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【発明の名称】 N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの製造方法
【発明者】 【氏名】平野 直樹

【氏名】岩崎 史哲

【要約】 【課題】N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを高収率で製造することを目的とする。

【解決手段】アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩とアクリロニトリルとをアルコール溶媒中で無機塩基存在下に反応させてN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルとし、次いで該N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルとジアルキルジカーボネートとを反応させてN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩とアクリロニトリルとをアルコール溶媒中で無機塩基存在下に反応させてN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造する工程、及び該工程で得られたN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルとジアルキルジカーボネートとを反応させてN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造する工程からなることを特徴とするN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの製造方法。
【請求項2】 アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩とアクリロニトリルとをアルコール溶媒中で無機塩基存在下に反応させてN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造することを特徴とするN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬中間体として有用なN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステル及びN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを高収率で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステル及びN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルは、ニューキノロン系合成抗菌剤の重要中間体であるピロリジン誘導体の前駆体として極めて重要な化合物である。
【0003】従来のN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの製造方法としては、アミノ酸アルキルエステル塩酸塩とアクリロニトリルを水酸化カリウム水溶液中で反応させることによって得られたN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルにジ−t−ブチルジカーボネートを作用させることによって製造する方法が知られている(EP0688772号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方法では、生成したN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを有機溶媒で抽出操作を行った後、蒸留によって単離しているが、該化合物の取得収率が48%と低く、実用的な方法ではない。また、N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルも上記方法によって得られたN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルとジ−t−ブチルジカーボネートを反応させているため、必然的にその収率はN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの収率に左右され、48%を超えることはない。このため、N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステル及びN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを高収率で得る方法の開発が強く望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記実状に鑑み、該化合物を高収率で得る製造方法を鋭意検討した。その結果、アミノ酸アルキルエステルの鉱酸塩とアクリロニトリルとをアルコール溶媒中で無機塩基存在下に反応させることによりN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルとし、次いで、得られた反応溶液に直接ジアルキルジカーボネートを添加し反応させることによってN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを高収率で製造することができることを見出した。また、上記前工程で得られるN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルも高収率で製造できることも合せて見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】即ち、本発明は、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩とアクリロニトリルとをアルコール溶媒中で無機塩基存在下に反応させてN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造する工程、及び該工程で得られたN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルとジアルキルジカーボネートとを反応させてN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造する工程からなることを特徴とするN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの製造方法である。
【0007】他の発明は、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩とアクリロニトリルとをアルコール溶媒中で無機塩基存在下に反応させてN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造することを特徴とするN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に使用されるアミノ酸アルキルエステルは、分子内に少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個のアルコキシカルボニル基を有する公知の化合物が何等制限なく使用される。ここで、アミノ基とは所謂アミノ基(−NH2)及びイミノ基(=NH)の総称であり、例えばアルキル基またはアラルキル基などの炭化水素基で置換されたモノ置換アミノ基、ピロリジル基等窒素原子に少なくとも1個の水素原子が結合しているグループである。
【0009】本発明において好適に使用されるアミノ酸アルキルエステルを具体的に例示すると、グリシン、フェニルグリシン、N−メチルグリシン、N−ベンジルグリシン、ヒドロキシフェニルグリシン、アラニン、N−メチルアラニン、N−エチルアラニン、β−アラニン、N−メチル−β−アラニン、セリン、ホモセリン、イソセリン、S−アセチルシステイン、シスチン、トレオニン、メチオニン、ホモメチオニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、ファニルアラニン、ヒドロキシフェニルアラニン、チロシン、チロニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、トリプトファン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、グルタミン、アルギニン、ヒスチジン、ピペコリン酸、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸等のアミノ酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜6の低級アルキルエステルを挙げることができる。これらのアミノ酸アルキルエステルの中には、S体及びR体の光学異性体を持つものがあるが、本発明では、各々の光学異性体を用いていも良く、ラセミ混合物であっても一向に差し支えない。さらには、異種のアミノ酸アルキルエステルの混合物であってもよい。
【0010】本発明においてアミノ酸アルキルエステルと塩を構成する鉱酸としては、塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、燐酸等の通常の鉱酸を何等制限なく採用することができる。これらの中でも特に、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩の製造が容易という意味において、塩酸及び硫酸が特に好適に用いられる。
【0011】本発明に使用されるアルコールの種類としては、通常のアルキルアルコールであれば何等制限なく使用することができる。具体的に例示すると、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の炭素数1〜6の低級アルキルアルコール等を挙げることができる。
【0012】本発明においてアミノ酸アルキルエステル鉱酸塩のアルコール溶液の調製方法としては、従来知られている方法が何等制限なく採用される。従来知られている調整方法を具体的に例示すると、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩をアルコール中に分散させる方法、アミノ酸アルキルエステルをアルコール中に溶解させた後に、アミノ酸アルキルエステルと等モルの酸で中和させる方法、または、アミノ酸のアルコール溶液に等モル以上の鉱酸を加えてエステル化反応を行った後、得られた該アルコール溶液をそのまま本発明に用いる方法、さらにはアミノ酸のアルコール溶液に等モル以上の塩化チオニルを反応させてエステル化反応を行った後、得られた該アルコール溶液をそのまま本発明に用いる方法等を挙げることができる。
【0013】本発明におけるアミノ酸アルキルエステル鉱酸塩のアルコール溶液における各々のアルキル基の種類としては、同種あるいは異種のアルキル基であっても全く差し支えはないが、アクリロニトリルとの反応中にエステル交換反応が起きる可能性があるため、この反応が起きることが好ましくない場合には、同種のアルキル基を有する組み合わせで本発明を行うことが好ましい。
【0014】本発明に使用される無機塩基としては、通常の無機塩基が何等制限なく使用することができる。それらを具体的に例示すると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素カルシム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等を挙げることができる。これらの無機塩基の中でも、中和反応が容易に進行するという意味において、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属炭酸塩が特に好適に採用される。
【0015】無機塩基の使用量としては、あまり量が少ないとアミノ酸アルキルエステル鉱酸塩が完全に中和されず、アクリロニトリルとの反応を阻害し、あまり量が多いとスラリー粘度が高くなり撹拌に障害をきたすため、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩の鉱酸1モルに対して1〜6当量、さらに好ましくは1〜4当量の範囲の中から選択するのがよい。
【0016】尚、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩のアルコール溶液を調製する際に、アミノ酸のアルコール溶液に等モル以上の鉱酸を加えてエステル化反応を後、得られた該アルコール溶液をそのまま本発明に用いる方法、あるいはアミノ酸のアルコール溶液に等モル以上の塩化チオニルを反応させてエステル化反応を行った後、得られた該アルコール溶液をそのまま本発明に用いる方法を採用した場合には、アルコール溶液中に過剰の鉱酸或いは二酸化硫黄が溶存している。このような場合には、これらの過剰な鉱酸或いは二酸化硫黄を中和する量の無機塩基を追加する必要がある。
【0017】本発明に用いられる無機塩基は、通常、粉末状のものからフレーク状のものまで、様々な形態がある。本発明においては、これらいずれの形態のものでも使用可能であるが、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩の中和の進行を促進させるためには、粉末状の無機塩基を用いることが好ましい。その中でも特に、無機塩基の水溶液を用いた場合とほぼ遜色ない速度で中和反応が進行することができる、B.E.T.式による比表面積が0.8m2/g以上、好ましくは1.0m2/g以上3.0m2/g以下の無機塩基を用いることが好ましい。一般に無機塩基の結晶格子は細密であり、その比表面積は通常0.5m2/g程度又はそれ以下であ る場合が多い。したがって、0.8m2/g以上の比表面積を持つ無機塩基とし て用いようとする場合には、これを粉砕することも必要に応じて行われる。このような粉砕は公知の粉砕機、例えばロッドミル、ボールミル、振動ミル、タワーミル、コロイドミル、各種のジェット粉砕機等により行うことができる。また、逆に比表面積が3.0m2/gより大きい無機塩基を用いても、もはや技術的利 点はなく、粉砕機等を用いて微粉末にしても、経済的にも有利な方法とは言い難くなる。
【0018】アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩と無機塩基の接触方法としては特に制限されないが、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩のアルコール溶液に無機塩基をそのまま添加する方法、無機塩基のアルコール懸濁液を添加する方法、或いは、無機塩基のアルコール懸濁液にアミノ酸アルキルエステル鉱酸塩のアルコール溶液を添加する方法を採用することができる。さらには、メタノール等、アルカリ金属水酸化物に対して高い溶解度を持つアルコールを用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を該アルコール溶液の状態で使用することも可能である。
【0019】本発明においてアクリロニトリルの使用量としては、当量反応であるため、用いるアミノ酸アルキルエステル鉱酸塩に対して当量以上あれば特に制限はないが、あまり量が多いとアクリロニトリルの重合反応等の副反応が起きるため、通常、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩1モルに対して1〜2当量、好ましくは1〜1.6当量の範囲から選択するのが良い。
【0020】本発明においてアクリロニトリルの添加方法としては特に制限はなく、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩と無機塩基を接触させた後、アクリロニトリルを添加する方法、或いは無機塩基と同時に添加する方法のいずれの方法も採用が可能であるが、反応スケールが大きくなるにつれ、無機塩基と鉱酸の中和熱量も大きくなるため、無機塩基投入後、中和反応の様子を見ながらアクリロニトリルを添加する方法が最も一般的な方法である。
【0021】本反応の濃度としては特に制限はないが、あまり濃度が薄いと、バッチあたりの収量が落ちて経済的ではなく、あまり濃度が高いと撹拌等に支障をきたすため、通常、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩の濃度が0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲から選択するのが良い。
【0022】本発明の温度としては特に制限はないが、あまり温度が低いとアクリロニトリルとの反応速度が著しく落ち、あまり温度が高いと副反応を助長するため、通常、系の凝固点〜系の沸点、好ましくは0℃〜80℃の範囲から選択するのが良い。反応時間は、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩の種類によって大きくい異なるため一概には言えないが、1〜30時間もあれば充分である。
【0023】また、本反応は、減圧、常圧、加圧のいずれの条件下でも実施可能である。
【0024】このようにして得られた、N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルは、単離することなく、ジアルキルジカーボネートとの反応に供され、N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルへと導かれる。
【0025】本発明に使用されるジアルキルジカーボネートの種類としては、入手可能なジアルキルジカーボネートが何等制限なく用いられる、これらのジアルキルジカーボネートを具体的に例示すると、ジメチルジカーボネート、ジエチルジカーボネート、ジイソプロピルジカーボネート、ジ−tert−ブチルジカーボネート、ジ−tert−アミルジカーボネート等を挙げることができる。これらの中でも、アルコールに対して安定な、ジ−tert−ブチルジカーボネート、ジ−tert−アミルジカーボネートが特に好適に採用される。
【0026】本発明におけるジアルキルジカーボネートの使用量としては、特に制限はないが、あまり量が少ないと、N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの収率が下がり、量が多いと、未反応のジアルキルジカーボネートの分離操作が別途必要となるため、通常N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステル1モルに対して0.9〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モルの範囲から採用するのが良い。
【0027】本発明において、ジアルキルジカーボネートとの反応温度については、あまり温度が低いと反応速度が小さくなり、あまり温度が高くなるとジアルキルジカーボネートの分解反応が起こるため、通常は系の凝固点〜60℃、好ましくは0〜50℃の範囲で行うと良い。反応時間としては特に制限はないが、0.1〜10時間もあれば充分である。また、本反応は、減圧、常圧、加圧のいずれの方法も採用が可能である。
【0028】本発明において得られた、N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルは、以下の方法によって単離される。即ち、該アルコール溶液からアルコールを可能な限り留去した後、水を加えて完全に無機塩を溶解させ、得られた水溶液から有機溶媒によって抽出し、有機溶媒を留去することによって単離される。この時使用される有機溶媒としては水に溶解しない有機溶媒であれば何等制限なく使用することができる。これらの有機溶媒を具体的に例示すると、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸エステル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、メチルイソブチルケトン等のケトン類、炭酸ジメチル等のカーボネート類等を挙げることができる。
【0029】この際、未反応のN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルやその他の不純物を除去する目的で、有機溶媒によって抽出した溶液を酸性水溶液及び塩基性水溶液で洗浄しても一向に差し支えない。この時使用される酸の種類としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の鉱酸及び酢酸、くえん酸等の有機酸が好適に使用され、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物及び炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩が好適に使用される。これらの酸性水溶液及び塩基性水溶液の濃度としては特に制限はないが、通常0.1〜10重量%の範囲の水溶液が好適に採用される。
【0030】このようにして得られたN−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルは、そのまま次の工程の反応に使用することが可能であるが、場合によっては精製して使用しても差し支えない。精製の方法としては公知の方法が何ら制限なく使用できる。例えば、該化合物が溶液の場合には蒸留等の操作によって精製が可能であり、固体の場合には、再結晶、再沈殿等の方法によって精製が可能である。
【0031】また、本発明おいて、前工程で得られるN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルも該化合物のアルコール溶液から高収率で単離精製される。
【0032】本発明における上記化合物の単離精製方法としては、特に制限はないが、以下の方法が有効である。即ち、アクリロニトリルとの反応が終了した後、析出している無機塩を固液分離によって分離し、選られたアルコール溶液からアルコールを留去することで該化合物を単離した後、該化合物が溶液の場合には蒸留等の操作によって精製が可能であり、固体の場合には、再結晶、再沈殿等の方法によって精製することができる。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、アミノ酸アルキルエステル鉱酸塩とアクリロニトリルとをアルコール溶媒中で無機塩基存在下に反応させてN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを製造した後、該工程で得られたN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルとジアルキルジカーボネートとを反応させることによって、N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルを高収率で製造することができる。また、N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルも高収率で製造できる。従って本発明は、N−アルコキシカルボニル−N−シアノエチルアミノ酸アルキルエステル及びN−シアノエチルアミノ酸アルキルエステルの製造方法として工業的に極めて有用である。
【0034】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0035】実施例1撹拌機、温度計を備えた300mlの4つ口フラスコにエタノール100mlおよびグリシンエチルエステル塩酸塩27.92g(0.2mol)を加え、室温下、撹拌しているところへ炭酸ナトリウム11.66g(0.11mol)を添加し30分撹拌した。次に、アクリロニトリル12.74g(0.24mol)を添加し、50〜60℃で6時間反応させ、N−シアノエチルグリシンエチルエステルとした。冷却後、反応液にジ−tert−ブチルジカーボネート41.47g(1.9mol)を滴下し、室温下で4時間撹拌した。
【0036】反応終了後、反応液を減圧濃縮し、残さに水100mlを加え、目的物を酢酸エチル100mlで抽出した。有機層を0.1Nの塩酸50ml、0.1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、飽和食塩水50mlで順次洗浄した後、有機層を減圧濃縮して、N−tert−ブトキシカルボニル−N−シアノエチルグリシンエチルエステル48gを得た。収率は93.8%であった。
【0037】実施例2〜12表1に示したアミノ酸アルキルエステル鉱酸塩、アルコールおよび無機塩基を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】実施例13撹拌機、温度計およびガス導入管を備えた300mlの4つ口フラスコにエタノール100mlを加え、窒素雰囲気下、10℃以下で塩化水素14.6g(0.4mol)を吹き込んだ後、グリシン15.01g(0.2mol)を加え、40℃で6時間撹拌し、グリシンエチルエステル塩酸塩とした。反応終了後、10℃以下で炭酸ナトリウム22.26g(0.21mol)を添加し30分撹拌した。次に、アクリロニトリル12.74g(0.24mol)を添加し、50〜60℃で6時間反応させ、N−シアノエチルグリシンエチルエステルとした。冷却後、反応液にジ−tert−ブチルジカーボネート41.47g(1.9mol)を滴下し、室温下で4時間撹拌した。
【0040】反応終了後、反応液を減圧濃縮し、残さに水100mlを加え、目的物を酢酸エチル100mlで抽出した。有機層を0.1Nの塩酸50ml、0.1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、飽和食塩水50mlで順次洗浄した後、有機層を減圧濃縮して、N−tert−ブトキシカルボニル−N−シアノエチルグリシンエチルエステル48.23gを得た。収率は94.2%であった。
【0041】実施例14〜20表2に示したアミノ酸、アルコールおよび無機塩基を用いた以外は実施例13と同様の操作を行った。その結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】実施例21撹拌機、温度計を備えた300mlの4つ口フラスコにエタノール100mlおよびグリシンエチルエステル塩酸塩27.92g(0.2mol)を加え、室温下、撹拌しているところへ炭酸ナトリウム11.66g(0.11mol)を添加し30分撹拌した。次に、アクリロニトリル12.74g(0.24mol)を添加し、50〜60℃で6時間反応させた。
【0044】反応終了後、反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮した。次いで、残さを減圧蒸留してN−シアノエチルグリシンエチルエステル43.3gを得た。収率は84.6%であった。
【0045】実施例22〜30表3に示したアミノ酸アルキルエステル鉱酸塩、アルコールおよび無機塩基を用いた以外は実施例21と同様の操作を行った。その結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】比較例1実施例21におけるエタノールの代わりにトルエンを用いた以外は実施例21と同様の操作を行った。得られたN−シアノエチルグリシンエチルエステルの収率は36.5%であった。
【0048】比較例2実施例21におけるエタノールの代わりにテトラヒドロフランを用いた以外は実施例21と同様の操作を行った。得られたN−シアノエチルグリシンエチルエステルの収率は6.2%であった。
【0049】比較例3実施例21におけるエタノールの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例21と同様の操作を行った。得られたN−シアノエチルグリシンエチルエステルの収率は29.5%であった。
【出願人】 【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
【出願日】 平成10年11月13日(1998.11.13)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−143609(P2000−143609A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平10−323450