのフィルムを金枠で固定し、150℃/30分、250℃/30分、350℃/30分の順で窒素雰囲気下で加熱し、ポリイミド樹脂を得た。このポリイミド樹脂について、実施例1と同様に評価を行った。
【0029】実施例と比較例での評価結果を表1に示す。
【表1】

【0030】表1の結果から、実施例1〜5の本発明のポリベンゾオキサゾール前駆体を用いて作製したポリベンゾオキサゾール樹脂はいずれも誘電率が低く2.0〜2.3であり、さらに耐熱性が高く、吸水率が低いという良好な特性を示した。
【0031】比較例1では、ポリベンゾオキサゾール樹脂ではあるものの本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を有していないので、実施例1〜5に比べて誘電率が高く、2.5を下回る値は得られなかった。
【0032】比較例2ではポリイミド前駆体を用いて作製したポリイミド樹脂を用いたために、誘電率と吸水率が実施例1〜5に比べて高い値しか得られなかった。
【0033】
【発明の効果】本発明のポリベンゾオキサゾール前駆体及びポリベンゾオキサゾール樹脂は、電気特性、耐熱性、物理特性に優れた樹脂に関するものである。従って、これらの特性が要求される様々な分野、例えば半導体用の層間絶縁膜、保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜などとして有用な高分子材料である。
【出願人】 【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
【出願日】 平成10年11月17日(1998.11.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−143805(P2000−143805A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平10−326949