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【発明の名称】 常温固化無機材料調合物
【発明者】 【氏名】齊藤 成輝

【氏名】進 博人

【氏名】前浪 洋輝

【要約】 【課題】高温に加熱する必要なく固化体とし得る無機材料調合物を提供する。

【解決手段】常温下でアルカリ土類炭酸塩を生成し得る第1成分と、この第1成分とともに又は単独で常温下で固体水和物を生成し得る第2成分とを有し、これら第1成分と第2成分とが混合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】常温下でアルカリ土類炭酸塩を生成し得る第1成分と、該第1成分とともに又は単独で常温下で固体水和物を生成し得る第2成分とを有し、該第1成分と該第2成分とが混合されてなることを特徴とする常温固化無機材料調合物。
【請求項2】ハロゲン化合物を有することを特徴とする請求項1記載の常温固化無機材料調合物。
【請求項3】塩化物を有することを特徴とする請求項1又は2記載の常温固化無機材料調合物。
【請求項4】塩化物は塩化マグネシウムであることを特徴とする請求項3記載の常温固化無機材料調合物。
【請求項5】アルカリ金属化合物を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の常温固化無機材料調合物。
【請求項6】アルカリ土類金属化合物を有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の常温固化無機材料調合物。
【請求項7】ケイ酸塩を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の常温固化無機材料調合物。
【請求項8】アルミン酸又はアルミン酸塩を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の常温固化無機材料調合物。
【請求項9】塩化マグネシウム及び水酸化アルミニウムを有することを特徴とする請求項1記載の常温固化無機材料調合物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、常温下で固化して固化体とし得る常温固化無機材料調合物に関する。この常温固化無機材料調合物は、土木工事又は建築工事において、水等と混練して所定形状に成形し、これを固化して得られる固化体として利用可能である。固化体は、内装材、外装材等として製品化されたり、壁、床、建造物等として製品化され得る。
【0002】
【従来の技術】内装材や外装材等に用いられるタイル等の陶磁器や煉瓦等の耐火物に代表される従来のセラミックス製品は、一般的には、天然に産出される粘土等の無機材料原料を水とともに所定割合で調合・混練して所定形状に成形し、こうして得られる成形体を高温に加熱することにより固相反応、焼結、溶融、結晶成長等を生じしめて固化させている。
【0003】また、ブロックを成形したり、生コン等として壁や床等を施工する際に用いられたりするセメントは、一般的には、SiO2、Al23、Fe23及びCaOを含む原料を所定割合で調合し、こうして得られる調合物を溶融するまで高温に加熱することによりクリンカーとし、このクリンカーをセッコウ(CaSO4・22O)とともに粉末状に粉砕してなる。このセメントは、砂や小石等を骨材とし、水等とともに混練されてセメントペーストとされる。そして、セメントペーストは、セメント中のC2S(2CaO・SiO2)、C3S(3CaO・SiO2)等の化合物が水和反応してC323(3CaO・2SiO2・3H2O)等の固体水和物を生じ、凝結及び硬化により固化する。この際、セッコウは凝結の時間調整を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のセラミックス製品は所定形状で固化させるため、またセメントはクリンカーを得るために、調合物を高温に加熱しなければならない。このため、これらにより内装材、外装材、壁、床、建造物等の固化体を得ようとする場合には、大量のエネルギーの消費を生じ、環境上好ましくない。
【0005】本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、高温に加熱する必要なく固化体とし得る無機材料調合物を提供することを解決すべき課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の常温固化無機材料調合物は、常温下でアルカリ土類炭酸塩を生成し得る第1成分と、該第1成分とともに又は単独で常温下で固体水和物を生成し得る第2成分とを有し、該第1成分と該第2成分とが混合されてなることを特徴とする。
【0007】本発明の常温固化無機材料調合物では、第1成分が常温下で炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)等のアルカリ土類炭酸塩を生成する(炭酸化反応)。また、第2成分は、第1成分とともに又は第2成分単独で、常温下で水和反応してCSH(CxSyHz;xCaO・ySiO2・zH2Oの意である。x、y及びzは固体水和物として存在し得る正数。)、CAH(CxAyHz;xCaO・yAl23・zH2Oの意である。x、y及びzは固体水和物として存在し得る正数。)、CASH(CwAxSyHz;wCaO・xAl23・ySiO2・zH2Oの意である。w、x、y及びzは固体水和物として存在し得る正数。)等の固体水和物を生成する。この固体水和物は、CSH、CAH、CASH等におけるCa、Si又はAlの一部がアルカリ金属、アルカリ土類金属、非金属元素又は遷移元素と置換されたものである場合もあり得る。これら第1成分と第2成分とは混合されてなることから、両反応は同時期又はほぼ同時期に進行し、互いに他方の反応を促進し合うと考えられる。また、これらの反応により生じるアルカリ土類炭酸塩と固体水和物とは、一方が他方の相間を補強し合ったり、新たな固体水和物を生じたりして固化体になると考えられる。新たな固体水和物は、結晶である場合の他、非結晶である場合もあり得、第1成分及び第2成分から生じるアルカリ土類炭酸塩及び固体水和物の中間的な組成を有する場合もあり得る。
【0008】こうして、この常温固化無機材料調合物では常温下で固化が進行する。このため、この常温固化無機材料調合物によれば、高温に加熱する必要なく内装材、外装材、壁、床、建造物等の固化体を得ることができることから、固化体を得るためのエネルギーの消費を極力抑制することができ、優れた環境保全性を発揮することができる。
【0009】発明者らの試験結果によれば、本発明の常温固化無機材料調合物はハロゲン化合物を有することが固化体の強度確保の点で好ましい。また、塩化物を有することが固化体の強度確保の点で好ましい。ここで、塩化物は塩化マグネシウム(MgCl2)であることが固化体の強度確保の点で好ましい。また、発明者らの試験結果によれば、本発明の常温固化無機材料調合物はアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくとも1種を有することが好ましい。これらにより炭酸化反応を促進できると考えられるからである。
【0010】さらに、発明者らの試験結果によれば、本発明の常温固化無機材料調合物は、ケイ酸塩及びアルミン酸又はアルミン酸塩のいずれか1種を有することが好ましい。これらにより水和反応を促進できると考えられるからである。また、特に、本発明の常温固化無機材料調合物は、塩化マグネシウム及び水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を有することが好ましい。これにより、成形後、時間の経過とともに固化体の強度が高くなるからである。
【0011】
【発明の実施の形態】第1成分は常温下でアルカリ土類炭酸塩を生成し得るものである。この第1成分の例としては、工業用の酸化カルシウム(生石灰、CaO)、水酸化カルシウム(消石灰、Ca(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)等を挙げることができる。酸化カルシウムは常温下で消和して一旦水酸化カルシウムとなり、水酸化カルシウムは炭酸化反応により炭酸カルシウムとなる。このため、第1成分の少なくとも一部として、酸化カルシウムを用いれば、常温下で酸化カルシウムが消和(消化)する際に高熱が得られるため、その熱が他の水酸化カルシウムの炭酸化反応や第2成分と水との反応を促進すると考えられる。
【0012】第2成分は常温下で固体水和物を生成し得るものである。この第2成分の例としては、SiO2及びAl23を含み、これらがCaOと反応して固体水和物を生じる原料の粉末を挙げることができる。SiO2とAl23との質量比は1:1〜25:2が好ましいと考えられる。発明者らの認識によれば、この原料の粉末としては、Al23が7〜17質量%(より好ましくは9〜15質量%)、アルカリ金属酸化物又は/及びアルカリ土類金属酸化物が2〜10質量%(より好ましくは3〜9質量%)、灼熱減量(Ignition loss。以下、Iglossという。)が1〜6質量%(より好ましくは1〜3質量%)、SiO2が実質残部のものを採用し得る。実質とはFe23、TiO2等を含み得る意である。また、コンクリート廃材、スラグ、鉱物廃泥等をこの原料の粉末として採用することもでき、これらに炭酸カルシウムや水酸化カルシウムが含まれる場合、第1成分としても反応し得ると考えられる。
【0013】発明者らが確認した結果、この原料の粉末としては、風化した花崗岩の粉末(砂婆土、真砂土、ヘナ土ともいう。)として得ることができる。風化した花崗岩の粉末として容易に入手可能なものの組成(質量%)を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】表1に示されるように、風化した花崗岩の粉末は、アルカリ金属酸化物としてはNa2O及びK2を含み、アルカリ土類金属酸化物としてはCaO及びMgOを含む。なお、アルカリ金属酸化物としてLi2Oを含むもの、アルカリ土類金属酸化物としてBeO、SrO又はBaOを含むものも採用し得る。また、Fe23、TiO2を含むものも採用し得る。風化した花崗岩の粉末の主な構成相は、XRD観察によれば、石英、ソーダ長石、正長石、雲母、カオリン鉱物及び緑泥石である。また、この粉末は角閃石を構成相として含むこともできる。また、表1に示した風化した花崗岩の粉末の一部の粒度分布(頻度(%)、積算量(%))を図1に示す。
【0016】発明者らが確認した結果、花崗岩の粉末は風化の程度の小さいものであることが固化体の強度確保の点で好ましい。風化とは、風雨や気温の変化等の影響及び植物やバクテリアの存在により岩石が変質し、分解される過程である。この風化は構成相の部分的な粘土化として表れていると考えられる。構成相の部分的な粘土化は、まず大きな粒径の粉末の表面で水和物の生成を生じ、これにより小さな粒径の粉末を生じ、さらに全体の粉末の表面で水和物を生じて進行していくものと考えられる。表1に示すIglossが粉末に存在する水和物の量を相対的に示すと考えられ、Iglossの量が多い程、風化が進行していると考えられる。また、発明者らがTG−DTA観察により上記花崗岩の粉末の脱水挙動を確認した結果、60°C付近及び150°C付近にピークをもつ脱水反応が得られたことから、これら花崗岩の粉末の風化は粉末の表面にハロイサイト又はモンモリロナイトを生成することで進行していると考えられる。
【0017】したがって、第2成分として、SiO2、Al23並びにアルカリ金属酸化物又は/及びアルカリ土類金属酸化物を種々の原料の粉末により上記組成範囲を構成するとともに、カオリナイト等の粘土により上記組成範囲を構成することもできると考えられる。また、本発明の常温固化無機材料調合物は、砂、小石、ガラス繊維、タイル廃材、カレット等の骨材を含むことにより固化体の強度を向上し得ると考えられる。この意味において、風化した花崗岩の粉末の最大粒径が固化体に作用する荷重方向の寸法に対して1/5程度であることが固化体の強度確保の点で好ましい。
【0018】ハロゲン化合物としては、塩素、フッ素(F)等を有するものを採用することができる。このハロゲン化合物は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化マグネシウム、フッ化ナトリウム(NaF)、塩化カルシウム(CaCl2)等のハロゲン化物の他、ハロゲン間化合物として添加することができる。また、ケイ酸塩としては、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩等を採用することができる。アルミノケイ酸塩としては、長石類の粉末、板ガラスの粉末、カオリン鉱物粉末、水ガラス等を採用することができる他、スラグを処理して生じる高Si液を採用することもできる。ホウケイ酸塩又はアルミノホウケイ酸塩としては、釉薬、フリット等を採用することができる。アルミン酸又はアルミン酸としては、水酸化アルミニウム、スピネル(MgAl24)等を採用することができる。
【0019】なお、第1成分と第2成分とは別々のものでなくともよい。また、ハロゲン化合物、塩化物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、ケイ酸塩及びアルミン酸又はアルミン酸塩は第1成分と第2成分とからなる混合物に添加剤として添加してもよく、第1成分又は/及び第2成分がこれらを含有していてもよい。
【0020】
【実施例1】「調合物の調製」表2に示す割合(質量%)で原料1と消石灰とをモルタル混合用のミキサーを用いて混合し、各調合物1〜17を得る。このときに、一度に混合する量は最大5kgとした。ここで、原料1は表1に組成を示す風化した花崗岩の粉末である。
【0021】但し、調合物13、14では、粉末状のAl(OH)35質量部を85質量部の原料1及び10質量部の消石灰に対して同時に添加した。
【0022】
【表2】

【0023】「混練物の調製」次いで、ミキサー中の調合物1〜17に水等を添加する。このとき、各調合物1〜17の100質量部に対して水が8質量%となるようにしている。そして、ミキサーにて混練し、各調合物1〜17に対応して各混練物1〜17を得る。但し、調合物3、6、14では、水82.5gにNaCl15g及びMgCl22.5gを溶解した水溶液としてNaCl及びMgCl2を添加した。この水溶液は海水を濃縮したものに近い組成を有しており、無尽蔵にある海水の有効利用及び製造コストの低減を図るために用いている。
【0024】調合物5では、水96.5gにNaCl3g及びMgCl20.5gを溶解した水溶液としてNaCl及びMgCl2を添加した。この水溶液も海水に近い組成を有している。調合物7では、水96.5gにMgCl23.5gを溶解した水溶液としてMgCl2を添加した。
【0025】調合物8では、水82.5gにMgCl217.5gを溶解した水溶液としてMgCl2を添加した。調合物9では、濃度0.12%で水中にSiO2を含む水溶液として珪酸イオンを添加した。この水溶液はスラグを処理して生じる高Si液である。調合物10では、上記高Si液96.5gにNaCl3g及びMgCl20.5gを溶解した水溶液として珪酸イオン、NaCl及びMgCl2を添加した。
【0026】調合物11では、上記高Si液82.5gにNaCl15g及びMgCl22.5gを溶解した水溶液として珪酸イオン、NaCl及びMgCl2を添加した。調合物12では、上記高Si液82.5gにNaCl15g、MgCl22.5g及び濃度30%でNH3を含むアンモニア水2gを溶解した水溶液として珪酸イオン、NaCl、MgCl2及びNH4OHを添加した。
【0027】調合物15に添加した硬化剤はコンクリートの硬化のために用いられる液体(pH10.5程度であり、水中にCl-、Na+、K+、NH4+、NO3-等を含み、pH緩衝能力を有する。)であり、調合物15による混練物15が酸性条件下で炭酸カルシウム及び固体水和物を生成しにくくなることを防止するために用いている。硬化剤中の水分が100質量部の調合物15に対して3質量部となるように、市販の原液を混練時に添加した。
【0028】調合物16では、濃度50%で市販の水ガラス(JIS K1408の3号に準ずるソーダ系水ガラス;SiO2が28〜30質量%、Na2Oが9〜10質量%、Fe23が0.02質量%未満、水が残部)を含む水溶液として水ガラスを添加した。調合物17では、水82.5gにNaCl15g、MgCl22.5g及び濃度30%でNH3を含むアンモニア水2gを溶解した水溶液としてNaCl、MgCl2及びNH4OHを添加した。
「混練物の成形・固化」各混練物1〜17をモルタル試験用の160×40×40mm3の容積の3連型に同一質量充填し、油圧式プレスにより30MPaで1軸加圧成形する。これにより各混練物1〜17の粒子間の間隙を小さくして粒子の界面を接近させる。こうして、各混練物1〜17に対応して160×40×約20mm3の成形体1〜17を得る。
【0029】そして、温度25°C、湿度(RH)80%の恒温恒湿器中において、7〜28日間、各成形体1〜17の養生を行う。こうして、各成形体1〜17に対応して固化体1〜17を得る。
「評価」各固化体1〜17について、養生日数の増加に伴う曲げ強度(MPa)、圧縮強度(MPa)及び嵩密度(g/cm3)の測定並びに生成相の確認を行った。
【0030】なお、曲げ強度の測定は、材料試験機(A&D TENSILON RTM−500)を使用し、支点間隔120mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分で3点曲げにて行った。圧縮強度の測定は、電子式万能試験機(CATY YONEKURA)を用い、曲げ強度試験後の一つの固化体を使用し、クロスヘッドスピード0.5mm/分で行った。生成相の確認は、粉末X線回折装置(RIGAKU RAD−B)を用いてXRDにより行った。
【0031】測定した曲げ強度を表3及び図2に示す。
【0032】
【表3】

【0033】測定した圧縮強度を表4及び図3に示す。
【0034】
【表4】

【0035】表3、4及び図2、3より、何ら添加物を添加していない調合物1に比して、他の調合物では時間の経過とともに固化体の圧縮強度が向上していくことがわかる。また、固化体3、5、6、7、8、10、11、12、14、17では、これらの調合物に塩化物を添加しているため、高い圧縮強度を発揮できることもわかる。さらに、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加すれば、時間の経過による固化体の圧縮強度の向上度合いを小さくしつつ、炭酸化反応の促進により安定した固化体の圧縮強度を確保できることもわかる。また、ケイ酸塩又はアルミン酸を添加すれば、時間の経過による固化体の圧縮強度の向上度合いを大きくしつつ、水和反応の促進により安定した固化体の圧縮強度を確保できることもわかる。
【0036】測定した密度を表5及び図4に示す。
【0037】
【表5】

【0038】表5及び図4より、原料1に対して消石灰の量が増すと、消石灰の真比重に起因して固化体の嵩比重が低下することがわかる。また、原料1に10質量%消石灰を混合した調合物による固化体では、28日間養生することにより、嵩密度が1.97〜2.02g/cm3であり、消石灰を10質量%混合すれば、固化体の嵩密度は1.95〜2.05g/cm3で落ち着くと思われる。こうして消石灰を10質量%混合すれば固化体の嵩密度にさほどの変化はないが、他の成分の含有、特にAl(OH)3の添加により、固化体の強度が著しく増加する。これにより、他の成分、特にAl(OH)3が固体水和物の生成に起因する可能性がある。
【0039】生成相を確認したところ、全固化体1〜17において、Ca4Al26CO311H2Oの生成が確認された。こうしてこれら固化体1〜17は、原料1からは本来生じ得ない新たな固体水和物を生じて高い強度を発揮していると考えられる。また、固化体1、2、4では、Ca(OH)2及びCaCO3のピーク強度が増加していた。これは消石灰の含有割合が増加しているためである。他方、固化体3、5、6、7、8、10、11、12、14、17では、Ca4Al26Cl210H2Oの生成が確認された。これは塩化物を添加しているからである。また、これらCaCO3のピーク強度から、塩化物の添加により定性的にCaCO3の生成が促進されていると思われる。
【0040】したがって、各調合物1〜17によれば、常温下で固化が進行して固化体1〜17を得ることができることがわかる。このため、かかる調合物1〜17を用いれば、高温に加熱する必要なく内装材等の固化体を得ることができることから、固化体を得るためのエネルギーの消費を極力抑制することができ、優れた環境保全性を発揮することができる。
【0041】養生7日の固化体1、8について、CO2定量(JIS R9011)を行い、添加物による炭酸化促進の有無を評価した。CO2定量は各固化体1、8のCO2質量含有率(%)で求めた。また、各固化体1、8中のCO2が全てCaと反応していると仮定して計算したCaとCO2とのモル反応率(%)も求めた。結果を表6に示す。
【0042】
【表6】

【0043】表6等より、塩化物による固化体の強度発現の傾向として、塩化物添加により固化体の強度が増強し、塩化物の添加量を増すことで固化体の養生初期の強度発現を促進できることがわかる。この理由として、調合物への塩化物の添加により、固化体は炭酸化物の生成が促進されることが考えられる。海中における炭酸化物の生成は溶解しているアルカリ等が原因となってCO2の溶解度が上昇するために起こると考えられているため、塩化物を添加した調合物中のNa、Mgにより、調合物中でCO2の溶解度が上昇し、Ca2+とCO32-との反応析出が促進されたものと考えられる。
【0044】
【実施例2】「調合物の調製」表7に組成(質量%)を示す原料9及び原料10を用いる。ここで、原料9は粒径2mm未満の砂である。また、原料10は粒径2mm未満の土であり、この構成相は、粉末X線回折法によれば、石英及びカオリナイトである。
【0045】
【表7】

【0046】そして、表8に示す割合(質量%)で原料9、原料10、消石灰及びAl(OH)3をビニール製の袋に投入し、その袋を激しく振動させることにより混合し、各調合物18〜27を得る。また、にがりは後述の水に予め溶解させて添加した。なお、消石灰はタイ産の粒径2mm未満のものであり、にがりはMgCl2含む市販のものであり(船治産業(株)製)、Al(OH)3は市販のものである(昭和電工(株)製、ハイジライトH−42)。
【0047】
【表8】

【0048】「混練物の調製」次いで、袋中の調合物18〜27の100質量部に水を7.7質量部添加し、さらにその袋を激しく振動させることにより混合し、各調合物18〜27に対応して各混練物18〜27を得る。なお、水は飲料水である。
「混練物の成形・固化」各混練物18〜27の入った袋の口を縛って密封し、消石灰中の未消化のCaOを消化させるため、1晩放置する。
【0049】そして、各混練物18〜27から直径5cm、高さ10cmのキャビティをもつ円柱状の金型を用いることにより、各混練物18〜27に対応して成形体18〜27を得る。この際、各混練物18〜27の投入は3回に分け、直径5cmの金属円板が先端に付いた棒により上方からたたき締めた。そして、金型から各成形体18〜27を脱型し、各成形体18〜27を再度ビニール製の袋で覆い、2日間及び14日間、常温下で養生を行う。こうして、各成形体18〜27に対応して固化体18〜27を得る。
「評価」各固化体18〜27について、2日及び14日間養生後の圧縮強度(kgf/cm2)、成形時及び2日間養生後の含水率(質量%)並びに2日間養生後における湿潤及び乾燥嵩密度(g/cm3)の測定を行った。なお、圧縮強度の測定は、一軸圧縮試験により、載荷スピードを1mm/分とする条件下、最大荷重を各固化体18〜27の断面積で除した値を圧縮強度とした。
【0050】測定した圧縮強度を図5〜7及び表9、測定した含水率を表10、測定した嵩密度を表11に示す【0051】
【表9】

【0052】
【表10】

【0053】
【表11】

【0054】図5〜7より、MgCl2の添加による圧縮強度の増加は僅かであることがわかる。これに対し、Al(OH)3の添加による圧縮強度の増加は顕著に認められた。例えば、2日養生後では、Al(OH)3の添加量の増加とともに、圧縮強度が約4倍にまで増加している。また、14日養生後では、Al(OH)3を2.4質量%添加した固化体23において、圧縮強度が最大値を示した。したがって、養生初期の圧縮強度を高める場合と、長期の圧縮強度を高める場合とで、Al(OH)3の添加量の最適値が異なるといえる。
【0055】他方、MgCl2とAl(OH)3とを同時に添加した固化体25〜27では、Al(OH)3のみを添加した場合とほぼ同様の傾向を示した。但し、2日養生後では、Al(OH)3のみを添加した場合よりも圧縮強度が低下する傾向を示した。14日養生後では、Al(OH)3の添加量が2.4質量%以上の固化体26、27において、MgCl2と併用することで、圧縮強度が増加する傾向が示された。したがって、Al(OH)3の添加量がある程度以上で、かつ長期養生後においては、MgCl2との併用の効果が現れるといえる。
【0056】また、表10より、Al(OH)3の添加量の増加とともに嵩密度が減少することがわかる。また、養生時間(日)と弾性率(kgf/cm2)との関係を図8〜10に示す。図8〜10より、圧縮強度で認められた傾向と同様、MgCl2のみの添加では、弾性率の増加は僅かである一方、Al(OH)3を添加した固化体22〜24において、弾性率の増加が顕著に認めらることがわかる。但し、Al(OH)3を添加した固化体22〜24の14日養生後において、Al(OH)3の添加量の増加とともに、弾性率が増加する傾向が示され、最適値が存在することが示唆された圧縮強度の場合とは異なった。
【0057】以上より、MgCl2の添加による強度増加が僅かであるのに対し、Al(OH)3の添加による強度増加は顕著であることがわかる。この原因について考察する。まず、本発明の常温固化無機材料調合物では、第1成分としての消石灰と空気中のCO2とが反応して炭酸カルシウムが生成されること(炭酸化反応)と、消石灰と第2成分中のSiO2及びAl23とが反応して水和物が生成されること(ポラゾン反応)とが固化体の強度発現因子と考えられる。また、MgCl2の添加は炭酸化反応を促進することが判明しており、Al(OH)3は消石灰と反応してカルシウムアルミネート水和物の生成に寄与することが判明している。しかし、実施例2では、固化体の養生をビニール製の袋内で行ったため、炭酸化し難い条件であり、炭酸化反応を促進するMgCl2の効果が僅かになったと考えられる。
【0058】また、圧縮強度において、Al(OH)3の添加量がある程度以上であり、かつ長期養生後においてMgCl2との併用の効果が現れたのは、カルシウムアルミネート水和物塩化物の生成によるものと推察される。実施例2では、カオリナイトの添加量が少なく、カルシウムアルミネート水和物の生成量も僅かであると考えられる。しかし、Al(OH)3を添加した場合では、多量のAl23源が導入されたこととなり、MgCl2の共存下でカルシウムアルミネート水和物塩化物が生成したことは十分考えられる。
【0059】なお、Al(OH)3の添加量の増加に伴う嵩密度の減少は、Al(OH)3の添加量の増加に伴い、微粒成分が増加したため、成形時の充填に影響を生じたためであると考えられる。また、嵩密度と強度発現との相関は認められず、実施例2では、充填の効果よりも、むしろ添加物による固化反応の促進効果がより顕著に現れたと考えられる。
【出願人】 【識別番号】000000479
【氏名又は名称】株式会社イナックス
【出願日】 平成10年7月17日(1998.7.17)
【代理人】 【識別番号】100109069
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 敬
【公開番号】 特開2000−1347(P2000−1347A)
【公開日】 平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願番号】 特願平10−203840