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【発明の名称】 シアノ安息香酸クロライド化合物の製造方法
【発明者】 【氏名】安田 浩

【要約】 【課題】m−またはp−シアノ安息香酸クロライド化合物を工業的に有利な方法により高収率、高純度に製造すること。

【解決手段】m−またはp−シアノ安息香酸化合物を出発原料として、ホスゲンと反応させることにより、対応するシアノ安息香酸クロライド化合物を工業的に高収率、高純度で製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1)
【化1】

(式中、−COOHと−Xはベンゼン環上の置換基を表わし、−COOHは−CNのm位あるいはp位であり、Xは塩素原子またはフッ素原子を表わし、nは0〜4の整数を表わす。ただし、nが2以上の場合、Xは同一であっても異なっていても良い。)のシアノ安息香酸化合物とホスゲンまたはホスゲン前駆物質を反応させることを特徴とする一般式(2)
【化2】

(式中、−COClと−Xはベンゼン環上の置換基を表わし、−COClは−CNのm位あるいはp位であり、Xは塩素原子またはフッ素原子を表わし、nは0〜4の整数を表わす。ただし、nが2以上の場合、Xは同一であっても異なっていても良い。)のシアノ安息香酸クロライド化合物の製造方法。
【請求項2】 反応を、一般式(1)のシアノ安息香酸化合物に対応する一般式(2)のシアノ安息香酸クロライド化合物の存在下でおこなわせる請求項1記載のシアノ安息香酸クロライド化合物の製造方法。
【請求項3】 反応を、三級アミド化合物または三級アミン化合物の存在下でおこなわせる請求項1または2に記載のシアノ安息香酸クロライド化合物の製造方法。
【請求項4】 一般式(1)のシアノ安息香酸化合物がm−またはp−シアノ安息香酸であり、一般式(2)のシアノ安息香酸クロライド化合物が対応するm−またはp−シアノ安息香酸クロライドである請求項1乃至3のいずれかに記載のシアノ安息香酸化合物の製造方法
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般式(2)で示されるシアノ安息香酸クロライド化合物の製法に関する。シアノ安息香酸クロライド化合物は医薬、農薬、液晶、機能性高分子モノマーなどの重要な中間体である。
【0002】
【従来の技術】本発明における酸クロ化とは、シアノ安息香酸化合物のカルボキシル基を対応する酸クロライド基に変換する反応である。
【0003】本発明における酸クロ化剤とは、カルボキシル基を対応する酸クロライド基に変換しうる有機、無機試薬の総称である。
【0004】シアノ安息香酸クロライド化合物の製造方法はいくつか知られている。ここでは代表例としてp−シアノ安息香酸クロライドの製造方法をあげる。p−シアノ安息香酸クロライドは、p−シアノ安息香酸と酸クロ化剤との反応により合成されている。酸クロ化剤としては、チオニルクロライド(特公平1−31501号公報、Johan Kamphuis,et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans,2(1987)907)、オキザリルクロライド(Robert J.Weikert,et al.,J.Med.Chem,34(1991)1630)、五塩化リン(Raffaello Fusco,et al.,Ann.Chim(Rome),42(1952)94)などが使用されている。また、シアノ安息香酸の酸クロ化以外の方法として、4−トリクロロメチルベンズアミドを塩化第二鉄触媒の存在下で反応させる方法(特開昭63−313761号公報)、テレフタラミン酸塩とオキシ塩化リンを反応させる方法(特開昭52−39649号公報)などがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のp−シアノ安息香酸化合物の酸クロ化の問題点として、チオニルクロライドを用いる場合は二酸化硫黄が発生し、二酸化硫黄の分離無毒化にコストがかかり経済的な方法ではない。オキザリルクロライドを用いる場合はオキザリルクロライドが毒性の高い一酸化炭素を生成し、一酸化炭素の分離除去にコストがかかり経済的な方法ではない。五塩化リンを用いる場合は、反応後リン化合物が生成し、リン化合物は湖沼河川などの富栄養化を招くことから除去廃棄する上での環境負荷が大きく現実的な方法ではない。また、4−トリクロロメチルベンズアミドまたは、テレフタラミン酸塩を原料とする方法は、原料の4−トリクロロメチルベンズアミドまたは、テレフタラミン酸塩を容易かつ安価に入手することが困難で経済的に有利な方法ではない。
【0006】このように、p−シアノ安息香酸クロライドは、従来知られている技術では、反応後の生成する副生物の分離除去が危険であったり困難であり、また、原料の入手に問題があった。
【0007】本発明の目的は、一般式(2)のシアノ安息香酸クロライド化合物を工業的に有利な方法により高収率、高純度に製造することにあり、特に医薬中間体として有用なm−またはp−シアノ安息香酸クロライド化合物を高純度且つ高収率で製造することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、一般式(1)のシアノ安息香酸化合物を出発原料として、ホスゲンまたはホスゲン前駆物質を用いて、上記目的を達成することができた。
【0009】すなわち、本発明は以下の発明に関する。
(a)一般式(1)
【化3】

(式中、−COOHと−Xはベンゼン環上の置換基を表わし、−COOHは−CNのm位あるいはp位であり、Xは塩素原子またはフッ素原子を表わし、nは0〜4の整数を表わす。ただし、nが2以上の場合、Xは同一であっても異なっていても良い。)のシアノ安息香酸化合物とホスゲンまたはホスゲン前駆物質を反応させることを特徴とする一般式(2)
【化4】

(式中、−COClと−Xはベンゼン環上の置換基を表わし、−COClは−CNのm位あるいはp位であり、Xは塩素原子またはフッ素原子を表わし、nは0〜4の整数を表わす。ただし、nが2以上の場合、Xは同一であっても異なっていても良い。)のシアノ安息香酸クロライド化合物の製法。
(b)反応を、一般式(1)のシアノ安息香酸化合物に対応する一般式(2)のシアノ安息香酸クロライド化合物の存在下でおこなわせる(a)のシアノ安息香酸クロライド化合物の製造方法。
(c)反応を、三級アミド化合物または三級アミン化合物の存在下でおこなわせる(a)または(b)に記載のシアノ安息香酸クロライド化合物の製造方法。
(d)一般式(1)のシアノ安息香酸化合物がm−またはp−シアノ安息香酸であり、一般式(2)のシアノ安息香酸化合物が対応するm−またはp−シアノ安息香酸クロライドである(a)乃至(c)のいずれかに記載のシアノ安息香酸化合物の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明における反応方法は、シアノ安息香酸化合物と、ホスゲンまたはホスゲン前駆物質を反応させ、反応を促進させる場合には、シアノ安息香酸化合物に対応するシアノ安息香酸クロライド化合物、三級アミド化合物または三級アミン化合物などの添加物を有機溶媒の存在下添加し所定の温度で、所定の時間まで攪拌することにより行われる。反応原材料の仕込みおよび反応は大気圧下、加圧下または減圧下で行うことができる。反応器としては、ガラス、耐酸金属容器が適する。
【0011】本反応で用いられるシアノ安息香酸化合物について説明する。無置換のシアノ安息香酸化合物はp−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸であり、それぞれテレフタロニトリルおよびイソフタロニトリルの片側ニトリル基の加水分解反応(Berther et al.,Chem.Ber.,92(1959)2616)で容易に合成できる。次にハロゲンで置換されたシアノ安息香酸化合物について説明する。4−シアノ−2,3,5,6−テトラクロロ安息香酸、3−シアノ−2,4,5,6−テトラクロロ安息香酸などの塩素化シアノ安息香酸化合物はテレフタロニトリルおよびイソフタロニトリルの塩素化により得られるテトラクロロテレフタロニトリルなどの塩素化テレフタロニトリル化合物およびテトラクロロイソフタロニトリルなどの塩素化イソフタロニトリル化合物の片側ニトリル基の加水分解反応で容易に合成できる。4−シアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、3−シアノ−2,4,5,6−テトラフルオロ安息香酸などのフッ素化シアノ安息香酸化合物はテトラクロロテレフタロニトリルなどの塩素化テレフタロニトリル化合物およびテトラクロロイソフタロニトリルなどの塩素化イソフタロニトリル化合物のフッ素化反応で得られるテトラフルオロテレフタロニトリルなどのフッ素化テレフタロニトリル化合物およびテトラフルオロイソフタロニトリルなどのフッ素化イソフタロニトリル化合物の片側ニトリル基の加水分解反応で容易に合成できる。
【0012】本発明で用いられるホスゲンまたはホスゲン前駆物質について説明する。ホスゲンは通常ガスとして反応容器に導入するが、加圧または冷却して液化して導入してもよい。本発明で使用するホスゲンの量は、シアノ安息香酸化合物に対して少なくとも当モル以上必要であり、好適にはシアノ安息香酸化合物に対して1.1〜4倍モル量使用される。好適には、未反応ホスゲンガスを循環再使用し、1.1〜1.5倍モル量使用される。
【0013】ホスゲンとシアノ安息香酸化合物との反応方法について説明する。ホスゲン単量体を用いる場合は、ホスゲンとシアノ安息香酸化合物との反応を、常圧、減圧または加圧下に、非連続的かまたは連続的におこなわせる。反応が進行するとシアノ安息香酸クロライド化合物の生成に伴い二酸化炭素および塩酸が生成する。ホスゲンは通常、二酸化炭素および塩酸の発生が終わり、かつホスゲンがもはや消費されなくなるまで反応系に導入する。またホスゲン前駆物質としては加熱、触媒などの処理で容易にホスゲンに返還し得る物質をいい、触媒としては活性炭などを用いることができる。例えばホスゲンの二量体や三量体を挙げることができる。ホスゲン二量体は直接反応容器に仕込んでもよいし、別の反応器でホスゲンガスを生成させ反応器に導入してもよい。ホスゲン三量体は室温で固体であり必要量を一括反応器に仕込むか、ホスゲン三量体を不活性溶媒に溶かし溶液として導入してもよい。
【0014】シアノ安息香酸クロライド化合物の単離法について述べる。反応混合物に残存する過剰のホスゲンと塩酸は必要に応じ、加熱による留去または窒素等の不活性ガスのバブリングにより除去する。溶媒を用いた場合には溶媒を留去し、生成したシアノ安息香酸クロライド化合物は反応混合物から常法で、例えば蒸留または結晶化によって単離することができる。
【0015】シアノ安息香酸化合物の有機溶媒に対する溶解度は概ね低いので、対応するシアノ安息香酸クロライド化合物を反応に際して加え、場合によっては反応溶媒として用いると反応を効率的におこなうことができる。このときシアノ安息香酸化合物と対応するシアノ安息香酸クロライド化合物のみで混合してもよいし、攪拌が困難な場合は不活性溶媒で希釈して混合してもよい。シアノ安息香酸クロライド化合物を反応中に存在させることによって、反応促進効果が得られる。
【0016】本反応で使用される溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒である。用いることができる有機溶媒としては、アセトニトリルなどのニトリル系、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドなどの三級ホルムアミド系、スルホランなどの含イオウ系、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジオンなどのイミダゾリドン系、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライムなどのエーテル系、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、m−,p−、o−の混合キシレンなどの芳香族炭化水素系などが用いられる。有機溶媒は単独で用いてもよいし、混合して使用してもよい。
【0017】本反応の溶媒量は、重量で、シアノ安息香酸化合物の5〜100倍が好適である。 反応温度は、反応条件によるが、0℃〜200℃が好ましい。本反応の反応時間は、溶媒の組成によるが、10分〜10時間が好適である。
【0018】本反応では、反応を促進するために添加剤を用いることができる。反応を促進させる添加剤として三級アミド化合物を用いることができる。添加剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルプロピオン酸アミド、ジブチルホルムアミドなどの三級ホルムアミドを用いることができる。三級アミド化合物の量としては、少なくともカルボン酸に対して0.01モル当量用いられる。
【0019】反応を促進させる添加剤として三級アミン化合物を用いることができる。三級アミン化合物は、ホスゲンを活性化する触媒となったり、シアノ安息香酸の酸クロ化反応により生成した塩酸の捕捉剤となったり、そのいずれにもなることができる。三級アミン化合物としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリベンジルアミンなどの脂肪族三級アミン、トリフェニルアミン、トリp−トルイルアミンなどの芳香族三級アミン、イミダゾール、ピリジン、p−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン、キノリン、イソキノリン、ピリミジン、ピペラジンなどの含窒素複素環式化合物などが好適に用いられる。三級アミン化合物の量としては、ホスゲンの活性化触媒として用いる場合はカルボン酸に対して少なくとも0.01モル当量用いられる。また、ホスゲンの活性化および塩酸の捕捉剤として用いる場合は、反応に用いたホスゲンの少なくとも当モル量必要である。
【0020】
【実施例】以下に実施例を用いてさらに詳しく本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】本実施例に使用したガスクロマトブラフの分析条件は次の通りである。
カラム DB1(J&W)
(30mキャピラリーカラム、内径0.32mm)
キャリアー ヘリウム 3cc/min スプリット比 40検出器 FID分析条件 インジェクション300℃ 100℃(10分保持)→15℃/分(昇温)→ 280℃(8分保持)
ディテクション 300℃【0022】実施例1p−シアノ安息香酸クロライド16.6g、p−シアノ安息香酸14.7g、ジメチルホルムアミド0.15gを混合し、120℃で激しく攪拌しながら、ホスゲンガス20gを90分かけて吹き込んだ。乾燥窒素ガスを1時間反応混合物に導入した後、減圧下蒸留しp−シアノ安息香酸クロライド32.5g(p−シアノ安息香酸基準で収率98%)が得られた(bp.110℃/2mmHg)。ガスクロマトグラフの分析により得られたp−シアノ安息香酸クロライドの純度は99%以上であった。
【0023】実施例2p−シアノ安息香酸クロライド16.6g、p−シアノ安息香酸14.7g、イミダゾール0.2g、およびキシレン150mlを140℃で混合し激しく攪拌し、ホスゲンガス20gを2時間かけて吹き込んだ。ホスゲンガス20gを90分かけて吹き込んだ。乾燥窒素ガスを1時間反応混合物に導入した後、減圧下蒸留しp−シアノ安息香酸クロライド31.8g(p−シアノ安息香酸基準で96%)が得られた。純度は99%以上であった。
【0024】実施例3p−シアノ安息香酸14.7g、アセトニトリル300mlを混合し溶媒還流下激しく攪拌し、ホスゲンガス30gを4時間かけて吹き込んだ。乾燥窒素ガスを1時間反応混合物に導入した後、アセトニトリルを常圧で留去し、さらに減圧下蒸留しp−シアノ安息香酸クロライド16.2g(p−シアノ安息香酸基準で収率98%)が得られた。純度は99%であった。
【0025】実施例4m−シアノ安息香酸クロライド16.6g、m−シアノ安息香酸14.7gを混合し、130℃で激しく攪拌しながら、ホスゲンガス20gを2時間かけて吹き込んだ。乾燥窒素ガスを1時間反応混合物に導入した後、減圧下蒸留しm−シアノ安息香酸クロライド31.8g(m−シアノ安息香酸基準で96%収率)が得られた(bp.127℃/11mmHg)。純度は99%以上であった。
【0026】実施例5ピリジン8.7g、ジクロロメタン150mlを室温にて混合攪拌し、ホスゲン10.4gをジクロロメタン150mlに溶解させた溶液を加え攪拌した。p−シアノ安息香酸14.7gを加え室温にて1時間激しく攪拌した。ガスクロマトグラフの分析によりp−シアノ安息香酸クロライドの収率は98%であった。純度は99%以上であった。
【0027】実施例6m−シアノ安息香酸14.7g、ホスゲン三量体14.8g、ピリジン11.9g、1,2−ジクロロエタン300mlを混合し、90℃で4時間激しく攪拌した。冷却後、ガスクロマトグラフの分析によりm−シアノ安息香酸クロライドの収率は(m−シアノ安息香酸基準で99%)であった。純度は99%以上であった。
【0028】
【発明の効果】本発明により、フタロニトリル化合物から容易に得られるシアノ安息香酸化合物とホスゲンまたはホスゲン前駆体から簡便にシアノ安息香酸クロライド化合物を収率、純度よく製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
【出願日】 平成10年11月17日(1998.11.17)
【代理人】 【識別番号】100094237
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 平
【公開番号】 特開2000−143605(P2000−143605A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平10−326211