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【発明の名称】 水性樹脂エマルジョンの製造方法
【発明者】 【氏名】谷本 征司

【氏名】加藤 充

【要約】 【課題】安定的にポリウレタン系水性樹脂エマルジョンを製造し、さらに耐溶剤性に優れ、機械的安定性および保存安定性に優れたポリウレタン系水性樹脂エマルジョンを得ること。

【解決手段】水性媒体中で、イソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)および分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するビニルアルコール系重合体(C)を反応させることを特徴とする水性樹脂エマルジョンの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水性媒体中で、イソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)および分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するビニルアルコール系重合体(C)を反応させることを特徴とする水性樹脂エマルジョンの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリウレタン系水性樹脂エマルジョンの製造方法に関し、さらに詳しくは、重合安定性に優れ、耐溶剤性等の皮膜物性にも優れたポリウレタン系水性樹脂エマルジョンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリウレタンはその優れた機械的性質、耐磨耗性、耐薬品性、接着性などの特性を生かして、ゴムとプラスチックスの境界分野を埋める樹脂として、塗料、接着剤、人工皮革などの幅広い用途分野に浸透している。その中で、環境保全、省資源、安全性といった社会ニーズに対応すべく、水性ポリウレタンが急激に発展してきている。ウレタン樹脂の水中への乳化分散技術、アイオノマー化による自己乳化分散技術、さらには水中での高分子量化技術等の進歩により高性能の水性ポリウレタンが出現し、その性能は今日では溶剤系ポリウレタン樹脂に匹敵するレベルになり、各種の用途分野で実用化されるに至っている。ポリウレタン樹脂は上述したような他の樹脂にはない特性を有するが、塗料、インキ、接着剤などとしての用途の汎用性の点からはまだ不十分で、例えば、耐候性、耐アルカリ性、耐熱性の点では、他の樹脂より劣る場合がある。これらの欠点を補うために、水性ポリウレタンと各種の水性エマルジョンをブレンドして使用するケース(特開昭60−55064号公報、特開平5−117611号公報)もあるが、混和性に問題がある場合がしばしばある。従来の技術の多くは、いずれもイソシアネート化合物が水と接触することによる分解変質を懸念して、あらかじめポリウレタンを生成し、その後乳化する方法、ポリウレタンプレポリマーを乳化剤により乳化した後、アミン化合物により鎖伸長する方法、ポリウレタンプレポリマー中に親水性基を導入し、自己乳化するといった方法が用いられていた。これらの改良については、乳化剤の選定や導入するイオン基の種類等によりかなり改善はされているものの、まだ満足するレベルには至っていないのが実状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、優れた重合安定性を有し、耐溶剤性、他の水性エマルジョンとの混和安定性にも優れるポリウレタン系水性樹脂エマルジョンの製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、水性媒体中で、イソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)および分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するビニルアルコール系重合体(C)を反応させることを特徴とする水性樹脂エマルジョンの製造方法を完成するにいたった。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明に用いるイソシアネート化合物(A)としては、通常の水性ポリウレタンの製造に従来から用いられているイソシアネート化合物のいずれもが使用できるが、分子量500以下の脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートのうち1種または2種以上が好ましく使用される。有機ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0006】本発明に用いるポリオール化合物(B)としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどを挙げることができ、これらのポリオール化合物の1種または2種以上を用いることができる。
【0007】ポリエステルポリオールは、例えば、常法に従って、ポリカルボン酸、そのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体などのポリカルボン酸成分とポリオール成分を直接エステル反応させるかまたはエステル交換反応させることによって得られる。
【0008】ポリエステルポリオールの製造原料であるポリカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸;それらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸成分として、脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体から主としてなり、場合により少量の3官能以上のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含むものを用いて製造されたものであることが好ましい。
【0009】ポリエステルポリオールの製造原料であるポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリオール成分として、脂肪族ポリオールからなり、場合により少量の3官能以上のポリオールを含むポリオール成分を用いて製造されたものであることが好ましい。
【0010】ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0011】ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールとカーボネート化合物を反応させるて得られたもの、予め製造しておいたポリカーボネートポリオールとポリオールおよびポリカルボン酸を反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールを反応させて得られたものなどを挙げることができる。
【0012】ポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0013】ポリオール化合物の数平均分子量は500〜10000であることが必要であり、700〜5000であるのが好ましく、750〜4000であるのがさらに好ましい。数平均分子量が500〜10000の範囲から外れる高分子ポリオールを用いて製造されたポリウレタンプレポリマーを使用する場合は、本発明により得られるポリウレタン系水性樹脂の耐溶剤性などが低下する場合がある。
【0014】さらに、ポリオール化合物は、1分子当たりの水酸基の数fが2.0≦f≦4.0の範囲であることが好ましい。より好ましくは2.0≦f≦3.0の範囲である。1分子当たりの水酸基数fが前記した2.0≦f≦4.0の範囲にあるポリオール化合物を用いると、得られる水性樹脂エマルジョンの耐溶剤性はより良好なものとなる。
【0015】本発明のポリウレタン系水性樹脂エマルジョンの製造には、必要に応じて鎖伸長剤成分を用いることができる。用いうる鎖伸長剤成分としては、通常の水性ポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0016】本発明の水性媒体とは、周知の乳化重合、懸濁重合などで用いられる水性媒体であり、水を主成分とし、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどの有機溶媒を含んでいても構わない。
【0017】ポリウレタン系水性樹脂エマルジョンの製造の際には、必要に応じて反応触媒を添加することができ、このような触媒としては例えば、オクチル酸スズ、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズモノオクチレート、モノブチルスズモノアセテート、モノブチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレイン酸塩などの有機スズ化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどの有機チタン化合物;トリエチルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの3級アミンなどを挙げることができる。
【0018】ポリウレタン分子中に親水性基を導入する目的で、親水性基を有する活性水素原子含有化合物を必要に応じて併用してもよい。親水性基を有する活性水素原子含有化合物としては、分子内に水酸基またはアミノ基等の活性水素原子を1個以上含有し、且つカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン性基;ポリオキシエチレン基等のノニオン性基;三級アミノ基、四級アンモニウム塩等のカチオン性基から選ばれる1種以上の親水性基を有する化合物が挙げられる。例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸基含有化合物およびこれらの誘導体;分子量200〜10,000のポリオキシエチレングリコールおよびそのモノアルキルエーテル等のノニオン性基含有化合物;3−ジメチルアミノプロパノール等の三級アミノ基含有化合物およびこれらの誘導体等が挙げられる。さらに、上記の親水性基を有する活性水素原子含有化合物を共重合して得られるポリエステルポリオールまたはポリエステルポリカーボネートポリオールを用いることもできる。この中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸を用いてトリエチルアミン、トリメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質を添加してカルボン酸塩に変換する方法が好ましい。
【0019】また、必要に応じて界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤等を用いることができる。この中でも、HLB値が6〜20のノニオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0020】水性媒体中におけるポリウレタン化反応の反応温度としては特に制限はないが、イソシアネート化合物と水との反応を抑制する観点から、反応温度は70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。
【0021】反応後得られるエマルジョンの粒子径に特に制限はないが、通常0.1μm〜100μmの粒径に分散させて用いられる。粒径がこの範囲をはずれると、エマルジョンの安定性に問題が生じる懸念がある。
【0022】本発明において、分子中にアミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基を有するビニルアルコール系重合体(C)を用いることは重要であり、(C)を使用することにより、重合安定性が優れたものとなり、また得られるエマルジョンは耐溶剤性に優れ、さらには機械的安定性、保存安定性に優れている。
【0023】本発明に用いられる、分子中に二級アミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基を有するビニルアルコール系重合体(C)としては、分子内にアミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基を含有するビニルアルコール系重合体であれば特に制限はない。アミノ基としては一級または二級アミノ基が好適である。アミノ基、一級水酸基あるいはアセトアセチル基を有するビニルアルコール系重合体の製造方法としては、例えば、(1)ビニルホルムアミド、メチルビニルアセトアミド、ヒドロキシメチルメチルアクリレート等の、アミノ基あるいは一級水酸基を有するエチレン性不飽和単量体、または加水分解等により一級アミノ基または二級アミノ基あるいは一級水酸基を生成しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体と、酢酸ビニルとを共重合させた後、けん化する方法;
(2)アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有する単量体と酢酸ビニルとを共重合させて得られたポリマーの側鎖のエポキシ基に、一級アミノ基または二級アミノ基あるいは一級水酸基を有するメルカプタンを水酸化ナトリウム等を触媒として付加反応させた後、けん化する方法;
(3)ポリビニルアルコールの水酸基と反応しうる官能基を分子内に有し、且つ一級または二級アミノ基あるいは一級水酸基を有する化合物をビニルアルコール系重合体に反応させる方法;
(4)メルカプト基を有するビニルアルコール系重合体の存在下で、一級アミノ基または二級アミノ基あるいは一級水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を重合させる方法;
(5)ポリビニルアルコールの水酸基に固気反応によりジケテンを反応させる方法;
等が挙げられる。
【0024】ビニルアルコール系重合体は、分子内にアミノ基あるいは一級水酸基以外の官能基を有していても本発明の効果を損なわない限り差し支えない。そのような官能基を与える単量体単位としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホプロピル、メタクリル酸スルホプロピル、およびそれらのアルカリ塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体を重合することによって得られる末端に官能基を有するポリマーでも良い。
【0025】本発明の分子中にアミノ基、一級水酸基およびアセトアセチル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するポリビニルアルコール系重合体の官能基の含有量は、特に制限はなく、重合度等により好適な範囲が変化するが、一般に、0.1〜15モル%が好ましく、0.2〜10モル%がより好ましい。0.1モル%よりも少ない場合には、イソシアネート化合物との反応性が低下し、得られる水性樹脂の耐溶剤性等が十分に改善されない。また、15モル%を越える場合には、ポリウレタン化反応の際に系がゲル化しやすくなる。
【0026】ビニルアルコール系重合体のケン化度は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。ケン化度が50モル%未満の場合には、得られる水性樹脂の耐溶剤性等が不十分である。また、ビニルアルコール系重合体の分子量は、JIS法による粘度平均分子量が、2,000〜200,000であるのが好ましく、4,000〜100,000であるのがより好ましい。分子量が2,000未満の場合には、得られる水性樹脂の耐溶剤性等が不十分であり、分子量が200,000を越える場合には、ポリウレタン化反応の際に系がゲル化しやすくなる。
【0027】ビニルアルコール系重合体の添加量は、イソシアネート化合物(A)とポリオール化合物(B)からなるポリウレタン骨格100重量部に対し、0.2〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。添加量が0.2重量部未満の場合には、得られる水性樹脂の耐溶剤性等が不十分であり、添加量が20重量部を越える場合には、ポリウレタン化反応の際に系がゲル化しやすくなる。また、ビニルアルコール系重合体の添加は、通常水溶液にして行うが、メタノール、エタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒と水の混合溶媒に溶解させて添加しても良い。
【0028】本発明では必要に応じて、分子中にアミノ基または水酸基から選ばれる活性水素原子を有する低分子化合物を用いてもよい。アミノ基としては一級または二級アミノ基が、また水酸基としては一級水酸基が好適である。このような化合物としては、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、ジエチレントリアミン等のトリアミン類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、モルホリン等のモノアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0029】本発明で得られるポリウレタン系水性樹脂エマルジョンは、通常、固形分濃度が約20〜65重量%に調整されるが、これに限定されるものではない。また、ポリウレタン化反応において有機溶媒を用いた場合には、必要に応じて、蒸留分離あるいはストリッピングをすることにより有機溶媒を除去することができる。
【0030】本発明で得られるポリウレタン系水性樹脂エマルジョンは、一般的に、ポリウレタン単位とポリビニルアルコール単位が下記の一般式化1〜化3で表される構造単位で結合されたポリマーを含有していると考えられ、それが本発明の製造方法により得られる水性樹脂の性能発現に寄与していると想定される。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】本発明の製造方法により得られるポリウレタン系水性樹脂エマルジョンには、必要に応じてエポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物等の架橋剤を配合することができる。
【0035】また、必要に応じて、その乾燥性、セット性、粘度、造膜性などを調整するために、トルエン、パークレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどの各種有機溶剤、でんぷん、変性でんぷん、酸化でんぷん、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、無水マレイン酸/イソブテン共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体などの水溶性高分子や尿素/ホルマリン樹脂、尿素/メラミン/ホリマリン樹脂、フェノール/ホリマリン樹脂などの熱硬化性樹脂、さらに、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、木粉などの充填剤、小麦粉などの増量剤、ホウ酸、硫酸アルミニウムなどの反応促進剤、酸化チタンなどの顔料あるいはその他、消泡剤、分散剤、凍結防止剤、防腐剤、防錆剤などの各種添加剤をも適宜添加することができる。
【0036】本発明の製造方法により得られるポリウレタン系水性樹脂エマルジョンは、広範な用途に利用でき、接着剤をはじめ、ガラス繊維集束剤、インク、塗料等の用途に使用される。中でも、産業用繊維、皮革、室内装飾、アパレル、床材(木製、コンクリート、フロアーポリッシュ)、プラスチック部品等のコーティング剤、パッケージ(包装紙等)、ラミネーション(フィルム/ホイル、繊維等)、一般工業用(塩ビシート/木質材料、塩ビシート/金属、金属/木)等の接着剤として使用される。
【0037】
【実施例】次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお以下の実施例及び比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。
【0038】実施例12リットル三ツ口フラスコに、水400g、アミノ基含有ポリビニルアルコール(アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、2−アミノチオフェノールをNaOHを触媒として付加し、さらにけん化することにより得たポリビニルアルコール:重合度500、けん化度97.5mol%、一級アミノ基変性量1.0mol%)の15%水溶液75g、ヘキサメチレンジイソシアネート32g、ポリメチルペンチルグリコールアジペート(クラレ(株)製クラポールP−2010:分子量2000、OH価57)200g、ジブチル錫ジラウレート0.8gを仕込み、30℃に昇温して3時間ポリウレタン化反応を行い、固形分重量35wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたポリウレタン系水性樹脂エマルジョンの評価を下記により行った。
(重合安定性)反応終了後、得られた水性エマルジョンを60メッシュの金網を用いてろ過し、残査の量を測定し、◎、○、△、×の4段階で評価した。
(機械的安定性)500mlのビーカーに、水性エマルジョン100gをとり、ホモミキサーを用いて、4000rpmで20分間攪拌後、60メッシュの金網でろ過し、残査の量を測定し、◎、○、△、×の4段階で評価した。
(保存安定性)200mlのガラス製容器に100mlの水性エマルジョンを入れて密栓し、温度40℃の恒温水槽に1ケ月間静置した後、状態の変化を観察し、○、△、×の3段階で評価した。結果を表1に示す。
(耐溶剤性)20℃でキャスト製膜して得られた皮膜を120℃で10分間熱処理した後、90℃のトルエン中に1時間浸漬し、皮膜の溶出率を下記の式から求めた。
溶出率(%)=(W1−W2)/W1 × 100W1:浸漬前の重量W2:浸漬後の重量【0039】実施例2実施例1において用いたアミノ基含有ポリビニルアルコールの代わりに、一級水酸基含有ポリビニルアルコール(アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、2−メルカプトエタノールをNaOHを触媒として付加し、さらにけん化することにより得たポリビニルアルコール:重合度500、けん化度97.5mol%、一級水酸基変性量1.0mol%)を用いる他は実施例1と同様にして固形分重量35wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行った。結果を合わせて表1に示す。
【0040】実施例3実施例1において用いたアミノ基含有ポリビニルアルコールの代わりに、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコールの水酸基にジケテンを固気反応により反応させて得たポリビニルアルコール:重合度1000、けん化度97.5mol%、アセトアセチル基変性量5.0mol%)を用いる他は実施例1と同様にして固形分重量35wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行った。結果を合わせて表1に示す。
【0041】実施例4実施例1において用いたアミノ基含有ポリビニルアルコールの代わりに、アミノ基含有ポリビニルアルコール(メチルビニルアセトアミドと酢酸ビニルを共重合した後、けん化することにより得たポリビニルアルコール:重合度1000、けん化度97.5mol%、一級アミノ基変性量2.5mol%)を用いる他は実施例1と同様にして固形分重量35wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行った。結果を合わせて表1に示す。
【0042】実施例5実施例1において用いたアミノ基含有ポリビニルアルコールの代わりに、アミノ基含有ポリビニルアルコール(ビニルホルムアミドと酢酸ビニルを共重合した後、けん化することにより得たポリビニルアルコール:重合度350、けん化度87.5mol%、一級アミノ基変性量1.5mol%)を用いる他は実施例1と同様にして固形分重量35wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行った。結果を合わせて表1に示す。
【0043】実施例6実施例1において用いたアミノ基含有ポリビニルアルコールの代わりに、アミノ基含有ポリビニルアルコール(アリルグリシジルエーテルと酢酸ビニルを共重合した後、2−アミノチオフェノールをNaOHを触媒として付加し、さらにけん化することにより得たポリビニルアルコール:重合度1700、けん化度88.5mol%、一級アミノ基変性量1.0mol%)を用いる他は実施例1と同様にして固形分重量35wt%のポリウレタン系エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行った。結果を合わせて表1に示す。
【0044】比較例1実施例1において、アミノ基含有ポリビニルアルコールを用いないこと以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン化反応を行ったが、反応途中で凝集物が発生し、安定なエマルジョンを得ることができなかった。
【0045】
【表1】

【0046】
【発明の効果】本発明は、重合安定性に優れ、さらに得られポリウレタン系水性樹脂エマルジョンは、耐溶剤性に優れ、さらに機械的安定性および保存安定性に優れた皮膜を与えるため、広範な用途に利用でき、例えば、自動車、家電等の分野で使用される金属用プライマー及びプラスチック用プライマー、木工用プライマー、セメントボード等の壁材(無機材料)用プライマー等、各種接着剤、塗料、コーティング剤、水性インキ、カーペットバッキング用など繊維加工剤、各種バインダーとして使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成10年11月12日(1998.11.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−143753(P2000−143753A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平10−321800