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【発明の名称】 鉄鋼精錬用浸漬構造体
【発明者】 【氏名】後藤 潔

【氏名】中村 壽志

【氏名】藤井 哲郎

【氏名】尾花 豊康

【要約】 【課題】高耐用で鋼中介在物が付着し難い鉄鋼精錬用浸漬構造体を提供する。

【解決手段】芯金2の内周7、外周8及び下端9に耐火物を施工した鉄鋼精錬用浸漬構造体において、少なくとも下端9の耐火物を、炭素2〜15重量%、Al、Si、Al合金、Si合金から選ばれる一種あるいは二種以上の金属3〜12重量%を含み、残部がマグネシアを主体とした耐火性配合物に、液状樹脂を前記耐火性配合物に3〜13重量%添加した不定形耐火物6とする。前記耐火性配合物が、さらに炭化珪素20重量%以下、炭化硼素10重量%以下、及び硼化カルシウム10重量%以下のうち1種又は2種以上を含むことは好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 芯金の内周、外周及び下端に耐火物を施工した鉄鋼精錬用浸漬構造体において、少なくとも下端の耐火物が、炭素2〜15重量%、Al、Si、Al合金、Si合金から選ばれる一種あるいは二種以上の金属3〜12重量%を含み、残部がマグネシアを主体とした耐火性配合物に、液状樹脂を前記耐火性配合物に3〜13重量%添加した不定形耐火物であることを特徴とする鉄鋼精錬用浸漬構造体。
【請求項2】 前記耐火性配合物が、さらに炭化珪素20重量%以下、炭化硼素10重量%以下及び硼化カルシウム10重量%以下の1種又は2種以上を含む請求項1記載の鉄鋼精錬用浸漬構造体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄鋼精錬において下方を溶銑あるいは溶鋼中に浸漬して使用される構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年鉄鋼業では、高級鋼の生産比率増加に伴って、二次精錬設備の重要性が高まっている。二次精錬設備の一つで溶鋼の真空脱ガス設備であるRHは、極低炭素鋼などの生産に欠かせない特に重要な設備の一つである。
【0003】RHは円筒状の槽の下端面に二本のパイプ状の浸漬管が付いた構造となっており、浸漬管下方を取鍋内の溶鋼に浸漬し、槽内を真空にして溶鋼を吸い上げ、さらに一方の浸漬管の内面からアルゴンガスを吹き込み、その浮上力によって溶鋼を循環させ、連続的に溶鋼の脱ガス処理を行う。また、簡易な二次精錬設備であるCASやSABは、釣鐘状の槽の下方を取鍋内の溶鋼に浸漬し、合金添加等の処理を行う。
【0004】RHの浸漬管も、CASやSABの下端も、溶鋼に処理を行うために溶鋼中に浸漬されるので、これらの浸漬管や槽を浸漬構造体と呼ぶ。浸漬構造体は二次精錬設備に固有なものとは限らず、溶銑予備処理工程などでも使用される場合がある。
【0005】浸漬構造体の代表としてRHの浸漬管を例に取り、その構造と損耗機構について説明する。図1に示すように、芯金2の内周7、外周8及び下端9に耐火物が設けられている。そして各部位の耐火物の一般的な材質は、内周がマグネシア−クロム(マグクロ)質などのれんが4、下端と外周は不定形耐火物6であるが、特開平7−51821号公報に外周のスラグライン部にマグネシア−カーボン質の定型れんがと不定形耐火物を使用した例が記載されているように、外周に高耐用性のれんがを配置する場合もある。
【0006】下端に不定形耐火物6を使用する理由は、下端部には芯金に取り付けられたれんがを支持するための受金物5があり、金物を隙間なく覆って保護するためにはれんがは適当でなく、狭くて複雑な形をした隙間に簡単に施工できる不定形耐火物が好適なためである。
【0007】浸漬管は溶鋼に繰り返し浸漬されるため、不定形耐火物6には熱衝撃に起因する亀裂が生じ、部分的に剥落したり、溶鋼が亀裂を通じて芯金2に達してこれを溶損し、広範囲に耐火物が脱落することもある。また、不定形耐火物6は取鍋の溶鋼上のスラグによっても溶損され、こうした不定形耐火物6の損耗が浸漬管寿命を決定するのが普通である。
【0008】RHの浸漬管に限らず、浸漬構造体の下端には不定形耐火物が使用されており、構造体の寿命は不定形耐火物の損耗で決まることが多い。そこで、ここに使用される不定形耐火物は、耐食性と耐スポール性の優れたものとして、ハイアルミナ質、アルミナ質、アルミナ−スピネル質、アルミナ−マグネシア質などのアルミナを主成分とし、水を混練剤として使用する材質が使用されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述の通り、下端の不定形耐火物の損耗は、浸漬構造体全体の寿命に大きな影響を及ぼす重要な要因である。従って、その損耗を抑制できれば、浸漬構造体の寿命を延長することができる。
【0010】しかしながら、従来のアルミナを主成分とする不定形耐火物にはアルミナ系の鋼中介在物が付着して成長しやすく、浸漬構造体の内孔閉塞や下端が長くなる脚伸び現象などが起こり、鉄鋼精錬処理時の障害となっている。また、付着物除去作業に伴う耐火物の破損あるいは炉の稼働率低下などの問題がある。
【0011】そこで本発明は、アルミナ系の鋼中介在物が付着しにくく、損耗が少なくて寿命の長い鉄鋼精錬用浸漬構造体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は以下の(1)、(2)の通りである。
【0013】(1) 芯金の内周、外周及び下端に耐火物を施工した鉄鋼精錬用浸漬構造体において、少なくとも下端の耐火物が、炭素2〜15重量%、Al、Si、Al合金、Si合金から選ばれる一種あるいは二種以上の金属3〜12重量%を含み、残部がマグネシアを主体とした耐火性配合物に、液状樹脂を前記耐火性配合物に3〜13重量%添加した不定形耐火物であることを特徴とする鉄鋼精錬用浸漬構造体。
【0014】(2) 前記耐火性配合物が、さらに炭化珪素20重量%以下、炭化硼素10重量%以下及び硼化カルシウム10重量%以下の1種又は2種以上を含む前記(1)の鉄鋼精錬用浸漬構造体。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の浸漬構造体は、少なくともその下端に損耗が少なく、かつアルミナ系介在物が付着し難い不定形耐火物を使用した。
【0016】損耗し難い不定形耐火物に求められるのは、高強度で亀裂が生じ難くかつ剥落し難く、またスラグに対する耐食性が高いことである。スラグに対する耐食性は、主成分を高耐食性のマグネシアとすることで解決できる。しかし、マグネシアを採用した場合、粒界にスラグが浸潤しやすくなり、強度が低下しやすくなる。また水を混練液とすると、マグネシアが水和して施工体がぼろぼろになりやすい。対策として炭素を添加して、そのスラグとの濡れにくさを利用してスラグ浸潤を抑制し、また水の代わりに液状樹脂を混練液として使用することでマグネシアの水和を防止する。液状樹脂を使用すると、低温では樹脂自体が接着剤として働き、高温では樹脂が炭化して生じる炭素が結合材として働くことで、不定形耐火物の強度を大幅に向上させることができる。一方、炭素や樹脂を起源とする炭素は使用中に酸化し、その効力を失う。この対策として、AlやSiなどを含む金属を添加して酸化を防止する。これらの金属は耐火物使用中に炭化物あるいは酸化物に変化し、これも結合材として作用するため不定形耐火物の強度向上にも貢献する。
【0017】炭素の濡れにくさは、スラグ浸潤の抑制以外に、アルミナ系鋼中介在物の付着抑制にも極めて有効に作用する。これにより、本発明の浸漬構造体は優れた耐食性を備えた上で、内孔閉塞や脚伸びに対しても抑制効果を持つ。
【0018】各種の原料を用いて不定形耐火物を試作し、その特性を評価した。使用原料は、マグネシアは純度98重量%以上の高純度電融マグネシア、純度95重量%以上の低純度マグネシア、炭素はコークス粒、無煙炭、純度98重量%以上の鱗状黒鉛、カーボンブラック、金属は金属Al、金属Si、Siを約25重量%含有するAl−Si質金属、Mgを約50重量%含有するMg−Al質金属、そしてフェノール樹脂である。フェノール樹脂はレゾール型で、溶媒としてエチレングリコールと水40重量%を加えて希釈し、混練液とした。試作内容と評価結果を表1、2に示す。比較品であるアルミナ−マグネシア質不定形耐火物は、水を混練液として5.5重量%添加して混練した。マグネシア−クロム質れんがも比較品である。またHとJも比較品である。
【0019】試料の成形と乾燥は以下の要領で行った。希釈した樹脂を混練液として表1に示した量だけ耐火性配合物に6〜12重量%を外数として(外掛け)添加し、ミキサーで5分混練し、所定の金枠に流し込み、2Gの加速度で1分加震した。その後24時間そのまま常温で養生し、脱枠後110℃で24時間乾燥させた。さらにコークス粉中に埋め込んで400℃で24時間加熱乾燥させ、各試験に供した。
【0020】熱間曲げ強度は、40×40×160mmの試料で、スパン100mmで1500℃のアルゴン雰囲気中で測定した。
【0021】内張り侵食試験は、容量250kgの高周波誘導炉の内側に短冊状の試料を内張りして行った。内張り内部で85kgの普通鋼を溶解して1600℃に保持し、溶鋼上に2kgのスラグを入れて溶解させ、内張り試料を侵食させた。侵食時間は90分とし、スラグは30分毎に投入排滓を繰り返した。スラグは試薬を混合して合成し、重量C/S=3.2、Al2 3 =9重量%、FeO=17重量%とした。試験終了後スラグと溶鋼を排出して冷却し、試料を取り出して切断し、最も溶損された部分の残厚を断面で測定し、予め測定しておいた元厚から差し引いて溶損深さとした。アルミナ−マグネシア質不定形耐火物の溶損深さを100として指数化し、溶損指数とした。値が小さいほど高耐食性である。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】炭素を含まないHは溶損指数が大きいが、2重量%含有するDは溶損指数が小さかった。また、炭素が多いJは混練してもまとまらずばさばさで、不定形耐火物としては使用できなかった。これらから炭素の量は2〜15重量%が適当であり、望ましくは4〜10重量%とする。
【0025】金属の量は3〜12重量%が適当である。これよりも少ないと、酸化防止や強度向上などの狙った機能が発現せず、これより多いと、樹脂に少量含まれる水分と化合して水和したり、炭化あるいは酸化する際に起こる体積膨脹で施工体が崩壊するなどの問題が生じる。望ましくは5〜10重量%とする。
【0026】樹脂は、液状ならそのままあるいは適当な溶媒で希釈して、また固体状であれば溶媒に溶解して液状で用いる。液状樹脂は粘度が高い場合があり、そのまま混練液として使用すると混練物がだんご状になり施工に不適当であれば、適当な溶媒で希釈して混練液とする。固体状の樹脂は、適当な溶媒に溶解して混練液とする。混練液の添加量は、耐火性配合物の全重量に対し外掛で3〜13重量%が適当である。3重量%未満では配合物を十分に濡らすことができないため、混練物のまとまりがなくばさばさで、施工が困難で施工体の品質も悪い。13重量%を越えると混練液と耐火材が分離しやすくなり、また乾燥して揮発分が抜けた後に多くの気孔が生じ、施工体の品質が悪くなる。望ましくは5〜10重量%とする。
【0027】本発明で使用するマグネシアは、電融あるいは焼結のどちらでもかまわない。純度は95重量%程度以上のものが望ましい。
【0028】炭素としてはコークス、無煙炭、人造黒鉛、カーボンブラック、鱗状黒鉛などが使用できる。いずれも炭素以外の不純物が少なく、密度が高いことが望ましい。またピッチやタール、粉末ピッチ、非晶質炭素なども使用できる。溶媒に可溶のものは溶解させて使用することもできる。
【0029】Al、Si、Al−Si合金、Al−Mg合金などの金属は不純物が少ないことが望ましい。またCaを含む金属も使用可能である。
【0030】樹脂としては、ノボラック型あるいはレゾール型のフェノール樹脂及びこれを変性したもの、フラン樹脂などが使用できる。前述のように必要に応じて適当な溶媒で希釈あるいは溶解した液状樹脂として混練液とする。溶媒としては水、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アルコール、多価アルコール、ケトン、エステル、窒素化合物などが使用でき、主要なものとしては水、メタノール、エタノール、グリコール、アセトンなどがある。硬化剤としてヘキサミンや酸を添加することもできる。
【0031】なお、炭素、マグネシア、金属以外の耐火材、たとえば珪石、シリカフラワー、アルミナ、スピネル、クロム鉱、クロミア、ムライト、ジルコニア、ジルコン、カルシア、ドロマイト、あるいはこれらを混合して電融したもの、炭化物、硼化物、窒化物なども、耐火物の特性を損なわない範囲で添加することが可能である。最大添加量は概ね20重量%である。炭化物である炭化珪素、B4 Cなどの炭化硼素、硼化カルシウムCaB6 は炭素の酸化防止の機能もあり、添加による効果が大きい。耐火性配合物中に占める最大添加量は炭化珪素20重量%、炭化硼素10重量%、硼化カルシウム10重量%である。
【0032】本発明の浸漬構造体の製作、使用は、ほぼ通常通りに行えば良い。ただし炭素の酸化を抑制するために、いくつかの点に留意する必要がある。RH浸漬管を例に図1に沿って説明する。図1での浸漬管は正対しているが、実際の耐火物の施工では、作業性の面から浸漬管を上下逆にして施工する。スタッド3を溶接した芯金2をフランジ1に接合したものの内側にれんが4を置き、受金物5を取り付け、型枠をセットして混練した不定形耐火物6を流し込んで、下端と外周が不定形耐火物で構成された浸漬管を製作する。なお、混練は通常の水を混練液とした場合と同様に、配合物と混練液とをミキサーに入れて混練する。ミキサーとしては、ボルテックスミキサーなど通常使用するのものを使用できる。流し込んだ後は、必要に応じて不定形耐火物が隅々まで均等に行き渡るように加震する。加震方法は棒状バイブレーター、型枠振動、振動テーブルなど通常使用している器具による方法が採用できる。自己流動型不定形耐火物の場合は、加震の必要はない。
【0033】以上の例では不定形耐火物をもって下端と外周を構成しているが、外周にれんがを設置することもできる。また、水を混練液としたアルミナを主成分とした通常の不定形耐火物を内周や外周に配置することもできるが、最低限、下端は本発明で規定する不定形耐火物とする。なお二種類の不定形耐火物を施工する場合は、先に施工したものがある程度硬化した後に次の耐火物を施工し、両者の混合による障害を防止すべきであるが、混合で問題が生じない場合はこの限りではない。また硬化後に次の耐火物を施工する場合は、面を荒らして食いつきを良くするなどの工夫が必要な場合もある。
【0034】施工後はそのまま強度が発現するまで1日程度は養生し、その後脱型して自然乾燥後、さらにバーナーやヒーター等で加熱して乾燥させる。加熱乾燥の際には炭素の酸化に注意する必要があり、金属、無機物、有機物などからなる箔、板、塗布剤等を不定形耐火物施工体の表面に施工しておいたり、加熱の際の雰囲気を調節したりする。バーナー加熱の場合は気燃比に留意する。加熱乾燥は400℃以上で行い、揮発分を十分に除去する。揮発分が残留していると、浸漬管を溶鋼に浸漬した際に気泡が発生して溶鋼が泡だったり、不定形耐火物が爆裂する恐れがある。
【0035】本発明はRH浸漬管のみならず、多くの浸漬構造体の製作と使用の場合に当てはまる。施工体が大きい場合は、施工方法や支持方法などを工夫すれば同様に使用することができる。
【0036】
【実施例】表1の本発明の不定形耐火物を下端と外周に施工し、300tRH用の浸漬管を製作し使用した。稼働中の観察によれば、本発明品はいずれも下端及び外周の不定形耐火物の亀裂が比較品のアルミナ−マグネシア質不定形耐火物の場合よりもやや少なく、溶損はかなり少なかった。また、通常起こる内孔閉塞と脚伸びはかなり抑制され、伸びた分を削り落とす滓取り作業の頻度は3分の1で済んだ。浸漬管の寿命は通常の1.6倍となった。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、長寿命で閉塞や脚伸びの少ない浸漬構造体を得ることができ、耐火物コストの削減、浸漬構造体の交換に伴う精錬設備の停止時間の短縮と頻度低減による生産性向上、滓取り作業工数削減等を図ることができ、鉄鋼製造コストを引き下げることができる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【識別番号】000111683
【氏名又は名称】ハリマセラミック株式会社
【出願日】 平成10年6月9日(1998.6.9)
【代理人】 【識別番号】100057922
【弁理士】
【氏名又は名称】秋沢 政光
【公開番号】 特開2000−1375(P2000−1375A)
【公開日】 平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願番号】 特願平10−175310