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【発明の名称】 分子の反応特性予測方法
【発明者】 【氏名】佐 藤 寛 子

【氏名】船 津 公 人

【氏名】中 田 忠

【氏名】鷹 野 景 子

【要約】 【課題】母核を共通にする制限を受けることなく種々の分子の間で反応特性の類比の有無を高い精度で予測可能な分子の反応特性予測方法を提供する。

【解決手段】分子の空間的大きさを反映するように分子包囲面(20)を設定し、分子包囲面で囲われた分子包囲空間を分子の反応特性を特徴づける複数の構成要素空間(22)に分割し、分子包囲面上にあるフロンティア包囲面(5)上にプローブ点を設け、各々の構成要素空間毎に空間占有度を求め、フロンティア包囲面上の各々のプローブ点毎に静電エネルギーを求めフロンティア包囲面上の和を構成要素空間の静電的因子として求め、各々のプローブ点毎にファンデルワールズエネルギーを求めフロンティア包囲面上の和を構成要素空間の立体的因子として求め、空間占有度と静電的因子と立体的因子とを相当する構成要素空間の反応特性値とし、各々の構成要素空間毎の前記反応特性値を指針として分子の反応特性を予測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】分子の反応特性を予測する分子の反応特性予測方法であって、分子の空間的大きさを反映するように分子包囲面を設定し、前記分子包囲面で囲われた空間を分子包囲空間とし、所定の空間分割手順に従って、前記分子包囲空間を分子の反応特性を特徴づける複数の構成要素空間に分割し、前記構成要素空間を囲う輪郭面を構成要素包囲面とし、各々の前記構成要素包囲面のうち前記分子包囲面上にある部分を各々の前記構成要素空間のフロンティア包囲面とし、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上に所定均等間隔毎にプローブ点を設け、各々の前記構成要素空間毎に、前記分子包囲空間を占有する度合いを各々の前記構成要素空間の空間占有度として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した単位電荷と前記分子を構成する全ての原子の電荷との間の静電エネルギーを求め、前記静電エネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の静電的因子として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した所定の立体特性を有するプローブ原子と前記分子を構成する全ての原子との間のファンデルワールズエネルギーを求め、前記ファンデルワールズエネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の立体的因子として求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子とを相当する前記構成要素空間の反応特性値とし、各々の前記構成要素空間毎の前記反応特性値を指針として分子の反応特性を予測することを特徴とする分子の反応特性予測方法。
【請求項2】前記分子包囲面は、分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め複数の前記原子球面によって構成される最外郭包絡面であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項3】各々の前記構成要素空間は、分子を構成する複数の原子の各々の原子を囲う空間であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項4】分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め、前記原子球面のうち他の原子の原子球面と交叉する部分をインテリア球面とし、前記原子球面のうち前記インテリア球面を除く部分をフロンティア球面とし、前記構成要素空間は、前記インテリア球面を切り取る面と前記フロンティア球面とによって囲われた空間であることを特徴とする請求項3に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項5】分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め、前記原子球面のうち他の原子の原子球面と交叉する部分をインテリア球面とし、前記原子球面のうち前記インテリア球面を除く部分をフロンティア球面とし、前記フロンティア包囲面は、前記フロンティア球面であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項6】分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め、前記原子球面は、各々の原子のファンデルワールズ半径または各々の原子のファンデルワールズ半径に所定厚さを共通に加算した径を球面半径とする球面であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項7】前記分子包囲面は、前記分子のフロンティア分子軌道によって形成される空間を囲う包囲面であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項8】前記所定の空間分割手順は分子を構成する原子の中心を母点とし前記分子包囲空間をボロノイ分割することであり、前記構成要素空間は前記ボロノイ分割によって形成されるボロノイ領域であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項9】前記空間占有率は、前記構成要素空間の体積であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項10】前記空間占有率は、前記フロンティア包囲面上に存在する前記プローブ点の個数であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項11】前記空間占有率は、前記フロンティア包囲面の面積であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項12】前記静電的因子は、相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の前記静電エネルギーの前記和を対応する前記空間占有度によって除算し規格化されており、前記立体的因子は、相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の前記ファンデルワールズエネルギーの前記和を対応する前記空間占有度によって除算し規格化されていることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項13】前記プローブ原子は、sp3炭素、sp2炭素あるいはsp炭素であることを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項14】反応特性の予測対象とする複数の分子に対して、それらの分子の前記分子包囲空間を構成する前記構成要素空間について前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子を求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子から一組の入力データを構成して、前記複数の分子を構成する複数の前記構成要素空間に対応して複数組の前記入力データを生成し、生成した複数組の前記入力データを自己組織化ニューラルネットワークの手法に従って処理し、処理した結果を前記複数の分子の反応特性を示す反応特性予測用マップに表示することを特徴とする請求項1に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項15】反応特性の予測対象とする複数の分子に対して、それらの分子を構成する原子について前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子を求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子から一組の入力データを構成して、前記複数の分子を構成する複数の原子に対応して複数組の前記入力データを生成し、生成した複数組の前記入力データを自己組織化ニューラルネットワークの手法に従って処理し、処理した結果を前記複数の分子の反応特性を示す反応特性予測用マップに表示することを特徴とする請求項14に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項16】前記自己組織化ニューラルネットワークはコホーネンニューラルネットワークであり、前記反応特性予測用マップはコホーネンマップであることを特徴とする請求項14に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項17】前記コホーネンマップは、平面状に表示されていることを特徴とする請求項16に記載の分子の反応特性予測方法。
【請求項18】分子を構成する原子毎にその原子を包囲する原子球面を描き、前記原子球面のうち他の原子の原子球面と交叉する部分をインテリア球面とし、前記原子球面のうち前記インテリア球面を除く部分をフロンティア球面とし、前記原子球面上に所定均等間隔毎にプローブ点を設け、各々の原子毎に、空間を占有する度合いを相当する原子の空間占有度として求め、各々の原子の前記フロンティア球面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した単位電荷と前記分子を構成する全ての原子の電荷との間の静電エネルギーを求め、前記静電エネルギーの相当する原子の前記フロンティア球面上の和を相当する原子の静電的因子として求め、各々の原子の前記フロンティア球面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した所定の立体特性を有するプローブ原子と前記分子を構成する全ての原子との間のファンデルワールズエネルギーを求め、前記ファンデルワールズエネルギーの相当する原子の前記フロンティア球面上の和を相当する原子の立体的因子として求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子とを相当する原子の反応特性値とし、各々の原子毎の前記反応特性値を指針として分子の反応特性を予測することを特徴とする分子の反応特性予測方法。
【請求項19】分子の反応特性を予測するために使用する反応特性予測用マップであり、請求項1に記載の方法によって、反応特性の予測対象とする複数の分子に対して、それらの分子の前記分子包囲空間を構成する前記構成要素空間について前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子を求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子から一組の入力データを構成して、前記複数の分子を構成する複数の前記構成要素空間に対応して複数組の前記入力データを生成し、生成した複数組の前記入力データを自己組織化ニューラルネットワークの手法に従って処理し、処理した結果を前記複数の分子の反応特性を示すように表示することを特徴とする反応特性予測用マップ。
【請求項20】分子の反応特性を予測するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、分子の空間的大きさを反映するように分子包囲面を設定し、前記分子包囲面で囲われた空間を分子包囲空間とし、所定の空間分割手順に従って、前記分子包囲空間を分子の反応特性を特徴づける複数の構成要素空間に分割し、前記構成要素空間を囲う輪郭面を構成要素包囲面とし、各々の前記構成要素包囲面のうち前記分子包囲面上にある部分を各々の前記構成要素空間のフロンティア包囲面とし、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上に所定均等間隔毎にプローブ点を設け、各々の前記構成要素空間毎に、前記分子包囲空間を占有する度合いを各々の前記構成要素空間の空間占有度として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した単位電荷と前記分子を構成する全ての原子の電荷との間の静電エネルギーを求め、前記静電エネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の静電的因子として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した所定の立体特性を有するプローブ原子と前記分子を構成する全ての原子との間のファンデルワールズエネルギーを求め、前記ファンデルワールズエネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の立体的因子として求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子とを相当する前記構成要素空間の反応特性値とし、各々の前記構成要素空間毎の前記反応特性値を指針として分子の反応特性を予測することを特徴とするプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分子の反応特性予測方法に係り、特に、複数の分子の間の分子の反応特性の相関特性を予測する分子の反応特性予測方法、反応特性予測用マップ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】薬物開発においては、活性予測と薬物設計が行われ、薬物と受容体の構造や両者間の相互作用等と、薬物が生体に及ぼす薬理活性との間の相関が調べられ、設計上の薬物が所望の活性を有するかが予測され、薬物の設計が行われる。
【0003】また、合成化学の分野においては、反応性の予測と合成設計が行われ、反応物の構造や反応物間の相互作用等と、反応性との間の相関が調べられ、想定している反応生成物が十分の量で得られるかが予測され、最適な合成経路の設計が行われる。
【0004】薬物開発の分野においては、従来、反応体分子の反応特性を予測する方法として、CoMFA法(Coparative molecular field analysis )が知られている(例えば、R.D.III Cramer等,J.Am.Chem.Soc.,1988,110,5959 )。
【0005】CoMFA法においては、CoMFAフィールドを発生させて化学構造の3次元表現を行うことが行われる。CoMFAフィールドは、反応特性を予測しようとする分子を囲う例えば直方体状の領域を形成し、その囲う領域に格子状に分布する格子点をプローブ点として考え、そのプローブ点毎にプローブ原子を置いて、それらのプローブ原子と分子を構成する置換基等の構成部分との相互作用のエネルギーを計算することによって求められる。
【0006】CoMFA法においては、反応特性を予測しようとする分子の主要部を占める部分を共通部分である母核とし、母核を互いに共通にする分子について置換部分を種々の置換基等で置換し、得られるCoMFAフィールドの相関特性から、母核を互いに共通にする分子の間で相互の反応特性の類比の有無が判断される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、CoMFA法においては、母核を共通にすることを前提とし、ある分子の反応特性を予測しようとする場合にその分子と母核を共通にする分子との間でのみ相互の反応特性の類比の有無が判断される。
【0008】このため、分子の大きさが大きく異なったりして母核を共通にしない分子の間では、相互の反応特性の類比の有無を判断することができなかった。
【0009】また、CoMFA法においては、反応特性を予測しようとする分子を構成する細かいサイトに分解してサイト毎に特性値を求めるのではなく、分子全体として一つのCoMFAフィールドを求めているため、分子を構成するサイトの各々がどのように反応に寄与しているのかについては不知であり、分子の反応特性を高精度に予測し考察することができなかった。
【0010】また、CoMFA法においては、重ね合わせた薬物分子を取り囲む直方体は対象とする薬物分子群のサイズにより異なるものであるため、得られる特性値が対象とする分子群に依存するという限界がある。
【0011】また、CoMFA法は薬物開発における活性予測と薬物設計に適用されるものであり、合成化学の分野における反応性の予測と合成設計にはCoMFA法を適用することができない。合成化学の分野における反応性の予測と合成設計に対し指針となるとともに、薬物開発における活性予測と薬物設計においても指針となる反応特性予測方法は、未だ存在しないというべきである。
【0012】そこで、本発明の目的は上記従来技術の有する問題を解消し、合成化学の分野をはじめ薬物開発の分野を含む広い化学分野で適用可能であり、母核を共通にする制限を受けることなく種々の分子の間で反応特性の類比の有無を高い精度で予測可能な分子の反応特性予測方法、反応特性予測用マップ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る分子の反応特性予測方法は、分子の反応特性を予測する分子の反応特性予測方法であって、分子の空間的大きさを反映するように分子包囲面を設定し、前記分子包囲面で囲われた空間を分子包囲空間とし、所定の空間分割手順に従って、前記分子包囲空間を分子の反応特性を特徴づける複数の構成要素空間に分割し、前記構成要素空間を囲う輪郭面を構成要素包囲面とし、各々の前記構成要素包囲面のうち前記分子包囲面上にある部分を各々の前記構成要素空間のフロンティア包囲面とし、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上に所定均等間隔毎にプローブ点を設け、各々の前記構成要素空間毎に、前記分子包囲空間を占有する度合いを各々の前記構成要素空間の空間占有度として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した単位電荷と前記分子を構成する全ての原子の電荷との間の静電エネルギーを求め、前記静電エネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の静電的因子として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した所定の立体特性を有するプローブ原子と前記分子を構成する全ての原子との間のファンデルワールズエネルギーを求め、前記ファンデルワールズエネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の立体的因子として求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子とを相当する前記構成要素空間の反応特性値とし、各々の前記構成要素空間毎の前記反応特性値を指針として分子の反応特性を予測することを特徴とする。
【0014】ここで、前記分子包囲面は、分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め複数の前記原子球面によって構成される最外郭包絡面であることを特徴とする。
【0015】また、各々の前記構成要素空間は、分子を構成する複数の原子の各々の原子を囲う空間であることを特徴とする。
【0016】また、分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め、前記原子球面のうち他の原子の原子球面と交叉する部分をインテリア球面とし、前記原子球面のうち前記インテリア球面を除く部分をフロンティア球面とし、前記構成要素空間は、前記インテリア球面を切り取る面と前記フロンティア球面とによって囲われた空間であることを特徴とする。
【0017】また、分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め、前記原子球面のうち他の原子の原子球面と交叉する部分をインテリア球面とし、前記原子球面のうち前記インテリア球面を除く部分をフロンティア球面とし、前記フロンティア包囲面は、前記フロンティア球面であることを特徴とする。
【0018】また、分子を構成する複数の原子の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面を求め、前記原子球面は、各々の原子のファンデルワールズ半径または各々の原子のファンデルワールズ半径に所定厚さを共通に加算した径を球面半径とする球面であることを特徴とする。
【0019】また、前記分子包囲面は、前記分子のフロンティア分子軌道によって形成される空間を囲う包囲面であることを特徴とする。
【0020】また、前記所定の空間分割手順は分子を構成する原子の中心を母点とし前記分子包囲空間をボロノイ分割することであり、前記構成要素空間は前記ボロノイ分割によって形成されるボロノイ領域であることを特徴とする。
【0021】また、前記空間占有率は、前記構成要素空間の体積であることを特徴とする。また、前記空間占有率は、前記フロンティア包囲面上に存在する前記プローブ点の個数であることを特徴とする。
【0022】また、前記空間占有率は、前記フロンティア包囲面の面積であることを特徴とする。
【0023】また、前記静電的因子は、相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の前記静電エネルギーの前記和を対応する前記空間占有度によって除算し規格化されており、前記立体的因子は、相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の前記ファンデルワールズエネルギーの前記和を対応する前記空間占有度によって除算し規格化されていることを特徴とする。
【0024】また、前記プローブ原子は、sp3炭素、sp2炭素あるいはsp炭素であることを特徴とする。
【0025】また、反応特性の予測対象とする複数の分子に対して、それらの分子の前記分子包囲空間を構成する前記構成要素空間について前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子を求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子から一組の入力データを構成して、前記複数の分子を構成する複数の前記構成要素空間に対応して複数組の前記入力データを生成し、生成した複数組の前記入力データを自己組織化ニューラルネットワークの手法に従って処理し、処理した結果を前記複数の分子の反応特性を示す反応特性予測用マップに表示することを特徴とする。
【0026】また、反応特性の予測対象とする複数の分子に対して、それらの分子を構成する原子について前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子を求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子から一組の入力データを構成して、前記複数の分子を構成する複数の原子に対応して複数組の前記入力データを生成し、生成した複数組の前記入力データを自己組織化ニューラルネットワークの手法に従って処理し、処理した結果を前記複数の分子の反応特性を示す反応特性予測用マップに表示する。
【0027】また、前記自己組織化ニューラルネットワークはコホーネンニューラルネットワークであり、前記反応特性予測用マップはコホーネンマップであることを特徴とする。
【0028】また、前記コホーネンマップは、平面状に表示されていることを特徴とする。さらに、本発明に係る分子の反応特性予測方法は、分子を構成する原子毎にその原子を包囲する原子球面を描き、前記原子球面のうち他の原子の原子球面と交叉する部分をインテリア球面とし、前記原子球面のうち前記インテリア球面を除く部分をフロンティア球面とし、前記原子球面上に所定均等間隔毎にプローブ点を設け、各々の原子毎に、空間を占有する度合いを相当する原子の空間占有度として求め、各々の原子の前記フロンティア球面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した単位電荷と前記分子を構成する全ての原子の電荷との間の静電エネルギーを求め、前記静電エネルギーの相当する原子の前記フロンティア球面上の和を相当する原子の静電的因子として求め、各々の原子の前記フロンティア球面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した所定の立体特性を有するプローブ原子と前記分子を構成する全ての原子との間のファンデルワールズエネルギーを求め、前記ファンデルワールズエネルギーの相当する原子の前記フロンティア球面上の和を相当する原子の立体的因子として求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子とを相当する原子の反応特性値とし、各々の原子毎の前記反応特性値を指針として分子の反応特性を予測することを特徴とする。
【0029】さらに、本発明に係る反応特性予測用マップは、分子の反応特性を予測するために使用する反応特性予測用マップであり、請求項1に記載の方法によって、反応特性の予測対象とする複数の分子に対して、それらの分子の前記分子包囲空間を構成する前記構成要素空間について前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子を求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子から一組の入力データを構成して、前記複数の分子を構成する複数の前記構成要素空間に対応して複数組の前記入力データを生成し、生成した複数組の前記入力データを自己組織化ニューラルネットワークの手法に従って処理し、処理した結果を前記複数の分子の反応特性を示すように表示することを特徴とする。 さらに、本発明に係る記録媒体は、分子の反応特性を予測するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、分子の空間的大きさを反映するように分子包囲面を設定し、前記分子包囲面で囲われた空間を分子包囲空間とし、所定の空間分割手順に従って、前記分子包囲空間を分子の反応特性を特徴づける複数の構成要素空間に分割し、前記構成要素空間を囲う輪郭面を構成要素包囲面とし、各々の前記構成要素包囲面のうち前記分子包囲面上にある部分を各々の前記構成要素空間のフロンティア包囲面とし、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上に所定均等間隔毎にプローブ点を設け、各々の前記構成要素空間毎に、前記分子包囲空間を占有する度合いを各々の前記構成要素空間の空間占有度として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した単位電荷と前記分子を構成する全ての原子の電荷との間の静電エネルギーを求め、前記静電エネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の静電的因子として求め、各々の前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の各々の前記プローブ点毎に、前記プローブ点に設定した所定の立体特性を有するプローブ原子と前記分子を構成する全ての原子との間のファンデルワールズエネルギーを求め、前記ファンデルワールズエネルギーの相当する前記構成要素空間の前記フロンティア包囲面上の和を相当する前記構成要素空間の立体的因子として求め、前記空間占有度と前記静電的因子と前記立体的因子とを相当する前記構成要素空間の反応特性値とし、各々の前記構成要素空間毎の前記反応特性値を指針として分子の反応特性を予測することを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照して、本発明に係る分子の反応特性予測方法の実施の形態について説明する。本発明に係る分子の反応特性予測方法は、分子を取り囲む3次元的な場の電子的・立体的特徴を数値的に特性化する新しい手法でありFRAU(Field-characterization for reaction analysis and understanding)と命名されるものである。
【0031】FRAUにおいては、まず、分子の空間的大きさを反映するように分子包囲面20(図1(e)参照)を設定する。この分子包囲面20は、例えば、いわゆる分子のフロンティア分子軌道によって形成される分子包囲空間を囲う包囲面として設定することも可能であり、あるいは、以後に詳述するように、分子包囲面20を複数の原子球面4によって構成される最外郭包絡面とすることも可能である。
【0032】前記分子包囲面20で囲われた空間を分子包囲空間21(図1(e)参照)を所定の空間分割手順に従って、複数の構成要素空間22(図1(e)参照)に分割する。前記構成要素空間22は分子の反応特性を特徴づける空間単位である。前記分構成要素空間を囲う輪郭面を構成要素包囲面23とし、各々の前記構成要素包囲面23のうち前記分子包囲面上にある部分を各々の前記構成要素空間のフロンティア包囲面5(図1(d)参照)とする。
【0033】以下では、前記分子包囲面20が分子を構成する複数の原子の原子球面4によって構成される最外郭包絡面である場合を例にとり、また、フロンティア包囲面20としてフロンティア球面を採用した場合を例にとり、また、空間占有度としてフロンティア球面上に存在するプローブ点の個数を採用した場合を例にとり、本発明の実施の形態を説明する。
【0034】まず、図1(a),(b),(c),(d),(e)を参照して、分子を取り囲む場を特性値化する手順について説明する。
【0035】図1(a)に示すように、反応予測の対象である分子1は模式的に複数の原子2a,2b,2c・・が格子で結合されて構成されている。
【0036】図1(b)において、符号3は原子2aの原子中心を中心とし例えば1乃至2オングストロームのファンデルワールズ半径を半径とするファンデルワールズ半径球面を示し、同様に分子1を構成する他の原子に対してもファンデルワールズ半径球面が示されている。
【0037】本発明に係るFRAUにおいては、図1(b)に示すように、原子2aの原子中心を中心としファンデルワールズ半径以上の径を半径とする原子球面4がまず描かれる。原子球面4の半径は、各々の原子のファンデルワールズ半径そのものあるいは、各々の原子のファンデルワールズ半径に所定厚み例えば0.1オングストロームだけ共通に加算された半径である。分子1を構成する全ての原子2a,2b,2c・・について原子球面4が描かれる。
【0038】図1(c),(d)に示すように、各々の原子の原子球面4のうち他の原子の原子球面と交叉する部分をインテリア球面6とし、原子球面4のうちインテリア球面6を除く部分をフロンティア球面5とする。図1(d)に、原子2aのフロンティア球面5とインテリア球面6とを分子1から抽出して示す。フロンティア球面5は外方に対し露出した部分であり、化学反応に主として関与する領域として想定することができる。
【0039】また、前記構成要素空間は、インテリア球面6を切り取る面とフロンティア球面5とによって囲われた空間に相当する。
【0040】次に、図1(e)に示すように、原子球面4上に所定均等間隔毎にプローブ点7を設定する。プローブ点7は、その位置において分子1の特性を診断する点である。
【0041】FRAUにおいては、分子1の電子的・立体的特徴を数値的に特性化するために3種類の特性因子を演算することが行われる。3種類の特性因子は、空間占有度(FFfield )と静電的因子(FFelectro )と立体的因子(FFsteric)であり、これらはFRAU特性(FF)と呼ばれる。FRAU特性(FF)は、分子1を構成する各々の原子2a,2b,2c・・について演算される。
【0042】空間占有度(FFfield )は、各々の原子2a,2b,2c・・のフロンティア球面5上に存在するプローブ点7の個数として与えられる。空間占有度(FFfield )が大きいということは、分子1の全体の反応特性の中における相当する原子の特性が占める割合が大きいことを示す。
【0043】静電的因子(FFelectro )は、各々の原子のフロンティア球面5上の各々のプローブ点7毎に、プローブ点7に設定した単位電荷と分子1を構成する全ての原子2a,2b,2c・・の電荷との間の静電エネルギーを求め、この静電エネルギーを相当する原子のフロンティア球面5上のプローブ点7について加算して与えられ、式(1)によって示される。
【0044】
【数1】

式(1)において、natomは分子1を構成する原子の個数を示し、charge(j)は各々の原子の電荷を示し、FFfield は前述の空間占有度を示す。静電的因子(FFelectro )が大きいということは、例えば正電荷を有する反応相手が接近しにくいことを示す。
【0045】立体的因子(FFsteric)は、各々の原子のフロンティア球面5上の各々のプローブ点7毎に、プローブ点7に設定した所定の立体特性を有するプローブ原子と分子を構成する全ての原子との間のファンデルワールズエネルギーを求め、このファンデルワールズエネルギーの相当する原子のフロンティア球面4上の和として与えられる。立体的因子(FFsteric)は、分子力場MMЗの中のファンデルワールズエネルギーを計算するための数学的手法を用いて演算され、式(2)によって示される。
【0046】
【数2】

プローブ原子としては、例えば、sp3 炭素、sp2 炭素、またはsp炭素を用いることが好適であり、式(2)においては、プローブ原子としてsp3 炭素を用いている。式(2)において、εは原子の硬さを表すMMЗのパラメータを示し、ri(またはrj)はMMЗにおいて定義されたファンデルワールズ半径を示し、rij は相当する原子のフロンティア球面5上のi番目のプローブ点とj番目の原子との間の距離を示す。立体的因子(FFsteric)が大きいということは、立体的反発が大きいため反応相手が近づきにくいことを示す。
【0047】なお、上述の説明において、空間占有度(FFfield )として、各々の原子2a,2b,2c・・のフロンティア球面5上に存在するプローブ点7の個数を採用した例であったが、空間占有度(FFfield )として、各々の原子2a,2b,2c・・のフロンティア球面5の面積を採用することも可能である。空間占有度(FFfield )としてフロンティア球面5の面積を採用することは、フロンティア球面5の面積が解析的に求められる場合に有用である。
【0048】また、上述の説明においては、分子の空間的大きさを反映するように分子包囲面20をまず設定することを前提とするとし、そして、この分子包囲面20として、複数の原子球面4によって構成される最外郭包絡面を採用する場合を説明した。しかしながら、当初から分子包囲面を設定することを前提とすることなく、分子1を構成する複数の原子2a,2b,2c・・の各々の原子毎に原子の中心を球面中心として原子球面4を求め、分子包囲面は、複数の原子球面4によって構成される最外郭包絡面として結果的に得られるものであると考えることも可能である。
【0049】また、上述の説明では、複数の原子球面4を求めて前記分子包囲空間21を複数の構成要素空間23に分割する場合を例にとったが、前記分子包囲空間21を複数の構成要素空間23に空間分割する手順としてはこれに限らない。
【0050】例えば、前記分子包囲面20を複数の構成要素空間にボロノイ分割することも可能である。この場合、構成要素空間22として、ボロノイ分割によって得られるボロノイ領域とする。このために、まず、例えば、分子のフロンティア分子軌道によって分子包囲面20を設定する。次に、ボロノイ図の手法(例えば、ACMConputing Surveys,vol.23,no.3(1991), pp.345-405.(邦訳:杉原厚吉訳、Voronoi図−一つの基本的な幾何データ構造に関する概論,bit 1993年9月号別冊、コンピュータ・サイエンス、共立出版、東京、1993、pp.131−185)を参照)に従い、分子1を構成する原子2a,2b,2c・・の中心を母点とし前記分子包囲面20で囲まれた分子包囲空間21をボロノイ分割し、原子毎に得られるボロノイ領域を得る。得られたボロノイ領域の輪郭面は、前記分子包囲面20上にあるフロンテイア包囲面と、隣接するボロノイ領域の境界面とから構成されることになる。
【0051】前記構成要素空間22としてボロノイ領域を採用する場合、分子1を構成する原子2a,2b,2c・・の大きさの違いを反映させるために、各原子のファンデルワールズ半径の比に基づき重み付けをし、ボロノイ分割して求めたボロノイ領域を補正して用いることが有用である。
【0052】また、前記構成要素空間22としてボロノイ領域を採用した場合に、空間占有度(FFfield )として、ボロノイ領域の体積に関する量を採用することが有用である。
【0053】上述のように、前記構成要素空間22としてボロノイ領域を採用することにより次のような効果を奏することができる。すなわち、本願発明の分子の反応特性予測方法を適用する目的に応じて、その目的に好適な分子包囲空間を選択することが可能になる。例えば、官能基の特性を反映させて官能基毎に構成要素空間を設定することも可能になる。
【0054】次に、図2乃至図4を参照して、FRAUの適用例を以下に説明する。
【0055】分子の反応特性の類比の有無を表す識別子としてFRAU特性(FF)がいかに有効であるかが以下に立証される。
【0056】図3及び図4に示すように、主にMg原子またはB原子を含む42種類の金属試薬を例にとる。各々の金属試薬はそれなりの機能を有しているので、FRAUの有効性を検証する上で適している。
【0057】図3及び図4には、記号”a”、”b”・・・”e”、”f”、”g”で表示された単位方形によって、特性が類似する金属試薬が分類されている。
【0058】図3及び図4に示す金属試薬において、Mg原子、B原子、水素原子、炭素原子等について、計152個の原子の各々についてFRAU特性(FF)を求める。
【0059】そのために、まず、上述の金属試薬の幾何学的及び電子的な構造をab initioRHF/3-21G**の分子軌道(MO)計算によって最適化した。次に、金属試薬の各々の原子のFRAU特性(FF)を、上述した最適化された幾何学的構造と原子の電荷とを用いて演算した。半径がファンデルワールズ半径である原子球面4を採用し、プローブ点7に+1の単位電荷を置き、静電的因子(FFelectro )を求めた。プローブ原子としてsp3炭素を用い、立体的因子(FFsteric)を求めた。金属試薬の各々の原子のFRAU特性(FF)としては、図3及び図4に示す金属試薬のマグネシウム(Mg)原子、水素原子、炭素原子について、計152個の原子のFRAU特性(FF)を求めた。
【0060】さらに、識別子としてのFRAU特性(FF)を用いて、上述の金属試薬の集合は、自己組織化ニューラルネットワークの一つであるコホーネンニューラルネットワーク(Kohonen neural network)(T.Kohonen,Biol.Cybern. 1982,43,59.を参照)の手法を用いて解析された。
【0061】コホーネンニューラルネットワーク(Kohonen neural network)は、多次元空間における入力データを、入力データの間のトポロジー的関係を保持してコホーネンマップ(Kohonen map )に射映する。コホーネンマップにおけるデータを分類したグループの間の境界は、例えば、U- マトリックス(A.Ultsch等, Proc.Transputer Anvender Treffen/World Transputer Congress TAT/WTC 93 Aachen,Springer-Verlag, New York, 1993, pp. 194-203.を参照)によって認識される。
【0062】図2に、反応特性予測用マップとして得られたコホーネンマップ(Kohonen map )10を示す。コホーネンマップ10において、各々の小さい単位方形はニューロンを示す。ニューロンの個数は、図3及び図4に示す金属試薬におけるMg原子、B原子、水素原子、炭素原子等の対象とする原子の個数152を含むように、18×18個のニューロンが設けられている。
【0063】3種類のFRAU特性(FF)である空間占有度(FFfield )と静電的因子(FFelectro )と立体的因子(FFsteric)によって、それらの値に対応する一つの3次元ベクトルが構成される。3種類のFRAU特性(FF)から構成された一つの3次元ベクトルが、コホーネンマップ10に対する一つの入力データとなる。ここでは、152個の入力データが存在する。
【0064】次に、コホーネンマップ10の作成過程を説明する。
【0065】コホーネンマップ10の各々のニューロンに152個の入力データを次のようにして植え付ける。
【0066】まず、初期状態においては、コホーネンマップ10には、各々のニューロンに種々の大きさと方向を有するベクトルが予めランダムに分配されている。次に、初期状態にあるコホーネンマップ10を、入力データの3次元ベクトル分布を反映するように入力データの3次元ベクトルでトレーニングする。このトレーニングは、入力データの3次元ベクトルともっとも近いユークリッド距離をもつニューロンとその近傍ニューロンのベクトルを、その入力データの3次元ベクトルの大きさと向きに沿うように所定の手法によって修正する操作を、全入力データについて所定の回数実行することによって達成される。最後に、このようにしてトレーニングされたコホーネンマップ上のニューロンのベクトルと、最も近いユークリッド距離を持つ入力データが、そのニューロン上に割り付けられる。このようにして全ての入力データ(152個)が割り付けられ、図2に示すコホーネンマップ10が得られる。
【0067】図2に示すコホーネンマップ10は、実際はトーラス形状を有し、最上の線10aと最低の10bとは同一の線を示し、左側の線10cと右側の10dとは同一の線を示す。
【0068】図2に示すコホーネンマップ10において、記号”a”、”b”・・・”e”、”f”、”g”で表示された単位方形は、図3及び図4に示す同一の分類記号で示す金属試薬に対応する。
【0069】以下には、簡単のために、152個の入力データの内の一部のデータに着目し、説明する。
【0070】コホーネンマップ10では原子の種類の違いでグループを形成して分布した。コホーネンマップ10には図3及び図4に示す金属試薬のマグネシウム(Mg)原子、水素原子、炭素原子の分布の様子を示してある。
【0071】図2において、水素(H)原子の分布を詳しく見ると、それぞれ結合している金属原子の違いでグループを形成していることがわかる。すなわち、マグネシウム(Mg)原子に結合している水素原子(図3における“a”)とホウ素(B)原子に結合している水素原子(図3における“b”)とでそれぞれグループを形成している。
【0072】炭素(C)原子の分布を詳しく見ると、それぞれ結合している金属原子の違いでグループを形成していることがわかる。すなわち、マグネシウム(Mg)原子に結合している炭素原子(図3における“c”)とホウ素(B)に結合している炭素原子(図3における“d”)とでそれぞれグループを形成している。
【0073】マグネシウム(Mg)原子の分布を詳しく見ると、反応における役割ごとにグループを形成していることがわかる(前述のとおり、コホーネンマップ10の実際の形状はトーラス型であるので、上下、左右は連結している)。すなわち、それぞれ還元剤(図3における“e”)、Grignard試薬(図3における“f”)、塩基(図3における“g”)とでグループを形成している。さらに、Grignard試薬グループと塩基グループ同士はGrignard試薬グループ同士と還元剤グループ同士や塩基グループと還元剤グループ同士よりも近くに位置しており、U−マトリックス法から得られる境界も、Grignard試薬グループ−塩基グループ間では低く(すなわち差が小さく)、Grignard試薬グループ−還元剤グループ間、塩基グループ−還元剤グループ間は高い(すなわち差が大きい)結果となった。
【0074】このことは、Grignard試薬が見方を変えれば強塩基であり、強弱の違いはあるが同じ塩基に属するものであること、また、別の見方ではGrignard試薬はアルカンのマグネシウム塩であり、ここに示した塩基はアミンのマグネシウム塩である点でも類似の化合物であることと本質的に矛盾しない結果となっている。このことは、FRAU特性値が、化合物が本来持っている特性をよく反映していることを示している。
【0075】さらに、ここには示していないが、Grignard試薬グループ、塩基グループ、還元剤グループそれぞれの内容を詳しく見ると、構造類似したものが近くに位置していることがわかる。たとえば、Grignard試薬はアルキル鎖の共通のものが近くに位置している。
【0076】以上のように、FRAU特性値は構造や反応における役割の類似性をよく反映していることがコホーネンニューラルネットワークによる解析で明らかにすることができた。
【0077】さらに、ここには示していないが、各ニューロン上の各FRAU特性値の内容と隣接するニューロン間の各FRAU特性値の差とを詳しく調べることで、どのFRAU特性値がグループの境界線を主として決めているかを知ることができた。すなわち、どのFRAU特性値が試薬の構造類似性・反応における役割の類似性と大きく関連しているかを知ることができた。
【0078】このように、FRAU特性値とコホーネンニューラルネットワークによる解析を組合わせた手法は、化合物の持つ反応特性の内容を明らかにする可能性を持つ。
【0079】以上のように、コホーネンマップ10から、同一の種類の反応特性を示す原子は同一あるいは隣接するニューロンに集められていることが認められる。
【0080】図2乃至図4を参照すれば明らかなように、FRAUに従って得られるFRAU特性(FF)と金属試薬の役割や構造との間に、極めてよい相関関係があることが認められる。
【0081】以上、説明したようにFRAUは、分子1の周りの電子的特徴及び立体的特徴をFRAU特性(FF)として数値的に特性化することができ、さらに、分子1を細かく分割するサイト毎に、すなわち分子1を構成する原子毎にFRAU特性(FF)を付与することができるのである。
【0082】また、FRAUは、コホーネンニューラルネットワークを応用することによって、反応を主に支配するのは、どの要素か、またどのサイトか、またそれらの要素やサイトがどの程度に反応に寄与するかを示すことができ、これによって、分子の反応特性を定量的に分析し理解することができるのである。
【0083】また、上述のFRAUによる手法に対応するプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することにより、この記録媒体を用いてコンピュータによって極めて迅速にFRAU特性(FF)を演算することが可能になる。
【0084】なお、上述の説明においては、自己組織化ニューラルネットワークとしてコホーネンニューラルネットワークを適用した例を示したが、他の自己組織化ニューラルネットワークを適用することも可能である。
【0085】
【発明の効果】以上のように、本発明の構成によれば、合成化学の分野をはじめ薬物開発の分野を含む広い化学分野で適用可能であり、母核を共通にする制限を受けることなく、分子の大きさ等を異にする多種類の分子の間で反応特性の類比の有無を高い精度で予測することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000006792
【氏名又は名称】理化学研究所
【出願日】 平成11年3月12日(1999.3.12)
【代理人】 【識別番号】100064285
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 一雄 (外2名)
【公開番号】 特開2000−143554(P2000−143554A)
【公開日】 平成12年5月23日(2000.5.23)
【出願番号】 特願平11−67212