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【発明の名称】 易重合性化合物の精製方法
【発明者】 【氏名】坂倉 康之

【氏名】山岸 昌彦

【氏名】長谷川 幸弘

【要約】 【課題】アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びスチレン等の、分子内に重合性二重結合を有する易重合性化合物を効率的かつ安全、安価に減圧蒸留により精製するための方法の提供。

【解決手段】アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらのエステル、或いはスチレン等の易重合性化合物を含む液を減圧下で蒸留するに際して、減圧装置として水封式真空ポンプを用いる易重合性化合物の精製方法。水封式真空ポンプの水封液の温度を30℃以下に維持し、水封液としてプロセス排水を使用すると、更に効果が大きい。また水封液の冷却は冷却装置を有する循環ラインを用いて行うのが好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 易重合性化合物を含む液を減圧下で蒸留するに際して、減圧装置として水封式真空ポンプを用いることを特徴とする易重合性化合物の精製方法。
【請求項2】 易重合性化合物が、(メタ)アクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸エステルである特許請求の範囲第1項に記載の易重合性化合物の精製方法。
【請求項3】 水封式真空ポンプの水封液の温度を30℃以下に維持することを特徴とする請求項1又は2に記載の易重合性化合物の精製方法。
【請求項4】 水封液としてプロセス排水を使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の易重合性化合物の精製方法。
【請求項5】 水封液を冷却装置を有する循環ラインで冷却する請求項1〜4のいずれか1項に記載の易重合性化合物の精製方法。
【請求項6】 水封液を連続的又は定期的に抜き出し、抜き出した水封液から有機物成分を回収することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の易重合性化合物の精製方法。
【請求項7】 水封式真空ポンプの排気に不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の易重合性化合物の精製方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクリル酸、メタクリル酸(この両者をまとめて「(メタ)アクリル酸」と記載する)、(メタ)アクリル酸エステルやスチレン等の、分子内に重合性二重結合を有する易重合性化合物を精製する方法に関するものである。詳しくは、本発明は易重合性化合物の減圧蒸留による精製を効率的かつ安全に行うための精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】分子内に二重結合、特に炭素−炭素二重結合を有する化合物は、一般に反応性に富み、重合しやすい。このような化合物を取り扱うプロセス、特にその精製工程において、重合が起こった場合、製品収率の低下及び重合体の付着やそれに起因する配管等の閉塞などによる設備の操業トラブルの原因となる可能性がある。そのため、このような易重合性化合物を蒸留により精製する場合は、重合を防止するために、フェノチアジン、メトキシハイドロキノン、ハイドロキノン、種々の金属またはその化合物、或いは酸素または酸素含有ガス等の重合禁止剤を添加して蒸留する方法や、これに加えて処理温度を低くして重合を抑えるため高真空下で蒸留を行う方法などが広く用いられている。
【0003】しかしながら、高真空下で蒸留を行う場合は、以下のような問題点がある。
(1)蒸留装置の構造が複雑になって、蒸留塔や配管等の結合部分やポンプ等の機器のシール部分の気密が不十分となり、大気が僅かながら系内に吸い込まれるのが通常である。大型の装置では吸入空気量も多くなり、設備が必要以上に過大なものとなりやすい。
(2)(1)で吸入された窒素等の非凝縮性ガスは、系外へ排出される際に塔頂に留出する有機成分を同伴することがあるため、環境上好ましくない。これを防ぐためには、排気処理装置を付加しなければならない。また、重合禁止剤を添加して蒸留を行う場合でも、低い温度で蒸留を行う方がより好ましいので、減圧下に蒸留を行うのが一般的である。真空蒸留や減圧蒸留を行うための減圧装置としては、往復型(ピストン型)、ルーツ型等の乾式機械式ポンプ、油封液式ナッシュ型ポンプ、油封回転型真空ポンプ等の湿式機械式ポンプや、スチームエゼクターが広く用られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、通常の乾式機械式真空ポンプや湿式機械式真空ポンプでは、たとえポンプ前段に冷却装置を設けて易重合性化合物の凝縮除去を行ったとしても、その吸入ガス中には微量の易重合性化合物が混入するため、ポンプ内で易重合性化合物が蓄積し、重合することにより、重合体の付着や閉塞、ひいては設備停止等のトラブルに至る可能性がある。また、スチームエゼクターを使用した場合には、駆動スチーム量に対応した排水が発生し、その排水中には、有機物である易重合性化合物が溶存しているため、これを安全に排出するための活性汚泥設備等の処理設備が必要となる。有機物の凝縮による爆発性混合ガスの形成防止と重合物の生成を防ぐために、水エゼクターにより減圧する方法も提案されている(特開平10−204030号公報)。しかしながら、この場合も上述のスチームエゼクターの場合と同様に、排水の問題が残ってしまう。本発明は、上記の観点から、易重合性化合物を効率的かつ安全、安価に精製するための方法を提供する事を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の諸点に関して、種々の検討・評価を行った結果、特定の減圧装置を用いることにより、これらの問題点が解決できることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は、易重合性化合物、特に(メタ)アクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸エステルを含む液を減圧下で蒸留するに際して、減圧装置として水封式真空ポンプを用いる易重合性化合物の精製方法、に存している。本発明の他の要旨は、水封式真空ポンプの水封液の温度を30℃以下に維持する上記の方法、水封液としてプロセス排水を使用する上記の方法、及び水封液を冷却装置を有する循環ラインで冷却する上記の方法にも存しており、更に本発明の別の要旨は、水封液を連続的又は定期的に抜き出し、抜き出した水封液から有機物成分を回収する上述の方法、及び水封式真空ポンプの排気に不活性ガスを供給する上述の易重合性化合物の精製方法、にも存している。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明において用いる水封式真空ポンプはそのシール液(封液)として水を使用する。ここで言う「水」とは、水を主成分として含むものであれば本発明の目的を阻害しない限り、使用することができる。このようにして用いることのできる真空ポンプとしてナッシュ型真空ポンプが例示でき、具体的には粟村製作所製ANVH型、SONIT型、新日本造機製SLPH型などが挙げられる。易重合性化合物の減圧蒸留において、塔頂留出ガスからコンデンサーで凝縮しきれない蒸気圧相当分の易重合性化合物は、減圧ラインを経て真空ポンプに入り、ここでその一部あるいはほとんど全部が凝縮する。本発明においては、真空ポンプに水をシール液として使用しているので、凝縮した易重合性化合物は水に溶解又は分散して稀薄な水溶液又は水分散液となる。従って、重合が起こりにくくなり、重合体の生成によるトラブル発生の恐れも小さくなる。
【0007】しかしながら、運転を長期間続けた場合、水封液中に易重合性化合物が蓄積して、その結果重合体が生成する可能性が高くなるので、連続的に又は定期的に水封液を抜き出すことが好ましい。抜き出した易重合性化合物を含有する水封液は、蒸留塔へ供給する等によって易重合性化合物を回収することができる。水封液の抜き出しを行う場合、塔頂の留出ガス中に水分が含まれている場合等は、水封液の追加を行う必要がないこともあるが、通常は新たな水封液を追加供給する必要がある。プロセスで副生する水がある場合は、供給する水封液としてこの副生水を用いると、排水量を少なくすることができるので好ましい。このようなプロセスからの副生水としては、例えば(メタ)アクリル酸の製造の酸化工程において生成する水や、(メタ)アクリル酸エステルの製造におけるエステル化反応で生成する水などが挙げられる。
【0008】水封液の温度は、低い方が水及び水中に溶解・分散した易重合性化合物等の蒸気圧が低くなるので、真空ポンプの到達真空度が高くできる、即ちより低い圧力での操作が可能になるので好ましい。また、真空ポンプにおいては圧縮されたガスの断熱圧縮により温度が上昇する傾向があるので、真空ポンプ内での易重合性化合物の重合を防止するためにも、水封液の温度を低く維持することが好ましい。
【0009】本発明においては、水封液を30℃以下、好ましくは25℃以下、更に好ましくは20℃以下に保つことが重合体の生成防止等のために効果的である。また水封液の温度管理は、真空ポンプ内部に設置した温度計による方法や、真空ポンプからの水封液の出口温度を測定して行う方法が、水封液の温度を直接管理できるので好ましいが、真空ポンプの上記部位の温度と、供給する水封液の温度・量との相関に基づいて管理を行ってもよい。
【0010】上記のような水封液の抜き出しと温度の制御とを効率よく行うためには、例えば図1に示すような、「真空ポンプ(1)からの水封液の抜き出し−気液分離(2)−冷却(3)−真空ポンプへの供給」を行うための循環ラインを設けるのが好ましい。この循環ラインには、必要に応じて系外への水封液の排出(7)と系外からの水封液の追加・供給配管(5)を設けてもよい。水封液の温度制御は、上記のような循環ライン中に設けた熱交換器等による他、予め冷却した水封液を供給・混合する方法によってもよい。水封式真空ポンプは水封液の蒸気圧の関係から到達可能な真空度には限界があるが、水封液の温度を30℃以下に維持すれば、少なくとも70torr(「mmHg・abs 」のこと、以下同じ)以下の圧力、通常であれば50torr以下の圧力で運転することが出来る。これよりも低い圧力で操作することが必要な場合には、例えば水封式真空ポンプとスチームエジェクターなどの減圧装置とを組み合わせて使用すればよい。水封液の凍結を防止するため、例えば塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の廃水負荷の少ない無機化合物や、エチレングリコール、メタノール等を水封液中に加えてもよい。但し、沸点の低いアルコールを多量に入れた場合、水封液の蒸気圧が高くなって、真空ポンプの到達可能な減圧度が低下する。水封液として水溶液を用いる場合は、30℃での蒸気圧が70torr以下のものを用いるのが好ましい。
【0011】なお封液として有機溶媒を使用すると、その蒸気による爆発性混合ガス形成の可能性があることに加えて、有機溶媒自体のコストや封液として使用した有機溶媒の回収のための装置や費用がかかり、経済的でない。易重合性化合物の重合反応をより効果的に抑制するために、水封液中にはあらかじめ重合禁止剤を溶解させておくことが好ましい。ここで用いることのできる重合禁止剤としては、前述のハイドロキノン、メトキシハイドロキノン等を適宜選択して使用すればよい。水封液の抜き出しは、前記の循環配管の一部から行えばよいが、気液分離器が循環ライン中にある場合は、その液面を監視しながら液相部を抜き出すのが一般的である。易重合性化合物が例えばスチレン、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルのような水への溶解度が低い化合物である場合は、この気液分離器中で相分離が起こって油層が形成されることがある。この場合は、気液分離器からオーバーフロー配管を設けることにより、効率的に油層を回収することができる。
【0012】通常は、抜き出された水封液は蒸留塔などを用いて有機物成分を分離回収され、有機物成分はプロセスの適切な工程へ返送し、排水は必要に応じて更に高次の処理を加えた上、系外へ排出する。このような水封液からの有機物成分の回収は、例えば(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスのように、反応生成水からの有機物成分を回収するための蒸留塔などの設備を有する場合は、その蒸留設備で行うことが合理的である。
【0013】本発明方法を適用することができる易重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルを含む不飽和カルボン酸エステル類、アクリロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル化合物、スチレン等の芳香族ビニル化合物等が例示できる。この易重合性化合物の沸点が80℃以上の場合に、本発明方法は特に有効である。易重合性化合物の沸点が80℃以下の場合には、蒸留を減圧で行う必要が無い場合が多い。
【0014】また蒸留に際しては、トルエン、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤を共沸溶剤として用いる方法も採用される。このような化合物やメタクリル酸メチルのような引火点が30℃以下の化合物を含む混合物を精製する場合は、真空ポンプの排気側で爆発範囲のガス混合物が形成される可能性がある。これを予防するためには、真空ポンプの排気ガスに窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを供給し、排気中の酸素濃度を低くして、爆発範囲のガス組成を回避する等の手段を講じることが安全上好ましい。循環ラインの気液分離器から排出されるガス中には、蒸留塔の塔頂留出成分が多く含まれている。また(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルの蒸留塔のように、重合防止のために塔底に酸素含有ガスを供給している場合は、この排ガスに酸素も含まれてくる。従って、この排ガスを蒸留塔に供給することにより、有機物成分の回収と同時に排気ガスの量も削減することが可能となる。本発明の易重合性化合物の精製方法は、目的物質が易重合性化合物である場合だけでなく、反応生成液中の軽質の不純物を除去・精製する場合や、易重合性化合物と水の分離、易重合性化合物中の重質不純物の分離等にも適用することができる。
【0015】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を更に詳細かつ具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>ガラス製蒸留装置を使用し、共沸剤としてトルエンを用いるアクリル酸水溶液の脱水蒸留を行った。蒸留塔は直径50mmのガラス製円筒で、3mmのラシヒリングを高さ90cmまで充填した(理論段数15段)。底部に容量1リットルのフラスコが、塔頂には水冷式コンデンサーがそれぞれ接続されている。コンデンサーの出口を水封式真空ポンプに接続して減圧蒸留を実施した。
【0016】水封液は、毎時1リットル抜き出すと同時に、新しい水封液を真空ポンプの水封液液面が一定になるように供給した。この水封液は冷凍機により冷却された8℃の冷却水(エチレングリコール/水=10%/90%)により18℃に維持された塔頂コンデンサーで凝縮した留出液はデカンター(気液分離器)で静置分離した後、共沸剤層は全量蒸留塔へ還流し、水層は抜き出した。蒸留塔の加熱は油温制御装置付きのオイルバスを使用してフラスコを加熱することによって行った。蒸留原料液としては、アクリル酸55重量%、酢酸1.5重量%、ホルムアルデヒド0.3重量%及び若干量の蟻酸、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクロレインを含むアクリル酸水溶液を使用し、毎時280gの割合で、毎時14ミリリットルのトルエン(共沸剤)とともに蒸留塔中段に供給した。
【0017】蒸留塔の運転圧力は180torrに制御し、重合禁止剤として塔頂からハイドロキノン及びフェノチアジンを、塔底(フラスコ)に空気を毎時15ミリリットル供給した。フラスコ内の液面を一定に保つようにポンプにより缶出液を抜き出した。この缶出液中の重合禁止剤濃度がハイドロキノン800ppm、フェノチアジン500ppmとなるようにこれらの供給量を調整した。このとき塔頂温度は49℃、塔底(缶出液)温度は86℃であった。塔頂部における共沸剤還流量は毎時750ミリリットルであった。真空ポンプの排気ガス組成をガスクロマトグラフィーにより確認したところ、共沸剤であるトルエンの濃度が2%と爆発範囲にあったため、真空ポンプの排気ラインに窒素ガスを供給して爆発範囲外の組成になるように調整しながら運転した。蒸留塔が安定した後、7時間連続して蒸留を行った。蒸留終了後、真空ポンプを点検したが、重合体の生成・付着は見られなかった。
【0018】<比較例1>真空ポンプとしてオイルシール式回転真空ポンプを使用したこと以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸脱水蒸留を行った。蒸留運転中(安定運転開始後4時間経過時)に真空度を維持ができなくなり運転を停止した。
【0019】<実施例2>水封式真空ポンプの水封液として、20%エチレングリコール水溶液を使用し、水封液の温度を−3℃に維持したこと以外は実施例1と同様にして蒸留操作を実施した。真空ポンプの排気ガス中のトルエンの濃度は0.8%で、爆発範囲外となっていた。
【0020】<実施例3>共沸剤としてトルエンに代えてメチルイソブチルケトンを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留を行った。但し、共沸剤の全量還流は行わず、塔頂液を連続的に抜き出すとともに、毎時180gのメチルイソブチルケトンを塔頂より還流液として供給した。蒸留塔が安定した後、7時間連続して蒸留を行った。蒸留終了後、真空ポンプを点検したが、重合体の生成・付着は見られなかった。
【0021】<実施例4>蒸留原料液として、酢酸エチルを0.05%、アクリル酸を0.2%、重合禁止剤としてハイドロキノンを含むアクリル酸エチルを毎時300g供給し、また塔頂からはメトキシキノンを含むアクリル酸エチルを還流液と一緒に供給したこと以外は実施例1と同様にしてアクリル酸エチルの精製を行った。塔頂圧力を150torrに制御し、還留比を2.0で運転したところ、塔頂から酢酸エチルを0.05%含むアクリル酸エチルを得た。塔頂温度は60℃であった。実施例1と同様に7時間連続運転した後、真空ポンプを点検したが、重合体の生成・付着は見られなかった。
【0022】<実施例5>水封式真空ポンプの水封液の温度を40℃に制御し、水封液の抜き出しを行わなかったこと以外は実施例4と同様にしてアクリル酸エチルの精製を行った。7時間運転後、真空ポンプを点検したところ、重合体の生成・付着は見られなかったが、水封液の粘度が上昇していた。
【0023】<実施例6>ガラス製の反応蒸留装置(塔底部の反応器容量1リットル)を使用し、アクリル酸とブタノールとのエステル化反応蒸留を実施した。触媒として強酸性イオン交換樹脂(PK−216:三菱化学製)を150ml用い、温度80℃、圧力150torrの減圧下で反応液を攪拌しながら、原料としてアクリル酸毎時144g、ブタノール毎時148gをそれぞれ反応器に供給した。スラリー状の反応液を毎時288mlの割合で連続的に反応器から抜き出した。このスラリー状の反応液中には20容量%のイオン交換樹脂が含まれていたので、このイオン交換樹脂は分離して供給原料とともに反応器へ連続的に返送した。
【0024】反応蒸留塔の塔頂液は油層と水層とに相分離した後、水層を抜き出すとともに油層は塔頂へ返送した。水層は蒸留してブタノールを回収し、このブタノールはは反応蒸留塔へリサイクルした。塔頂のコンデンサー出口は水封式真空ポンプに接続され、このポンプの水封液は18℃に維持するとともに、水封ポンプの液面が一定になるように、毎時1リットルの割合で新しい水封液と抜き替えた。蒸留塔が安定した後、7時間連続して蒸留を行った。蒸留終了後、真空ポンプを点検したが、重合体の生成・付着は見られなかった。
【0025】<実施例7>水封式真空ポンプに供給する水封液として、塔頂でトルエンから液液分離された水を回収して使用したこと以外は実施例1と同様にして蒸留を実施した。7時間の連続運転後、真空ポンプを点検したが、重合体の生成・付着は見られなかった【0026】<実施例8>水封式真空ポンプに供給する水封液として塔頂留出液からブタノールを蒸留回収した後の水層を再度蒸留してブタノールを除去した水を用いたこと以外は実施例6と同様にして反応蒸留を行った。蒸留塔が安定した後7時間連続して蒸留を行ない、蒸留終了後真空ポンプを点検したが、重合体の生成・付着は見られなかった。
【0027】
【発明の効果】本発明の精製方法を用いることにより、易重合性の化合物の減圧蒸留における、重合体の生成やその付着による真空設備の閉塞等のトラブルの恐れを解決できる。また、水封液として反応等で発生するプロセス排水を使用することにより、排水量の削減も可能であり、工業上の価値は高い。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成11年3月4日(1999.3.4)
【代理人】 【識別番号】100103997
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 曉司
【公開番号】 特開2000−256221(P2000−256221A)
【公開日】 平成12年9月19日(2000.9.19)
【出願番号】 特願平11−56642