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【発明の名称】 中和石こう粉末の製造方法
【発明者】 【氏名】原田 武

【氏名】伊藤 伸一

【要約】 【課題】嵩比重が高く、異種類の石こう粉末と容易に混合できる高純度の中和石こう粉末を製造する。

【解決手段】硫酸と炭酸カルシウムを反応槽13で反応させて中和石こう粉末を含むスラリー14を生成し、このスラリー14を反応槽に循環させ、スラリーに含まれる中和石こう粉末を第1種結晶とすることにより中和石こう粉末18を製造する。この第1種結晶と別に硫酸と炭酸カルシウムのみを反応させて作られる中和石こう粉末と異なる石こう粉末を反応槽に第2種結晶として添加し、第2種結晶の添加量を製品となる中和石こう粉末の3〜30重量%とする。第2種結晶には排煙脱硫石こう粉末、石こう鉱石の粉砕物、硫酸塩と炭酸カルシウムを反応させて作られた石こう粉末などがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 硫酸と炭酸カルシウムを反応槽(13)で反応させて中和石こう粉末を含むスラリー(14)を生成し、前記スラリー(14)を前記反応槽(13)に循環させ、前記スラリー(14)に含まれる中和石こう粉末を種結晶とすることにより中和石こう粉末を製造する方法において、前記循環する種結晶を第1種結晶とするとき、前記第1種結晶と別に前記硫酸と前記炭酸カルシウムのみを反応させて作られる中和石こう粉末と異なる石こう粉末を前記反応槽(13)に第2種結晶として添加し、前記第2種結晶の添加量を製品となる中和石こう粉末(18)の3〜30重量%とすることを特徴とする中和石こう粉末の製造方法。
【請求項2】 第2種結晶が排煙脱硫石こう粉末である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】 第2種結晶が石こう鉱石の粉砕物である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】 第2種結晶が硫酸塩と炭酸カルシウムを反応させて作られた石こう粉末である請求項1記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、種結晶の存在下で硫酸と炭酸カルシウムを反応させることにより得られ、石こうボードの原料として用いられる中和石こう粉末の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】石こうボードの原料となる石こうには、■石こう鉱石を粉砕した石こう粉末、■排煙脱硫石こう粉末、■硫酸塩と炭酸カルシウムを反応させて作られた石こう粉末、■硫酸と炭酸カルシウムを直接反応させて作られた中和石こう粉末等が一般に用いられる。これらの原料の供給業者が複数ある場合、使用原料の品質を安定させるために、石こうボードの製造工場ではこれらの石こう粉末を複数種類混合して、原料としている。これらの内で上記■の中和石こう粉末の製造方法では、図2に示すように濃硫酸、もしくは濃硫酸を水で希釈した50〜98重量%の硫酸と炭酸カルシウムのスラリーを反応槽1で混合撹拌し、約60℃の温度で反応し生成した中和石こうのスラリーを遠心分離機2により固液分離して中和石こう粉末3を得ている。この方法では、製造開始時に新規な種結晶を反応槽1に加える。この新規な種結晶により中和石こうを生成した後、この中和石こうを含むスラリーを反応槽1に循環させ、このスラリーに含まれる中和石こう粉末を次の連続操業用の種結晶としている。この方法によれば、不純物の少ない中和石こう粉末が得られる利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記スラリーに含まれる中和石こうは針状の結晶であって、図2に示すようにこのスラリーを反応槽1に戻してスラリーに含まれる中和石こう粉末全てを種結晶とすると、硫酸と炭酸カルシウムの反応性が極端に良好になり、製品となる中和石こう粉末も針状結晶になり、嵩比重が低くなる傾向があった。このため、石こうボードの製造時に、針状結晶でない別の種類の石こう粉末と混合する場合、嵩比重の差に起因して完全に混合することが困難であった。この不完全に混合した原料石こうを焼成し、この焼成体を粉砕してスラリーに戻す場合には、そのスラリーの濃度が微視的に変化し、石こうボードの強度不足を招いたり、ボードに気泡が混入する問題があった。
【0004】上記問題を解決するために、硫酸と炭酸カルシウムの反応時に添加剤を加えることにより、中和石こうの結晶の成長速度を遅らせて非針状の結晶にする方法、例えばアルミ法による排煙脱硫の技術が試みられているが、この場合、添加剤が不純物として石こう中に残留する不都合があった。本発明の目的は、嵩比重が高く、石こうボードを製造する際に異種類の石こう粉末と容易に混合できる高純度の中和石こう粉末の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、図1に示すように硫酸と炭酸カルシウムを反応槽13で反応させて中和石こう粉末を含むスラリー14を生成し、このスラリー14を反応槽13に循環させ、このスラリー14に含まれる中和石こう粉末を種結晶とすることにより中和石こう粉末を製造する方法において、上記循環する種結晶を第1種結晶とするとき、この第1種結晶と別に硫酸と炭酸カルシウムのみを反応させて作られる中和石こう粉末と異なる石こう粉末を反応槽13に第2種結晶として添加し、この第2種結晶の添加量を製品となる中和石こう粉末18の3〜30重量%とすることを特徴とする中和石こう粉末の製造方法である。請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、第2種結晶が排煙脱硫石こう粉末である中和石こう粉末の製造方法である。請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、第2種結晶が石こう鉱石の粉砕物である中和石こう粉末の製造方法である。請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、第2種結晶が硫酸塩と炭酸カルシウムを反応させて作られた石こう粉末である中和石こう粉末の製造方法である。請求項1〜4に係る発明の製造方法では、第2種結晶として排煙脱硫石こう粉末、石こう鉱石の粉砕物、又は硫酸塩と炭酸カルシウムを反応させて作られた石こう粉末などの硫酸と炭酸カルシウムのみを反応させて作られる中和石こう粉末と異なる石こう粉末を用いることにより、第2種結晶の表面で結晶生成反応が起きるため、反応速度が変わらないにも拘わらず、嵩比重が高く、不純度の少ない中和石こう粉末が得られる。
【0006】
【発明の実施の形態】請求項1に係る発明の製造方法では、図1に示すように、混合槽11で濃硫酸を水で希釈し、混合槽12で炭酸カルシウム粉末と水とを混合して炭酸カルシウムのスラリーを調製する。50〜98重量%の硫酸と炭酸カルシウムのスラリーを反応槽13で混合撹拌し、約60℃の温度で反応させることにより中和石こうのスラリー14を生成する。この反応のために製造開始時には新規な種結晶(図示せず)を反応槽13に加える。この新規な種結晶により中和石こうを生成した後、この中和石こうを含むスラリー14はポンプ16により複数の遠心分離機17に送られるとともに、反応槽13に送られ循環使用される、このスラリー14に含まれる中和石こう粉末を次の連続操業用の第1種結晶とする。遠心分離機17に送られ、そこで固液分離された中和石こう粉末18は石こうボードメーカー向けの製品となる。遠心分離機17で得られたろ液はろ液受槽19に貯えられ、ろ液の一部は石こうスラリーの濃度調整用として反応槽13に戻され、残部は排水処理設備に送られ処理される。
【0007】本発明の特徴ある点は、この第1種結晶とは別に第2種結晶を反応槽13に加えることにある。第2種結晶の添加量は、製品となる中和石こう粉末18の3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。添加量が3重量%に未満の場合には嵩比重を高めることが困難となり、30重量%を超えた場合、石こう分離機の能力に制限があり、所期の石こう生産量が得られない。第2種結晶は、図示するように直接反応槽13に投入してもよいが、混合槽12に入れて炭酸カルシウムと混合してから反応槽13に導入してもよいし、或いは循環させるスラリーに添加することにより反応槽13に導入してもよい。
【0008】請求項2〜4に係る発明のこの第2種結晶を例示すれば、排煙脱硫石こう粉末、石こう鉱石の粉砕物、又は硫酸塩と炭酸カルシウムを反応させて作られた石こう粉末が挙げられる。この硫酸塩としては硫酸鉄又は硫酸アルミニウムが挙げられる。排煙脱硫とは、硫黄を含む燃料を用いる工場や火力発電所の排煙中に含まれるSO2,SO3や、或いは硫酸プラントの排ガス中のSO2をそれぞれ除去することである。この排煙脱硫により石こう粉末を製造する方法には、(a)石灰石粉か消石灰を吸収剤として脱硫し、酸化して石こうとする直接石灰石こう法と、(b)苛性ソーダやアンモニア水などの他のアルカリで一度SOxを吸収した後、石灰石粉か消石灰で複分解して石こうとする間接石灰石こう法がある。その他に(c)苛性ソーダを吸収剤として亜硫酸ソーダのままで副生する方法や、(d)この副生物を更に酸化して硫酸ソーダにする方法や、(e)活性炭吸着による乾式法などがある。本発明の排煙脱硫石こう粉末は、上記(a)〜(e)の製造法のいずれかで作られた石こう粉末である。
【0009】この排煙脱硫石こうを生成するまでの反応式は、次の式(1)及び(2)で示される。式(1)はSO2の吸収を示し、式(2)はその吸収により生成した亜硫酸カルシウム(CaSO3)の酸化を示す。
SO2 + CaCO3 → CaSO3 + CO2 …(1)
CaSO3 + 1/2O2 + 2H2O → CaSO4・2H2O …(2)
このようにして生成した排煙脱硫石こう粉末(CaSO4・2H2O)の結晶は針状でなく米粒状である。
【0010】
【実施例】次に本発明の具体的態様を示すために、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>50重量%硫酸と炭酸カルシウムのスラリーを反応槽で反応させて中和石こう粉末を製造した。このとき製造開始時を除いて、反応により生成した中和石こうを含むスラリーを反応槽に循環させ、このスラリーに含まれている中和石こうを第1種結晶とした。この第1種結晶は製品となる中和石こう粉末の約500重量%であった。この第1種結晶に加えて、第2種結晶として、硫酸プラントの排ガス中のSO2から生成した排煙脱硫石こう粉末を、製品となる中和石こう粉末の20重量%の割合で反応槽に添加して上記反応を行った。この第2種結晶の排煙脱硫石こう粉末は図6の顕微鏡写真(倍率50)に示すように、米粒状の細かな結晶形を有していた。この反応により得られた中和石こう粉末の軽装嵩比重は0.77であった。この中和石こう粉末の顕微鏡写真(倍率50)を図3に示す。なお、軽装嵩比重とは石こうボードの原料としての使い易さの目安として測定した嵩比重であって、乾燥させた中和石こう粉末を300ccのガラス容器にふるいを用いて静かに落下させ定規で上面を平らにして、その重量を体積で割ることにより算出した嵩比重を意味する。アスペクト比が小さい結晶粉末ほど軽装嵩比重の値が高くなり、石こうボードの原料として使い易い粉末であると評価される。
【0011】<実施例2>第2種結晶として火力発電所の排煙中に含まれるSO2から生成した排煙脱硫石こう粉末を使用し、かつ第2種結晶の反応槽への添加量を製品となる中和石こう粉末の5重量%の割合にした以外は、実施例1と同様にして中和石こう粉末を製造した。この第2種結晶の排煙脱硫石こう粉末は図7の顕微鏡写真(倍率50)に示すように、米粒のような球状の結晶形を有していた。この反応により得られた中和石こう粉末の軽装嵩比重は0.82であった。この中和石こう粉末の顕微鏡写真(倍率50)を図4に示す。
【0012】<比較例1>第2種結晶を全く使用せずに、反応により生成した中和石こうを含むスラリーを実施例1と同じ割合で反応槽に循環させ、このスラリーに含まれる第1種結晶のみを種結晶とした以外は、実施例1と同様にして中和石こう粉末を製造した。この反応により得られた中和石こう粉末の軽装嵩比重は0.70であった。この中和石こう粉末の顕微鏡写真(倍率50)を図5に示す。
【0013】<比較評価>比較例1で得られた中和石こう粉末は図5に示すように細長い結晶形を有しており、上記のように、その軽装嵩比重は0.70と低い値を示した。これに対し、実施例1で得られた中和石こう粉末は図3に示すように小さい結晶形を有しており、比較例1のような細長い結晶は見られないことが判る。また上記のように、その軽装嵩比重は0.77と比較例1よりも高いことが判る。また実施例2で得られた中和石こう粉末は図4に示すように小さい結晶形を有しており、実施例1と同様に比較例1のような細長い結晶は見られないことが判る。また上記のように、種結晶の添加量が5重量%と少量でありながら、得られる中和石こう粉末の軽装嵩比重は0.82と比較例1よりも更に高いことが判る。
【0014】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、従来の第1種結晶に加えて、硫酸と炭酸カルシウムのみを反応させて作られる中和石こう粉末と異なる石こう粉末を第2種結晶として連続的に添加して硫酸と炭酸カルシウムを反応させて中和石こう粉末を製造したので、粉末の嵩比重が高くなり、異種類の石こう粉末と容易に混合することができる。また不純物の原因となる添加剤を添加することなく嵩比重を高めることができるため、良質で高純度の石こうボード用原料として使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【出願日】 平成10年12月9日(1998.12.9)
【代理人】 【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
【公開番号】 特開2000−169143(P2000−169143A)
【公開日】 平成12年6月20日(2000.6.20)
【出願番号】 特願平10−349699