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【発明の名称】 硫酸化オリゴ糖化合物及びその中間体
【発明者】 【氏名】鵜沢 浩隆

【氏名】碓氷 泰市

【要約】 【課題】生物系界面活性剤、生物系界面活性剤の合成中間体などとして利用される、特定の位置(3’位又は6’位)に選択的に硫酸エステル基を導入した新規な硫酸化オリゴ糖化合物を提供する。

【解決手段】次式(V)で表される硫酸化オリゴ糖化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次式(IV)で表わされるガラクトース化合物。
【化1】

(式中、R10、R11及びR16は水素原子、アセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基、ベンジル基又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱離しにくいシリル基を表わし、R12、R13及びR15は水素原子又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R14は水素原子又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しやすいアシル基を表わす。R11とR12、R14とR15は、互いに結合してアセタール又はヘミアセタールを形成してもよい。Yはベンジルオキシ基、ニトロフェノキシ基、低級アルキルオキシ基、低級アルキルチオ基、アリルオキシ基、水酸基、ハロゲン原子又はイミデート基を表わす。)
【請求項2】 次式(V)で表わされる硫酸化オリゴ糖化合物。
【化2】

(式中、nは1〜3の整数を表わし、R17、R18、R19、R20及びRは水素原子、アシル基、ベンジル基又はシリル基を表わす。R17〜R21は互いに同一でも異なってもよい。R22及びR23は水素原子、アシル基、シリル基又は−SO Mを表わし、R22又はR23のいずれか1つが−SO Mである。Yはベンジルオキシ基、ニトロフェノキシ基、低級アルキルオキシ基、低級アルキルチオ基、アリルオキシ基、水酸基、ハロゲン原子又はイミデート基を表わし、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表わす。)
【請求項3】 前記式(V)においてnが1である請求項2記載の硫酸化オリゴ糖化合物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、両親媒性を有する新規な硫酸化オリゴ糖化合物及びその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】洗剤、香料、可塑剤、潤滑油など、さまざまな分野で広く利用されている界面活性剤は、近年、地球環境への影響が問題にされるようになり、微生物により容易に分解される生物系界面活性剤が注目されるようになった。このような生物系界面活性剤は、分子内に親水性部位と疎水性部位とを持つ生物系物質であり、代表的なものとしてリン脂質や、親水性の糖と疎水性の脂肪酸が結合しているグリコリピドがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、生物系界面活性剤、生物系界面活性剤の合成中間体などとして利用される、特定の位置(3’位又は6’位)に選択的に硫酸エステル基を導入したガラクトース化合物などの新規な硫酸化オリゴ糖化合物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、以下の発明により達成された。
(1)次式(IV)で表わされるガラクトース化合物。
【0005】
【化3】

【0006】(式中、R10、R11及びR16は水素原子、アセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基、ベンジル基又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱離しにくいシリル基を表わし、R12、R13及びR15は水素原子又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R14は水素原子又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しやすいアシル基を表わす。R11とR12、R14とR15は、互いに結合してアセタール又はヘミアセタールを形成してもよい。Yはベンジルオキシ基、ニトロフェノキシ基、低級アルキルオキシ基、低級アルキルチオ基、アリルオキシ基、水酸基、ハロゲン原子又はイミデート基を表わす。)
(2)次式(V)で表わされる硫酸化オリゴ糖化合物。
【0007】
【化4】

【0008】(3)前記式(V)においてnが1である硫酸化オリゴ糖化合物。
【0009】
【発明の実施の形態】下記式(I)で表わされるラクトース誘導体は、下記式(II)で表わされる本発明に関連する硫酸化オリゴ糖化合物の合成中間体であり、同様に下記式(III)で表される化合物は本発明に関連する硫酸化オリゴ糖化合物である。
【0010】
【化5】

【0011】
【化6】

【0012】
【化7】

【0013】式中、R はアシル基を表わす。このアシル基は、通常の反応条件(pH9〜11程度の塩基性溶媒、例えばメタノール−ナトリウムメチラートなど)で脱離可能で、アセチル基と同等もしくはそれ以上に脱離しにくい基であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基(置換されていてもよい。例えばベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基など)、ピバロイル基などが挙げられ、好ましくはベンゾイル基又はピバロイル基である。R 及びR はR と同様のアシル基、又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱離しにくいシリル基(置換されていてもよい。例えばシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基など)を表わし、Rと同じ基であることが好ましく、ベンゾイル基がさらに好ましい。R は水素原子又はアセチル基のような通常の脂肪族アシル基より穏和な条件(R より中性に近い条件)で脱離可能なアシル基を表わし、このようなアシル基としては、例えばレヴリノイル基、モノクロロ酢酸エステル基などが挙げられ、好ましくは水素原子である。R は水素原子又はR で挙げたと同様のアシル基であり、好ましくは水素原子である。
【0014】R とR は互いに結合してアセタール又はヘミアセタール構造を形成してもよい。このアセタール又はヘミアセタール構造としては、例えばイソプロピリデン基などが挙げられ、また、有機スズによるスタニレンアセタール(例えばジブチルスタニレンアセタール)なども含まれる。R とR も互いに結合してアセタール構造(例えばベンジリデン基、メトキシベンジリデン基など)を形成してもよい。Yはベンジルオキシ基(置換されていてもよい。例えばベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基など)、ニトロフェノキシ基、低級アルキルオキシ基(炭素数1〜4のもの、例えばメトキシ基、エトキシ基など)、低級アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基など)、アリルオキシ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば臭素原子、フッ素原子、塩素原子など)又はトリクロロアセトイミデート基などのイミデート基を表わし、好ましくはベンジルオキシ基である。
【0015】式(I)で表わされる化合物のうち、R 、R 及びR がベンゾイル基のものが好ましく、かつ、R 及びR が水素原子のもの又はR とR が結合してアセタールもしくはスタニレンアセタールを形成しているものがさらに好ましい。
【0016】式(II)又は式(III) で表わされる硫酸化オリゴ糖化合物については、式中のR 、R 、R 及びR は水素原子、又は保護基としてのアシル基もしくはシリル基を表わし、アシル基としては互いに同一でも異なってもよく、シリル基を有する場合はそれはR とR が好ましい。アシル基及びシリル基の例としては、特に制限はないが、好ましくは前記R 〜R で挙げたものが挙げられる。R とR は、前記式(I)のR とR で挙げたと同様のアセタール又はヘミアセタールを形成してもよい。Yは式(I)のものと同義である。Mは水素原子又はアルカリ金属イオン(例えばナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子など)を表わし、好ましくは水素原子又はナトリウム原子である。また、nは1から3の整数を表わし、好ましくは1である。式(II)又は式(III) で表わされる化合物のうち、R 〜R が全てベンゾイル基又は全て水素原子のものが好ましく、R 〜R が全て水素原子のものが特に好ましい。
【0017】前記式(II)でnが1の化合物について、その合成ルートを次のスキーム1に示す。
【0018】
【化8】

【0019】(式中、R 〜R 、Y及びMは式(I)及び(II)で定義したものと同義である。)
この合成方法について説明すると、まず公知の化合物1(Carbohydr. Res. 137, 39 (1985) ) のヒドロキシル基をアシル化又はシリル化して化合物2を得る。この反応はまず、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物の存在下、例えば安息香酸や酢酸などとの反応で脱離可能なアシル基を導入し得るカルボン酸と反応させるか、必要に応じてピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、前記カルボン酸の無水物または対応する酸塩化物と反応させることにより行うことができる。溶媒としては、通常、ピリジン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロフォルム又はこれらの混液などが用いられ、反応温度は通常、0〜50℃、反応時間は通常、5分間〜5日間程度である。R 及び/又はR がシリル基の場合は、例えばハロゲン化シラン化合物をアミン等とともに加え反応させる。溶媒としては、通常ピリジン、塩化メチレン、クロロホルムなどが用いられ、反応温度は−20℃〜50℃、反応時間は5分〜7日間である。
【0020】こうして得た化合物2を酸処理して化合物3を得る。この酸処理には、カンファースルホン酸(CSA)、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)、酢酸、硫酸、塩酸、イオン交換樹脂(Hプラス型)、トリフルオロ酢酸(TFA)などを用いることができる。溶媒としては、通常メタノール、エタノール、メタノール−塩化メチレン、水などが用いられ、反応温度は通常、−20℃〜80℃、反応時間は通常、5分〜3日程度である。
【0021】この化合物3をエステル化して化合物6を得る。この反応は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物の存在下、必要に応じてピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、レブリン酸、モノクロル酢酸などのカルボン酸、または、それらの酸無水物と反応させて行うことができる。溶媒としては、通常ピリジン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロフォルムおよびこれらの混液などが用いられ、反応温度は通常、0〜50℃、反応時間は通常、5分間〜5日間程度である。
【0022】ついで化合物6をさらにエステル化して化合物7を得る。この反応は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物の存在下、脱離可能なアシル基を導入し得るカルボン酸と反応させるか、必要に応じてピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、前記カルボン酸の無水物または、対応する酸塩化物と反応させることにより行うことができる。溶媒としては、通常ピリジン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロフォルムおよびこれらの混液などが用いられ、反応温度は通常、0〜50℃、反応時間は通常、5分間〜5日間程度である。
【0023】このようにして得られた化合物7の選択的脱保護を行い、化合物8を得る。この反応は、ヒドラジン酢酸、ヒドラジン−ピペリジン、水酸化リチウム−過酸化水素などで処理することにより行うことができる。溶媒としては、通常メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、ピリジン、THFなどが用いられ、反応温度は通常−78℃〜50℃、反応時間は通常5分間〜3日間である。
【0024】ついで化合物8を硫酸化し硫酸エステル基を導入して化合物9を得る。この反応は、トリメチルアミン三酸化硫黄錯体、トリエチルアミン三酸化硫黄錯体、ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体、ピリジン三酸化硫黄錯体、クロロスルホン酸などの硫酸化試薬と反応させることにより行うことができる。硫酸化試薬の使用量は、化合物8 1モルに対し1〜5モル、好ましくは1.2〜2モルである。溶媒としては、通常、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ヘキサメチルフォスフォアミド(HMPA、あるいは、ヘキサメチルフォスフォラストリアミド(HMPT)ともいう)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)などが用いられ、反応温度は通常0〜80℃、反応時間は通常5分〜1週間である。ついで化合物9を、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの塩基で処理して脱アシル化すると、本発明の式(II)においてR 、R 、R 及びR が全て水素原子である化合物5を得ることができる。溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール−THF、エタノール−THFなどが用いられ、反応温度は通常−30℃〜80℃、反応時間は、通常5分間〜5日程度である。また、この脱アシル化は、CSA、PPTS、p−トルエンスルホン酸などで処理することによっても行うことができる。この場合の溶媒としては、DMF、ジオキサン、THF、アセトニトリル、塩化メチレンなどが用いられ、反応温度は通常0〜80℃、反応時間は5分〜7日間である。
【0025】この化合物5は、次のスキーム2に従って合成することもできる。
【0026】
【化9】

【0027】(式中、R30はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、互いに同一でも異なってもよい。Y及びMは式(I)及び(II)で定義したものと同義である。)
この方法においても、化合物3を得るところまでは先のスキーム1に示した方法と同様に行うことができる。ついで、化合物3を、前述した化合物8から9への変換と同様に化合物4に変換するか、または、予め酸化ジブチルスズで化合物3を処理(トルエン、ベンゼン、メタノールなどのアルコールなどとともに還流、脱水)した後、前記硫酸化試薬で処理して化合物4を得、これを化合物9から5への変換と同様にして変換し、化合物5を得ることができる。
【0028】スキーム1又は2の方法で合成した化合物5の水酸基は、常法によりR 〜R の基に置換、修飾することができる。アシル化、シリル化については、スキーム1についての説明で挙げたと同様の方法で行うことができる。
【0029】なお、式(II) においてnが2又は3の化合物については、式(I)で表わされる化合物を2量体化又は3量体化した後に硫酸化及び脱保護を行うことにより合成することができる。なお、糖同士の結合は、アクセプター(糖同士を結合させるときの受容体側)として、式(I)においてYがアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基や、エチルチオ基など)、臭素原子、フッ素原子、塩素原子、トリクロロアセトイミデート基(-C(=NH)CCl)である糖化合物と、ドナー(糖同士を結合させるときの供与体側)として、式(I)においてR が水素原子であるオリゴ糖を用い、プロモーター(酸触媒)として、トリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)、t−ブチルジメチルシリルトリフラート(TBDMSOTf)メチルトリフラート(MeOTf)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、二塩化ジルコノセン−過塩素酸銀、臭化水銀、シアン化水銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、銀トリフラート−塩化第一スズ、炭酸銀、酸化銀、N−イオドこはく酸イミド(NIS)−トリフルオロメタンスルホン酸などの存在下で行うことができる。溶媒としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、アセトニトリル、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテルなどが用いられ、反応温度は通常、−78℃〜50℃である。R 〜R が全て水素である化合物を得る工程、及びこれを再び置換、修飾する工程については、先のnが1の化合物の場合と同様に行うことができる。
【0030】式(III) で表わされる化合物については、上記スキーム1において化合物3から化合物6を合成する際、3’位ではなく6’位にR を導入し、3’位の置換基はR 又は水素原子として、化合物7から化合物8を合成する際の選択的脱保護の位置を3’位でなく6’位とする以外は、式(II)の化合物と同様にして得ることができる。また、式(III) の化合物は、下記のスキーム3に従って化合物13を合成し、これをスキーム1の化合物6からの変換と同様の手順で変換して合成することもできる。
【0031】
【化10】

【0032】(式中、R 、R 、R 及びYは式(I)で定義したものと同義である。)
【0033】このようにして得られた式(II)又は式(III) で表わされる化合物は、常法により、遊離の酸又は他の塩に変換することができる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0034】本発明の式(IV)で表わされるガラクトース化合物は、式(V)で表わされる本発明の硫酸化オリゴ糖化合物の合成中間体である。式中、R10、R11及びR16は、水素原子、アセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基、ベンジル基又はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱離しにくいシリル基を表わす。アシル基については式(I)のR と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。シリル基については式(I)のR 及びR におけるシリル基と同様である。R12、R13及びR15は、R と同様のアシル基又は水素原子を表わし、好ましくはアセチル基又は水素原子である。R14は、水素原子又はアセチル基と同等もしくはアセチル基のような通常の脂肪族アシル基より穏和な条件(R より中性に近い条件)で脱離可能なアシル基を表わし、このようなアシル基としては、例えばアセチル基、レヴリノイル基、モノクロロ酢酸エステル基などが挙げられ、好ましくはアセチル基又は水素原子である。Yは式(I)のYと同義であり、好ましい基なども前記したと同様である。本発明の式(IV)で表わされる化合物のうち、3’位に−SO Mを導入する場合には、R10とR11がベンジル基でR12〜R16が水素原子のものが好ましく、14とR15がスタニレンアセタールを形成しているものがさらに好ましく、このときのスタニレンアセタールは式(I)のR 及びR において述べたと同様である。また、6’位に−SO Mを導入する場合には、RとR11がベンジル基、R12〜R14がベンゾイル基、かつ、R15とRが水素原子のもの、または、R10、R12、R13及びR14がベンゾイル基、R11がシリル基、かつ、R15とR16が水素原子のものが好ましい。
【0035】式(V)で表わされる本発明の硫酸化オリゴ糖化合物については、式中のR、R18、R19、R20及びR21は水素原子、又は保護基としてのアシル基、ベンジル基もしくはシリル基を表わし、アシル基としては互いに同一でも異なってもよく、シリル基を有する場合はそれはR18とR21が好ましい。R及びR23は、R17〜R21と同様のアシル基、シリル基、水素原子、又は−SO Mを表わし、R22とR23のいずれが1つのみが−SO Mである。アシル基及びシリル基の例としては、特に制限はないが、好ましくは前記式(I)のR 〜R で挙げたものが挙げられる。R17とR19、R21とRの組み合わせ、またはR18とR19、R21とR22の組み合わせにおいてこれらは、前記式(I)のR とR で挙げたと同様のアセタール又はヘミアセタールを形成してもよい。
【0036】Y及びMは式(I)のものと同義であり、好ましいものも同様である。また、nは1から3の整数を表わし、好ましくは1である。式(V)で表わされる化合物のうち、R17〜R21が全てベンゾイル基又は全て水素原子のものが好ましく、R17〜R21が全て水素原子のものが特に好ましい。
【0037】本発明の式(IV)の化合物は、前記した式(I)の化合物の2量体化と同様にして、ガラクトース化合物を2量体化することにより得られる。例えば、市販のガラクトース化合物(アセトブロモガラクトース)とアリルジベンジルガラクトースを、必要に応じ置換、修飾して、Y、R10、R11及びR12を有するガラクトース化合物と、R13〜R16を有するガラクトース化合物とを得、これらを2量体化することにより合成できる。2量体化の具体的な方法としては、J.Org. Chem., 50, 5323-5333頁(Kovacら、1985年)や Carbohydr. Res., 174, 265-278頁(Andersonら、1988年)などに記載の方法を用いることができる。
【0038】式(IV)の化合物より本発明の式(V)の化合物を製造するには、前記式(I)より式(II)の化合物を製造する場合と同様に、エステル化、選択的脱保護、硫酸エステル基の導入を行う。これらの反応については、上記スキーム1及び2において述べたと同様であり、硫酸エステル基を3’位に導入する場合はR14、6’位に導入する場合はR16のみをアセチル基より脱アシル化しやすいアシル基として選択的脱保護と硫酸エステル基の導入を行う。式(V)においてnが2又は3の化合物を合成する場合には、式(IV)の化合物を2量体化又は3量体化した後、硫酸化等を行い、この反応についても式(I)よりnが2又は3の式(II)の化合物を合成する場合と同様である。式(IV)の化合物同士を結合させる際のアクセプターとしては、式(IV)においてYがアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基や、エチルチオ基など)、臭素原子、フッ素原子、塩素原子、トリクロロアセトイミデート基(-C(=NH)CCl)である化合物を用い、ドナーとしては式(IV)のR14が水素原子である化合物を用いる。プロモーター、溶媒及び反応温度は式(I)の化合物同士の結合反応において述べたと同様である。式(V)の化合物も、式(II)又は式(III) の化合物と同様に、常法により遊離の酸又は他の塩に変換でき、塩としては例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0039】
【実施例】以下に実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の合成例及び実施例は、前記スキーム2においてR30がベンゾイル基、Mがナトリウム原子、Yがベンジルオキシ基の場合について行ったものであり、各化合物の番号はスキーム2中のものに対応する。
【0040】(合成例1)化合物1→化合物2化合物1(186.9mg 、0.396mmol )、ジメチルアミノピリジン(5mg )をピリジン(5ml )に溶かし、塩化ベンゾイル(0.28ml、2.41mmol)を加え、室温で撹拌した。18時間後、反応液に氷片、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルム50mlで3回抽出した。抽出した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥して減圧留去した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(メルク 60F254 、50ml、トルエン−酢酸エチル 4:1)で精製後、塩化メチレン−エーテルより再結晶して化合物2(278.7mg 、71% )を得た。
【0041】
[ α] +31. 2 (C=1. 5、クロロホルム)
FABMS 1015[M+Na-1], (ポジティブモード、グリセリン)
1031[M+K-1] 元素分析計算値(C575216) C:68.94 H:5.28実測値 C:68.45 H:5.29H-NMR (300MHz, CDCl, TMS is an internal standard)5.663(3,bt,J=9.6Hz),5.503(2,dd,J=7.9 and 9.6Hz),5.123(2,bt,J=7.8Hz),4.821 and 4.564 (CHCH-,2d,J=12.6Hz),4.678 and 4.583 (1 and 1,2d,J=7.8 and 7.9Hz)【0042】(合成例2)化合物2→化合物3化合物2(260mg 、0.262mmol )、塩化メチレン−メタノール溶液(1:2、15ml)、カンファースルホン酸(CSA)(119mg 、0.512mmol )を加え、室温で撹拌した。24時間後、5mlのトリエチルアミンを加え減圧留去した。残留物を直ちにシリカゲルクロマトグラフィー(メルク 60F254 、15ml、トルエン−酢酸エチル 2:1)で精製して化合物3(229.9mg 、89% )を得た。
【0043】
[ α] +22. 8(C=1. 6、クロロホルム)
FABMS 975[M+Na-1], (ポジティブモード、グリセリン)
991[M+K-1] 元素分析計算値(C544816) C:68.06 H:5.08実測値 C:66.78 H:5.01H-NMR (300MHz, CDCl, TMS is an internal standard)5.57-5.37(1,1,2,m)、4.804 (one of CHCH-,d,J=12.9Hz),4.65-4.45(1,1, one of CHCH-,m)【0044】(合成例3)化合物3→化合物4化合物3(77.4mg、0.081mmol )をベンゼン(30ml)にとかし、酸化ジブチルスズ(21.2mg、0.085mmol )を加え、3時間環流しながら生成する水をのぞいた。残りのベンゼンを減圧留去し、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶かし、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(113mg 、0.81mmol)を加え、40℃で撹拌した。15時間後、反応液を減圧留去し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(メルク 60F254、20ml、塩化メチレン−メタノール 10:1)で精製し、ナトリウム型のイオン交換樹脂で処理して化合物4(47.5mg、55% )を得た。
【0045】
[ α] +20. 0 (C=2. 8、THF)
FABMS 1077[M+Na-1], (ポジティブモード、グリセリン)
元素分析 計算値(C544719SNa) C:61.48 H:4.45 S:3.04 実測値 C:62.35 H:5.29 S:2.44 H-NMR (300MHz, CDCN, CHDCN=1.960ppm)5.680(3,bt,J=9.8Hz),5.352 (2,dd,J=8.0 and 9.8Hz),5.207(2,dd,J=8.0 and 10.0Hz),4.689(1,d,J=8.0Hz),4.842(1,d,J=8.0Hz), 4.734 and 4.538(CHCH-,2d,J=12.2Hz),4.464 (3,dd,J=3.3 and 10.0Hz)【0046】(合成例4)化合物4→化合物5化合物(4)(20.3mg、0.019mmol )をメタノール(1.5ml )及びTHF(1ml )に溶かし、28%ナトリウムメトキシド(20マイクロリットル)を加え、室温で撹拌した。18時間後、Dowex(商品名、ダウケミカル社製)Hプラス型で中和し濾過後、減圧留去した。残留物をゲルろ過(LH−20、メタノール−水 1:1)後、シリカゲルクロマトグラフィー(メルク 60 RP−18、メタノール- 水 1:1)で精製して化合物5(10.3mg、99. 9% )を得た。
【0047】
[ α] −1. 3 (C=2. 3、水)
FABMS 557[M+Na-1], (ポジティブモード、グリセリン)
573[M+K-1] 579[M+2Na-1] H-NMR (300MHz, DO, CHCOCH (acetone)=2.07ppm)4.788 and 4.605 (CHCH-, 2d, J=11.5Hz),4.410(1,d,J=7.8Hz),4.400(1,d,J=7.9Hz),4.188((3,bd,J=3.0 and 9.9Hz), 4.139((4,bd,J=3.0Hz).【0048】(実施例1)市販のアセトブロモガラクトース(781mg)とアリル−2,6−ジベンジルガラクトース(380mg)を炭酸銀(552mg)及び活性化したモレキュラーシーブス(3g)の存在下、塩化メチレン(7ml)に溶かし、遮光して室温下15時間撹拌した。セライトろ過後、減圧濃縮して溶媒を除いた後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、前記式(IV)においてYがアリルオキシ基、R10及びR11がベンジル基、R12が水素原子、R13、R14、R15及びR16がアセチル基であるガラクトース2量体化合物128mg(収率18%)を得た。
【0049】[ α] −9.0 (C=0.646,CHCl)H-NMR (300MHz, CDCl) δ 5.371(4,bd,3.3Hz),4.278(2,dd,7.8 and 10.5Hz),4.989(3,dd,3.3 and 10.5Hz),4.843(1,d,7.8Hz),2.165,1.987, and 1.845(-OAc)【0050】上記合成において、上記した式(IV)の化合物の他、式(VI)においてYがアリルオキシ基、R10及びR11がベンジル基、R12が水素原子、R13〜R16がアセチル基であるガラクトース2量体化合物341mg(収率49%)を得た。
【0051】[ α] −10.2 (C=0.687,CHCl)H-NMR (300MHz, CDCl) δ 5.350(4,bd,3.3Hz),4.783(1,d,8.1Hz),4.398(1,d,7.8Hz),3.434(2,dd,7.8 and 9.6Hz),1.998,1.981, and 1.967(-OAc)【0052】実施例2実施例1で得られた式(IV)の化合物(式(IV)においてYがアリルオキシ基、R10及びR11がベンジル基、R12が水素原子、R13、R14、R15及びR16がアセチル基であるガラクトース2量体化合物)200mgを乾燥メタノール7mlに溶かし、ナトリウムメトキシド5マイクロリットル(28%のメタノール溶液)を加え、室温下30分撹拌した。Dowex(商品名、ダウケミカル社製)Hプラス型で中和し、シリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール10:1)で精製して、式(IV)においてR10及びR11がベンジル基、R12〜R16が水素原子、Yがアリルオキシ基の化合物を160mg(収率約100%)を得た。
[α] −1.2 (C=1.8,MeOH)
H-NMR (CDOD) 4.511 and 4.342 (7.5 and 8.1Hz, two of 1 and 1)【0053】続いて、得られた化合物の90mgと酸化ジブチルすず48mgを乾燥ベンゼン40mlに溶かし、還流しながら水を除去した(ディーンスタークの装置を用いた)。2時間後ベンゼンを除去し、これにジメチルホルムアミド10ml、トリエチルアミン0.5ml、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体29mgを加え、室温で24時間撹拌した。メタノールを加え、反応を停止後、減圧濃縮してシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール 5:1)で精製し、さらに、ゲルろ過(LH−20)を行い、Dowex(商品名、ダウケミカル社製)Naプラス型でイオン交換し、式(V)においてnが1、R17及びR19がベンジル基、R18、R20〜R22が水素原子、Mがナトリウム原子、Yがアリルオキシ基の化合物を79mg(収率74%)得た。H-NMR (CDOD) 4.721 and 4.434 (7.8 and 8.1Hz, two of 1 and 1)【0054】
【発明の効果】本発明の式(V)で表わされる硫酸化オリゴ糖化合物は3’位又は6’位に選択的に硫酸エステル基を有する新規な糖鎖化合物で、両親媒性を有し、それ自体の生分解性界面活性剤としての利用のほか、糖脂質系バイオサーフアクタントの合成中間体として用いることができる。式(IV)で表わされる化合物は式(V)で表わされる化合物の合成に用いられる。また、本発明のオリゴ糖化合物は、L−セレクチンと呼ばれるタンパク質と特異的に結合し、この性質により抗炎症薬としての利用が可能と考えられる。
【出願人】 【識別番号】000001144
【氏名又は名称】工業技術院長
【出願日】 平成9年11月20日(1997.11.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−143687(P2000−143687A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平11−353949