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【発明の名称】 アシル化方法
【発明者】 【氏名】村上 健

【氏名】岡庭 憲一郎

【氏名】池洲 悟

【要約】 【課題】有機溶媒を使用することなく行えるアシル化方法を提供すること。

【解決手段】大気圧以上に加圧可能な容器内で100℃以上に加熱された水を反応媒体として、一般式[I]で表されるアミン化合物のアミノ基を一般式[II]で表されるアシル化剤によってアシル化するアシル化方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】大気圧以上に加圧可能な容器内で100℃以上に加熱された水を反応媒体として、下記一般式[I]で表されるアミン化合物のアミノ基を下記一般式[II]で表されるアシル化剤によってアシル化することを特徴とするアシル化方法。
一般式[I]
Ar−NH2[式中、Arはアリール基または芳香族複素環基を表す。]
一般式[II]
R−COX[式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは脱離基を表す。]
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アシル化剤を用いてアミン化合物のアミノ基をアシル化する方法に関し、更に詳しくは、有機溶剤を使用せずに、アシル化剤を用いてアミン化合物のアミノ基をアシル化する方法に関する。
【0002】
【発明の背景】アシル化されたアミン類は、写真用その他の用途に使用する化合物として、また、これら化合物を合成する中間体として重要な物質である。
【0003】従来、アシル化されたアミン類の合成には、ジメチルホルムアミドの他、ニトリル類(アセトニトリル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、炭化水素類(トルエン、キシレン等)等の有機溶媒が使用されていた。しかしながら、そのような有機溶媒の使用は、化合物を効率よく合成することができるが、高価な有機溶媒の使用はコストを高め、また、有機溶媒は環境問題の点から廃棄が困難になってきており、回収及び廃棄にかかる費用も高く問題があった。
【0004】液体や気体の状態にある物質を高温、高圧にすると、気相と液相の密度が等しくなり、液体と気体の区別ができない流体になる。これが超臨界流体で、液体のように物質を溶かす性質に加え、気体のようにどこにでも入り込んで高い浸透性と流動性を示す。
【0005】これら超臨界流体を利用して種々の反応を行う技術が開発されてきている。これら技術として、超臨界水を使った有害物質の無害化処理の技術がある。水を374.1℃、22.12MPa以上にすると超臨界水となり、汚染された土壌や焼却灰は、無害な二酸化炭素(CO2)や塩酸、無機塩などに分解される。
【0006】また、ダイオキシンや特定フロンといった有機塩素化合物を分解することも行われている。
【0007】また、合成反応に超臨界二酸化炭素を用いることも開発されており、例えば、超臨界二酸化炭素を溶媒に使用し、環状アルキリデングリセロールと脂肪酸から、固定化リパーゼを充填した反応カラムと分離剤を充填した分離精製カラムを用いて合成及び未反応脂肪酸の除去を行い環状アルキリデングリセロールアシルエステルを製造することが特開平7−67677号公報に、超臨界二酸化炭素雰囲気下で、一級テルペンアルコールと脂肪酸のエステル化反応を、リパーゼ酵素を固定化した粉末を充填した反応器内で連続的に行うことが特開平9−283号公報に、超臨界状態の二酸化炭素を反応媒体として、フリーデルクラフツ触媒を用い、芳香族化合物とアシル化剤を反応させて芳香族アシル化合物を製造することが特開平9−59205号公報に記載されている。
【0008】超臨界流体の応用方として、水による有機物の分解や二酸化炭素による天然物・混合物からの有効成分や有害物の抽出などの例は非常に多いものの、化学反応の場としての活用例は未だ多くはない。超臨界流体の特殊な物性、即ち、大きな溶解性、浸透性、また、水における特殊な解離状態、誘電率の変化等を活用することにより、常温常圧下では得られない反応性を示すことが期待される。
【0009】そこで、本発明者らが検討したところ、従来用いられていた有機溶媒を使用しなくても、超臨界状態の水を反応媒体として使用することにより、アミン類のアシル化が行えることが判明した。更に、超臨界状態になるまで加熱しなくても100℃以上に加熱された水であれば、これをを反応媒体として使用することにより、アミン類のアシル化が行えることも判明した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、有機溶媒を使用することなく行えるアシル化方法を提供することにある。
【0011】
【発明が解決するための手段】本発明の上記目的は、大気圧以上に加圧可能な容器内で100℃以上に加熱された水を反応媒体として、下記一般式[I]で表されるアミン化合物のアミノ基を下記一般式[II]で表されるアシル化剤によってアシル化することを特徴とするアシル化方法。
一般式[I]
Ar−NH2[式中、Arはアリール基または芳香族複素環基を表す。]
一般式[II]
R−COX[式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは脱離基を表す。]によって達成された。
【0012】以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】本発明のアシル化方法は、一般式[II]で表されるアシル化剤によって一般式[I]で表されるアミン化合物のアミノ基をアシル化するものであって、アシル化によって、下記一般式[III]で表される化合物が合成される。
一般式[III]
Ar−NHCO−R[式中、Arはアリール基または芳香族複素環基を表し、Rはアルキル基、シクロアルキル基またはアルケニル基を表す。]
一般式[I]、[II]及び[III]について説明する。
【0014】Arで表されるアリール基としては、炭素数6から14までのアリール基(例えば、フェニル基、1−ナフチル基、9−アントラニル基等)が挙げられる。
【0015】これらアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基は特に制限はなく種々のものであってもよいが、代表的な置換基としては、アルキル基、アリール基、アニリノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルケニル基、シクロアルキル基等の各基が挙げられるが、この他にハロゲン原子及びシクロアルケニル基、アルキニル基、複素環基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスホニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルキルアミノ基、イミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシ基、ニトロ基、スルホ基等、ならびにスピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基等も挙げられる。
【0016】芳香族複素環基としては、例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ベンゾチアゾール基等が挙げられる。
【0017】これら芳香族複素環基はさらに置換基を有していてもよい。置換基は特に制限はなく種々のものであってもよいが、代表的な置換基としては、先に、アリール基が有していてもよい置換基として挙げた置換基を挙げることができる。
【0018】また、Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ドデシル基、iso−ヘキサデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2−ドデセニル基等が挙げられる。
【0019】これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基は特に制限はなく種々のものであってもよいが、代表的な置換基としては、先に、アリール基が有していてもよい置換基として挙げた置換基を挙げることができる。
【0020】Xで表される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)等を挙げることができる。
【0021】以下に、一般式[I]で表されるアミン化合物の具体例、一般式[II]で表されるアシル化剤の具体例、および、本発明のアシル化方法によって得られる一般式[III]で表される化合物の具体例を示すが、該具体例の記載は、本発明を限定するものではない。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

一般式[I]で表されるアミン化合物のアミノ基のアシル化に当って、一般式[II]で表されるアシル化剤は、一般式[I]で表されるアミン化合物1モル当り、0.7〜2モルの範囲で使用することが好ましく、1.0〜1.5モルの範囲とすることが特に好ましい。
【0029】次に、本発明のアシル化方法において、大気圧以上に加圧可能な容器内で100℃以上に加熱された水が反応媒体として用いられるが、反応温度は100〜400℃が好ましく、特に、100〜300℃が好ましい。反応温度が低すぎる場合には反応速度が遅く、高すぎる場合には分解反応や副反応が生じやすくなる。
【0030】また、好ましい温度と圧力の範囲には、いわゆる臨界点及び超臨界状態を含み得る。臨界点とは周知の通り溶媒の気相と液相の密度が一致し、気体と液体の性質を合わせ持ちその区別がなくなる温度(Tc)、圧力(Pc)をいう。水においては、Tc=374.1℃、Pc=22.12MPaであり、そのときの流体の密度(Dc)はDc=0.315g/cm3である。超臨界状態とは温度・圧力がTc、Pc以上の状態をいい、水においては解離常数や誘電率が大きく変化することが知られており、条件によっては有機溶媒的な性質も帯びる。
【0031】反応時間は一般式[I]、[II]で表される化合物の種類、量、反応温度並びに反応条件により異なるが、通常は数分から24時間の間である。
【0032】反応で生成した化合物は、そのまま次段の反応に使用することができ、また、反応終了後、常法により、例えば、再結晶によって容易に分離・精製して取得することができる。
【0033】
【実施例】以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0034】実施例1〜4、比較例1、2容量10mLの回分式オートクレーブ(SUS−316製)に、表1に記載した量の2−メトキシ−5−ニトロアニリン(MNA)、三級ブチルカルボニル酢酸メチルエステル(tBu−deriv)、水を充填密閉し、シリコンオイルバスを用いて、表1に記載した温度で1時間加熱した。次いで、オートクレーブを水浴に投入して常温にまで急冷して反応を停止させ、オートクレーブを徐々に開封した。オートクレーブ内に残った固形物および水から有機成分を酢酸エチルで抽出し、次いで、常法に従って液体クロマトグラフィーにより目的生成物であるアシル化体を定量し、2−メトキシ−5−ニトロアニリン(MNA)を基準とする収率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0035】
【化8】

【0036】
【表1】

【0037】表1の結果によれば、オートクレーブヘの充填量に関係なく、水の沸点以上に加熱し反応させること、即ち、加熱・加圧下で反応させることによって、従来、反応物を溶解しうる有機溶媒中で行われているアシル化反応が、水溶媒系においても進行することがわかる。
【0038】実施例5容量10mLの回分式オートクレーブ(SUS−316製)に、2−メトキシ−5−ニトロアニリン(MNA)3ミリモル、三級ブチルカルボニル酢酸メチルエステル(tBu−deriv)3.6ミリモル、水3gを充填密閉し、シリコンオイルバスを用いて、200℃で1時間加熱した。次いで、オートクレーブを水浴に投入して常温にまで急冷し、反応を停止させ、オートクレーブを徐々に開封した。反応によって生成したメタノールを蒸留除去し、残った成分に失われた水分を補充し、再びシリコンオイルバスを用いて、200℃で1時間加熱した。次いで、オートクレーブを水浴に投入して室温にまで急冷して反応を停止させ、オートクレーブを徐々に開封し、オートクレーブ内に残った固形物および水から有機成分を酢酸エチルで抽出し、次いで、常法に従って液体クロマトグラフィーにより目的生成物であるアシル化体を定量し、2−メトキシ−5−ニトロアニリン(MNA)を基準とする収率を求めた。収率は72.3%であった。
【0039】実施例3及び5の比較から、反応途中において、副生成物であるメタノールを除去することにより、反応が進行し、収率を高めることができることがわかる。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、有機溶媒を使用することなくアシル化反応を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカ株式会社
【出願日】 平成10年8月6日(1998.8.6)
【代理人】 【識別番号】100094710
【弁理士】
【氏名又は名称】岩間 芳雄
【公開番号】 特開2000−53591(P2000−53591A)
【公開日】 平成12年2月22日(2000.2.22)
【出願番号】 特願平10−235043