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【発明の名称】 フッ素化剤および有機フッ素化合物の製造方法
【発明者】 【氏名】山本 禎洋

【氏名】下川 和弘

【要約】 【課題】従来フッ素化剤として使用されているスプレイードライ法により製造されたフッ化カリウムと同等またはそれ以上のフッ素化能を有するフッ化アルカリ、例えばフッ化カリウムを提供する。

【解決手段】β−位にフッ素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩を熱分解することにより得られるフッ化アルカリからなるフッ素化剤は、高いフッ素化能を有しており、活性塩素化合物や臭素化合物の塩素又は臭素をフッ素原子と置換するハロゲン交換法などに用いるフッ素化剤として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 β−位にフッ素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩を熱分解することにより得られるフッ化アルカリからなるフッ素化剤。
【請求項2】 フッ化アルカリは、該アルカリ金属塩を100〜400℃で熱分解して得たものである請求項1記載のフッ素化剤。
【請求項3】 フッ化アルカリは、該アルカリ金属塩を有機溶媒中で熱分解して得たものである請求項1記載のフッ素化剤。
【請求項4】 フッ化アルカリは、該アルカリ金属塩を固体状態で熱分解して得たものである請求項1記載のフッ素化剤。
【請求項5】 β−位にフッ素原子を有するカルボン酸が、パーフルオロ−2−アルコキシプロピオニルカルボン酸である請求項1記載のフッ素化剤。
【請求項6】 パーフルオロ−2−アルコキシプロピオニルカルボン酸が、パーフルオロ−2−メトキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−エトキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−イソプロポキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−ブトキシプロピオニルカルボン酸およびパーフルオロ−2−イソブトキシプロピオニルカルボン酸からなる群から選択された少なくとも1種のカルボン酸である請求項5記載のフッ素化剤。
【請求項7】 アルカリ金属が、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属である請求項1に記載のフッ素化剤。
【請求項8】 フッ素以外のハロゲン原子を有する有機化合物を、β−位にフッ素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩を熱分解することにより得られるフッ化アルカリによりフッ素化することを特徴とする有機フッ素化合物の製造方法。
【請求項9】β−位にフッ素原子を有するカルボン酸が、パーフルオロ−2−アルコキシプロピオニルカルボン酸である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】 パーフルオロ−2−アルコキシプロピオニルカルボン酸が、パーフルオロ−2−メトキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−エトキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−イソプロポキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−ブトキシプロピオニルカルボン酸およびパーフルオロ−2−イソブトキシプロピオニルカルボン酸からなる群から選択された少なくとも1種のカルボン酸である請求項9記載の製造方法。
【請求項11】 アルカリ金属が、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびルビジウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属である請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フッ素化剤および有機フッ素化合物の製造方法に関し、より詳しくは、例えば、活性塩素化合物や臭素化合物のハロゲンをフッ素に置換し、医農薬・化学製品原料として有用な有機フッ素化合物を製造する方法、およびそのようなフッ素化に有用なフッ素化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】活性塩素化合物や臭素化合物の塩素又は臭素をフッ素原子と置換するハロゲン交換法は、原料となる活性塩素化合物や臭素化合物とフッ化アルカリ、特にフッ化カリウムとを反応させるという極めて簡単な操作で行える為、有機フッ素化合物の合成において、産業上も広く利用されている方法である。フッ素化剤として使用できるフッ素化能の高いフッ化カリウムは、通常、スプレードライ法(特開昭58−65226号公報、特開昭63-89417号公報参照)により調製されている。しかし、スプレードライ法は、加熱にエネルギーを大量に消費するので、工業的には、より経済的なフッ化カリウムを含めたフッ化アルカリの製造方法が望まれている。通常の試薬として市販されているフッ化カリウムは、スプレードライ法で製造されたものより安価ではあるが、フッ素化能が低く、工業的にはフッ素化剤としては使用できない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、スプレードライ法よりも経済的な方法で製造でき、しかもスプレードライ法で製造したのとほとんど同等またはそれ以上のフッ素化能を示すフッ化カリウムや他のフッ化アルカリが望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、β−位にフッ素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩の熱分解を研究する過程で、反応により副成するフッ化アルカリが、予想外に高いフッ素化能を有することを発見し、本発明に到達した。即ち、本発明は、β−位にフッ素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩を熱分解することにより得られるフッ化アルカリからなるフッ素化剤、およびこのフッ素化剤により、フッ素以外のハロゲン原子を有する有機化合物をフッ素化することからなる有機フッ素化合物の製造方法を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】β−位にフッ素原子を有するカルボン酸としては、好ましくはパーフルオロ−2−アルコキシプロピオニルカルボン酸が例示できる。中でも、パーフルオロ−2−アルコキシプロピオニルカルボン酸、例えばパーフルオロ−2−メトキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−エトキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−イソプロポキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−ブトキシプロピオニルカルボン酸、パーフルオロ−2−イソブトキシプロピオニルカルボン酸などが好ましい。
【0006】アルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウムなどである。
【0007】β−位にフッ素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩の熱分解は、好ましくは、100〜400℃の温度で行われる。熱分解は、アルカリ金属塩を固体状態で用いて行っても、また有機溶媒中に分散させて行ってもよい。有機溶媒を用いる場合には、モノグライム、ジグライム、トリグライムなどのグライム類が好ましく用いられる。
【0008】このようにして得られたフッ化アルカリは、極めて高いフッ素化能を有しており、フッ素化剤として有利に使用できる。このフッ化アルカリは、スプレードライ法により製造された従来のフッ化アルカリ、例えばフッ化カリウムを用いているフッ素化反応のいずれにおいても使用できる。
【0009】例えば、フッ素以外のハロゲン原子を有する有機化合物、例えば活性塩素化合物や臭素化合物をフッ化アルカリと反応させると、ハロゲン交換が起こり、有機フッ素化合物が得られる。活性塩素化合物や臭素化合物の例としては、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,3−ジブロモプロパン、2,4−ジクロロ−3−フルオロニトロベンゼン、2−クロロニトロベンゼン、4−クロロニトロベンゼン、2,4−ジクロロニトロベンゼン、3−フルオロ−4−クロロニトロベンゼン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、3,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、テトラクロロフタロイルジクロライド、2−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、2−クロロ−5−ニトロトルエン、ペンタクロロベンゾニトリル、ペンタクロロベンゾイルクロライド、4−メチル−2,3,5,6−テトラクロロベンゾイルクロライド、6−アミノ−2−クロロベンゾチアゾール、塩化シアヌルなどが例示できる。
【0010】
【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例1ヘキサフルオロプロピレンオキサイドとジフルオロホスゲン及び炭酸カリウムより合成したパーフルオロ−2−メトキシプロピオン酸カリウム60g(224mmol)とジグライム100mlを反応器に入れ、攪拌下120〜130℃で加温して、熱分解を行った。反応系からの、ガスの発生が無くなるのを確認し、反応を終了した。反応終了後、溶媒を減圧で留去し、フッ化カリウム12.5g(回収率:96%)を得た。
【0011】実施例2ヘキサフルオロプロピレンオキサイドとジフロロホスゲン及び炭酸ナトリウムより合成したパーフルオロ−2−メトキシプロピオン酸ナトリウム60g(238mmol)とジグライム100mlを反応器に入れ、攪拌下130〜150℃で加温して、熱分解を行った。反応系からの、ガスの発生が無くなるのを確認し、反応を終了した。反応終了後、溶媒を減圧で留去し、フッ化ナトリウム9.5g(回収率:95%)を得た。
【0012】実施例3ヘキサフルオロプロピレンオキサイド及び炭酸カリウムより合成したパ−フルオロ−2−プロポキシプロピオン酸カリウム100g(272mmol)を反応器に入れ、攪拌下230〜250℃で加温して、熱分解を行った。反応系からの、ガスの発生が無くなるのを確認し、反応を終了した。反応終了後、フッ化カリウム15.3g(回収率:97%)を得た。
【0013】実施例4および比較例1〜33,4−ジクロロニトロベンゼン8.5g(44.3mmol)をジメチルホルムアミド20gに溶解し、実施例3で得たフッ化カリウム(17.2mmol)を加えた後、攪拌下150℃に加熱しながら、5時間反応を行った。生成した3−クロロ−4−フルオロニトロベンゼンの同定はGC分析で行い、反応収率の確認はトリフルオロエタノールを内部標準とした19F−NMRで行った。比較例として、試薬レベルで市販されているフッ化カリウム(比較例1)またはKF・HF(比較例2)、若しくはスプレードライ法で製造したフッ化カリウム(比較例3)を使用し、上記と同様に3,4−ジクロロニトロベンゼンのフッ素化を行い、フッ素化能の比較を行った。結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】上記の結果から、本発明のフッ化カリウム(実施例3)は、スプレードライ法により製造したフッ化カリウム(比較例3)よりも高いフッ素化能を有していることが分かる。
【出願人】 【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【出願日】 平成10年11月4日(1998.11.4)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
【公開番号】 特開2000−143552(P2000−143552A)
【公開日】 平成12年5月23日(2000.5.23)
【出願番号】 特願平10−313055