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【発明の名称】 セラミック素地の設計方法とその設計装置、及びセラミック素地とそれを用いたセラミック製品、衛生陶器
【発明者】 【氏名】熊本 洋

【氏名】玉江 寛志

【氏名】大津 雅人

【氏名】山口 英明

【要約】 【課題】設計者の経験、試行錯誤によらず目標とするセラミック素地を容易に得ることができるセラミック素地の設計方法を提供する。

【解決手段】複数の原料の各原料の特性を用いて、目標の素地特性となる調合率を自動算出することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の原料を使ってセラミックを調合設計する方法において、前記複数の原料の各原料の特性を使って、目標の素地特性を有するセラミック素地を設計することを特徴とするセラミック素地の設計方法。
【請求項2】 前記各原料の特性が厚み付きである請求項1記載のセラミック素地の設計方法。
【請求項3】 前記セラミック素地の粒度分布範囲を制限する請求項1、2記載のセラミック素地の設計方法。
【請求項4】 前記各原料の特性が鉱物組成、化学成分、成形性、価格のいずれかである請求項1記載のセラミック素地の設計方法。
【請求項5】 前記原料の厚み付きから原料が前記セラミック素地の厚み付きに与える影響度を算出する請求項2記載のセラミック素地の設計方法。
【請求項6】 複数の原料の各原料の特性データ格納手段と、設計する素地特性の目標値を入力する素地設計目標入力手段と、各原料の特性が設計する素地特性に与える影響度を算出するための影響度算出手段と、最適な原料調合率を算出する素地設計手段とからなることを特徴とするセラミック素地の設計装置。
【請求項7】 請求項1記載のセラミック素地の設計方法によって設計したことを特徴とするセラミック素地。
【請求項8】 請求項7記載のセラミック素地が衛生陶器素地であることを特徴とする。
【請求項9】 請求項7のセラミック素地からなるセラミック製品であることを特徴とする。
【請求項10】 請求項9記載の衛生陶器素地からなる衛生陶器であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衛生陶器、タイル等のセラミック素地の設計方法とその設計装置及び本設計方法を利用して作成されたセラミック素地及びセラミック製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、素地の設計は設計者の経験に頼った試行錯誤の設計を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】セラミック素地の着肉性など多くの設計項目を同時に希望の範囲に設計することが容易にできないという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明はこれらの欠点を除くため、複数の原料を使ってセラミックを調合設計する方法において、複数の原料の各原料の特性を用いて、目標の素地特性となるセラミック素地を設計することを特徴とする。また、前記各原料の特性が厚み付きであることを特徴とする。また、前記セラミック素地の粒度分布範囲を制限する方法を含むことを特徴とする。また、前記各原料の特性が鉱物組成、化学成分、成形性、価格のいずれかであることを特徴とする。また、前記原料の厚み付きから原料がセラミック素地の厚み付に与える影響度を算出することを特徴とする。
【0005】セラミック素地を設計する装置が、複数の原料の各原料の特性データ格納手段と、設計する素地特性の目標値を入力する素地設計目標入力手段と、各原料の特性が設計する素地特性に与える影響度を算出するための影響度算出手段と、最適な原料調合率を算出する素地設計手段とからなることを特徴とする。
【0006】前記セラミック素地が衛生陶器素地であることを特徴とする。また、セラミック製品、衛生陶器がそれぞれ前記セラミック素地、衛生陶器素地からなることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明の設計項目の一つである厚み付[本発明の実施例では着肉速度の代わりに、厚み付き(スラリーを吸水性のある多孔体に流し込んで一定時間着肉後、排泥し、一定時間土締め後の厚さ)を測定し利用しているので、以下厚み付きで説明する]の設計方法を例に説明する。
【0008】複数の原料(原材料)を調合してできる混合物の特性予測では、混合物を構成する個々の原料の特性値と調合率の積の加成式を使った予測方法がよく利用される。この方法をそのまま素地の厚み付き予測に適用すると、原料の厚み付きと調合率の積を原料毎に加算すれば、この値が素地の厚み付きの予測値になる。
【0009】しかし、図1に示すように、原料の場合の粒子充填率と素地の粒子充填率が異なるために、単純な原料の厚み付きと調合率の積の加成式で素地の厚み付きを予測することはできない。 一方、素地の粒子充填率は乾燥時の素地の収縮率に大きく影響し、製品の形状寸法を左右する因子となる。したがって工業的に一定形状、一定寸法の製品を安定して生産するためには素地の粒子充填率をある一定の範囲内にしておく必要がある。図1(a)は原料の厚み付きとその調合率の積を原料毎に加算したときの粒子の充填状況を模式的に表した図で、図1(b)は実際の素地の粒子の充填状況を表した図である。
【0010】このような理由から素地の粒子充填率がある範囲内に決まってくれば、各原料の粒子の素地における収まりどころ(各原料粒子の位置関係)がマクロに決まってくる。素地の粒子充填率に従った各原料の粒子の配置がマクロに決まれば、各原料がその調合率に応じて素地の実際の厚み付きに及ぼす影響度が決まってくる(以下、単に影響度と記述する)。
【0011】各原料の粒子は調合するたびにいろいろな位置を占めるようになるが、天然原料を使う素地の場合は、巨視的な見方(統計的な見方)で十分その目的を果たすことが可能で、このことは後述する具体例でその効果を説明する。
【0012】ここで新しく定義した影響度とは、原料の調合率と影響度の積の加算式で素地の厚み付きを予測できるようにしたもので、原料が素地の厚み付きに影響している値と言える。本発明では各原料毎に求めた影響度などのような特性と、化学成分、鉱物組成及び原料費と各原料調合率の積の総和を計算することにより素地の特性を予測し、素地設計をするようにしている。
【0013】(具体的な実施例)本発明の一設計項目である素地の厚み付きを例に、以下に具体的に説明する。素地の厚み付きを設計するには原料毎に影響度を求め、この影響度を使って原料をある調合率で調合したときの素地厚み付きを予測する方法と、複数種類の原料から希望の厚み付きの素地になる調合率を算出することを特徴とする素地設計方法である。以下に本発明について具体例を用いて説明する。原料jの影響度Xj*とすると、素地の厚み付きYは Y=Σjjj* (1)
と表せる。ここで、Yは素地の厚み付きCjは原料jの調合率 Σjj=1である。
【0014】ここでは、影響度の求め方として2次関数を用いた場合について具体例を説明する。(なお、この関数は必ずしも2次式である必要はなく、いくつかの関数を組み合わせても良いし、関数を使わずに(1)式を最も良く満たす個々の影響度を重回帰分析などで求めても良い)今、変換関数は2次式であるが原料の厚み付きが0のとき、影響度も0になるので、変換関数は(2)式のような定数項を持たない2次式になる。
*=aX2+bX (2)
素地の厚み付きを精度良く予測できるようにするには、実測の素地厚み付きデータを最も精度良く再現するように(2)式の係数a,bを決定すればよい。ここでは素地の厚み付き予測誤差の二乗Seを最も小さくするように、最小二乗法を利用して最適係数a,bを求める。
Se=Σi{Yi−(ΣjaXj2+bXj)Cij2 (3)
ここで Yi :試験i番目の実測素地厚み(i=1,2,…,n)
j :原料jの厚み付き (j=1,2,…,k)
ij :試験i番目の原料jの調合率【0015】具体例として図2の8組(調合1〜調合8)の実測素地厚みデータを使って説明する。図2の原料、調合率、素地の厚み付データを使ったとき、(2)式の係数の最適解はそれぞれ a=―0.0042112 (4)
b=0.4720706 (5)
となる。(4)、(5)の値と(2)式を使って原料の厚み付を影響度に変換すれば、図2に示すような影響度になり、この影響度と(1)式を利用すれば、同じく図2に示すような素地厚み付きが予測できる。
【0016】最適解a,bの決定には使用しなかった別の実測素地データ(図3)を使って厚み付きの予測精度を検証した結果を図3に示す。図3から試験5以外の素地の厚み付きと計算で求めた厚み付きは良い一致を示していることが分かる(試験5は本設計法の評価のために意図的に通常の素地の粒度分布と異なるようにしたもの)。本発明による素地厚み付きの予測は素地の粒子充填率がある範囲内になっていることが前提条件になっている。そこで図2、3の調合試験素地の粒度分布を比較した結果を図4に示す。図4から明らかに、試験5は影響度の変換関数f(X)を求めた基準素地(図2の調合1〜8)と異なる粒度分布になっており、このために厚み付き予測誤差が大きくなったものと考えられる。
【0017】そこで、原料の粒度分布の範囲を制約する方法として素地と同じように原料の粒度分布を測定し、素地の粒度分布を制約する方法を説明する。まず、原料jの粒子径kμm以下の粒子の割合をPjkとすると、素地の粒子径kμm以下の粒子の割合Pkは次式で表せる。
k=Σjjjk (6)
ここで、Cjは原料jの調合率である。厚み付きの変換関数を求めるために使用した複数素地の粒子径kμm以下の粒子の割合の最大、最小値をそれぞれPks.max、Pks.minとするとks.min ≦ Pk ≦ Pks.max (7)
であれば、最適係数を求めたときと同等の予測誤差で素地の厚み付きを予測することが可能になる。更に、(6)、(7)式からks.min ≦ Σjjjk ≦ Pks.max (8)
となり、(8)式を確認しながら、(1)式を利用することにより、市販の表計算ソフトや数理計画法などを活用すれば、予測精度を確保して簡単に素地の厚み付きを希望の範囲に設計することが可能になる。
【0018】また、素地設計では素地の化学成分や鉱物組成が、曲がりや強度などの特性に影響することが知られている。原料の化学成分や鉱物組成と素地の化学成分や鉱物組成には(1)式のような線形加成式が成り立つ。そこで、上記素地の厚み付きと同じようにして素地の化学成分や鉱物組成を設計することが可能である。また、成形性も「成形性のよい原料をたくさん調合したほうが素地の成形性もよくなる」ことから、素地の厚み付きと同じような方法で設計可能になる。この時原料の成形性の評価は機械的に測定するか、または人の官能評価値を利用しても良い。最後に原料費も(1)式のような線形加成式で表現できる。
【0019】以上、まとめると素地設計に必要な全ての設計項目が(1)式のような線形式で表現できるため、線形計画法などの手法を使うことによって、容易に目的の素地特性になる最適解(最適原料調合率)を得ることができる。
【0020】以下にこれらの方法を使った素地設計について説明する。図5は各原料の厚み付きと本発明の方法で算出した影響度及び成形性の評価値である。また、図6は各原料の粒度分布を示す。図7は各原料の化学成分を示す。図8は各原料の鉱物組成と価格である。図9は設計する素地の厚み付きと成形性の目標範囲である。図10は厚み付きの予測精度を確保するのに必要な粒度分布の範囲である。図11は素地の化学成分の目標範囲である。図12は素地の鉱物組成と価格の目標範囲である。以上の設計目標に対して、(1)式、および(8)式とΣjj=1の関係を使って、線形計画法で設計した原料毎の調合結果(調合率:重量%)を図13に示す。このとき、素地の粒度分布は図14に示すようになり、素地の厚み付きおよび成形性の予測値(設計値)と実測値は図15に示すように良く一致する。また、素地の化学成分、鉱物組成や価格も図16、17に示すように設計目標範囲内になっていることが分かる。
【0021】以上、素地の厚み付き、成形性、化学成分、鉱物組成、粒度分布、価格を利用した設計方法を示したが、成形性は更に細分化して、可塑性、保型性など、成形性を構成する項目を成形性の代わりに被設計項目として使っても、同様に設計することが可能である。
【0022】図18は本発明の一実施例としてのセラミック素地の設計装置の構成ブロック図を示す。この設計装置は原料データ格納手段100と、素地設計目標入力手段101と、影響度算出手段102と、素地設計手段103とで構成している。原料データ格納手段100は素地設計に必要な原料データを格納しておくための手段であり、素地設計目標入力手段101は設計者が素地の設計目標を入力するための手段である。また、影響度算出手段102は原料が素地の厚み付きに与える影響度を算出ための手段で、数式(1)、(4)、(5)を使って影響度を算出する。これらの結果を利用して、素地設計手段103では線形計画法により最適な原料調合率を算出する。
【0023】
【発明の効果】本発明はセラミック素地を構成する各原料固有の厚み付きなどの特性、化学成分、鉱物組成及び原料費を使うことによって、目標とする素地特性になる素地設計(原料調合率の決定)が机上の計算でできるため、短期間で安価な素地が誰にでも設計できる利点がある。
【出願人】 【識別番号】000010087
【氏名又は名称】東陶機器株式会社
【出願日】 平成10年6月11日(1998.6.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−1359(P2000−1359A)
【公開日】 平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願番号】 特願平10−181628