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【発明の名称】 脱ハロゲン化物の製造方法
【発明者】 【氏名】柳田 祥三

【氏名】和田 雄二

【要約】 【課題】新規な光触媒及び還元力の優れた光触媒を提供し、ハロゲン化物を最終的に燃焼処理になんら支障のない有機化合物まで導くのに十分な、光還元反応を誘導する。

【解決手段】本発明では、ハロゲン化物から脱ハロゲン化物を得るにあたり、前記ハロゲン化物と、光触媒としての、ポリパラフェニレン等の有機化合物半導体、硫化カドミウム以外の金属硫化物又は1nm〜30nmの平均粒径を有するナノサイズ微粒子の化合物半導体と、電子源とに光を照射することによって、前記ハロゲン化物を脱ハロゲン化し、前記ハロゲン化物を水素化する。また、本発明では、電子源として有機アミンを用いれば、有機化合物半導体、無機化合物半導体、硫化カドミウムを含む金属硫化物等の化合物半導体を粒径サイズに関わらず光触媒として用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハロゲン化物から脱ハロゲン化物を得るにあたり、前記ハロゲン化物と、光触媒としての有機化合物半導体と、電子源とに光を照射することによって、前記ハロゲン化物を脱ハロゲン化し、前記ハロゲン化物を水素化することを特徴とする、脱ハロゲン化物の製造方法。
【請求項2】 前記有機化合物半導体が、ポリパラフェニレン、ポリピリジン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリビニレンフェニレン、ポリビニレンピリジン、ポリビニレンチオフェン及びポリビニレンチオフェンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の脱ハロゲン化物の製造方法。
【請求項3】 ハロゲン化物から脱ハロゲン化物を得るにあたり、前記ハロゲン化物と、硫化カドミウム以外の光触媒としての金属硫化物と、電子源とに光を照射することによって、前記ハロゲン化物を脱ハロゲン化し、前記ハロゲン化物を水素化することを特徴とする、脱ハロゲン化物の製造方法。
【請求項4】 ハロゲン化物から脱ハロゲン化物を得るにあたり、前記ハロゲン化物と、光触媒としての1nm〜30nmの平均粒径を有するナノサイズ微粒子の化合物半導体と、電子源とに光を照射することによって、前記ハロゲン化物を脱ハロゲン化し、前記ハロゲン化物を水素化することを特徴とする、脱ハロゲン化物の製造方法。
【請求項5】 ハロゲン化物から脱ハロゲン化物を得るにあたり、前記ハロゲン化物と、光触媒としての化合物半導体と、電子源としての有機アミンとに光を照射することによって、前記ハロゲン化物を脱ハロゲン化し、前記ハロゲン化物を水素化することを特徴とする、脱ハロゲン化物の製造方法。
【請求項6】 前記光として可視光を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の脱ハロゲン化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光還元的脱ハロゲン化反応による含ハロゲン化合物の解毒方法に関する。
【0002】
【従来の技術】含ハロゲン化合物の解毒を光エネルギーを用いて行う方法は、従来、酸化チタンを用いて検討されてきた。この手法では、微量の塩化ベンゼン、塩化アルキル、クロロフェノール等を含む水中に酸化チタン粉末を懸濁し、酸素の存在下で光照射すると、上記化合物が分解され、CO2 と水及び塩酸となるものである。
【0003】この手法では、光照射によって酸化チタン粒子中に励起電子と正孔が生成し、含ハロゲン化合物の酸化反応は、正孔による化合物の直接酸化反応、及び水分子を正孔が酸化することによって生じたヒドロキシルラジカルが化合物を攻撃することによって起こる。
【0004】しかしながら、ハロゲン原子を多く含む分子ほど酸化反応には耐性が強く、酸化反応が起こりにくいという問題があり、ポリ塩化ビフェニール(PCB)等のポリハロゲン化物には活性が低いという問題があった。さらに、酸化反応が不完全な場合、酸化過程で生じる中間体はしばしば最初の化合物より毒性が高い、すなわち、有毒な反応中間体が生じるという問題がある。
【0005】また、光エネルギーを用いて、ポリハロゲン化合物を酸化でなく、還元反応により、より毒性の低い化合物に転換する方法が知られている(J. Phys. Chem. 1996, 100, 2161〜2169、Environ. Sci. Technol. 1995, 29, 1646 〜1654及びEnviron. Sci. Technol. 1996, 30, 2547 〜2555参照) 。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明者は、このような還元反応では、硫化カドミウムや酸化チタンの還元力が弱く、最終的に、ポリハロゲン化合物を燃焼処理になんら支障のない有機化合物まで導くには、脱ハロゲン化反応が十分でないことを突き止めた。
【0007】また、酸化チタンの吸収する光の波長は400nm以下の領域であり、ポリハロゲン化合物を光還元によって脱ハロゲン化しようとする場合、太陽光スペクトルの短波長の1部分しか用いることができない。
【0008】なお、Theoretical and Experimental Chemistry, 30(1994), 30〜33には、エタノール中の硫化カドミウムを用いて、光還元反応によってヘキサクロロベンゼンを脱ハロゲン化することが記載されている。しかし、この文献に記載された硫化カドミウムは、ハロゲン化物の脱ハロゲン化に際して、光触媒として機能していないことは明らかである。
【0009】その理由は、通常の硫化カドミウム(マイクロサイズ)の場合、伝導帯の下端は、標準電極(SCE)に対して、-0.8V 〜-1.3V と見積もられている(A. J.Nozik and R. Memming, J. Phys. Chem., 100, 13061〜13078(1996) 参照)。しかし、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びモノクロロベンゼンの還元電位は、それぞれ、-1.32 、-1.57 、-1.76(1,2,3,4-クロロ体) 、-1.96(1,2,3-クロロ体) 、-2.22(1,2-クロロ体) 及び-2.44Vである(A. J. Bard and H. Lund, Encyclopedia of Electrochemistry of the Elements, Organic Section, Vol.XIV, Marcel Dekker, New York, 1980, pp.181 〜185 参照)。したがって、電気化学的には、硫化カドミウムは光触媒として機能せず、クロロベンゼン誘導体の脱ハロゲン化及び水素化反応は起こらない。
【0010】また、硫化カドミウムの価電子帯の上端は、標準電極(SCE)に対して、1.2V程度と見積もられている(上記 A. J. Nozik and R. Memming, J. Phys. Chem., 100, 13061 〜13078(1996) 参照)。ところで、エタノールの酸化電位は、2.7Vである(A. J. Bard and H. Lund, Encyclopedia of Electrochemistry of the Elements, Organic Section, Vol.XI, Marcel Dekker, New York, 1980, p.182 参照)。したがって、電気化学的には、硫化カドミウムは光触媒として機能せず、エタノールの酸化反応は起こらず、エタノールを電子源とすることは不可能である。
【0011】さらに、光触媒は、酸素が存在する場合、酸素が電子を伝導帯から優先的に奪うため、還元反応を行うことはできない。しかも、このような反応系に、硫化カドミウムを用いる場合、硫化カドミウムが光溶解することが知られている。
【0012】このように、Theoretical and Experimental Chemistry, 30(1994), 30〜33に記載された硫化カドミウムは、光触媒として機能し得ないので、この文献に記載されたようにして硫化カドミウムを用いてエタノール中でヘキサクロロベンゼンを脱ハロゲン化することは、到底不可能である。
【0013】本発明は、新規な光触媒及び還元力の優れた光触媒を提供し、このような光触媒を用いることによって、ハロゲン化物を最終的に燃焼処理になんら支障のない有機化合物まで導くのに十分な、光還元反応を誘導することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、ハロゲン化物から脱ハロゲン化物を得るにあたり、前記ハロゲン化物と、光触媒としての有機化合物半導体、硫化カドミウム以外の金属硫化物又は1nm〜30nmの平均粒径を有するナノサイズ微粒子の化合物半導体と、電子源とに光を照射することによって、前記ハロゲン化物を脱ハロゲン化し、前記ハロゲン化物を水素化する、脱ハロゲン化物の製造方法に係るものである。
【0015】また、本発明は、ハロゲン化物から脱ハロゲン化物を得るにあたり、前記ハロゲン化物と、光触媒としての化合物半導体と、電子源としての有機アミンとに光を照射することによって、前記ハロゲン化物を脱ハロゲン化し、前記ハロゲン化物を水素化する、脱ハロゲン化物の製造方法に係るものである。
【0016】本発明は、本発明者が、ハロゲン化物の脱ハロゲン化において、ポリパラフェニレン等の新規な有機化合物半導体や硫化亜鉛等の硫化カドミウム以外の金属硫化物を光触媒として用いるのが極めて有効であることを見出したことに基づく。本発明者は、かかる光触媒を用いれば、ポリハロゲン化合物を段階的に脱ハロゲン化し、最終的に、燃焼処理においてなんら支障のない有機化合物まで導くことができることを解明した。
【0017】また、本発明は、ハロゲン化物の脱ハロゲン化において、1nm〜30nm、特に、1nm〜10nmの平均粒径を有するナノサイズ微粒子の化合物半導体からなる光触媒が、極めて高い還元力を示すことに基づく。
【0018】本発明者は、かかる光触媒を用いれば、ポリハロゲン化合物を段階的に脱ハロゲン化し、最終的には、燃焼処理になんら支障のない有機化合物にまで導くことが十分に可能であることを解明し、本発明を完成させた。
【0019】光触媒の平均粒径が1nm未満のものは、合成するのが困難である。一方、光触媒の平均粒径が30nmを超えるとき、還元反応に関わる伝導帯の電気化学的位置が正側にシフトし、光触媒の還元力が低下するため、ハロゲン化物の還元ができなくなる問題がある。光触媒の平均粒径は、1nm〜10nmがより一層好ましい。
【0020】さらに、本発明は、光触媒としての化合物半導体を用いるハロゲン化物の脱ハロゲン化において、トリエチルアミン等の有機アミンが著しく優れた電子源として働くことに基づく。本発明者は、かかる有機アミンを用いれば、極めて効率的にハロゲン化物の脱ハロゲン化及び水素化を誘導することができることを突き止め、本発明に到達した。
【0021】本発明の脱ハロゲン化物の製造方法は、光触媒の還元力が高く、ハロゲン化物から効率的に脱ハロゲン化物を得ることができるので、ポリハロゲン化合物の解毒処理システムとして極めて有用である。
【0022】また、本発明によれば、環境中の希薄な含ハロゲン化合物の処理だけでなく、大量に存在する貯蔵物中の有害ポリハロゲン化物、あるいは環境中から回収された有害ポリハロゲン化物の処理を密閉系を用いて行うことを可能とする。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明で処理することができるハロゲン化物は、特に限定されることなく、脱ハロゲン化が可能である種々のあらゆる有機含ハロゲン化合物が含まれる廃棄物であってもよい。有機含ハロゲン化合物としては、例えば、ダイオキシン、ポリクロロビフェニル、ハロゲン化ベンゼン、ジハロゲン化ベンゼン、トリハロゲン化ベンゼン、テトラハロゲン化ベンゼン、ペンタハロゲン化ベンゼン、ヘキサハロゲン化ベンゼン、ハロゲン化メタン、ジハロゲン化メタン、トリハロゲン化メタン、テトラハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、ジハロゲン化エタン、トリハロゲン化エタン、テトラハロゲン化エタン、ペンタハロゲン化エタン、ヘキサハロゲン化エタン、ハロゲン化エチレン、ジハロゲン化エチレン、トリハロゲン化エチレン、テトラハロゲン化エチレン等が挙げられる。
【0024】本発明にかかる有機化合物半導体には、ポリパラフェニレン、ポリピリジン、ポリピリジン−2,5−ジイル、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリビニレンフェニレン、ポリビニレンピリジン、ポリビニレンチオフェン、ポリビニレンチオフェン等が用いられる。
【0025】本発明にかかる硫化カドミウム以外の金属硫化物には、硫化カドミウムを除き、硫化亜鉛、硫化鉛、硫化ニッケル等を用いることができる。
【0026】本発明にかかる化合物半導体には、有機化合物半導体、及び硫化カドミウムを含む金属硫化物、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム等の金属酸化物等の無機化合物半導体等を用いることができる。
【0027】本発明では、かかる化合物半導体を平均粒径が1nm〜30nm、特に、1nm〜10nmを有するナノサイズ微粒子として光触媒に用いることで、光触媒に極めて高い還元力を発揮させることができる。
【0028】本発明にかかる電子源には、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン等の有機アミン、又はメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコールを用いることができる。
【0029】特に、本発明では、電子源としてトリエチルアミン等の有機アミンを用いる場合、光触媒としての化合物半導体を、平均粒径のサイズに関わらず、用いることができる。かかる有機アミンは、光還元反応において、極めて優れた電子源として働き、極めて効率的にハロゲン化物の脱ハロゲン化及び水素化を誘導することができる。
【0030】本発明では、このようなポリハロゲン化物と所定の光触媒と電子源とに光を照射することによって、光触媒が光エネルギーを吸収して、励起電子を生成し、この電子がハロゲン化物に注入されることを原理としている。
【0031】本発明では、透明なパイレックス硝子製反応器を用いることができ、この容器内で光触媒及び電子源をN,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アルコール類、水等の溶媒中に分散、あるいは溶解し、ハロゲン化物を加えて、反応器内を窒素ガスで置換する。
【0032】本発明では、この反応器に光を照射する。光には、紫外光が用いられるが、可視光を利用することができる光触媒、例えば、硫化カドミウム、酸化鉄、ポリパラフェニレン、ポリピリジン等を用いる反応系では、可視光を用いることができる。
【0033】光照射されたポリハロゲン化物は、段階的に脱ハロゲン化(ハロゲン分子がはずれて水素と置き換わる)し、最終的には完全にハロゲン原子の除去が達成できる。ハロゲン原子は、ハロゲン化水素として、系中に残存する。このように、本発明においては、脱ハロゲン反応だけが選択的に進行し、しかもポリハロゲン化化合物に対して段階的に起こる(下記、実施例参照)。
【0034】従来の系、すなわち、酸化チタンを光触媒として用い、酸化分解により、解毒する系では、種々の中間体が生成する。例えば、4−クロロフェノールを酸化チタン光触媒で酸化した場合に検出された生成物は7種にもわたる。その内容は、ヒドロキシヒドロキノリン、ヒドロキシベンゾキノン、フェノール、4−クロロカテコール、4−ヒドロキシフェニルベンゾキノン、2,5,4′−とりヒドロキシビフェニル、5−クロロ−2,4′ジヒドロキシビフェニルと報告されている(J. Theurich et al., Langmuir 12,6368 (1996)参照) 。
【0035】本発明は、常温で機能する光触媒を用いて、還元的に含ハロゲン化合物を分解するものである。この手法で必要なものは、光エネルギーであり、紫外線光源又は太陽光を用いることができる。また、この還元的プロセスでは、酸化プロセスにおいて生成する有害副生成物が生成しないため、その利用価値が極めて高い。
【0036】本発明の脱ハロゲン化物の製造方法によれば、ダイオキシンを始めとする有害な含ハロゲン化合物をより一層毒性の低い化合物に転換・分解することが可能になり、地球規模で環境汚染問題をもたらす種々の化学物質を解毒することができる。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1硫化亜鉛ナノ微粒子による1,4−ジクロロベンゼンの脱塩素化反応硫化亜鉛ナノ微粒子(平均粒径2nm〜6nm)コロイドを光触媒として用いて、1,4−ジクロロベンゼンの脱塩素化反応を行った。5mMの過塩素酸亜鉛を含むN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を試験管に入れ、氷水中につけて冷却し、硫化水素ガスを吹き込むことにより硫化亜鉛ナノ微粒子コロイド溶液を調製した。
【0038】2.5mMの硫化亜鉛、25mMの1,4−ジクロロベンゼン、1Mのトリエチルアミンを含むDMF溶液2mlを調製し、内径8mmの円筒形バイレックス製反応管に入れ、窒素ガスで内部を完全に置換し、高圧水銀灯により照射した。照射中反応管は冷却水により、室温に保った。反応生成物はガスクロマトグラフにより定量した。
【0039】結果を図1に示す。図1では、ZnS存在下の生成物の量を、1,4−ジクロロベンゼン(●)、クロロベンゼン(▲)、ベンゼン(◆)、水素(■)で示した。また、ZnS非存在下の生成物の量を、1,4−ジクロロベンゼン(○)、クロロベンゼン(△)、ベンゼン(◇)、水素(□)で示した。
【0040】図1に示すように、ZnS存在下で、光照射とともにに1,4−ジクロロベンゼン(●)が減少し、クロロベンゼン(▲)が生成し、さらに光照射時間が長くなるにつれベンゼン(◆)の生成も見られた。この生成物の挙動は、1,4−ジクロロベンゼンはまず、脱塩素化を受けてクロロベンゼンとなり、さらにこのクロロベンゼンが脱塩素化を受ける逐次反応であることを示している。この反応は、光触媒である硫化亜鉛ナノ微粒子がなくとも進行するが、光触媒存在下では2〜5倍に促進されることがわかった。ガスクロマトグラフで検出された生成物は、クロロベンゼン、ベンゼンのみであった。
【0041】実施例2硫化亜鉛ナノ微粒子による種々のクロロベンゼンの脱塩素化反応実施例1と同じ光触媒系を用いて、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼンの脱塩素化反応を行った。光照射4〜5時間後の反応生成物組成を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】表1に示されるように、これらの塩化ベンゼンの反応を行った場合にも、逐次的に脱塩素化反応が進行していること、そして消失した反応物質と生成物との収支が合っていることから、反応は選択的な脱塩素化だけが、逐次的に進行していることが判明した。1,2,3,4−テトラクロロベンゼンの場合にも最終的にはベンゼンにまで脱塩素化することも明らかとなった。
【0044】実施例3ポリパラフェニルによる1,2,3,4−テトラクロロベンゼンの脱塩素化反応ポリパラフェニレン(PPP:重合度9〜11)を光触媒として用いて、1,2,3,4−テトラクロロベンゼンの脱塩素化反応を行った。1mgのPPP、25mMの1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1Mのトリエチルアミンを含むジメチルホルムアミド(DMF)溶液2mlを調製し、内径8mmの円筒形パイレックス製反応管に入れ、窒素ガスで内部を完全に置換し、高圧水銀灯により照射した。照射中反応管は冷却水により、室温に保った。反応生成物はガスクロマトグラフにより定量した。
【0045】結果を図2に示す。図2では、生成物を、それぞれ、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン(●)、1,2,4−トリクロロベンゼン(▽)、1,2,3−トリクロロベンゼン(○)、1,2−ジクロロベンゼン(△)、1,3−ジクロロベンゼン(□)、1,4−ジクロロベンゼン(▲)及びクロロベンゼン(◇)で示した。
【0046】図2に示すように、光照射とともに、1,2,3,4−テトラクロロベンゼンが急激に減少し、1,2,3−テトラクロロベンゼン、1,2,4−テトラクロロベンゼンが生成し、さらに光照射3時間後には、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼンが生成し、クロロベンゼンの生成も見られた。この生成物の挙動は、1,2,3,4−テトラクロロベンゼンはまず、脱塩素化を受けてトリクロロベンゼンとなり、さらにこのトリクロロベンゼンが脱塩素化を受けてジクロロベンゼン、クロロベンゼンとなる逐次反応であることを示している。
【0047】実施例4可視光照射下におけるポリパラフェニレン(PPP)による1,2,3,4−テトラクロロベンゼンの脱塩素化反応実施例3とまったく同じ反応条件において、可視光を用いた反応を行った。結果を図3に示す。図3では、PPP存在下の生成物を、それぞれ、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン(●)及び1,2,4−トリクロロベンゼン(■)とし、PPP非存在下の生成物を、それぞれ、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン(○)及び1,2,4−トリクロロベンゼン(□)とした。
【0048】図3に示すように、光照射とともに、1,2,3,4−テトラクロロベンゼンが減少し、それにともない1,2,4−トリクロロベンゼンの生成が見られた。この反応は光触媒であるPPPが無ければ進行しない。PPPを光触媒として用いれば、可視光照射下における脱塩素化反応が可能であることがわかった。
【0049】比較例1実施例1の実験を、硫化亜鉛ナノ微粒子の代わりに通常のサイズの硫化亜鉛粉末(平均粒径1μm〜10μm)を用いて、他の条件は全く同じ条件で反応を行った。結果は、光触媒を加えない場合の変化とほとんど一致し、硫化亜鉛粉末(平均粒径1μm〜10μm)が、ジクロロベンゼンの還元反応に対する光触媒として機能しないことを示した。
【0050】本発明の脱ハロゲン化物の製造方法は、光触媒の還元力が高く、ハロゲン化物から効率的に脱ハロゲン化物を得ることができるので、ポリハロゲン化合物の解毒処理システムとして極めて有用である。
【0051】また、本発明によれば、環境中の希薄な含ハロゲン化合物の処理だけでなく、大量に存在する貯蔵物中の有害ポリハロゲン化物、あるいは環境中から回収された有害ポリハロゲン化物の処理を密閉系を用いて極めて効率よく行うことができる。
【出願人】 【識別番号】391016945
【氏名又は名称】大阪大学長
【出願日】 平成10年10月30日(1998.10.30)
【代理人】 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
【公開番号】 特開2000−136151(P2000−136151A)
【公開日】 平成12年5月16日(2000.5.16)
【出願番号】 特願平10−309968