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【発明の名称】 アルキニルメチルオキシカルボニル基で保護したアミノ基および水酸基の脱保護方法
【発明者】 【氏名】楠本 正一

【氏名】深瀬 浩一

【要約】 【課題】選択的かつ効率的にアミノ基と水酸基を保護する。

【解決手段】アルキニルメチルオキシカルボニル基を、アミノ基あるいは水酸基に結合して保護する。一方、コバルトカルボニル錯体の存在下に、トリフルオロ酢酸を使用させることにより、アミノ基あるいは水酸基を遊離させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルキニルメチルオキシカルボニル基をアミノ基あるいは水酸基に結合させることを特徴とするアルキニルメチルオキシカルボニル誘導体によるアミノ基および水酸基の保護方法。
【請求項2】 アルキニルメチルオキシカルボニル基をアミノ基あるいは水酸基に結合させた後、金属または金属錯体の存在下で、強酸を作用させることにより、アミノ基あるいは水酸基を遊離させることを特徴とするアルキニルメチルオキシカルボニル誘導体によるアミノ基および水酸基の保護方法。
【請求項3】 前記金属錯体がCo2 (CO)8 であり、前記強酸がトリフルオロ酢酸であることを特徴とする請求項2記載のアルキニルメチルオキシカルボニル誘導体によるアミノ基および水酸基の保護方法。
【請求項4】 アルキンコバルト錯体の形成を介してアミノ基あるいは水酸基が遊離されることを特徴とする請求項3記載のアミノ基および水酸基の保護方法。
【請求項5】 Co2 (CO)8 を、非プロトン性溶媒の溶液として使用することを特徴とする請求項3または4記載のアミノ基および水酸基の保護方法。
【請求項6】 前記非プロトン性溶媒がCH2 Cl2 であることを特徴とする請求項5記載のアミノ基および水酸基の保護方法。
【請求項7】 アルキニルメチルオキシカルボニル基がプロパルギルオキシカルボニル基であることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のアミノ基および水酸基の保護方法。
【請求項8】 プロパルギルオキシカルボニル基を、クロロギ酸プロパルギルから得ることを特徴とする請求項7記載のアミノ基および水酸基の保護方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルキニルメチルオキシカルボニル誘導体によるアミノ基および水酸基の保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多数の水酸基やアミノ基を有する複雑な化合物を化学合成することは、それらの新たな機能の発見に極めて重要である。合成を進める上で、種々の化学変換や結合の形成反応を行う場合に、反応部位以外の水酸基やアミノ基は、その過程で変化しないように、適当な保護基によって「保護」しておく必要がある。しかし、その後の合成段階において、その中の特定の水酸基やアミノ基に結合を形成する必要が生じた場合には、それらに結合した保護基を選択的、効率的に除去して「脱保護」する必要がある。これらの保護、脱保護を自由に、選択的に行って、複雑な化合物を合成するには、独立に導入できて、必要に応じて温和な条件で互いに独立に除去できる多種類の保護基が必要である。しかしながら、この目的に適う十分な保護基は得られていない。
【0003】
【発明が解決しようする課題】そこで、本発明は、水酸基やアミノ基の新規な保護方法を提供し、これによって、従来は難しかった多くの水酸基やアミノ基を有する化合物の効率的な合成等を可能にすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、アルキニルメチルオキシカルボニル誘導体を使用することにより、以下の構成の本発明を完成した。
(1)アルキニルメチルオキシカルボニル基をアミノ基あるいは水酸基に結合させることにより、アミノ基あるいは水酸基を「保護」することを特徴とする。
(2)アルキニルメチルオキシカルボニル基をアミノ基あるいは水酸基に結合させて「保護」した後、Co2 (CO)8 等の金属錯体あるいは金属の存在下で、トリフルオロ酢酸等の強酸を作用させることにより、アミノ基あるいは水酸基を遊離させて「脱保護」することを特徴とする。
(3)「脱保護」に際して、Co2 (CO)8 を使用した場合には、アルキンコバルト錯体の形成を介してアミノ基あるいは水酸基が遊離されることを特徴とする。
(4)「脱保護」に際して、Co2 (CO)8 をCH2 Cl2 等の非プロトン性溶媒に溶解させて作用させることを特徴とする。
(5)「保護」に際して、アルキニルメチルオキシカルボニル基がプロパルギルオキシカルボニル基であると好ましい。
(6)上記の場合において、クロロギ酸プロパルギルを作用させることにより、これに結合しているプロパルギルオキシカルボニル基を使用することを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。下記の構造1で表されるクロロ炭酸アルキニルメチルをアルコール2aまたはアミン2bと反応させると、相当するアルキニルメチルオキシカルボニル誘導体3aまたは3bとなって、それぞれの水酸基またはアミノ基が保護される。3a、3bはトリフルオロ酢酸(TFA)を始め種々の反応条件に安定であるが、コバルトカルボニル錯体の存在下にTFAを作用させると、迅速かつ効率よく脱保護され、元のアルコール2aまたはアミン2bが再生される。
【0006】
【化1】

【0007】なお、化学式中、R、R1 、R2 、R3 は、特に制限されない。好ましくは、Rは、水素、アルキル基、フェニル基、トリメチルシリル基等である。また、許容されるアルキニルメチルオキシカルボニル基含有化合物を例示すると、クロロ炭酸アルキニルメチルの他、ブロモ炭酸アルキニルメチル、ジアルキニルメチルジカルボナート、スクシニミジルオキシ炭酸アルキニルメチル等を挙げることができる。さらに、便宜上、2aで示すアルコールは一価としたが、一価に限られず、多価アルコールであってもよく、アミン2bも第二級アミンに限られず、第一級アミンであっても、第三級アミンであってもよい。例えば、R1 は、糖誘導体、アルキル基等、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖、環式の炭化水素、およびこれらの誘導体を包含する。R2 およびR3 は、水素、アミノ酸誘導体、アルキル基等、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖、環式の炭化水素、およびこれらの誘導体を包含する。
【0008】また、アルキニルメチルオキシカルボニル基の導入は、常法により容易に行えるが、好ましくは、出発化合物およびピリジン等の塩基を溶媒に溶かし、クロロ炭酸アルキニルメチルを加えて反応させ、生成物を得る。
【0009】さらに、アルキニルメチルオキシカルボニル基を脱離させて、遊離のアミノ基あるいは水酸基を得るには、CH2 Cl2 等の非プロトン性の溶媒に溶解したCo2 (CO)8 等の金属錯体あるいは金属の存在下で、TFA等の強酸を作用させるが、金属あるいは金属錯体としては、Co2 (CO)8 の他、酢酸亜鉛、酢酸銅亜鉛(共に酢酸溶媒中で亜鉛あるいは亜鉛銅として存在)、等を使用でき、非プロトン性溶媒としては、CH2 Cl2 の他、THF等を使用でき、強酸としては、TFAの他には、HCl、HBr、CF3 SO3 H等を使用できる。
【0010】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。実施例1において、クロロギ酸プロパルギル4(176g(144 μl)、1.4847mmol)をピリジン(200μl、2.47mmol)、ジクロロメタン(3.0ml、46.8mmol)に溶かし、これを表1に示す出発化合物1(107mg、0.496mmol)に氷冷下加え、その後:窒素雰囲気下、室温で20分攪拌し、生成物5を100%の収率で得た。なお、生成物の精製は、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより行った。実施例2において、出発化合物2(127mg、0.386mmol)を用いた他は、実施例1と同様にして生成物6を得た。さらに、実施例3において、出発化合物3(165mg、0.342mmol)を用いた他は、実施例1と同様にして生成物7を得た。
【0011】クロロギ酸プロパルギルの調製の例乾燥CH2 Cl2 (100ml)中にトリフォスゲン(25.0g、84.2mmol)を溶解し、これに、プロパルギルアルコール(14.7ml、252mmol)と乾燥CH2 Cl2 (100ml)中にピリジン(20.4ml、252mmol)を溶解した溶液とを0℃、3時間で滴下する。これを一晩、室温で攪拌して混合し、これをシリカゲルのショートカラムに通して不溶物を除去した。減圧下でCH2 Cl2 を除去した後、蒸留より精製し、沸点58〜60℃の無色の液体(クロロギ酸プロパルギル)を得た。
【0012】実施例1の生成物5を出発化合物5として、実施例4において、表2記載の条件で反応させ、アミノ基を遊離させた。具体的には、次のとおりである。5%のTFAを含んだCH2 Cl2 中に出発化合物5(32.9mg、126μmol)を溶解し、これに窒素雰囲気下でCo2 (CO)8 (43.0mg、126μmol)を添加する。これを室温で30分間攪拌した後、NaHCO3 の飽和水溶液と酢酸エチルを添加した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4 上で乾燥し、真空中で濃縮し、生成物1(23.6mg、収率100%)を得た。ここで、TFAとCo2 (CO)8 添加順序を逆にすると、副生成物を生じ、好ましくない。なお、開裂したアルキンコバルト錯体は真空排気によって除去した。
【0013】実施例5は、出発化合物8(23.3mg、31.2μmol)を用いた他は、実施例4と同様にして、水酸基を遊離させた。一方、本発明にかかる保護状態において、両化合物5、8は、室温で48時間、単独のTFAに対して安定であった。また、他の保護基は、本発明にかかる保護、脱保護の条件下で、安定であった。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

このように、プロパルギルオキシカルボニル基は、アミノ基および水酸基の保護基として優れていることがかわる。なお、本発明の保護基が結合して保護している状態では、種々のルイス酸、m−クロロ過安息香酸による酸化反応、BH3 ・HNMe2 −BF3 −Et2 Oを用いる還元反応、HCl等に対して安定である。
【0016】
【発明の効果】従来から知られていたt−ブトキシカルボニル基等は、保護基として使用でき、TFAの作用で迅速かつ効率よく除去できるが、本発明のアルキルメチルオキシカルボニル基は、そのままではTFA等に対して安定で、酸性条件下での変換反応に対して、水酸基やアミノ基を保護することができるにもかかわらず、必要に応じてコバルトカルボニル等を作用させれば、同じTFA等によって容易に除去して、水酸基やアミノ基を再生することができる。この保護基を使用することによって、糖質などの複雑な化合物の合成経路設計が大幅に自由になる。
【出願人】 【識別番号】391016945
【氏名又は名称】大阪大学長
【出願日】 平成10年12月22日(1998.12.22)
【代理人】 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
【公開番号】 特開2000−186049(P2000−186049A)
【公開日】 平成12年7月4日(2000.7.4)
【出願番号】 特願平10−364340