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【発明の名称】 断熱性軽量化磁器の製造方法
【発明者】 【氏名】加藤 悦朗

【氏名】小林 雄一

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】磁器化可能な坏土組成物に、30μm以下の澱粉粒子を5wt%〜25wt%の範囲で添加混合し、澱粉の粒状を維持したまま混合物を成形し、澱粉粒子を酸化燃焼させた後、焼結緻密化して5μm〜25μmの無数の独立気孔を形成することを特徴とする断熱性軽量化磁器の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、湯呑、徳利やビール容器など、保温保冷性を重視する磁器食器に適用して価値を発揮する、非吸水性の断熱性軽量化磁器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、湯呑や徳利などの磁器食器は、非吸水性で衛生的ではあるが、熱伝導性が高く、熱湯の入った食器は持つとき手に熱過ぎたり、また短時間に内容物が冷めたりする欠点があった。一方、吸水性のある陶器は、素地が比較的多孔質であるため断熱性は磁器に勝るが、吸水性があり、釉薬を施したものが利用されているがなお衛生上問題があった。従って、多孔質軽量でしかも非吸水性を保つ磁器質の食器が望まれていた。
【0003】一方、焼結体を軽量化させる目的のために、断熱レンガなど粗雑な成形体に大鋸屑(おがくず)を混合し、焼成して軽量化する方法は従来行われているが、焼結体は極めて吸水性となる。また微粒子成形物に対しては、焼成過程で成形体を膨張破壊することのないように、加熱により軟化収縮する発泡スチロール粒子や有機物微小バルーンなどプラスチック微粒子を添加混合して、焼成し、軽量化して断熱性を高める方法も従来行われた。しかしながらプラスチック性微粒子は水に対する濡れ性が悪く、水性スラリー中に均一に分散し難く、一般にこのような混合物からの成形物では、プラスチック性微粒子は比較的少量の添加で焼結体中の気孔の連続性が高く非吸水性を保つことが困難になり、また同様の理由から強度も大きく劣化し、断熱性の高い、軽量化した、非吸水性磁器質の食器は現在まだ製造されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、強度を劣化させない微小な独立気孔を均一に分散させた、極めて特徴的な非吸水性の断熱軽量化磁器を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】このため本発明では、磁器化可能な坏土組成物に、30μm以下の澱粉粒子を5wt%〜25wt%の範囲で添加混合し、澱粉の粒状を維持したまま混合物を成形し、澱粉粒子を酸化燃焼させた後、焼結緻密化して5μm〜25μmの無数の独立気孔を形成することを特徴とする。
【0006】。
【作用】本発明者らは、現在市販されている各種の磁器素地の強度の測定を続けているうちに、ある程度以下のマイクロポア(微細気孔)は孤立しているかぎり強度の低下が比較的小さい点に着目し、多くの有機物微粒子を坏土に混入し、焼成により消失させて孤立微細気孔を素地中に導入する実験、即ち非吸水性を保ったまま多数の球状の微小独立気孔を焼結体素地中に生成する実験を行ってきた。このためには、有機物微粒子は親水性で磁器坏土と混合し易く、焼成過程では溶融することなく、また過剰な膨張により素地を破壊することなく、最初の混合状態を焼結過程中維持させることが必要である。
【0007】本発明者らは多数の実験を繰り返した結果、澱粉粒子を、その粒形を破壊しないように冷水とともに混合する方法が最も優れた結果が得られることを発見した。澱粉粒子は温湯によって破壊されて糊となり、従来、糊として素地中に少量混合することは試みられたことはあるが、堅い表皮で囲まれた球状粒子を粒子としてそのまま大量に素地と混合し、独立気孔を形成するために利用した例はない。この球状粒子は温度が50℃以下では比較的安定にその形状を保ち、また親水性であるため、陶磁器スラリー中に孤立して分散し易く、均一な分散混合が得られ、焼成過程で素地の形状を破壊することなく分解して炭素となり、そのまま酸化消失して極めて優れた独立微小気孔の導入材となることが分かった。
【0008】澱粉粒子の大きさは、母体となる植物の種類によって異なり、粒径2μm〜170μmの範囲のものが得られるが、30μm以上の澱粉粒子は成形物を粗雑化し、焼成過程で膨張によって素地を傷め易く、また生成残留する気孔が大きく、それが破壊源となって著しく強度を劣化させる。また5μm程度以下の微粒子によって生成される微小気孔は焼結過程で消滅し、効果的な独立気孔として残留する割合が少なく有効に作用しない。多くの澱粉粒子は使用に先立ち篩別する必要があるが、玉蜀黍澱粉、すなわちコンスターチは粒径約10μm〜15μm程度で、20μm以上の粒子を殆ど含有せず、篩別する必要がなく直接そのまま使用しても殆ど破壊源になることのない約5μm〜25μmの無数の独立気孔を生成し、本発明の目的に最も適していることが分かった。
【0009】澱粉粒子の添加量は、当然多いほど嵩密度が低下し軽量化できるが、次第に強度も低下し、吸水率も増大し始める。玉蜀黍澱粉粒子では添加量4wt%で明瞭な嵩比重低下の効果があり、澱粉粒子添加量16wt%で、嵩密度が通常の磁器の8割程度(1.9g/cm程度)まで下がり、しかもなお吸水率は0.25%以下と殆ど非吸水性であることが分かった。しかし、澱粉粒子添加量が20wt%以上になると、次第に非吸水性が失われて、磁器というより陶器となる。従って本発明の目的を達することために適当な領域は澱粉粒子添加量が最大25wt%程度が限度となる。
【0010】本発明では、粒子径5μm〜30μmの澱粉微粒子が非吸水性を維持したまま磁器を軽量化するために不可欠であるが、この粒子径範囲に相当するプラスチックの球状微粒子はまだ製造されていない。またもし製造されても、一般にプラスチック微粒子は帯電し易く、中空微粒子は空気中に舞い上がり、極めて取り扱い難く、また疎水性で、親水性のセラミック粉末微粒子の水性スラリーとの混合分散性が悪く、均一な混合泥漿が得難く、流し込み成形することが不可能であり、またフィルタープレスなどの脱水操作も著しく困難となり、焼成過程で発泡を起こしやすいなど、多くの欠点がある。これに対し、澱粉微粒子は親水性で、均一な混合泥漿が得られ、流し込み成形が可能であり、また同じ理由から、練り土状態の可塑性が高く、成形性が極めて優れる特徴がある。また焼成過程で燃焼による悪臭や、ダイオキシンの発生が無いことも実用上大きな特長である。
【0011】以下、実験室的な実施例に従って、本発明の製造方法をさらに詳細に説明するが、本発明方法はこれに限定されるものではない。
【0012】
【実施例1】蛙目粘土を30wt%、カオリンを10wt%、インド長石を30wt%、及び珪石粉末30wt%からなる原料配合物を使用して試験用磁器坏土を調整した。これは市販の一般磁器坏土とほぼ同様のものである。添加する澱粉粒子としては、平均粒子径が15μmの市販の玉蜀黍澱粉を使用した。図1にこの澱粉粒子の粒径分布を示した。
【0013】予めセラミック原料のみを水と共にボールミルにより十分湿式粉砕混合することによってスラリーとし、これに玉蜀黍澱粉粒子を種々の割合(乾燥重量で0〜20wt%)で添加し、それぞれ十分撹拌混合し、スラリーは目開き径44μmの篩いを通してから脱水して坏土とした。粒径分布曲線から玉蜀黍澱粉粒子は殆ど総て篩いを通過した。澱粉粒子を添加した各坏土は、再び一定量の水と分散剤を加えて混合して流し込み成形用のスラリーを調製し、さらに真空脱泡した後、石膏型に流し込んで密度並びに吸水率測定用の各種試料を成形した。成形物はそれぞれ、空気中電気炉で1300℃、1時間焼成した。
【0014】得られた各焼成物に対する測定結果を、図2に示した。平均粒子径15μmの玉蜀黍澱粉粒子の添加量の増加によって、焼成素地は次第に軽くなり、16wt%の添加により嵩密度が1.9g/cm程度まで下がっても、吸水率は0.25%以下であり、通常の磁器素地に比較すれば極めて軽量となった。図3に玉蜀黍澱粉粒子を12wt%の添加焼成素地の研磨面の顕微鏡写真を示す。大きさが約10μm程度の極めて微細な独立気孔が均一に分布している状況が明瞭に示されている。
【0015】
【発明の効果】従来、一般に使用されている湯呑や徳利などの磁器食器は当然緻密質で、熱伝導度が高く、熱湯などを入れた場合指先に熱く、また保温保冷性に劣る欠点があったが、30μm以下のの澱粉微粒子を添加することで、生産工程に特別な変化を与えることなく、無数の微小独立気孔が素地中に導入され、軽量化され、断熱性保温保冷性の高い食器用の非吸水性軽量化磁器が工業的に提供できる。
【出願人】 【識別番号】591149355
【氏名又は名称】加藤 悦朗
【出願日】 平成10年6月15日(1998.6.15)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−1379(P2000−1379A)
【公開日】 平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願番号】 特願平10−205758