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【発明の名称】 親水性・防曇性基材およびその製造方法
【発明者】 【氏名】山崎 誠司

【氏名】山本 秀樹

【氏名】西田 佳弘

【氏名】本城 啓司

【要約】 【課題】長期にわたり親水性・防曇性を維持することが可能な、耐摩耗性および耐久性に優れた親水性・防曇性基材を得ること。

【解決手段】被膜は、マトリックス金属酸化物の含有量が30〜90重量%、非反応性酸化物超微粒子の含有量が10〜70重量%からなり、該被膜中の微粒子の分散状態は、被膜表層はその下層より密であって、さらに膜の内層にも該微粒子の密な層を少なくとも1層形成するとともに、被膜の最表面が凹凸形状であること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】マトリックス金属酸化物中に非反応性酸化物超微粒子が分散された複合金属酸化物よりなる被膜が被覆された基材において、該被膜のマトリックス金属酸化物の含有量は30〜90重量%、非反応性酸化物超微粒子の含有量が10〜70重量%であり、被膜中の非反応性酸化物超微粒子の分散状態は、被膜の表層はその下層より密であって、さらに膜の内層にも非反応性酸化物超微粒子の密な層を少なくとも1層形成するとともに、且つ該被膜の最表面は凹凸形状となっていることを特徴とする親水性・防曇性基材。
【請求項2】非反応性酸化物超微粒子の分散状態が密である層は、吸水性酸化物超微粒子とマトリックス金属酸化物の原子比(超微粒子/マトリックス)は2.3以上であり、分散状態が疎である層の原子比(超微粒子/マトリックス)は1.5以下であることを特徴とする請求項1記載の親水性・防曇性基材。
【請求項3】被膜の最表面の凹凸は、高さ方向での山と谷との段差が10〜30nm、幅方向での山と山とのピッチが20〜50nmの規則性のある凹凸形状を有することを特徴とする請求項1または2記載の親水性・防曇性基材【請求項4】マトリックス金属酸化物は、シリカ、チタニア、ジルコニアの少なくとも1種よりなることを特徴とする請求項1乃至3記載の親水性・防曇性基材。
【請求項5】非反応性酸化物超微粒子は、シリカ、アルミナのうちの少なくとも1種から成ることを特徴とする請求項1乃至4記載の親水性・防曇性基材。
【請求項6】被膜は、多孔質であることを特徴とする請求項1乃至5記載の親水性・防曇性基材。
【請求項7】被膜の膜厚は50〜300nmであることを特徴とする請求項1乃至6記載の親水性・防曇性基材。
【請求項8】マトリックス金属酸化物用の有機金属化合物溶液に非反応性酸化物超微粒子を希釈溶媒とともに添加して均一に攪拌混合した塗布液を基材表面に塗布し、加水分解、縮重合反応させた後に乾燥し第1層の被膜を成膜後、さらに同一塗布液を該第1層の膜上に塗布して、加水分解、縮重合反応させた後に乾燥し、さらに焼成することを特徴とする親水性・防曇性基材の製造方法。
【請求項9】塗布液中にアルコールに可溶な有機高分子を含有させることを特徴とする請求項8記載の親水性・防曇性基材の製造方法。
【請求項10】乾燥温度が100〜250℃、焼成温度が400〜700℃の範囲であることを特徴とする請求項8または9記載の親水性・防曇性基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築用、産業用、自動車用等の窓材さらには鏡等の各種の分野の物品において用いられる親水性・防曇性基材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、基材に親水性、防曇性または防汚性等を付与するために、基材の表面に光触媒機能を有する被膜を形成することが盛んに行われている。例えば、特開平5ー253544号公報に記載のアナターゼ型チタニアを主体とする光触媒微粉末をその一部がバインダ層表面から露出するようにした板状部材、特開平7−232080号公報に記載の光触媒微粒子がチタニア、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化タングステン、チタン酸鉄、酸化ビスマス、酸化錫等であり、光触媒粒子の間隙充填粒子が錫、チタン、銀、銅、亜鉛、鉄、白金、コバルト、ニッケルの金属または酸化物である光触媒機能を有する多機能材、特開平9−59042号公報記載の光触媒性の平均結晶粒子径が約0.1μm以下のチタニアの粒子を含有する親水性被膜で覆われた透明基材等が知られている。
【0003】また、光触媒以外の微粒子を用い親水性あるいは防曇性を付与させるものとして、例えば、特開平5−302173号公報記載の平均粒径5μm以下の無機物質および少なくともシリカを含有する親水性被膜、特開平8−119673号公報記載の硬化性珪素樹脂溶液に金属酸化物を配合してなるガラス用親水化処理剤をガラス表面に塗布後焼き付け硬化させたガラスの親水化処理方法、特開平10−114543号公報記載の基材表面にシリカとアルミナ系の複合酸化物膜を形成後、加温した状態で純水の熱水に浸漬処理した防曇性被膜及びその製造方法等が知られている。
【0004】また従来、界面活性剤を基材表面に塗布することで表面を親水性に改質することは古くから知られており、界面活性剤にポリアクリル酸やポリビニルアルコールなどの水溶性有機高分子を添加・配合することで、親水性の持続性を上げることが特開昭52−101680号公報等で知られている。
【0005】さらに、疎水性ポリマーよりなる多孔質膜の表面および内部にポリビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体の被膜を介して、セルロースやグリコール類およびグリセリンなどの親水性ポリマーを被膜固定化する方法が特公平5ー67330号公報等で知られている。
【0006】またさらに、物理的方法では、プラズマ処理、レーザー照射処理などの親水化処理が実用化されているが、一般に処理後短期間では効果があるが、持続性に問題点があるとされている。
【0007】さらに、化学的方法には、表面にラジカルを発生させ親水性の残基を有する重合性化合物をグラフト重合させる方法や、酸、塩基性物質などの表面の結合を切断し、親水性の残基に変化させる方法などが行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の光触媒機能を利用した親水性膜においては、紫外線が当たることが必須であり、特に防汚性を発現するためには紫外線+水洗(太陽光+雨水)が必要となり、紫外線が当たらない場合は、親水性は発現されない。また紫外線が当たって一旦親水性となっても親水性を維持できるのは短時間であり、数時間後には親水性は失われる。さらに、防曇性を発現するには、一般に水の接触角が数度以下の場合に限られ、10゜付近では防曇性は失われる。また光触媒膜を基材に被覆した場合、光触媒膜機能を持つチタニアは高屈折率膜であるため反射率が高くなったり着色し、意匠性を損なう場合もある。一方、物理的な処理による親水性も短期的にしか効果を維持することができず、またポリエチレンオキシド系有機ポリマー膜では、耐水性や機械的強度が低いために用途によっては実用上十分なものとは言えない。
【0009】また、光触媒以外の微粒子を用いた親水性被膜の場合には、短い時間での親水性あるいは防曇性効果はあるが、長時間にわたり親水性あるいは防曇性を持続することは難しいという欠点がある。
【0010】また、例えば多孔質膜の表面および内部にポリビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体の被膜を介してセルロースなどの被膜を固定化する方法においても、被膜は極めて柔らかいものであり、しかも化学的耐久性も期待でき難いものであり、使用する用途が限定されるようなものである。
【0011】さらに、例えば無機物質からなる被膜は、膜の強度は比較的高いが親水性を呈する物質は水に対する溶解性も高く被膜は容易に消失するもので、実用上その用途は限られたものとなる。
【0012】以上のこれらの方法は、いずれの方法も一時的もしくは比較的短時間の間だけ親水性、防曇性を付与するのみであり、親水性および防曇効果の十分な持続性は期待し難いばかりでなく、水膜が均一となり難く透視像や反射像が歪み、親水性はあっても防曇性があるとは言い難く、実用化においては採用が困難なものであった。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来のこのような事情に鑑みてなされたものであって、非反応性酸化物微粒子とマトリックス金属酸化物よりなる複合金属酸化物被膜の膜内部から表面にかけての非反応性酸化物超微粒子の分布状態に疎密の濃度(表層>内層)をもたせ、さらに該被膜を数回の成膜操作で積層して内層にも非反応性酸化物超微粒子の密な層を形成し、且つ最表面を凹凸形状とすることにより、高硬度で透明性に優れ、且つ基材の色調を損なうことがなく、長期にわたり親水性、防曇性効果を発揮でき像歪みのない高耐久性の親水性・防曇性基材およびその製造方法を提供するものである。
【0014】すなわち、本発明の親水性・防曇性基材は、マトリックス金属酸化物中に非反応性酸化物超微粒子が分散された複合金属酸化物よりなる被膜が被覆された基材において、該被膜のマトリックス金属酸化物の含有量は30〜90重量%、非反応性酸化物超微粒子の含有量が10〜70重量%であり、被膜中の非反応性酸化物超微粒子の分散状態は、被膜の表層はその下層より密であって、さらに膜の内層にも非反応性酸化物超微粒子の密な層を少なくとも1層形成するとともに、且つ該被膜の最表面は凹凸形状となっていることを特徴とする。
【0015】また、本発明の親水性・防曇性基材は、非反応性酸化物超微粒子の分散状態が密である層は、吸水性酸化物超微粒子とマトリックス金属酸化物の原子比(超微粒子/マトリックス)が2.3以上であり、疎である層の原子比(超微粒子/マトリックス)は1.5以下であることを特徴とする。
【0016】さらに、本発明の親水性・防曇性基材は、被膜の最表面の凹凸は、高さ方向での山と谷との段差が10〜30nm、幅方向での山と山とのピッチが20〜50nmの規則性のある凹凸形状を有することを特徴とする。
【0017】さらにまた、本発明の親水性・防曇性基材は、マトリックス金属酸化物が、シリカ、チタニア、ジルコニアの少なくとも1種よりなることが好ましく、また非反応性酸化物超微粒子は、シリカ、アルミナのうちの少なくとも1種から成ることが好ましい。
【0018】さらに、本発明の親水性・防曇性基材における該被膜は、多孔質であることが好ましく、また、被膜の膜厚は50〜300nmであることが好ましい。
【0019】また、本発明の親水性・防曇性基材の製造方法は、マトリックス金属酸化物用の有機金属化合物溶液に、非反応性酸化物超微粒子を希釈溶媒とともに添加して均一に攪拌混合した溶液を基材表面に塗布し、加水分解、縮重合反応させた後に乾燥し第1層の被膜を成膜後、再度同一溶液により該第1層の膜上に塗布し、加水分解、縮重合反応させた後に乾燥したし、さらに焼成することを特徴とする。
【0020】さらに、本発明の親水性・防曇性基材の製造方法は、アルコールに可溶な有機高分子を塗布液中に含有させることもできる。
【0021】またさらに、本発明の親水性・防曇性基材の製造方法は、乾燥温度が100乃至250℃、焼成温度が400〜700℃の範囲であることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の親水性・防曇性基材は、被膜中の非反応性酸化物超微粒子の分散状態が、表層を密とするとともに膜の内層にも密な層を少なくとも1箇所形成し、且つ該被膜の最表面も凹凸形状とするものである。
【0023】被膜の厚み方向で非反応性酸化物超微粒子の密な分散状態が2層以上に形成することにより、一旦吸着された水酸基は、膜の表層ばかりでなく内部にも多量に存在して、組織全体が親水性となり、長期にわたり親水性および防曇性を維持することが可能となる。
【0024】このようにするには、例えば、基材表面に被膜を被覆する際に2回以上の繰り返し成膜操作によって、容易に非反応性酸化物超微粒子の厚み方向での疎密の分布状態を2層以上の多層に形成することができる。なお、他の方法で2層以上にすることは、差し支えない。
【0025】非反応性酸化物超微粒子の分散状態が、密である層は、吸水性酸化物超微粒子とマトリックス金属酸化物の原子比(超微粒子/マトリックス)が2.3以上であり、また、疎である層は、吸水性酸化物超微粒子とマトリックス金属酸化物の原子比(超微粒子/マトリックス)が1.5以下であることが好ましい。
【0026】密な層の原子比が2.3以下であると、初期の親水性および防曇性は良好であるが、長期に渡って機能を発現し難くなり好ましくなく、また、疎な層の原子比が1.5以上であると、基材との密着性が悪くなり、各種の耐久性で不具合が起こるばかりでなく実用耐久性も不足し好ましくない。なお、ここで述べる原子比はオージェ電子分光による検出強度比で表すことが出来る。
【0027】なお、非反応性酸化物超微粒子の分散状態は、図1〜図3に示すように表層および内部の少なくとも1ヶ所に吸水性を有する非反応性酸化物超微粒子の密な層があればよく、密な層を3層以上にすることもできる。また、密から疎の層へは該微粒子の濃度が急激に変化してもよいし、徐々に濃度が変化しても構わない。
【0028】被膜最表面の凹凸形状は、高さ方向での山と谷の高さの段差が10〜30nm、幅方向の山と山のピッチが20〜50nmと規則的にすることが好ましい。山と谷の段差が10nmより小さい場合には、表面積は増大するものの吸水性を有する非反応性酸化物超微粒子の効果を十分に発揮できず、30nmより大きい場合には表面積は著しく増大するが、光が散乱し見る角度によっては透視像が見にくくなるなど実用上の問題が発生する。より好ましくは15〜20nmの範囲がよい。またピッチが20nmより小さい場合には、山と山が隣接しすぎるためその間に挟まれた空気層により水膜の均一な広がりが悪くなり、50nmより大きい場合には、吸水性を有する非反応性酸化物超微粒子の効果が十分に発揮されず、長期に渡って親水性ならびに防曇性を発揮し難くなる。より好ましくは30〜40nmの範囲がよい。
【0029】本発明に用いる非反応性酸化物超微粒子は、吸水性を有する結晶性のシリカまたは無定型、ガラス状もしくはコロイダルシリカのいずれであってもよいが特にコロイダルシリカが好ましく、アルミナとしては、ベーマイト型結晶構造のアルミナがよい。なお、超微粒子とは、特に粒径を限定するものではないが、粒径がほぼ20nm以下であるものを用いることが好ましい。
【0030】本発明のマトリックス金属酸化物は、焼成することにより非晶質となる金属酸化物であるならば特に物質は限定されず、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化錫等を用いることが出来るが、耐久性、非反応性酸化物超微粒子保持性、成膜のし易さ等から特に、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナが好ましい。
【0031】これらマトリックス金属酸化物を形成する主な原料としては、例えばシリカの主な原料としては、金属アルコキド類では、シリカアルコキシド類が、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、その他のテトラアルコキシシラン化合物、その他のアルキルアルコキシシラン化合物、また、チタニアの主な原料としては、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン、トリイソプロポキシチタンモノアセチルアセトナート等のアルコキシド類、アルミナの主な原料としては、アルコキシド類では、アルミニウムブトキシド、アルミアセテート類では、アルミニウムアセチルアセトナート等の有機金属化合物、ジルコニアの主な原料としては、アルコキシド類では、ジルコニウムブトキシド、ジルコニアアセテート類では、ジルコニウムアセチルアセトナート等の有機金属化合物を用いることができる。
【0032】被膜のマトリックス金属酸化物の含有量は30〜90重量%、非反応性酸化物超微粒子の含有量が10〜70重量部であるが、特に、マトリックス金属酸化物のシリカとチタニアの含有率が等しく、それらの合計量で20〜60重量%、ジルコニアの含有率が10〜30重量%からなり、超微粒子の含有率が10〜70重量%からなるものは特に好ましい。なお、被膜中に含まれるマトリックス金属酸化物の含有率は、90重量%を超えると、非反応性酸化物超微粒子の効果が十分に発揮されず、また30重量%未満では膜の耐久性や摩耗強度が低下し、実用上の用途が限られるためである。
【0033】被膜の膜厚は、50〜300nmの範囲が好ましく、50nm未満では膜表面の凹凸形状の山と谷の段差を25nm以上とすると基材と膜の密着性が低下し、親水性ならびに防曇・防汚性は長期にわたって発揮できるものの、耐久性全般が悪くなり、また山と谷の段差を25nm以下とすると、耐久性は向上するが親水性ならびに防曇・防汚性を長期にわたって発揮することが困難である。さらに、膜厚が300nmを超えると焼成時にクラックが発生したり、これを防止するために多段階の焼成を必要とするなどコストアップとなる。より好ましくは、120〜200nmの範囲がよい。
【0034】被膜は、例えば、マトリックス金属酸化物用の有機金属化合物溶液に、非反応性酸化物超微粒子を希釈溶媒とともに添加して均一に攪拌混合した溶液を基材表面に塗布し、加水分解、縮重合反応させた後に乾燥し第1層の被膜を成膜後、再度同一溶液により該第1層の膜上に塗布し、加水分解、縮重合反応させた後に乾燥した後、焼成することにより製造出来る。。
【0035】用いられる希釈溶媒としては、アルコ−ル系低沸点溶媒が好ましく、具体例としては、メノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノール、プロパノ−ル、ブタノールおとびこれらアルコールの混合体、さらには酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、さらにはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類及びこれらを混合した溶媒で、レベリング剤としてジメチルシリコーンなどのメチルシリコーン類やフッ素系レベリング剤を適量加えても良い。本来溶液中に含まれるアルコ−ル系やセロソルブ系のもの単独または混合物を、該溶液の蒸発速度や被膜粘度を勘案して選択すればよい。
【0036】アルコールに可溶な有機高分子を塗布液中に含有させることにより、焼成後の被膜を多孔質あるいはより多孔質とすると、保水性が向上し、長期にわたり親水性・防曇性を持続できるので好ましい。なお、アルコールに可溶な有機高分子としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等を用いることが出来る。
【0037】多孔質を表す指標として膜の屈折率差を(得られたサンプルの屈折率/理論屈折率×100%)ポロシティーと考えることができ、下記算出式より今回設定したマトリックス範囲での理論屈折率(n2)と得られたサンプルの屈折率値(n1)の測定結果からポロシティーを算出した。なお、測定は溝尻光学工業(株)製、自動エリプソメーター:DVA−36VW−Sを用いて測定した。
【0038】結果、マトリックス組成の理論屈折率範囲は1.70〜1.95であり、得られたサンプルの屈折率実測値範囲は1.55〜1.84であることから算出した結果、ポロシティーは27.6%〜15.0%の範囲であった。なお、算出式は、ポロシティー(P)=1−{(n12−1)/(n22−1)}を用いた。
【0039】塗布法としては、特に限定されるものではないが、生産性などの面からは例えばスピンコート法あるいはディップコ−ト法、またリバ−スコ−ト法、フレキソ印刷法、その他のロールコート法、カーテンコート法であり、さらにはノズルコ−ト法、スプレーコ−ト法などが適宜採用し得るものである。これら塗布法で塗布成膜する際の塗布液中の全固形分濃度としては約0.5〜8重量%程度で、塗布液粘度としては2〜6cp程度が好ましい。
【0040】塗布後の乾燥処理としては、乾燥温度が100〜250℃程度で乾燥時間が10〜30分間程度が好ましく、より好ましくは、前記乾燥温度が150〜200℃程度で、乾燥時間が15〜20分間程度である。
【0041】最終焼成処理としては、焼成温度が400〜700℃程度で焼成時間が10〜30分間程度が好ましく、400℃未満では膜の機械的強度が不十分であり、700℃を超えると結晶形が転移したり温度を高くしても性能の良化が図れないためである。より好ましくは、500〜650℃の範囲である。さらに基材の種類と用途によっては、基材がガラスの場合は、熱強化または/および熱曲げ加工時に同時に行うことがよく、前記ガラスの熱強化または/および熱曲げ加工は、温度が600〜650℃程度で時間が5〜10分間程度行うことがより好ましい。
【0042】なお、本発明に使用する基材としては、代表的なものとしてはガラスが用いられるが、そのガラスは自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラス、所謂フロート板ガラスなどであり、クリアをはじめグリ−ン、ブロンズ等各種着色ガラスや各種機能性ガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合せガラスのほか複層ガラス等、さらに平板あるいは曲げ板等各種板ガラス製品として使用できることは言うまでもない。また板厚としては例えば約2.0mm程度以上約12mm程度以下であり、建築用としては約3.0mm程度以上約8mm程度以下が好ましく、自動車用としては約2.0mm程度以上約5.0mm程度以下が好ましく、より好ましくは約2.3mm程度以上約3.5mm程度以下のガラスである。
【0043】なお、本発明の基材はガラスに限定されるものではなく、ガラス以外でも金属やセラミックスなど、焼成熱処理しても変質しないものであれば使用することができる。
【0044】さらに、各種の機能性膜、例えば、熱線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、電磁遮蔽膜、導電性膜、アルカリバリアー膜、着色膜、装飾膜等、が被覆された基材上に本発明の膜を被覆することもできる。
【0045】なお、本発明における親水性とは、実施例の被膜の性能評価で後述するように、被膜表面に20μlの水滴を滴下したときに、水との濡れ性を示す特性であり、水の接触角が好ましくは5°以下になることが良好な状態である。一方、防曇性とは、被膜が水で濡れた場合に、被膜付き基板を透して像が明白に見えるかどうかの程度を示す特性であり、揺らぎがなくクリアーに見えることが良好な状態である。
【0046】本発明により得られる親水性・防曇性基材は、建築用、自動車用、産業用等の各種窓、浴室用、車両用、化粧用、道路用等の各種鏡、その他親水性、防曇性の要求される各種の用途に使用出来る。
【0047】
【作用】親水性ならびに親水維持性、防曇性に係わる物性は、膜表面の水酸基の量と表面から内部に渡る保水性および膜表面形状への依存性が高く、膜表面と水の接触角が小さくできるだけ多くの水を吸収または吸着することができれば、親水効果ならびに防曇効果を長期に持続することが可能となる。
【0048】本発明により得られる親水性・防曇性基材が、長期に渡って親水性ならびに防曇性を持続できるのは、被膜の表層に吸水性を有する非反応性酸化物超微粒子が密に存在することおよび最表面が凹凸形状を有していることに起因し、さらに吸水性を有する非反応性酸化物超微粒子が膜表面ばかりでなく内部にも濃度分布が高い層があるためである。すなわち、表面積の増大により吸着能が増し、さらに一旦吸着した水酸基は、膜表面ばかりでなく内部にも多量に存在し、組織全体が親水性となるためである。また防曇性も同様な効果により水膜が均一に広がり長期に渡って発揮することができるためである。
【0049】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】被膜の性能評価は以下の方法により評価した。
【0051】
■初期親水性評価:水の接触角測定で評価(成膜直後の評価)
(測定機器)協和界面科学製CA−A型(測定環境)室温/大気中(水滴量) 20μl[合否判定]水の接触角が5°以下であるものを合格とした。
【0052】
■親水維持性評価:水の接触角測定で評価(経時測定)
(測定環境等は同上)
(放置条件)室内、温度;20〜35℃、湿度;40〜90%RH[合否判定]水の接触角が5°以下であるものを合格とした。
【0053】
■膜強度評価:堅牢試験荷重;100g/cm2綿帆布;キャンバス布(JISL 312019611206)
ストローク回数;3000往復[合否判定]著しいキズの発生がなく、水の接触角が10°以下であるものを合格とした。
【0054】
■耐温水性試験:60℃の温水に96h浸漬して外観、膜強度(温水中でガーゼ布で強く擦り膜剥離の有無を調べる)の変化を評価した[合否判定]著しいキズの発生および膜剥離がなく、水の接触角が5°以下であるものを合格とした。
【0055】
■耐アルカリ試験:1NのNaOH水溶液に48h室温で浸漬して外観の変化を評価した[合否判定]膜の変色および剥離がないものを合格とした。
【0056】
■像歪み評価:46℃飽和水蒸気に被膜面側を3分間接触させ、この間の透視と反射での像の見え方を目視で評価(経時測定)
[合否判定]水膜の不均一さによる像の揺らぎのない場合を合格とした。
【0057】
■防曇性評価:呼気による評価(経時測定)
[合否判定]官能評価で、呼気をかけたサンプルを介して新聞の文字が正読できるものを合格とした。
【0058】なお、下記の実施例における上記の性能評価結果ならびに室内放置での水の接触角の推移、防曇性を表1に示す。なお、比較例の評価結果は、表2に示す。
【0059】
【実施例1】■ゾル溶液の調製:出発原料として、マトリックス形成用シリカゾル(CSG−DI−0600、チッ素製)、チタニアゾル(CG−T、日本曹達製)、ジルコニア(塩化ジルコニウム試薬、キシダ化学製)、超微粒子シリカ(IPA−ST−S、日産化学製)、溶媒(エキネンF−1(変性アルコール))を用いた。溶液は以下の手順で調製した。
【0060】ゾル溶液組成は、酸化物換算でシリカ:チタニア:ジルコニア:超微粒子シリカ=20:20:10:50重量%とし、所定量のCSG−DI−0600、CG−T、塩化ジルコニウムおよびIPA−ST−Sを順次添加し室温で攪拌してコーティング溶液とした。なお、溶液の固形分濃度は全酸化物換算で4重量%とした。
【0061】■コーティング操作および焼成:基板には10cm□で厚さ2mmのソーダライムガラスを使用し、コーティング面を酸化セリウムで十分に研磨した後、上水で洗浄、イオン交換水でリンス洗浄し、さらに水を除去した後、イソプロピルアルコールで払拭してコーティング用基板とした。このようにして準備したガラス基板に上記溶液をスピンコート法で成膜し、200℃で10分間乾燥して室温まで冷却した後、再度、同一溶液を同じ操作で乾燥処理をし、600℃で5分間焼成した。得られた膜は反射、透過とも色調はニュートラルで、1回の成膜操作での膜厚は表面粗さ計(dektak−3030、sloan社製)で測定した結果80nmで、2回の成膜操作で160nmであった。膜表面の凹凸形状の山と谷の段差は20nmで、ピッチは30nmであった。
【0062】初期親水性評価をした結果、被膜の水に対する接触角は1〜2°と良好であるとともに、他の性能評価結果も表1に示す通りすべて良好であった。なお、超微粒子シリカの分散状態は、図2に示すような、基板/疎/密/疎/密の構成を有していた。なお、被膜の原子比(超微粒子/マトリックス)は、表層の超微粒子シリカの密な層が3.0、内部の超微粒子シリカの疎な層が1.2であった。
【0063】
【表1】

【0064】
【実施例2】ゾル溶液組成をシリカ:チタニア:ジルコニア:超微粒子アルミナ=20:20:10:50重量%とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は140nmであった。膜表面の凹凸形状の山と谷の段差は10nmで、ピッチは40nmであった。初期親水性評価をした結果、被膜の水に対する接触角は1〜2°であり良好であるとともに、他の性能評価結果も表1に示す通りすべて良好であった。
【0065】
【実施例3】ゾル溶液組成をシリカ:チタニア:ジルコニア:超微粒子シリカ=25:25:20:30重量%とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は200nmであった。膜表面の山と谷の段差は10nmでピッチは20nmであった。初期親水性評価をした結果、被膜の水に対する接触角は2〜3°であり良好であるとともに、他の性能評価結果も表1に示す通りすべて良好であった。
【0066】
【実施例4】ゾル溶液組成をシリカ:チタニア:ジルコニア:超微粒子シリカ=30:30:10:30重量%とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は160nmであった。膜表面の山と谷の段差は20nmでピッチは30nmであった。初期親水性評価をした結果、被膜の水に対する接触角は1〜2°であり良好であるとともに、他の性能評価結果も表1に示す通りすべて良好であった。 【0067】
【実施例5】コーティング溶液を調製する際のマトリックス形成用シリカゾルを三菱化学製のMSH2とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は240nmであった。膜表面の山と谷の段差は30nmでピッチは40nmであった。初期親水性評価をした結果、被膜の水に対する接触角は1〜2°であり良好であるとともに、他の性能評価結果も表1に示す通りすべて良好であった。
【0068】
【実施例6】コーティング溶液を調製する際のマトリックス形成用チタニアゾルを日本曹達製のNTiー500とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は280nmであった。膜表面の山と谷の段差は25nmでピッチは20nmであった。親水性評価をした結果、被膜の水に対する接触角は1〜2°であり良好であるとともに、性能評価結果も表1に示す通りすべて良好であった。
【0069】
【比較例1】成膜操作を1回とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は80nmであった。膜表面の山と谷の段差は10nmでピッチは20nmであった。性能評価をした結果、被膜の水に対する初期接触角は1〜2°であった。また、384時間後の水の接触角は18°と経時変化は大きく、好ましいものではなかった。さらに、その他の性能についても表2に示す通り親水維持性が好ましいものではなく、防曇性も好ましいものではなかった。なお、被膜の原子比(超微粒子/マトリックス比)は、表層が2.0で、内部が1.8であった。
【0070】
【表2】

【0071】
【比較例2】成膜操作を1回とした以外はすべて実施例2と同様で、焼成後の膜厚は70nmであった。膜表面の山と谷の段差は20nmでピッチは30nmであった。性能評価をした結果、被膜の水に対する初期接触角は2〜3°であった。また、576時間後の水の接触角は27°と経時変化は大きく、好ましいものではなかった。さらに、その他の性能についても表2に示す通り親水維持性と防曇性が好ましいものではなかった。
【0072】
【比較例3】ゾル溶液組成を酸化物換算でシリカ:チタニア:ジルコニア:超微粒子シリカ=35:35:25:5重量%とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は180nmであった。膜表面の山と谷の段差は10nmでピッチは10nmであった。性能評価をした結果、96時間後の水の接触角は18°と親水維持性の経時変化は非常に大きく、また、呼気による防曇性評価では水膜が均一とならず像歪みがあった。
【0073】
【比較例4】ゾル溶液組成を酸化物換算でシリカ:チタニア:ジルコニア:超微粒子シリカ=5:5:15:75重量%とした以外はすべて実施例1と同様で、焼成後の膜厚は190nmであった。膜表面の山と谷の段差は50nmでピッチは80nmで規則性はなかった。性能評価をした結果、親水維持性の経時変化は実施例同様非常に良好であったが、膜強度も低く堅牢試験で膜が全面剥離し、耐温水試験と耐アリカリ試験でも膜が全面剥離した。
【0074】
【発明の効果】本発明の親水性ならびに防曇性被膜を形成した基材によれば、安定かつ確実に優れた親水性を長期に渡って維持できるとともに、防曇性も長期にわたって維持できる金属酸化物薄膜を得ることができ、クラック等の欠陥もなく、かつ充分な可視光線透過率と耐久性に優れ、耐摩耗性においても実用上問題のないものとすることができる。さらに、透過および反射色調が基材のもつそれと同じものとなり、建築用もしくは鏡などの産業用、さらには自動車用窓材をはじめ、屋内、屋外で使用される各種ガラス物品等、種々の被膜に広く採用できる有用な親水性ならびに防曇性被膜基材およびその形成法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
【出願日】 平成11年6月1日(1999.6.1)
【代理人】 【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
【公開番号】 特開2000−344546(P2000−344546A)
【公開日】 平成12年12月12日(2000.12.12)
【出願番号】 特願平11−153438