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【発明の名称】 メチル、メチレンまたはメチン基を含む基質を酸化する方法
【発明者】 【氏名】パウル・アルスタース

【氏名】ザビネ・ボウトテミー

【要約】 【課題】高い反応速度、選択率及び転化率の有機物質酸化方法を提供する。

【解決手段】メチル、メチレンまたはメチン基を含む基質を酸素により酸化する際a)一般式IまたはIIのイミド化合物イメージ ID=000002
【特許請求の範囲】
【請求項1】 メチル(CH3) 、メチレン(CH2) またはメチン(CH)基を含む基質を、イミド化合物及び金属共触媒を含んでなる触媒系を用いて、酸素により酸化する方法であって、以下の成分、つまりa) 以下の式【化1】

[ 式中、R1及びR2は、H、OH、ハロゲン、C1-C20- アルキル、- アルケニルもしくは- アルコキシ基、アリール基、C1-C6-アシル基、カルボキシルまたはC1-C10- アルコキシカルボニル基を意味し得るか、またはR1及びR2は、一緒になって、式I中で二重結合を形成するか、あるいは式IまたはII中で芳香族もしくは非芳香族系の環系を形成し、XはOまたはOHを意味することができ、そしてnは1〜3の整数であることができる]で表されるイミド化合物、及びb) 遷移金属及び周期律表の第2A及び3A族元素からなる群から選択される一種またはそれ以上の元素を含む共触媒、から構成される触媒系の存在下に有機溶剤の中で、2〜20個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族アルデヒドと一緒に上記基質を酸化して、対応するオキソ化合物を得ることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】 触媒系の成分a)として、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシマレイミド、N-ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N,N'- ジヒドロシクロヘキサンテトラカルボキシイミド、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N-ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N-ヒドロキシトリメリトイミド、N,N'- ジヒドロキシナフタレンテトラカルボキシイミド、N-ヒドロキシ( ドデセニル) スクシンイミド、N-ヒドロキシ( オクテニル) スクシンイミドまたはN-ヒドロキシナフタルイミドを使用する、請求項1の方法。
【請求項3】 周期律表の第1B、4B、5B、6B、7Bまたは8族に属する一種またはそれ以上の元素を含む共触媒を使用する、請求項1の方法。
【請求項4】 第6B族の元素と第8族もしくは第1B族の元素との組合せを含む共触媒を使用する、請求項3の方法。
【請求項5】 共触媒を、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、アセチルアセトネート、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩またはハロゲン化物の形で使用する、請求項1の方法。
【請求項6】 共基質として、2〜20個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の脂肪族または芳香族アルデヒドもしくはジアルデヒドを使用する、請求項1の方法。
【請求項7】 アルデヒドとして、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒドまたはo-フタルアルデヒドを使用する、請求項6の方法。
【請求項8】 アリール-CH n (n = 1、2または3) 基を含む化合物、またはカルボキシルもしくはカルボニル基で活性化されたメチレンまたはメチン基を含む化合物を基質として使用する、請求項1の方法。
【請求項9】 基質1mol 当たり、0.001 〜0.7molの成分a)、0.0001〜0.5molの成分b)および0.1 〜0.3molの共基質を使用する、請求項1の方法。
【請求項10】 溶剤として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ホルムアルデヒド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、tert- ブタノール、tert- アミルアルコール、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、ニトロベンゼン、ニトロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、またはこれらの混合物を使用する、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、酸化方法、詳しくはメチル、メチレンまたはメチン基を含む基質を酸化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】酸化反応は有機化学の分野で最も基礎的な反応の一つであり、それゆえ様々な方法が文献に記載されている。最近、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)が、温和な条件下での酸化反応のための適当な触媒として開示された。ヨーロッパ特許出願公開第0 824 962 号では、NHPIもしくは他のイミド化合物を金属共触媒と組み合わせて、多種の有機物質の酸化に使用する。次いでアルコール、アルデヒドもしくはケトンに転化させるヒドロペルオキシドを生成するために、アリル性基を含むイソプレノイド類を酸化する方法がヨーロッパ特許第0 198 351 号に記載されている。N-ヒドロキシジカルボキシイミドが触媒として使用される。変法の一つとして、Einhorn が、Chem. Commun. 1997, 447 〜448 頁に、有機基質、特に炭化水素の酸化のための触媒として、NHPIとアセトアルデヒドと組み合わせて使用する方法を開示している。
【0003】しかし、これまで公知の方法は、数多くの化合物の反応において選択性と反応速度が低いという欠点を有するために、できるだけ温和な条件下に選択的な酸化を保証する、酸化剤として酸素を用いる酸化反応系は提案されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】ところが、予期できないことに、イミド化合物及び金属共触媒からなる組合せを、共基質(cosubstrate) としてのアルデヒドの存在下に使用すると、極めて温和な条件下に、しかも高選択性及び高い反応速度をもって数多くの有機基質を酸化することが可能になることがここに見出された。
【0005】それゆえ、本発明は、メチル(CH3) 、メチレン(CH2) またはメチン(CH)基を含む基質を、イミド化合物及び金属共触媒を含んでなる触媒系を用いて酸素により酸化する方法であって、以下の成分、つまりa) 以下の式【0006】
【化2】

[ 式中、R1及びR2は、H、OH、ハロゲン、C1-C20- アルキル、- アルケニルまたは- アルコキシ基、アリール基、C1-C6-アシル基、カルボキシルあるいはC1-C10- アルコキシカルボニル基を示し得るか、またはR1及びR2は、一緒になって、式I中で二重結合を形成するかあるいは式IまたはII中で芳香族もしくは非芳香族の環系を形成し、XはOまたはOHを意味することができ、そしてnは1〜3の整数を示し得る]で表されるイミド化合物、及びb) 遷移金属及び周期律表の第2A及び3A族元素からなる群から選択される一種またはそれ以上の元素を含む共触媒から構成される触媒系の存在下に有機溶剤中で、2〜20個の炭素原子を有する芳香族もしくは脂肪族アルデヒドと一緒に上記基質を酸化して対応するオキソ化合物を得ることを特徴とする、上記方法に関する。
【0007】本発明方法の出発化合物としては、メチル、メチレンまたはメチン基を含む基質が使用される。
【0008】適当な基質は、例えばヨーロッパ特許出願公開第0 824 962 号に開示されており、これには、飽和、一不飽和もしくは多不飽和であることができる脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、複素環式化合物、アルコール類、エステル類、アルデヒド類、ケトン類及びアミン類が包含される。またこの基質は、一つまたはそれ以上の置換基、例えばハロゲン(F、Cl、Br、I )、C1-C6-アルキル基、オキソ基、ヒドロキシル基、C1-C6-アルコキシ基、ヒドロキシ-C1-C4- アルキル基、カルボキシル基、C1-C6-アルコキシカルボニル基、C1-C6-アシル基、アミノ基、置換されたアミノ基、シアノ基、ニトロ基などを有していてもよい。
【0009】好ましくは、アリール-CH2基を含む化合物、例えばインダン類、1,2-ジフェニルエタン及びジベンズ[b,f] アゼピン類、例えば10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]-アゼピンカルボキサミド、あるいはカルボキシルもしくはカルボニル基によって活性化されたメチレン基を含む化合物が、本発明方法を用いて酸化される。
【0010】本発明による方法は、共基質としてのアルデヒドとの組み合わせにおいて、2成分から構成される触媒系を使用する。
【0011】適当な触媒系は、例えばヨーロッパ特許第0 824 962 号に記載されている。これに応じて、成分a)としての上記式Iのイミド化合物の適当なものは、式I中、R1及びR2が同一でも異なっていてもよく、それらが水素、ヒドロキシル、ハロゲン、例えばI 、Cl、F もしくはBr、C1-C10- アルキルまたはアルコキシである化合物である。
【0012】C1-C20- アルキルとは、直鎖、分枝状もしくは環状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、へプチル、オクチル、シクロオクチル、デシル、ドデシルなどを意味するものと解されるべきである。
【0013】好ましくはC1-C15- アルキル基であり、特に好ましくはC1-C12- アルキル基である。
【0014】C1-C20- アルケニルとは、直鎖状もしくは分枝状のアルケニル基を意味するものと解されるべきである。これの例は、プロペニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、ドデセニルなどである。
【0015】好ましくはC4-C18- アルケニル基、特に好ましくはC6-C12- アルケニル基である。
【0016】C1-C20- アルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert- ブトキシ、ペンチルオキシ及びヘキシルオキシ基などを意味するものと解されるべきである。同様に、好ましくはC1-C6-アルコキシ基、特に好ましくはC1-C4-アルコキシ基である。
【0017】R1及びR2は更に、アリール基、例えばフェニル基もしくはナフチル基、C1-C6-アシル基、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイルなどを意味することができる。
【0018】R1及びR2は、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基であることもできる。適当なアルコキシカルボニル基は、アルコキシ部分に1〜10個の炭素原子を含むものである。これの例は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert- ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルなどである。好ましい基は、アルコキシ部分に1〜6個の炭素原子を含むもの、特に好ましいものは、アルコキシ部分に1〜4個の炭素原子を含むものである。
【0019】更にまた、R1及びR2は一緒になって式I中で二重結合を形成するか、あるいは式IまたはII中で芳香族もしくは非芳香族系の環系を形成してもよく、ここでこの環系は一つまたはそれ以上の縮合環から構成されていることができる。5〜12個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する芳香族もしくは非芳香族系の環系が好ましい。この環は複素環であってもよい。これらの例は、シクロヘキサンまたは場合によっては置換されていてもよい他のシクロアルカン環、及びシクロヘキセンまたは同様に場合によっては置換されていてもよい他のシクロアルケン環、非芳香族系の橋掛けされた環、ベンゼン環、ナフタレン環、及び他の場合によっては置換された芳香族環である。
【0020】上記式Iの化合物は、飽和もしくは不飽和のN-含有6員環を有していてもよい。
【0021】式Iまたは式II中のXはOまたはOHである。
【0022】Xの意味に依存して、NとXとの間の結合は二重結合であるかまたは単結合である。
【0023】nは1〜3の整数、好ましくは1または2である。
【0024】好ましいイミド化合物は、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシマレイミド、N-ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N,N'- ジヒドロシクロヘキサンテトラカルボキシイミド、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N-ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N-ヒドロキシトリメリトイミド、N,N'- ジヒドロキシナフタレンテトラカルボキシイミド、N-ヒドロキシ( ドデセニル) スクシンイミド、N-ヒドロキシ( オクテニル) スクシンイミド、N-ヒドロキシナフタルイミドなどである。
【0025】共触媒が成分b)として使用される。ヨーロッパ特許第0 824 962 号に記載される共触媒が本発明の触媒系に適している。応じて、この共触媒は、周期律表第2A族元素、例えばMg、Ca、Sr、Ba、及び第3A族元素、例えばB 、Al、及び遷移元素からなる群から選択される一種またはそれ以上の元素を含む。
【0026】適当な遷移元素は、例えば、Sc、Y 、La、Ce、Smまたはランタノイド、Acあるいは他のアクチノイドなどの周期律表第3B族の元素、第4B族元素(Ti 、Zr、Hf)、第5B族元素(V、Nb、Ta) 、第6B族元素(Cr 、Mo、W)、第7B族元素(Mn 、Tc、Re) 、第8族元素(Fe 、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt)、第1B族元素(Cu 、Ag、Au) 、及び第2B族元素( 例えば、Zn、Cd) である。
【0027】好ましく使用される共触媒は、Ti、Zrまたは他の第4B族元素、V または他の第5B族元素、Cr、Mo、W または他の第6B族元素、Mn、Tc、Reまたは他の第7B族元素、Fe、Ru、Co、Rh、Niまたは他の第8族元素、またはCuまたは他の第1B族元素を含むものである。
【0028】第6B族及び/または第8族または第1B族に属する元素の組合せが特に好ましい。
【0029】この共触媒は、金属水酸化物、金属酸化物、有機塩、無機塩などとして使用することができる。
【0030】水酸化物は、例えば、Mn(OH)2 、MnO(OH) 、Fe(OH)2 及びFe(OH)3 である。適当な酸化物は、例えば、Sm2O3 、TiO2、ZrO2、V2O3、V2O5、CrO 、Cr2O3 、MoO3、MnO 、Mn3O4 、Mn2O3 、MnO2、Mn2O7 、FeO 、Fe2O3 、Fe3O4 、RuO2、RuO4、CoO 、CoO2、Co2O3 、Cu2O3 などである。
【0031】有機塩は、例えば、Co、Mn、Ce、Ti、Zr、V 、Cr、Mo、Fe、Ru、Ni、Pd、Cu及びZnの蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、アセチルアセトネート、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩、及びC2-C20- 脂肪酸との他の塩である。
【0032】無機塩には、例えば、Co、Fe、Mn、Ni、Cuなどの硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩及びハロゲン化物などが包含される。
【0033】この共触媒は、例えばヨーロッパ特許出願公開第0 824 962 号に記載されるような錯体の形でも使用することができる。
【0034】好ましくはこの共触媒は、有機塩、例えば酢酸塩、アセチルアセトネートなどの形、または無機塩、例えば硝酸塩などの形で使用される。
【0035】特に好ましく使用される共触媒は、例えば酢酸塩もしくは硝酸塩としてのNiまたはCuである。
【0036】更に別の特に好ましい態様では、成分b)として、NiまたはCuがCrとの組合せで添加される。
【0037】NiまたはCuとCr及び痕跡量のCoとの組合せが、共触媒としてとりわけ好ましく使用される。
【0038】本発明による系の成分a)及びb)は、均一系と不均一系のどちらも形成することができる。
【0039】必要に応じて、成分a)及びb)は、固体の形で担体に担持させてもよい。適当な担体は、例えば、シリカ、ゼオライト、活性炭など、あるいは他の多孔性担体である。
【0040】本発明の方法では、共基質としてアルデヒドが使用される。適当なアルデヒドは、2〜20個の炭素原子を有する、飽和状でも不飽和状でもよい脂肪族アルデヒド並びに芳香族アルデヒドもしくはジアルデヒドである。これらの例は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、o-フタルアルデヒドなどである。
【0041】好ましくは、アセトアルデヒドまたはベンズアルデヒドが共基質として使用される。
【0042】各々の成分の使用量は以下の通りである。成分a)は、基質1mol 当たり、0.001 〜0.7mol、特に好ましくは0.01〜0.5mol;成分b)は、基質1mol 当たり、0.0001〜0.5mol、好ましくは0.0001〜0.3mol、特に好ましくは0.001 〜0.2mol; そして共基質は、基質1mol 当たり、0.1 〜3mol 、好ましくは0.2 〜2.5molである。
【0043】イミド化合物に対する共触媒のモル比は、イミド化合物1mol 当たり、0.001〜1mol 、好ましくは0.001 〜0.8mol、特に好ましくは0.002 〜0.2molである。
【0044】NiまたはCuとCrとの組合せを共触媒として使用する場合は、Crは、NiまたはCuの量と比較して痕跡量のみの量で使用される。それゆえ、NiまたはCu1mol 当たり、0.1 〜0.25mol のCrを使用するのが好ましい。NiまたはCuと痕跡量のCr及びCoとのとりわけ好ましい組合せが使用される場合は、Coは、NiまたはCu1mol 当たり、0.0001〜0.003molの量で使用される。
【0045】本発明による方法は有機溶剤中で行われる。適当な溶剤は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸及び他のカルボン酸、あるいはヒドロキシカルボン酸、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル及び他のニトリル類、ホルムアルデヒド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及び他のアミド類、tert- ブタノール、tert- アミルアルコール及び他のアルコール類、ヘキサン、オクタン及び他の脂肪族炭化水素、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、ニトロベンゼン、ニトロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びこれらの溶剤の混合物である。酢酸、プロピオン酸、アセトニトリル、ベンゾニトリル、クロロホルムまたはジクロロメタンが溶剤として好ましく使用される。場合によっては、基質そのものが、過剰量で使用された場合に、溶剤としても機能し得る。純粋な酸素の形または空気として添加することができる過剰の酸素が酸化剤として使用される。更に、この酸素は不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、アルゴンまたは二酸化炭素で希釈することもできる。
【0046】反応温度は、使用する基質の種類に依存し、-20 〜100 ℃の範囲の温度であることができる。好ましくは、酸化反応は、0〜30℃の室温下に行う。
【0047】この反応は、大気圧下もしくは大気圧以上の圧力下に行うことができる。
【0048】本発明による方法では、酸化する基質を上記の溶剤の一つの中に溶解させ、そして成分a)及びb)から構成される触媒系を添加する。
【0049】アルデヒドは、この反応混合物中に反応の開始時に一度に、あるいは反応中比較的長い時間にわたって計量添加することができる。反応の開始時にアルデヒドの一部を先ず添加し、次いで反応中にその残りを計量添加することも可能である。
【0050】使用する基質の種類に依存して、本発明による方法は、多くのオキソ化合物の製造に使用することができる。製造し得るオキソ化合物は酸、アルコール、ケトン、アルデヒドまたは過酸化物である。
【0051】反応終了後には、所望の最終生成物を、公知技術、例えば濾過、析出、凝縮、蒸留、抽出、結晶化、クロマトグラフィーなどの技術を用いて簡単に反応混合物から単離することができ、更に必要に応じて精製することができる。
【0052】従来技術と比較して、本発明による方法によると、対応するオキソ化合物は、より高い選択性及び収率並びに反応速度をもって得られる。
【0053】例1〜3で使用したNi(OAc)24H2O は98%の純度を有し(Aldrich製) 、約100ppmの量でCoを含む。
【0054】例4で使用したNi(OAc)24H2O は100 %の純度を有する(Baker製) 。
【0055】
【実施例】例1:0.239g(1.00mmol)のIDB-CONH2 を3mlのアセトニトリル中に溶解した。0.061g(0.37mmol)のN-ヒドロキシフタルイミド、0.0022g(0.0088mmol) の酢酸ニッケル及び0.001g(0.0025mmol)の硝酸クロム(III) を添加した。0.1185g(1.12mmol) のベンズアルデヒドを共基質として一度に添加した。
【0056】1bar の酸素圧及び室温下に酸化を行った。17時間の反応時間後、得られた反応混合物をHPLCで分析した。45%の転化率で36%のオキシカルバゼピン(oxcarbazepine) が得られた(オキシカルバゼピンを基準にして81%の選択性)。
例2:例2を、アセトニトリルの代わりに酢酸を溶剤として使用して例1と同様に行った。
【0057】75%の転化率で49%のオキシカルバゼピンが得られた(オキシカルバゼピンを基準にして66%の選択性)。
例3:2.38g(10.0mmol) のIDB-CONH2 を酢酸30ml中に溶解した。0.66g(4.0mmol)のN-ヒドロキシフタルイミド、0.0245g(0.098mmol)の酢酸ニッケル及び0.0107g(0.027mmol)の硝酸クロム(III) を添加した。0.3176g(3mmol)のベンズアルデヒドを共基質として一度に添加した。1.096g(9.2mmol) のベンズアルデヒドと0.1ml の酢酸からなる混合物を5時間かけて添加した。1bar の酸素圧及び室温下に酸化を行った。7時間の反応時間の後、得られた反応混合物をHPLCで分析した。72%の転化率で53%のオキシカルバゼピンが得られた(オキシカルバゼピンを基準にして74%の選択性)。
比較実験1:ヨーロッパ特許第0 824 962 号と同様にして、酢酸中の0.239g(1.00mmol)のIDB-CONH2 を、触媒系としての0.057g(0.35mmol)のN-ヒドロキシフタルイミド及び0.0063g(0.0253mmol) の酢酸コバルトの存在下に、但し共基質は用いずに、室温及び1barの酸素圧下に酸化した。33%の転化率で16%のオキシカルバゼピンが得られた(=48%選択性)。
比較実験2:0.245g(1.03 mmol) のIDB-CONH2 を3mlのアセトニトリル中に溶解した。0.032g(0.2mmol) のN-ヒドロキシフタルイミドを添加したが、金属塩を含む共触媒は添加しなかった。2.1gのアセトニトリル中に0.234g(5.3mmol) のアセトアルデヒドを溶解してなる溶液を、共基質として180 分かけて添加した。
【0058】1bar の酸素圧及び室温下に酸化を行った。17時間の反応時間後、得られた反応混合物をHPLCにより分析した。42%の転化率で19%のオキシカルバゼピンが得られた(オキシカルバゼピンを基準にして45%の選択性)。この結果は再現性に乏しかった。
例4:様々な量でコバルトを添加してのIDB-CONH2 の酸化2.38g(10mmol) のIDB-CONH2 、0.66g(4.0mmol)のN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)、24.9mg(0.1mmol) のNi(OAc)24H2O 及び8.8mg(25μmol)のCr(acac)3 からなる混合物を、Co(OAc)24H2O 含有AcOH(AcOH 31g)中に溶解した。次いで、酸素のゆっくりとした流れを、22℃の攪拌した反応混合物中に吹き込んだ。306mg(2.9mmol)のベンズアルデヒドを添加した。その後、1.14g(10.7mmol) のベンズアルデヒド及び0.11g の酢酸からなる混合物を300 分かけて添加した。反応混合物を、300 分後と420 分後にHPLCにより分析した。
【0059】Coの使用量、転化率及び収率を表1にまとめて記す。反応混合物が黄色になった時の時間も示した。
【0060】
【表1】

【出願人】 【識別番号】599065370
【氏名又は名称】デーエスエム・フアイン・ヒエミカルス・オーストリア・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング
【出願日】 平成11年11月24日(1999.11.24)
【代理人】 【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史 (外3名)
【公開番号】 特開2000−226339(P2000−226339A)
【公開日】 平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願番号】 特願平11−332836