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【発明の名称】 有機ハロゲン化合物の分解除去方法と材料
【発明者】 【氏名】蓼沼 克嘉

【氏名】長谷川 良雄

【氏名】新井 修

【氏名】花本 行生

【氏名】水庭 直樹

【氏名】宮本 昭一

【氏名】金高 正巳

【要約】 【課題】有機ハロゲン化合物中の分子内ハロゲン元素を、有機形態の状態より無機形態の状態に処理する分解除去方法および有機ハロゲン元素の置換反応を利用した分解除去方法、或いはこれら分解除去を効率的に行う。

【解決手段】有機ハロゲン化合物の分子内ハロゲン元素(Xとする)を有機形態(炭素とハロゲンの結合:C−X結合)から無機形態(元素状X0、イオン状X-)に変換する。ここで、有機ハロゲン化合物が、フレオン、ポリ塩素化ビフェニール(PCB)、ダイオキシン、その他環境汚染性の有機ハロゲン化合物、あるいは該有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素が放射性である場合、それらの物質及び毒性を分解、あるいは回収除去する方法として、有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素を元素状X0またはイオン状X-に無機化処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機ハロゲン化合物の分子内ハロゲン元素Xを、炭素とハロゲンとが結合したC−X結合の有機結合形態から、元素状X0またはイオン状X-の無機形態に変換することを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解除去方法。
【請求項2】 有機ハロゲン化合物が、フレオン、ポリ塩素化ビフェニール、ダイオキシン、その他環境汚染性の有機ハロゲン化合物、あるいは該有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素が放射性である場合、それらの物質及び毒性を分解、あるいは回収除去する方法として、有機ハロゲン化合物中の分子内ハロゲン元素を、元素状X0またはイオン状X-に無機化処理することを特徴とする前記請求項1に記載の有機ハロゲン化合物の分解除去方法。
【請求項3】 有機ハロゲン化合物の分解除去を行うため、該有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素を使用し、そのハロゲン置換反応を利用して有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素と交換することを特徴とする請求項1または2に記載の有機ハロゲン化合物の分解除去方法。
【請求項4】 有機ハロゲン化合物が有機塩素化合物の場合、有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素が元素状フッ素であることを特徴とする請求項3に記載の有機ハロゲン化合物の分解除去方法。
【請求項5】 有機ハロゲン化合物が有機臭素化合物の場合、有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素が元素状塩素であることを特徴とする請求項3に記載の有機ハロゲン化合物の分解除去方法。
【請求項6】 有機ハロゲン化合物が有機ヨウ素化合物の場合、有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素が元素状臭素であることを特徴とする請求項3に記載の有機ハロゲン化合物の分解除去方法。
【請求項7】 有機ハロゲン化合物の分解除去を行うため、有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素に発生期水素を反応させ、無機化処理することを特徴とする請求項1または2に記載の有機ハロゲン化合物の分解除去方法。
【請求項8】 有機ハロゲン化合物中の有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素を、同ハロゲン元素の化学的活性度を保持しながらゼオライト、活性炭、その他の多孔質な有機材料及び無機材料に含有、含浸させて安定化したことを特徴とする有機ハログン化合物の分解除去材料。
【請求項9】 ゼオライト、活性炭、その他の多礼質物質に過臭素イオンを含有させたもので、選択的に有機ヨウ素化合物中のヨウ素を無機化する機能を有することを特徴とする請求項8に記載の有機ハログン化合物の分解除去材料。
【請求項10】 過臭素イオンを含有したゼオライト、活性炭、その他の多孔質物質が有機ヨウ素化合物中のヨウ素を無機化した後、無機化したヨウ素を吸着保持する機能を有することを特徴とする請求項9に記載の有機ハログン化合物の分解除去材料。
【請求項11】 Si−H結合のシラン結合を有する有機ポリシラン化合物を有し、発生期水素を放出する機能を有することを特徴とする有機ハログン化合物の分解除去材料。
【請求項12】 前記請求項8〜10の何れかに記載の有機ハログン化合物の分解除去材料と前記請求項11に記載の有機ハログン化合物の分解除去材料とを混合したことを特徴とする有機ハログン化合物の分解除去材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フレオン、ポリ塩素化ビフェニール類、ダイオキシン類、その他の環境汚染性有機ハロゲン化合物の分解除去、あるいは原子力施設や病院等の核医学診療施設、放射化学研究施設などから排出される放射性有機ハロゲン化合物の分解除去に適用される有機ハロゲン化合物の分解除去方法と材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の有機ハロゲン化合物を分解・除去する方法には、熱的な手段で分解・除去する方法、プラズマ励起状態下で分解・除去する方法、紫外線やγ線等の高エネルギー電磁波を照射することにより分解・除去する方法、超臨界条件下で分解・除去する方法、活性炭などに吸着することにより除去する方法等が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、これらの従来の方法では、有機ハロゲン化合物を分解・除去するために、機械・設備機器を複雑に配し、高度な分解条件を維持管理しなければならない、このため、一般にこれら有機ハロゲン化合物の分解・除去方法は、実用レベルでの分解・除去手段とはなり得ていない。また、活性炭やイオン交換樹脂による単なる吸着方式では有機ハロゲン化合物を分解できないため、根本的な無害化はできない。
【0004】そこで本発明は、前記の課題を解消するため、有機ハロゲン化合物中の分子内ハロゲン元素を、有機形態の状態より無機形態の状態に処理する分解・除去方法および有機ハロゲン元素の置換反応を利用した分解・除去方法、或いはこれら分解除去を効率的に行う材料を提供するものである。これにより、有機ハロゲン化合物を分解し、無害化することを可能とすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、前記の目的を達成するために、有機ハロゲン化合物の分子内ハロゲン元素(Xとする)を有機形態(炭素とハロゲンの結合:C−X結合)から無機形態(元素状X0、イオン状X-)に変換するようにしたものである。ここで、有機ハロゲン化合物が、フレオン、ポリ塩素化ビフェニール(PCB)、ダイオキシン、その他環境汚染性の有機ハロゲン化合物、あるいは該有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素が放射性である場合、それらの物質及び毒性を分解、あるいは回収除去する方法として、有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素を元素状X0またはイオン状X-に無機化処理する。
【0006】より具体的な手段としては、有機ハロゲン化合物の分解除去を行うため、該有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素を使用し、そのハロゲン置換反応を利用して有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素と交換することにより、有機ハロゲン化合物の分子内ハロゲン元素Xを炭素とハロゲンとのC−X結合の有機形態から、元素状X0またはイオン状X-の無機形態に変換する。
【0007】例えば、有機ハロゲン化合物が有機塩素化合物の場合、有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素としては、元素状フッ素を使用する。有機ハロゲン化合物が有機臭素化合物の場合、有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素としては、元素状塩素を使用する。また、有機ハロゲン化合物が有機ヨウ素化合物の場合、有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素としては、元素状臭素を使用する。
【0008】ここで、有機ハロゲン化合物中の有機ハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素は、同ハロゲン元素の化学的活性度を保持しながらゼオライト、活性炭、その他の多孔質な有機材料及び無機材料に含有、含浸させて安定化させておくとよい。このように、ゼオライト、活性炭、その他の多礼質物質に過臭素イオン(Br3ion)を含有させたものは、選択的に有機ヨウ素化合物中のヨウ素を無機化する機能を有する。そして、過臭素イオン(Br3ion)を含有したゼオライト、活性炭、その他の多孔質物質が有機ヨウ素化合物中のヨウ素を無機化した後、無機化したヨウ素を吸着保持する機能を有する。
【0009】さらに、有機ハロゲン化合物の分解除去を行うため、有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素に発生期水素を反応させ、無機化処理することができる。シラン結合(Si−H結合)を有する有機ポリシラン化合物を有するものは、前記のような発生期水素を放出する機能を有する。前記のような有機ハログン化合物の分解除去材料と有機ハログン化合物中のハロゲン元素に発生期水素を放出する機能を有する分解除去材料とを混合することにより、広範な有機ハロゲン化合物の分解除去機能を有する有機ハログン化合物の分解除去材料を得ることができる。
【0010】
【考案の実施の形態】次に、図面を参照しながら、本考案の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。本発明による有機ハロゲン化合物の分解除去方法は、有機ハロゲン化合物の分子内ハロゲン元素Xを、炭素とハロゲンとのC−X結合態から元素状X0またはイオン状X-の無機形態に変換するものである。
【0011】このような有機ハロゲン化合物の分解除去方法によれば、有機ハロゲン化合物が、フレオン、ポリ塩素化ビフェニール類、ダイオキシン類、その他環境汚染性有機ハロゲン化合物、あるいは有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素が放射性である場合、それらの物質および毒性を分解、あるいは回収除去する方法として有機ハロゲン元素を元素状のX0またはイオン状X-に無機化処理することにより有機ハロゲン化合物の分解除去ができる。
【0012】例えば、有機ハロゲン化合物の分解除去を行うため、有機化合したハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素をハロゲン置換反応を利用して有機化合物中のハロゲン元素と交換する。例えば、処理する有機ハロゲン化合物が有機塩素化合物の場合は、それより化学反応性の高いハロゲン元素として元素状フッ素を、処理する有機ハロゲン化合物が有機臭素化合物の場合は、それより化学反応性の高いハロゲン元素として元素状塩素を、処理する有機ハロゲン化合物が有機ヨウ素化合物の場合は、それより化学反応性の高いハロゲン元素として元素状臭素をそれぞれ用いる。また例えば、有機ハロゲン化合物の分解除去を行うため、有機化合物中のハロゲン元素の無機化処理に発生期水素を反応させることにより、有機ハロゲン化合物の分解除去ができる。
【0013】前記有機ハロゲン化合物の分解除去方法を達成するため、元素状ハロゲンをゼオライト、活性炭、その他の多孔質な有機材料および無機材料に元素状ハロゲン元素の化学的活性度を保持しながら、しかも安定に含有、含浸させることにより、有機ハロゲン化合物の分解除去機能を有する材料が得られる。一般的に元素状フッ素及び元素状塩素は化学的な活性が強すぎるため、それら元素状フッ素及び元素状塩素を安定に材料中に保持することは困難である。これに対し、ゼオライト、活性炭、その他の多孔質物質に過臭素(Br3)イオンを含有させたものは、選択的に有機ヨウ素化合物中のヨウ素を無機化する機能を有する材料となる。この過臭素イオンを含有したゼオライト、活性炭、その他の多孔質物質は該有機ヨウ素化合物中のヨウ素を無機化し、しかもそのヨウ素を吸着保持する機能をあわせ持つ。
【0014】図1は、本発明の有機ヨウ素化合物の臭素によるハロゲン置換反応を模式的に示した図である。ゼオライトや活性炭またはその他の多孔質な有機若しくは無機材料に過臭素(Br3)イオンを含有した該材料に、有機ヨウ素化合物が接触すると、その材料表面でハロゲン置換反応を生じる。この置換反応に伴い、有機形態である炭素とヨウ素の結合を無機の形態である元素状またはイオン状のヨウ素に変換することができ、これにより有機ハロゲン化合物の分解が行われる。有機ハロゲン化合物の場合、以下の化学式によりこの反応を示すことができる。
mnX+Br3-AC → CmnBr+XBr2-ACこの反応により、Xで示すハロゲン元素が有機形態から無機形態に変換され、活性炭(AC)の中に吸着され、除去される。
【0015】また、この有機ハロゲン化合物の分解には分解・除去を目的とする元素化合物に応じた置換対象元素を含有、含浸させた材料を用いることにより、分解反応を生じる。有機塩素化合物ならば、元素状フッ素を用いることにより前記の式に適用することができ、有機臭素化合物の場合、元素状塩素を用いることにより、やはり前記の式に適用することができる。
【0016】また、これらハロゲン置換対象元素を含有、含浸させた材料は、ゼオライトや活性炭または多孔質の有機・無機材料を用いることにより、材料そのものが持っている吸着特性を利用することができる。有機ハロゲン化合物中のハロゲン元素の無機化処理に発生期水素を放出する機能を有するシラン結合(Si−H結合)を持ったポリシラン化合物が有機ハロゲン化合物の分解除去機能を有する材料となる。このシラン結合(Si−H結合)を持つポリシラン化合物はポリシラン骨格が化1に示されたような架橋された三次元構造を有する。
【0017】
【化1】

【0018】このポリシラン化合物による有機ハロゲン化合物の分解は、これらの構造中に存在するSi−H結合がポリシラン骨格内にあることに起因し、ポリシラン骨格内に存在するSi−H結合は、容易にホモ開裂を起こし、化2に示すようにシリルラジカルを生成し、有機ハロゲン化合物のハロゲン引き抜き反応を起こす。
【0019】
【化2】

【0020】この反応はフレオン、ポリ塩素化ビフェニール類、ダイオキシン類、その他の環境汚染性有機ハロゲン物質の分解除去方法として確立できる。本発明の、ハロゲン置換反応による有機ハロゲン化合物の分解除去材料とシラン結合を有する有機ポリシラン化合物の有機ハロゲン化合物の分解除去材料を混合することにより、広範な有機ハロゲンの分解除去に機能を有する材料ができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
(実施例1)図2は、活性炭に過臭素(Br3)イオンを含浸、含有させた材料に、ヨードブタン(C49−I)とヨードヘキサン(C613−I)を反応させたときのガスクロマトグラフのチャートである。この結果は、前記したとおりのハロゲン置換反応により、有機ヨウ素化合物が有機臭素化合物に変換され、ヨウ素は無機形態として活性炭中に吸着保持されることにより分解除去される。
【0022】(実施例2)図3は、比較対象として活性炭およびイオン交換樹脂を用いて放射性有機ヨウ素(I−131)化合物の分解除去をカラム通水により行った特性を示す。この結果から、過臭素イオンを保持した材料は、有機ヨウ素化合物の分解が進行し、他の比較材料と比べても分解除去に優れた能力を有している。これらは、原子力施設や病院等の医療施設から排出される放射性有機ヨウ素化合物の分解除去法に適用できる。
【0023】(実施例3)図4は、ポリシラン化合物による有機ヨウ素化合物の分解除去率を示す。この結果からも明らかに前記したハロゲンの引き抜き反応により、有機ヨウ素は分解・除去さる。このことは、他の有機ハロゲン化合物にも適用され、フレオン、ポリ塩素化ビフェニール類、ダイオキシン類、その他の工場等からの環境汚染性有機ハロゲン化合物の発生源、あるいは原子力施設や病院等の医療用施設、放射化学研究施設等から排出される放射性有機ハロゲン化合物の分解除去に機能を有する。
【0024】
【発明の効果】本発明の有機ハロゲン化合物の分解除去方法とその材料によれば、有機ハロゲン化合物の分子内ハロゲン元素Xを、炭素とハロゲンとのC−X有機結合形態から元素状X0またはイオン状X-の無機形態に変換することができる。これにより、目的とする有機ハロゲン元素は酸化されることにより、化学的な反応を利用した分解除去方法ができる。
【0025】また、有機ハロゲン化合物の分解除去を行うため、有機化合したハロゲン元素よりも化学反応性の高いハロゲン元素を用い、そのハロゲン置換反応を利用して有機化合物中のハロゲン元素と交換することにより、目的元素の選択的除去が可能となる。有機ハロゲン元素化合物として有機塩素化合物の場合は元素状フッ素を、有機臭素化合物の場合は元素状塩素を、有機ヨウ素化合物の場合は元素状臭素をそれぞれ用いることにより、有機ハロゲン化合物の分解除去ができる。これらの分解除去を行う材料として、ゼオライトや活性炭、その他の有機・無機の多孔質の材料に前記した元素を含有・含浸させたものは有機ハロゲン化合物の分解除去特性を有する材料となる。
【0026】また、シラン結合(Si−H)を持つポリシラン化合物は、容易にホモ開裂を起こしてシリルラジカルを生成し、有機ハロゲン化合物のハロゲン引き抜き反応を起こす。これは、有機ハロゲン化合物の分解除去方法として利用でき、有機ハロゲン化合物、フレオン、ポリ塩素化ビフェニール類、ダイオキシン類、その他の環境汚染性有機ハロゲン化合物の分解除去方法および材料として確立される。さらに、前期した有機ハロゲン化合物の分解除去方法および材料は、それらを混合することにより、選択的でより高度な分解除去機能を有し、より広範な利用を可能とする。
【出願人】 【識別番号】000140627
【氏名又は名称】株式会社化研
【識別番号】591031430
【氏名又は名称】株式会社千代田テクノル
【出願日】 平成11年1月29日(1999.1.29)
【代理人】 【識別番号】100081927
【弁理士】
【氏名又は名称】北條 和由
【公開番号】 特開2000−219642(P2000−219642A)
【公開日】 平成12年8月8日(2000.8.8)
【出願番号】 特願平11−20967