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【発明の名称】 求電子フッ素化剤の安全な貯蔵のためのパッケ―ジ及び格納方法
【発明者】 【氏名】ロバート ジョージ シブレット

【氏名】ジェームズ ジョセフ ハート

【氏名】アンドリュー ジョセフ ウォイテック

【氏名】フランク マイケル プロゾニック

【要約】 【課題】求電子性フッ素化処理薬剤の安全で効果的な貯蔵、輸送及び引き渡し手段を提供する。

【解決手段】商業的な求電子性フッ素化剤を安全に「収容」又は「格納」することによって、典型的に「F+ 」活性を失わずに、パッケージ内において、容易に且つ直接使用できる形で、即ち溶液又はスラリーで、これらの薬剤を容易に貯蔵し且つ輸送する経済的な手段とする。重要なことは、含有される活性フッ素化剤の分解熱と比較して、溶液媒体が非常に大きな吸熱能力(液体の蒸発潜熱に起因する)を持つので、溶液/スラリー媒体が、貯蔵及び輸送のための非常に大きい安全限界を有することである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第4窒素求電子性フッ素化剤の安全な収容のためのパッケージであって以下の(a)〜(c)を含むパッケージ。
(a)少なくとも1つのシール可能なオリフィスを持ち、周囲条件下において液相で、前記第4窒素求電子性フッ素化剤と溶媒を収容することができる容器、(b)所定量の第4窒素求電子性フッ素化剤、及び(c)前記第4窒素求電子性フッ素化剤と相溶性であり、前記所定量の第4窒素求電子性フッ素化剤の分解熱を吸収するのに十分な量の溶媒。
【請求項2】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンフルオライド(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−メチル−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、N−フルオロ−キヌクリジニウムトリフラート、1−フルオロ−ピリジニウムピリジンヘプタフルオロジボレート、1−フルオロ−ピリジニウムテトラフルオロボレート、1−フルオロ−ピリジニウムトリフラート、1−フルオロ−2,6−ジクロロピリジニウムテトラフルオロボレート、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)、及びこれらの混合物からなる群より選択される請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンフルオライド(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−メチル−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、N−フルオロ−キヌクリジニウムトリフラート、及びこれらの混合物からなる群より選択され、且つ前記溶媒が水である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項4】 前記溶媒が、有機溶媒を含有する請求項3に記載のパッケージ。
【請求項5】 前記有機溶媒が、アセトニトリル、プロピオニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、Cu vの芳香族炭化水素、Cw xのハロゲン化炭化水素、及びy zの過フッ化炭化水素(u=3、v=10、w=1、x=8、y=1及びz=8)からなる群より選択される請求項4に記載のパッケージ。
【請求項6】 前記溶媒が、アセトニトリルとメタノールの混合物である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項7】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)であり、且つ前記溶媒が水である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項8】 前記溶媒が、少なくとも30重量%の水と有機溶媒であり、この有機溶媒がアセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項7に記載のパッケージ。
【請求項9】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)であり、且つ前記溶媒がアセトニトリルとメタノールである請求項1に記載のパッケージ。
【請求項10】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)であり、且つ前記溶媒が水である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項11】 前記溶媒が、少なくとも40重量%の水と有機溶媒であり、この有機溶媒が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項10に記載のパッケージ。
【請求項12】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、N−フルオロキヌクリジニウムトリフラートであり、且つ前記溶媒が水である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項13】 前記溶媒が水と有機溶媒であり、この有機溶媒がアセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項12に記載のパッケージ。
【請求項14】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−フルオロ−ピリジニウムピリジンヘプタフルオロジボレート、1−フルオロ−ピリジニウムテトラフルオロボレート、1−フルオロ−ピリジニウムトリフラート、1−フルオロ−2,6−ジクロロピリジニウムテトラフルオロボレート、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)、及びこれらの混合物からなる群より選択され、且つ前記溶媒が有機溶媒である請求項1に記載のパッケージ。
【請求項15】 第4窒素求電子性フッ素化剤を容器内に安全に格納する方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を含む方法。
(a)少なくとも1つのシール可能なオリフィスを持ち、周囲条件下において液相で、前記第4窒素求電子性フッ素化剤と溶媒を収容することができる容器を提供する工程、(b)前記容器に、所定量の前記第4窒素求電子性フッ素化剤を導入する工程、及び(c)前記所定量の第4窒素求電子性フッ素化剤の分解熱を吸収させるのに十分な量で、前記容器に、前記第4窒素求電子性フッ素化剤に対して相溶性の溶媒を導入する工程。
【請求項16】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンフルオライド(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−メチル−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、N−フルオロ−キヌクリジニウムトリフラート、1−フルオロ−ピリジニウムピリジンヘプタフルオロジボレート、1−フルオロ−ピリジニウムテトラフルオロボレート、1−フルオロ−ピリジニウムトリフラート、1−フルオロ−2,6−ジクロロピリジニウムテトラフルオロボレート、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)、及びこれらの混合物からなる群より選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】 前記第4窒素求電子性フッ素化剤が、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、又はN−フルオロキヌクリジニウムトリフラートであり、且つ前記溶媒が水である請求項15に記載の方法。
【請求項18】 前記溶媒が有機溶媒を含み、この有機溶媒がアセトニトリル、プロピオニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、Cu vの芳香族炭化水素、Cw xのハロゲン化炭化水素、及びCy zの過フッ素化炭化水素(u=3、v=10、w=1、x=8、y=1及びz=8)からなる群より選択される請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】フッ素処理産業及び医薬産業において、求電子性フッ素化処理剤の安全で効率的な貯蔵、輸送及び引き渡しの手段が一般に必要とされている。このことは、これらの薬剤が熱劣化に対して感受性であり、また、周囲条件において固体の稀釈されていない形で「F+ 」活性をゆっくりと失うことに起因する。
【0002】現在、これらの物質が自己促進分解を受ける場合、即ち無制御自己増進熱分解を受ける場合に起こることがある深刻な問題を避け、且つ「F+ 」成分の品質も維持するために、これらの薬剤の全てではないが大部分は、冷凍条件で貯蔵及び輸送しなければならない。更に、これらの物質は典型的に固体として扱い、このことは、化学処理産業においては液体として扱うよりも好ましくない。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】溶解した求電子性フッ素化剤の熱安定性を論じている文献がいくつかある。R.E.Banks、M.K.Besheesh、S.N.Mohialdin−Khaffaf、及びI.Sharifは、J.Chem.Soc.、Perkin Tans.1、1996年、p.2069において、「沸騰アセトニトリル(50cm3 )中のF−TEDA−BF4 (5.0mmol)の溶液は、10%未満の「F+ 」移送能力を24時間の間に失う」ことに注目している。ここで、F−TEDA−BF4 は1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)である(Selectfluor(商標)剤としても知られる)。
【0004】しかしながら、G.S.LalはJ.Org.Chem.1993年、58、2791において、還流しているアセトニトリル中でF−TEDA−BF4 を16時間にわたって使用する多数の効率的なフッ素化であって、期待されたフッ素化生成物を非常によい収率で製造するフッ素化を説明しているので、上述の文献で示されたことは予想外のものではない。
【0005】M.Zupan、J.Iskra、及びS.Stavberは、Bull.Chem.Soc.Jpn.、1995年、68、1655において、これらの問題に関する1つの一般的な著述を行い、ここで、「メタノール、水、及びアセトニトリル中の1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(F−TEDA、1a)の安定性の研究」を行い、「室温で24時間たったときの活性の低下が3%未満であること」を見出したと主張している。
【0006】上述のZupanらの論文に続いて、M.Zupan、M.Papez、及びS.Stavberは、J.Fluorine Chem.1996年、78、137において、異なる溶媒を用い3つの異なるN−F類フッ素化剤(F−TEDA−BF4 を含む)の反応を研究したが、完全でない又は部分のみのデータを与えた。従って、この研究に基づいて定量的な結論をもたらすことはできない。F−TEDA−BF4 では、室温で24時間の間に、メタノール中において7%、水、アセトニトリル、及びエタノール中において4%、並びにイソプロパノール中において2%の「F+ 」活性の喪失を彼らは観察した。
【0007】「F+ 」活性の低下又は喪失の速度を一日当たり4%で一定であるとすると、Zupanらのデータは、Selectfluor(商標)試薬水溶液の「F+」活性は、154日で初期値の0.2%にまで減少することを示唆する。本発明では、Selectfluor(商標)試薬水溶液が154日間でたった7〜9.5%の「F+ 」活性を失うだけであることを例1で示しているので、本発明の結果は明らかに予想外のものである。
【0008】2つめに引用したZupanらの研究によれば、比較的高い温度(54℃)では、活性の喪失速度はかなり促進されていた。室温でのデータは、F−TEDA−BF4 でのみ報告されている。2つの他の化合物、1−ヒドロキシ−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Accufluor(商標)又はNFThとしても知られる)及びN−フルオロビス(フェニルスルホニル)アミン(NFSiとしても知られる)の安定性は54℃でのみ評価されおり、この安定性を同様な条件下でのF−TEDA−BF4 の安定性と比較していた。プロトン性の溶媒である水及びアルコール類中では、NFThは「F+ 」活性の喪失に関して、F−TEDA−BF4よりも安定であることが分かった。NFSiは54℃で「非常に安定」であることが報告された。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来技術は、求電子性フッ素化薬剤又はフッ素化剤がこの薬剤と溶媒に依存して、一連の溶媒系で様々な安定性を持つことを示してきた。そのような薬剤が溶媒中で安定であり、従って溶媒中が望ましい場合に関して、従来技術は、この安定性又は安定性の欠如に関する一般的なパターンを示唆していない。対称的に、本発明は、これらの商業的な求電子性フッ素化剤を安全に「収容」又は「格納(packaging)」する経済的な手段を提供し、それによって、これらの薬剤を、容易に且つ直接使用できる形で、即ち適当な量の溶液で、容易に貯蔵、輸送及び引き渡しをする。ここでは、一連の薬剤と溶媒に関して、収容される求電子性フッ素化剤と比較して、下記に溶液媒体が非常に大きい吸熱能力を持つ(液体の気化潜熱のために)ことが示されるので、溶液媒体は、貯蔵、輸送及び引き渡しのための非常に大きい安全限界を提供する。また、場合によってはそのようなパッケージは、「F+ 」活性を失わない貯蔵、輸送、及び引き渡しを提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、第4窒素求電子性フッ素化薬剤又はフッ素化剤の安全な収容のためのパッケージであって、以下の(a)〜(c)を含むパッケージである。
(a)少なくとも1つのシール可能なオリフィスを持ち、周囲条件において液相で、前記第4窒素求電子性フッ素化剤と溶媒を収容することができる容器、(b)所定量の前記第4窒素求電子性フッ素化剤、及び(c)前記第4窒素求電子性フッ素化剤と相溶性(compatible)であり、前記所定量の第4窒素求電子性フッ素化剤の分解熱を吸収するのに十分な量の溶媒。
【0011】好ましくは、前記第4窒素求電子性フッ素化剤は、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンフルオライド(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−メチル−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、N−フルオロ−キヌクリジニウムトリフラート、1−フルオロ−ピリジニウムピリジンヘプタフルオロジボレート、1−フルオロ−ピリジニウムテトラフルオロボレート、1−フルオロ−ピリジニウムトリフラート、1−フルオロ−2,6−ジクロロピリジニウムテトラフルオロボレート、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0012】好ましくは、非ピリジニウムフッ素化剤のための溶媒は水である。より好ましくは、この溶媒は有機溶媒を含有する。更により好ましくは、この有機溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、Cu vの芳香族炭化水素、Cw xのハロゲン化炭化水素、及びCy zの過フッ化炭化水素からなる群より選択する。ピリジニウムに基づくフッ素化剤のための溶媒は、好ましくは有機溶媒である。
【0013】あるいは、溶媒はアセトニトリルとメタノールの混合物である。
【0014】好ましい態様では、第4窒素求電子性フッ素化剤は、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)であり、且つ溶媒は水である。この態様においてより好ましくは、溶媒は、少なくとも30重量%の水と有機溶媒であり、この有機溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0015】あるいは、第4窒素求電子性フッ素化剤は、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)であり、且つ溶媒はアセトニトリルとメタノールである。
【0016】もう1つの他の態様では、第4窒素求電子性フッ素化剤は、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)であり、溶媒は水である。より好ましくは、溶媒は少なくとも40重量%の水と有機溶媒であり、この有機溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0017】更にもう1つの他の態様では、第4窒素求電子性フッ素化剤は、N−フルオロキヌクリジニウムトリフラートであり、且つ溶媒は水である。この態様において好ましくは、溶媒は水と有機溶媒であり、この有機溶媒はアセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0018】本発明は、第4窒素求電子性フッ素化剤を容器内に安全に格納する方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を含む方法でもある。
(a)少なくとも1つのシール可能なオリフィスを持ち、周囲条件下において液相で、前記第4窒素求電子性フッ素化剤と溶媒を収容することができる容器を提供する工程、(b)前記容器に、所定量の前記第4窒素求電子性フッ素化剤を導入する工程、及び(c)前記第4窒素求電子性フッ素化剤に対して相溶性の溶媒を、前記所定量の第4窒素求電子性フッ素化剤の分解熱を吸収させるのに十分な量で前記容器へ導入する工程。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明は、求電子性フッ素化剤の安全で費用のかからない貯蔵、輸送及び引き渡しのための新しい「パッケージ」及び「方法」に関する。ここで、この求電子性フッ素化剤は、溶媒中、例えば有機溶媒を含有することがある水性媒体中の求電子性フッ素化剤混合物を包含する。
【0020】求電子性フッ素化剤は、限定をするわけではないが、例えば、第4窒素求電子性フッ素化剤、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンフルオライド(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、1−フルオロ−4−メチル−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、N−フルオロ−キヌクリジニウムトリフラート、1−フルオロ−ピリジニウムピリジンヘプタフルオロジボレート、1−フルオロ−ピリジニウムテトラフルオロボレート、1−フルオロ−ピリジニウムトリフラート、1−フルオロ−2,6−ジクロロピリジニウムテトラフルオロボレート、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)、及びそれらの混合物である。
【0021】好ましくは、非ピリジニウムフッ素化剤のための溶媒は水である。より好ましくは、この水性溶媒は有機溶媒を含有する。更により好ましくは、この有機溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、Cu vの芳香族炭化水素、Cw xのハロゲン化炭化水素、及びCy zの過フッ化炭化水素からなる群より選択する(u=3、v=10(好ましくはu=4、v=6)、w=1、x=8(好ましくはw=3、x=6)、y=1、z=8(好ましくはy=3、z=6))。
【0022】あるいは溶媒は、アセトニトリルとメタノールの混合物である。
【0023】ピリジニウムに基づくフッ素化剤のための溶媒は、好ましくは、有機溶媒、例えば上述のような有機溶媒である。
【0024】周囲条件は、温度が典型的に約50℃まで、好ましくは25℃まで、最も好ましくは0℃〜25℃の範囲であり、圧力は100psia(689.5kPa)まで、好ましくは85psia(586.075kPa)まで、最も好ましくは14.5psia(99.9775kPa)までの範囲である。しかしながら、適当な圧力範囲の密封容器又は圧力解放機構を備えた密封容器の温度と圧力条件は、本発明の範囲から離れずに、上述の範囲から外れることが可能である。本発明の望ましい態様は、容器内でどんな温度及び圧力条件が有効であっても溶媒の系を液相条件に維持して、フッ素化剤の素早い分解とそれによる発熱が起こるときに、蒸発潜熱を利用できるようにする。
【0025】以下の限定をしない例は、様々な溶媒中においてフッ素化活性が無効であることを示して、本発明の望ましさと利点を明らかにする。
【0026】例1〜5は、水性媒体中の様々な求電子性フッ素化剤の安定性を示している。求電子性フッ素化剤の安定性は、時間の関数としての「F+ 」活性を測定して定量的に評価することができる。求電子性フッ素化剤の劣化は「F+ 」活性の損失で明示されるので、この解析は、時間に対するフッ素化剤効力の減少の非常に厳密な測定を可能にする。
【0027】この例では「F+ 」活性は、一般的な「ヨウ素」解析法を使用して、時間に関して容易に測定された。この解析は、既知の量の所定のフッ素化剤を含む水溶液に、過剰のKIを添加することを含む。これは、以下の式1のように、全ての「F+ 」のI2 への定量的な転化をもたらす。
+ +2I- → I2 +F- (1)
【0028】その後、以下の式2のようなチオ硫酸塩水溶液による注意深い滴定によって、I2 を厳密に測定する。
2S2 3 2-+I2 → S4 6 2-+2I- (2)
【0029】この様に、式1で発生するヨウ素を注意深く測定することによって、「F+ 」含有率の測定が行える。以下の例のそれぞれにおいて引用される「F+ 」の値は、3回の解析の平均値である。
【0030】[例1]
水溶液でのSelectfluor(商標)フッ素化剤の安定性商業的なグレードのSelectfluor(商標)フッ素化剤、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、の飽和溶液をH 2O中で調製し、2つの別々の1リットルNalgeneポリエチレンボトルに周囲温度で貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、14日後に、その後、42日後と154日後に室温で測定した。結果を表1に示す。
表1:Selectfluor(商標)水溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
14日(溶液1) 0.43 初期値 14日(溶液2) 0.42 初期値 42日(溶液1) 0.42 2.3 42日(溶液2) 0.45 0 154日(溶液1) 0.40 7.0 154日(溶液2) 0.38 9.5 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0031】[例2]
水溶液でのAccufluor(商標)フッ素化剤(NFTh)の安定性20.06gの商業的なグレードのAccufluor(商標)フッ素化剤(NFTh)、1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)を、37.82gの脱イオンH 2Oに溶解させて溶液を調製した。この試料を、周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製して1日以内に、その後、9、16、24、31、37、そして43日後に室温で測定した。結果を表2に示す。
表2:Accufluor(商標)(NFTh)水溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 1.24 初期値 9日 1.25 0 16日 1.24 0 24日 1.23 0.8 31日 1.23 0.8 37日 1.22 1.6 43日 1.21 2.4 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0032】[例3]
水溶液でのNFQTフッ素化剤の安定性6.6gのNFQTフッ素化剤、N−フルオロ−キヌクリジニウムトリフラートを、37.25gの脱イオンH 2Oに溶解させて溶液を調製した。試料は、Nalgeneポリエチレンボトルに周囲温度で貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製して1日以内に、その後、9、16、22、そして28日後に室温で測定した。結果を表3に示す。
表3:NFQT水溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.55 初期値 9日 0.53 3.6 16日 0.54 1.8 22日 0.54 1.8 28日 0.54 1.8 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0033】[例4]
CH3 CN/H 2O溶液でのSelectfluor(商標)フッ素化剤の安定性9.00gの商業的なグレードのSelectfluor(商標)フッ素化剤、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)を、44.82gのCH3 CN/H2Oの50:50(体積分率)混合物に溶解させて溶液を調製し、そしてこの溶液を周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、7、15、21、そして29日後に室温で測定した。結果を表4に示す。
表4:Selectfluor(商標)のCH3 CN/H 2O溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.45 初期値 7日 0.44 2.2 15日 0.45 0 21日 0.44 2.2 29日 0.44 2.2 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0034】[例5]
CH3 CN/CH3 OH溶液でのSelectfluor(商標)フッ素化剤の安定性9.01gの商業的なグレードのSelectfluor(商標)フッ素化剤、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)を、39.26gのCH3 CN/CH3 OHの50:50(体積分率)混合物に溶解させて飽和溶液を調製し、そしてこの飽和溶液を周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、7、15、21、そして29日後に室温で測定した。結果を表5に示す。
表5:Selectfluor(商標)のCH3 CN/CH3 OH溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.11 初期値 7日 0.11 0 15日 0.11 0 21日 0.10 9.1 29日 0.11 0 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0035】これらの薬剤の溶媒安定化を示す例1〜5と比較すると、比較例6〜12は、水性媒体中における様々な求電子性フッ素化剤の不安定性を示し、従って比較例は、フッ素化活性の安定性が薬剤/溶媒格納の望ましさと利点を示唆するパターン又は教示を示さない。
【0036】[例6]
CH3 OH/H 2O溶液でのSelectfluor(商標)フッ素化剤の安定性9.00gの商業的なグレードのSelectfluor(商標)フッ素化剤、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)を、45.81gのCH3 OH/H2Oの50:50(体積分率)混合物に溶解させて飽和溶液を調製し、そして周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、7、15、21、そして29日後に室温で測定した。結果を表6に示す。
表6:Selectfluor(商標)のCH3 OH/H 2O溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.14 初期値 7日 0.11 21.4 15日 0.10 28.6 21日 0.09 35.7 29日 0.09 35.7 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0037】[例7]
CH3 CN/H 2O溶液でのSelectfluor(商標)フッ素化剤の中間体の安定性商業的に製造されたSelectfluor(商標)フッ素化剤への中間体、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンフルオライドテトラフルオロボレートのアセトニトリル飽和溶液(22.5重量%の固体を含む)に、7.49gの脱イオンH 2Oを添加した。得られた均質溶液を周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、8、16、22、そして28日後に室温で測定した。結果を表7に示す。
表7:Selectfluor(商標)の中間体のCH3 CN/H 2O溶液でのヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.34 初期値 8日 0.27 20.6 16日 0.22 35.3 22日 0.16 52.9 28日 0.14 58.8 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0038】[例8]
水溶液でのAccufluor(商標)(NFPy)フッ素化剤の安定性11.02gの商業的なグレードのAccufluor(商標)フッ素化剤(NFPy)、1−フルオロ−ピリジニウムピリジンヘプタフルオロジボレートを43.38gの脱イオンH 2Oに溶解させて溶液を調製した。この試料を、周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、8、16、22、そして28日後に室温で測定した。結果を表8に示す。
表8:Accufluor(商標)(NFPy)水溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.44 初期値 8日 0.18 59.1 16日 0.10 77.3 22日 0.04 90.9 28日 0.02 95.5 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0039】[例9]
水溶液でのNFPTFBフッ素化剤の安定性5.01gの商業的なグレードのNFPTFBフッ素化剤、1−フルオロ−ピリジニウムテトラフルオロボレートを、65.90gの脱イオンH 2Oに溶解して溶液を調製した。この試料を、周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、8、16、22、そして28日後に室温で測定した。結果を表9に示す。
表9:NFPTFB水溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.22 初期値 8日 0.07 68.2 16日 0.03 86.4 22日 0.01 95.5 28日 0.01 95.5 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0040】[例10]
水溶液でのNFPTフッ素化剤の安定性6.26gの商業的なグレードのNFPTフッ素化剤、1−フルオロ−ピリジニウムトリフラートを、48.31gの脱イオンH 2Oに溶解して溶液を調製した。この試料を、周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、8、16、22、そして28日後に室温で測定した。結果を表10に示す。
表10:NFPT水溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.19 初期値 8日 0.07 63.2 16日 0.02 89.5 22日 0.01 94.7 28日 0.01 94.7 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0041】[例11]
水溶液でのNFPDCTFBフッ素化剤の安定性6.45gの商業的なグレードのNFPDCTFBフッ素化剤、1−フルオロ−2,6−ジクロロピリジニウムテトラフルオロボレートを、49.27gの脱イオンH 2Oに溶解して溶液を調製した。この試料を、周囲温度でNalgeneポリエチレンボトルに貯蔵した。「F+ 」活性を、初めに、調製してから1日以内に、その後、8、16、22、そして28日後に室温で測定した。結果を表11に示す。
表11:NFPDCTFB水溶液のヨウ素解析結果 調製からの日数 「F+ 」滴定濃度 変化の割合a (%)
(mmol/mL)
1日以内 0.20 初期値 8日 0.19 5.0 16日 0.19 5.0 22日 0.17 15.0 28日 0.16 20.0 注a:初期値からの変化の割合であって、正の変化は「0」としてある。
【0042】[例12]
水溶液でのSynFluor(商標)フッ素化剤の安定性9.27gの商業的なグレードのSynFluor(商標)フッ素化剤、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)を49.22gの脱イオンH 2Oと混合して水溶液を調製することを試みた。しかしながら、これら2つの成分の混合において、激しいかなりの発熱反応が起こり、プラスチックの混合ボトルを素手で扱うことができないほど溶液が加熱した。1分後に、試料は完全に固化して褐色の塊になった。この褐色の塊の「F+ 」活性は、全てのフッ素化能力が失われていることを示した。
【0043】[例13]
閉鎖系での熱解析による求電子性フッ素化剤水溶液の安定性評価溶解した求電子性フッ素化剤の安定性は、様々な条件下で溶液の熱特性を測定することによっても評価できる。この例では、水溶液の熱特性を、Radex−Solo Thermal Hazards Screening System(Radex)を使用して測定した。この機器分析法は、熱流束に関する信号と、密封セル装置内の圧力の測定値とを与える。
【0044】水溶液中のフッ素化剤の熱特性を評価するために、密封セル内の窒素ヘッド圧力を約85psig(687.4kPa)にし、それによって吸熱的な水の沸騰を抑制する。従って、フッ素化剤を含む溶液を分解の開始まで加熱し、その後、含有されるフッ素化剤が完全に熱分解されるまで加熱を続けることを可能にすると、この特定の解析から得られるデータは、放出することができる全ての潜在的な熱(含有される物質の重量に基づいて)の測定結果を与える(水の蒸発による熱の吸収を全く無くして)。
【0045】表13では、Selectfluor(商標)、Accufluor(商標)、NFQT、及びSelectfluor(商標)への中間体、いわゆるFTEDA(F)(BF4 )の水溶液でのRadex測定の結果を示す。これらのデータは、図1において図示する。
表13:様々な求電子性フッ素化剤の水溶液でのRadex測定の結果【表1】

注a:発熱的な分解が始まる温度注b:標準化された熱は、1Mの濃度に標準化された水溶液1g当たりで放出される熱である。
【0046】表13のデータから、FTEDA(F)(BF4 )を含む水溶液は、熱分解開始温度が最も低いので、測定されたものの中で最も不安定であることが明らかである。Selectfluor(商標)及びAccufluor(商標)はほぼ等価であり、NFQTは最も安定であり最も高い開始温度を示す。
【0047】図2は、表13に要約したRadex測定に対応する圧力対温度のオーバーレイプロットである。図3は比較のためのものであり、純粋な水での圧力対温度のプロットを示す。これら2つのプロットを比較すると、「F+ 」化合物の分解の間に系の圧力は実質的に増加せず、事実、圧力曲線が単に温度の上昇に伴って、水の蒸気圧の増加と同じ程度で増加することが、これらの曲線から明らかである。
【0048】[例14]
開放系での熱解析による求電子性フッ素化剤水溶液の安定性評価ベントされた容器での模擬的な分解条件下でフッ素化剤水溶液の熱安定性を評価するために、Selectfluor(商標)、Accufluor(商標)、NFQT、及びSelectfluor(商標)への中間体、いわゆるFTEDA(F)(BF4 )の水溶液でのRadex測定を開放セルで行った。この解析において、解放セルで周囲温度〜350℃まで2℃/分の速度で試料を加熱し、フッ素化剤の分解及び全ての水の完全な蒸発を行った。試料を分解の開始まで加熱し、その後、含有されるフッ素化剤が完全に熱分解されるまで加熱し続けることを可能にするので、この特定の解析から得られたデータは、所定フッ素化剤水溶液中の全正味熱流束の測定値を与え、且つフッ素化剤分解の発熱と水の蒸発に起因する吸熱(潜熱は、100℃で2,259J/g)の合計を表す。これらの測定から得られたデータを表14に要約する。
表14:様々な求電子性フッ素化剤水溶液でのRedex測定の結果 「F+ 」薬剤 試料重量(g) 測定された熱( J/g) Selectfluor(商標) 2.52 −1094 Accufluor(商標) 2.51 −498 NFQT 2.52 −1262 FTEDA(F)(BF4 ) 2.51 −358【0049】表14において、試料1グラム当たりのジュールで表される「測定された熱」は、実験の間に測定される正味の熱であり、負の数字は正味の吸熱工程を示し、正の数字は正味の発熱工程を示す。表14のデータから、それぞれの「F+ 」薬剤の水溶液で、水の沸騰及び気化に起因する熱の取り込み又は吸収は、「F+ 」薬剤の分解に起因する全ての熱の発生量を超え、従って、測定された熱量のそれぞれは負の数字であることが明らかである。これらの水溶液の加熱の正味の結果は吸熱である。言い換えると、水の存在は、開始することがある全ての発熱工程を圧倒する大きな「冷却」効果を持つ。これらの水溶液は350℃までの温度で全ての水が蒸発するまで、自己促進分解に関して安全である。
【0050】ある濃度以上ではフッ素化剤の分解発熱が蒸発する溶媒の吸熱効果を超えるフッ素化剤の濃度の最大値があり、それが、本発明の安全な上限を確立する最大フッ素化剤濃度である。Selectfluor(商標)での特定の場合には、純粋な化合物での全分解熱は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定され、分解された固体1g当たりの熱放出は977ジュールであった。この値を純粋なH2Oの蒸発潜熱の文献値、−2259J/g(蒸発によって取り除かれる熱量)と組み合わせて使用すると、以下のような代数的な関係を確立することができる。
分解による発熱+蒸発による吸熱=正味の観察される熱 (1)
【0051】「分解による発熱」に977J/gを代入し、そして純粋なH 2Oの蒸発潜熱を−2259J/gとすると、100x%のフッ素化剤と100(1−x)%のH 2Oを含む任意の混合物で観察される正味の熱の式は以下の式(2)のようになる。
977x+(1−x)(−2259)=観察される正味の熱 (2)
【0052】観察される正味の熱を0にするH 2O中のフッ素化剤の最大濃度を確立するためには、式(2)をxについて解くだけでよい。
977x+2259x−2259=0 (3)
∴3236x−2259=0=観察される正味の熱 (4)
∴3236x=2259 x=0.7【0053】x>0.7の場合、式(4)にx=0.71を代入すると、3236(0.71)−2259=38.56J/g正味の熱は正の値なので、これは系が正味の熱を放出することを示す。
【0054】x<0.70の場合、式(4)にx=0.69を代入すると、3236(0.69)−2259=−26.16J/g正味の熱は負の値なので、これは系が正味の熱を吸収することを示す。
【0055】従って、一般に、70重量%未満のフッ素化剤を含有するH 2O中のSelectfluor(商標)の混合物の全てが安全な媒体を提供し、この系は、加熱の間でさえも、溶媒の吸熱冷却効果によって「無制御」加熱から保護されている。あるいは、70重量%を超えるフッ素化剤を含むH 2O中のSelectfluor(商標)の混合物の全てが、加熱の間に、分解する固体フッ素化剤の発熱に起因する「無制御」加熱を示す可能性を持つ媒体を提供する。
【0056】蒸発潜熱と分解熱の値がそれぞれ既知の場合に、異なる溶媒と異なるフッ素化剤について上述の計算を繰り返すことができ、これらの値は以下の式(5)に代入することができる。
x(分解熱)+(1−x)(ΔHvap )=正味の観察される熱 (5)
【0057】Selectfluor(商標)の場合に、分解熱を977J/gとし、いくつかの溶媒を使用して、特定の溶媒中のこのフッ素化剤の最大濃度値(式(5)のx)を計算し、結果を表15に要約した。
表15:いくつかの溶媒中において正味の観察される熱が0になるSelectfluor(商標)の最大濃度 溶媒 ΔHvap (J/g) 式(5)による「x」の最大値 (重量%)
アセトニトリル −745 43% メタノール −1075 52% エタノール −841 46% 塩化メチレン −331 25%【0058】Accufluor(商標)の場合、分解熱を1452J/g(DSCによる3回の試験の平均値)とし、いくつかの溶媒を使用して、特定の溶媒中のこのフッ素化剤のために、最大濃度値(式5のx)を計算し、結果を表16に要約した。
表16:いくつかの溶媒中において正味の観察される熱が0になるAccufluor(商標)の最大濃度 溶媒 ΔHvap (J/g) 式(5)による「x」の最大値 (重量%)
水 −2259 60% アセトニトリル −745 33% メタノール −1075 42% エタノール −841 36% 塩化メチレン −331 18%【0059】上述のように、主に、求電子性フッ素化剤が熱劣化に対して感受性であり、また環境条件において稀釈されていない固体の形で「F+ 」活性をゆっくりと減少させるので、産業界では、これらの薬剤の貯蔵、輸送、及び引き渡しの安全で効率的な手段が一般に求められている。
【0060】例1〜5は、水性溶媒及び水性/有機溶媒中において、3つの異なる第4求電子性フッ素化剤(N+ −F部分を有する)、Selectfluor(商標)、Accufluor(商標)、及びNFQTの著しい安定性を示す。例6〜12は、水性媒体及び水性/有機媒体中において、様々な求電子性フッ素化剤の不安定性を明らかにする比較例である。特に、例6は、Selectfluor(商標)が、メタノール/水中において、単独の水の中又はメタノール/アセトニトリル中におけるほど安定でないことを示している。例7は、Selectfluor(商標)への中間体は、水/アセトニトリル溶媒中においてSelectfluor(商標)よりもかなり不安定であることを示している。ここで、Selectfluor(商標)への中間体のSelectfluor(商標)との違いは、Selectfluor(商標)のテトラフルオロボレートイオン(BF4 - )の位置にフッ素イオン(F- )が存在することのみである。例8〜12は、様々なピリジニウムに基づく求電子性フッ素化剤が、水溶液中で非常に不安定であり、これらの中で最も安定なNFPTでさえも、水溶液中では非常に素早く劣化してしまうことを示している。
【0061】例1〜12は、「F+ 」活性の保存又は損失に関して、水性溶媒及び水性/有機溶媒系中の求電子性フッ素化剤の安定性と不安定性を評価している一方で、例13と14は、「F+ 」活性の保存性とは別に、水溶液に含有される求電子性フッ素化剤の安定性と固有の安全性の証拠を提供する。例13と14のデータは、「F+ 」活性については言及していないが、これらの溶液が熱無制御反応又は自己促進分解反応に関して安全であることを示している。
【0062】
【発明の効果】本発明の価値は、これらの商業的な求電子性フッ素化薬剤を安全に「収容」又は「格納」する経済的な手段を提供し、それによって、これらの試薬を、これらのパッケージでもって且つ容易に及び直接使用できる形、すなわち溶液で、また場合によっては「F+ 」活性の損失をなくして、容易に貯蔵及び輸送することである。更に、これらの溶液は水及び有機溶媒の混合物であってよく、それによって、消費者が更なる変更を行わずに直接フッ素化工程で溶液を使用できるようにする。最も重要なのは、含有される活性なフッ素化剤に対して溶液媒体が非常に大きな熱吸収能力を持つので(液体の蒸発潜熱に起因する)、溶液媒体が貯蔵及び輸送のためにかなりの安全率を提供することである。
【0063】本発明を、いくつかの好ましい態様に関して挙げてきたが、本発明の全体の範囲は特許請求の範囲で確認すべきである。
【出願人】 【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エアー.プロダクツ.アンド.ケミカルス.インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【出願日】 平成11年9月28日(1999.9.28)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外4名)
【公開番号】 特開2000−103748(P2000−103748A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平11−274761