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【発明の名称】 重合防止反応方法
【発明者】 【氏名】山本 隆

【氏名】奥村 勝

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】重合性物質を原料もしくは生成物として含有する反応系において、反応缶の液面より上部の缶壁を常時、反応液又は反応液のミスト、飛沫で覆いかつ濡らすことを特徴とする反応方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は重合性物質を含みかつ重合反応を目的としない反応、例えばディールス−アルダー反応、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル化、不飽和物質のエポキシ化等において、該重合性物質の重合を防止する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】重合を目的としない重合性物質を用いる反応においては、通常の化学反応と変わり無いことが多いことから、通常の反応缶を用いることが多く、重合防止用の特別な装置を設置しないで用いられている。反応工程は一般的には反応缶に原料を仕込み、かくはん翼で又は液循環等により、反応液をかくはんしながら所定条件下、反応を行う。反応缶中の液相部分は、普通は何らかのかくはん装置が施されているが、気相部分については、特別な装置は設置されていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような反応缶で重合性物質を用いた場合、重合禁止剤を添加しても、液相の部分では重合を抑制することができるが、気相での重合抑制はほとんど不可能であった。
【0004】従来の反応方法、装置では反応缶に重合物が生成し、その結果、製品中に混入したり又は上記の工程を繰り返すことにより、反応缶の壁に付着蓄積し、生成物の品質に悪影響を及ぼしている。一般的には100時間も稼働すると缶壁に重合物が付着蓄積し、その厚さは10mmにも達する。コンデンサーが設置されている場合等は、コンデンサーへのラインが閉塞することもあり、さらに反応缶上部のノズル内にも付着蓄積し、圧力計ダイヤフラムが検知できない状態となる。このため除去を行う必要が生じており、生産性の向上に非常な妨げとなっていたのが現状である。
【0005】本発明はこのような状況に鑑み、原料又は生成物に重合性物質を用いながらも、重合物の生成を抑制する反応方法を鋭意検討し、その結果本発明を完成したものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは重合物は主に気相部の缶壁に生成している事実を発見し、このことから缶壁を常時反応液で、完全に覆いかつ濡らすことで重合物の生成並びに蓄積を防止できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】即ち本発明は、重合性物質を原料もしくは生成物として含有する反応系において、反応缶の液面より上部の缶壁を常時、反応液又は反応液のミスト、飛沫で覆いかつ濡らすことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】反応缶上部の気相部分に重合物が生成する理由は必ずしも明確でないが、反応に関与する原料成分の蒸気圧がそれぞれ異なり、気相部分では一部の成分の濃度が高まる結果、目的とする本来の反応が進行せず、缶壁が触媒と同様の作用を奏し、その結果、重合が促進され缶壁に重合物が付着蓄積するものと推定される。例えば無水マレイン酸とブタジエンを原料とするディールス−アルダー反応においては、気相で無水マレイン酸に比較して、ブタジエン濃度が非常に高まる結果、ブタジエンを主成分とする重合が進行するものと推定される。原料又は生成物に重合性物質を含有し、重合を目的としない反応とは、ディールス−アルダー反応、アクリル酸又はメタクリル酸、アリルアルコール等の重合性を有する酸、アルコールのエステル化又はエステル交換反応、アクリル酸、メタクリル酸等の重合性を有する酸のアミド化、エチレン、プロピレン、スチレン、その他のオレフィン等のエポキシ化、無水マレイン酸オレフィンのエン反応等を言うが、これらに限定されるものではない。また反応に用いられるこれらの原料の内、いずれか一以上が重合性であればよく、すべての物質が重合性である必要はない。
【0009】反応に用いる原料は、例えばディールス−アルダー反応の場合、反応に用いるジエン並びにジエノフィルは、通常知られているものでよく、無水マレイン酸等のジエノフィルとジエンを反応させることにより行う。反応に用いるジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン2,4−ヘキサジエン、スチレン、3−ビニルシクロヘキセン、ソルビン酸、共役リノール酸、共役リノレイン酸等から選ばれる。
【0010】反応方法は従来より用いられている方法でよく、反応液をかくはん翼によりかくはんする方法、又は液循環等により液をかくはんする方法に代えてもよい。
【0011】本発明の実施に用いられる方法は、缶壁に反応液を散布し濡らす方法であればどんな方法でも推奨されるが、具体的には液面より上の部分に上方に向かって反応液を噴出する装置を取り付け、液を噴出させる方法(図1)、又は反応缶の上部の缶壁にスプリンクラー等と同等の機能を有する装置(以下スプリンクラーという)を取り付け液を散布する方法等で反応缶の缶壁を濡らすことで、目的を達成することが出来る。
【0012】前者に方法においては、液分散を高めるために有効な拡散装置または拡散板を取り付けることによって、効果を高めることが出来る。後者の方法においても、液分散を高めるための有効な拡散装置又は拡散板を取り付け液が缶壁に沿って流れるように噴出させることにより反応缶の缶壁を濡らすことによって、効果を高めることが出来る。さらに同時に循環ポンプで噴出液を液循環させることによって反応速度を高めることが出来る。循環は循環ポンプにより反応液をサイクルすることによって行う。このサイクル液を反応缶内に設置した前述の噴出装置又はスプリンクラーによって、反応缶の缶壁を濡らすことができる。
【0013】上記の方法により反応缶の缶壁は常時液で濡れ、重合物の生成及びその蓄積が抑制される。反応液のサイクル量は多い方が好ましく、またこの方法により気液接触効果が改善され、反応速度も向上する。
【0014】前者の方法の場合は、反応缶が大きいときはノズルが1カ所では十分に液の分散ができないことががあるため、数本に分けることもできる。ノズル先端にスプレーノズルを使用することも可能である。但しこの場合ノズルの先端も液膜で覆われるように工夫することが必要である。ノズルの径及び取り付ける拡散装置の孔の径は、反応缶の缶壁を濡らすのに十分な噴出速度を維持できるよう設定しなければならない。スプリンクラーは反応缶の上部から全方向に液が流出するので、1カ所あれば十分である。ただし、適度の流量及び流速がないと、サイクル液が缶壁に沿って流れず、缶壁を濡らすことが出来ないので、一定の流速、流量が必要である。
【0015】反応缶上部にコンデンサーがある場合は、コンデンサーチューブの部分は、サイクル液の一部を枝取りしコンデンサーの上部より薄膜で流下させることにより、反応液がチューブ内の壁面を覆うことが可能となる。また別法としてノズル等からの噴出液を直接コンデンサーチューブの内部まで入り込めるようにすることもできる。スプリンクラーの場合はサイクル液を枝取りする方法が好ましい。ダイヤフラム圧力計がある場合は、ダイヤフラム面に向かって直接液を吹き出すことは、圧力指示の誤差となり好ましなく、ノズルを側壁に向かって噴出するように改良することにより解決できる。
【0016】
【実施例】以下、実施例によって本発明の効果を説明する。
【0017】実施例1拡散装置を取り付けた図1に示す反応缶をチッソガスで置換した後、溶融無水マレイン酸1.5tを仕込み、反応液を循環させながら、100℃でブタジエンガスを反応缶下部から導入した。ブタジエンガス導入量が無水マレイン酸に対し、1.05当量二達した時点で反応を終了した。この間の反応時間は4時間であった。このとき、反応生成物並びに反応缶の缶壁に重合物の生成を全く認めなかった。
【0018】実施例2ブタジエンに代えてピペリレンを使用し、かつピペリレンを反応缶上部から滴下した以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様、反応生成物並びに反応缶の缶壁に重合物の生成を認めなかった。
【0019】実施例3缶壁を濡らすための特別な装置を有しない反応缶を使用し通常の液かくはん(十分なかくはん効果があり常に反応液で反応缶内壁が液膜で覆われている)によった以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、実施例1と同様、反応生成物並びに反応缶の缶壁に重合物の生成を認めなかった。
【0020】実施例4図1に示す拡散装置を取り付けた反応缶をチッソガスで置換した後、メタクリル酸メチル0.6t、オクタノール0.77t、エステル交換触媒としてナトリウムメチラート3kg、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.8kgを仕込み、100℃で反応液を循環させながら、エステル交換反応を常法に従って行った。反応時間は6時間であった。このとき、反応生成物並びに反応缶の缶壁に重合物の生成を全く認めなかった。
【0021】実施例5スプリンクラーに拡散板を取り付けた反応器を用いる以外は実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様、反応生成物並びに反応缶の缶壁に重合物の生成を認めなかった。
【0022】比較例ノズル及びスプリンクラーのない反応缶を使用した以外は実施例1と同様に行った。その結果、反応缶上部に重合物の生成が認められたので、さらに5回反応を繰り返したところ、反応缶に付着した重合物のあつさは1〜2mmに達した。
【0023】
【発明の効果】従来の反応缶においては、240間程度稼働すると、重合物の除去作業の必要が生じたが、本発明の気相部をの缶壁を濡らすための装置を設置した反応缶で、100回反応を繰り返した後にも反応重合物は全く認められなかった。
特許出願人 新日本理化株式会社
【出願人】 【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
【出願日】 平成11年1月5日(1999.1.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−198750(P2000−198750A)
【公開日】 平成12年7月18日(2000.7.18)
【出願番号】 特願平11−617