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アルキニルメチル基で保護したカルボキシル基および水酸基の脱保護方法 - 特開2000−186050 | j-tokkyo
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【発明の名称】 アルキニルメチル基で保護したカルボキシル基および水酸基の脱保護方法
【発明者】 【氏名】楠本 正一

【氏名】深瀬 浩一

【要約】 【課題】選択的かつ効率的にカルボキシル基と水酸基を保護する。

【解決手段】アルキニルメチル基を、カルボキシル基あるいは水酸基に結合して保護する。一方、コバルトカルボニル錯体の存在下に、トリフルオロ酢酸を使用させることにより、カルボキシル基あるいは水酸基を遊離させることができる。具体的には下記の構造で表されるアルキニルメチルアルコールをカルボン酸2aまたはアルコール2bと反応させると、相当するアルキニルメチル誘導体3aまたは3bとなって、それぞれのカルボキシル基または水酸基が保護される。3a,3bはトリフルオロ酢酸(TFA)を始め種々の反応条件に安定であるが、コバルトカルボニル錯体の存在下にTFAを作用させると、迅速かつ効率よく脱保護され、元のカルボン酸2aまたはアルコール2bが再生される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルキニルメチル基をカルボキシル基あるいは水酸基に結合させることを特徴とするアルキニルメチル誘導体によるカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【請求項2】 アルキニルメチル基をカルボキシル基あるいは水酸基に結合させた後、金属または金属錯体の存在下で、強酸を作用させることにより、カルボキシル基あるいは水酸基を遊離させることを特徴とするアルキニルメチル誘導体によるカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【請求項3】 前記金属錯体がCo2 (CO)8 であり、前記強酸がトリフルオロ酢酸であることを特徴とする請求項2記載のアルキニルメチル誘導体によるカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【請求項4】 アルキンコバルト錯体の形成を介してカルボキシル基あるいは水酸基が遊離されることを特徴とする請求項3記載のカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【請求項5】 Co2 (CO)8 を、非プロトン性溶媒の溶液として使用することを特徴とする請求項3または4記載のカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【請求項6】 前記非プロトン性溶媒がCH2 Cl2 であることを特徴とする請求項5記載のカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【請求項7】 アルキニルメチル基がプロパルギル基であることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【請求項8】 プロパルギル基を、プロパルギルアルコールから得ることを特徴とする請求項7記載のカルボキシル基および水酸基の保護方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルキニルメチル誘導体によるカルボキシル基および水酸基の保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多数の水酸基やカルボキシル基を有する複雑な化合物を化学合成することは、それらの新たな機能の発見に極めて重要である。合成を進める上で、種々の化学変換や結合の形成反応を行う場合に、反応部位以外の水酸基やカルボキシル基は、その過程で変化しないように、適当な保護基によって「保護」しておく必要がある。しかし、その後の合成段階において、その中の特定の水酸基やカルボキシル基に結合を形成する必要が生じた場合には、それらに結合した保護基を選択的、効率的に除去して「脱保護」する必要がある。これらの保護、脱保護を自由に、選択的に行って、複雑な化合物を合成するには、独立に導入できて、必要に応じて温和な条件で互いに独立に除去できる多種類の保護基が必要である。しかしながら、この目的に適う十分な保護基は得られていない。
【0003】
【発明が解決しようする課題】そこで、本発明は、水酸基やカルボキシル基の新規な保護方法を提供し、これによって、従来は難しかった多くの水酸基やカルボキシル基を有する化合物の効率的な合成等を可能にすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、アルキニルメチル誘導体を使用することにより、以下の構成の本発明を完成した。
(1)アルキニルメチル基をカルボキシル基あるいは水酸基に結合させることにより、カルボキシル基あるいは水酸基を「保護」することを特徴とする。
(2)アルキニルメチル基をカルボキシル基あるいは水酸基に結合させて「保護」した後、Co2 (CO)8 等の金属錯体あるいは金属の存在下で、トリフルオロ酢酸等の強酸を作用させることにより、カルボキシル基あるいは水酸基を遊離させて「脱保護」することを特徴とする。
(3)「脱保護」に際して、Co2 (CO)8 を使用した場合には、アルキンコバルト錯体の形成を介してカルボキシル基あるいは水酸基が遊離されることを特徴とする。
(4)「脱保護」に際して、Co2 (CO)8 をCH2 Cl2 等の非プロトン性溶媒に溶解させて作用させることを特徴とする。
(5)「保護」に際して、アルキニルメチル基がプロパルギル基であると好ましい。
(6)上記の場合において、プロパルギルアルコールを作用させることにより、これに結合しているプロパルギル基を使用することを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。下記の構造1で表されるアルキニルメチルアルコールをカルボン酸2aまたはアルコール2bと反応させると、相当するアルキニルメチル誘導体3aまたは3bとなって、それぞれのカルボキシル基または水酸基が保護される。3a、3bはトリフルオロ酢酸(TFA)を始め種々の反応条件に安定であるが、コバルトカルボニル錯体の存在下にTFAを作用させると、迅速かつ効率よく脱保護され、元のカルボン酸2aまたはアルコール2bが再生される。
【0006】
【化1】

【0007】なお、化学式中、R、R1 、R2 は、特に制限されない。好ましくは、Rは、水素、アルキル基、フェニル基、トリメチルシリル基等である。また、許容されるアルキニルメチル基含有化合物を例示すると、塩化アルキニルメチルの他、アルキニルメチルアルコール等を挙げることができる。さらに、便宜上、2a、2bで示すカルボン酸、アルコールは一価としたが、一価に限られず、多価であってもよい。例えば、R1 およびR2 は、アルキル基等、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖、環式の炭化水素、およびこれらの誘導体を包含する。
【0008】また、アルキニルメチル基の導入は、常法により容易に行えるが、好ましくは、出発化合物をアルキニルメチルアルコールに溶かし、酸を作用させるか、出発化合物のカルボン酸を活性化した後、アルキニルメチルアルコールを作用させることで容易に行える。
【0009】さらに、アルキニルメチル基を脱離させて、遊離のカルボキシル基あるいは水酸基を得るには、CH2 Cl2 等の非プロトン性の溶媒に溶解したCo2 (CO)8 等の金属錯体あるいは金属の存在下で、TFA等の強酸を作用させるが、金属あるいは金属錯体としては、Co2 (CO)8 の他、酢酸亜鉛、酢酸銅亜鉛(共に、酢酸溶媒中で亜鉛あるいは銅亜鉛として存在)を使用でき、非プロトン性の溶媒としては、CH2 Cl2 の他、THF等も使用でき、強酸としては、TFAの他には、HCl、HBr、CF3 SO3 H等の強酸を使用できる。
【0010】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。実施例1において、プロパルギルアルコール3(310μl、5.32mmol)をDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)(1.43g、6.93mmol)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)(85.0mg、0.696mmol)、ジクロロメタン(15.0ml、234mmol)に溶解し、これを表1に示す出発化合物1(657mg、3.48mmol)に、氷冷下で混合し、窒素雰囲気下、氷冷下、2時間攪拌し、生成物4を100%の収率で得た。なお、生成物の精製は、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより行った。実施例2において、出発化合物2(5.26g、20mmol)をプロパルギルアルコール3(50ml、160mmol)に溶解し、これに酸として塩化トリメチルシリル(5.43g、100mmol)を加え、室温で5時間攪拌し、減圧濃縮した。残渣を塩化メチレンから再結晶して、生成物5を収率57%で得た。
【0011】実施例1の生成物4を出発化合物4として、実施例3において、表2記載の条件で反応させ、カルボキシル基を遊離させた。具体的には、次のとおりである。7%のTFAを含んだCH2 Cl2 中に出発化合物4(50.4mg、222μmol)を溶解し、これに窒素雰囲気下でCo2 (CO)8 (80.0mg、234μmol)を添加する。これを室温で30分間攪拌した後、NaHCO3 の飽和水溶液と酢酸エチルを添加した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4 上で乾燥し、真空中で濃縮し、生成物1(43.8mg、収率99%)を得た。ここで、TFAとCo2 (CO)8 の添加順序を逆にすると、副生成物を生じ、好ましくない。なお、開裂したアルキンコバルト錯体は真空排気によって除去した。
【0012】実施例4は、出発化合物5(0.26g、1mmol)を用いた他は、実施例3と同様にして、水酸基を遊離させた。一方、本発明にかかる保護状態において、両化合物4、5は、室温で48時間、単独のTFAに対して安定であった。また、他の保護基は、本発明にかかる保護、脱保護の条件下で、安定であった。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】このように、プロパルギル基は、カルボキシル基および水酸基の保護基として優れていることがかわる。なお、本発明の保護基により保護されている状態では、種々のルイス酸、m−クロロ過安息香酸による酸化反応、BH3 ・HNMe2 −BF3 −Et2 Oを用いる還元反応、HCl等に対して安定である。
【0016】
【発明の効果】従来から知られていたt−ブトキシカルボニル基等は、保護基として使用でき、TFAの作用で迅速かつ効率よく除去できるが、本発明のアルキルメチル基は、そのままではTFA等に対して安定で、酸性条件下での変換反応に対して、カルボキシル基や水酸基を保護することができるにもかかわらず、必要に応じてコバルトカルボニル錯体等を作用させれば、同じTFA等によって容易に除去して、カルボキシル基や水酸基を再生することができる。この保護基を使用することによって、糖質などの複雑な化合物の合成経路設計が大幅に自由になる。
【出願人】 【識別番号】391016945
【氏名又は名称】大阪大学長
【出願日】 平成10年12月22日(1998.12.22)
【代理人】 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
【公開番号】 特開2000−186050(P2000−186050A)
【公開日】 平成12年7月4日(2000.7.4)
【出願番号】 特願平10−364341