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【発明の名称】 ウラン(U)含量の少ないハイドロタルサイト類化合物およびその製造法
【発明者】 【氏名】岡田 彰

【氏名】山下 聡子

【氏名】清水 晃治

【要約】 【課題】特にトランジスタ、IC、LSI等の半導体素子用の封止剤として使用される、例えばエポキシ樹脂等の合成樹脂用添加剤として有用なハイドロタルサイト類化合物を提供する。

【解決手段】本発明は、下記式【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 式(1)
【化1】

式中 M2+はMg2+およびZn2+の少なくとも1つ、xは0.2≦x<0.5の正数、A2-はCO32-およびSO42-の少なくとも1つ、mは0〜2の数を示すの組成を有し、ウラン(U)含量が10ppb以下、平均2次粒子径が約3μm以下で、かつBET比表面積が30m2/g以下であることを特徴とするハイドロタルサイト類化合物。
【請求項2】 高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、および高級アルコールのリン酸エステルからなる群より選ばれた表面処理剤の少なくとも一種で表面処理された請求項1記載のハイドロタルサイト類化合物。
【請求項3】 ハイドロタルサイト類化合物がその3重量%以下のシラン系カップリング剤で表面処理されている請求項1記載のハイドロタルサイト類化合物。
【請求項4】 合成樹脂用添加剤および充填剤である請求項1、2または3記載のハイドロタルサイト類化合物。
【請求項5】 前記式(1)において、A2-がCO32-である請求項1〜4のいずれかに記載のハイドロタルサイト類化合物。
【請求項6】(1) 水可溶性アルミニウム化合物の水溶液と水可溶性マグネシウム化合物および/または水可溶性亜鉛化合物の水溶液をアルカリ性条件下でかつ、下記式(2)のモル比範囲、【化2】

式中、M2+はMg及びZnの少なくとも1つを表すを満足する原料組成で、10〜50℃の温度で撹拌して共沈反応させ、次いで(2) 得られた共沈反応物を、その反応母液の懸濁液のまま温度90〜200℃で0.5時間以上水熱反応させ、その際、(3) 水熱反応後の反応物懸濁液のpHが7.0〜13.5の範囲に入るように調整する、ことを特徴とする請求項1記載のハイドロタルサイト類化合物の製造方法。
【請求項7】(1) 水可溶性アルミニウム化合物の水溶液と水可溶性マグネシウム化合物および/または水可溶性亜鉛化合物の水溶液をアルカリ性条件下でかつ、下記式(2−a)、【化3】

式中、M2+はMg及びZnの少なくとも1つを表すで示されるモル比範囲を満足する原料組成で、10〜50℃の温度で撹拌して共沈反応させる、前記請求項6記載のハイドロタルサイト類化合物の製造方法。
【請求項8】前記(2)の水熱反応を行った後、(4) 炭酸アンモニウムまたは/および炭酸(水素)アルカリ水溶液に水洗済みの水熱反応物を懸濁させ、温度10〜100℃で1〜24時間撹拌(溶離処理)する前記請求項6又は7記載のハイドロタルサイト類化合物の製造方法。
【請求項9】 請求項1記載のハイドロタルサイト類化合物を、さらに200〜350℃の温度で0.5〜24時間乾燥して得られる脱(または低)結晶水型のハイドロタルサイト類化合物である請求項1記載のハイドロタルサイト類化合物。
【請求項10】 請求項1の式(1)において、mが0.05〜0である脱結晶水型のハイドロタルサイトである請求項1記載のハイドロタルサイト類化合物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明はウラン(U)含量の少ないハイドロタルサイト類化合物およびその製造法に関する。さらに詳しくは、ソフトエラーに対する信頼性を落とすことなく、大容量化、高集積化されたメモリ半導体素子用封止材として使われるエポキシ樹脂のイオン捕捉剤または各種安定剤等として用いることができるハイドロタルサイト類化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】分散性、加工性が良好で、成形品の外観を悪化させないなどの樹脂添加剤無機粉末として必要な諸性質を具備したハイドロタルサイト類が特開昭55−80447号特許公報に示されている。この公報に示されているハイドロタルサイト類は現実にPVCの熱安定剤、ポリオレフィン類の安定剤等として数多くの合成樹脂に用いられている。
【0003】一方、トランジスタ、IC、LSI等の半導体素子は外界からの接触、汚染、湿気から保護絶縁しておくために、封止しておく必要がある。現在、樹脂封止方法は生産性、経済性の面から優位であり、広く使用されており、とりわけ、エポキシ樹脂組成物が、その電気特性、耐湿性、接着性等において良好であることから半導体装置の封止に用いられている。ハイドロタルサイト類化合物は、この半導体素子用エポキシ樹脂封止材にイオン捕捉剤等として用いられており、配線の腐食防止および耐湿性の向上等の役割及び機能を果たしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近の半導体メモリーの大容量化、高集積化に伴い、封止材樹脂組成物中に含まれているウラン、トリウム等の放射性物質の崩壊によるα線により、メモリーがソフトエラーを発生することが問題になってきている。例えば、ウラン、トリウムの含有量として4Mビットのメモリーで1ppb(ng/g)以下、4〜16Mビットで0.1ppb(ng/g)以下が、ソフトエラーに対する信頼性を確保するために要求されている。そのため、封止材として用いられるエポキシ樹脂に対して数パーセント以下の(微)少量配合のハイドロタルサイト類化合物についても放射性物質の含有量が微量であることが要求されるようになった。
【0005】本発明の目的は、大容量化、高集積化が高度に進行したメモリー半導体素子用封止材として使用されるエポキシ樹脂組成物のイオン捕捉剤として用いられる、ソフトエラーに対する信頼性の高い、ハイドロタルサイト類化合物を提供することにある。放射性物質であるウラン、トリウムの含量がとりわけ微量である高純度ハイドロタルサイト類化合物を提供することによりこの目的を達成することができる。よって、本発明の課題は樹脂添加剤として必要な特性を備え、且つウランの含有量が極めて微量であるハイドロタルサイト類化合物およびその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のハイドロタルサイト類化合物は、下記式(1)、【0007】
【化4】

【0008】式中 M2+はMg2+およびZn2+の少なくとも1つ、xは0.2≦x<0.5の正数、A2-はCO32-およびSO42-の少なくとも1つ、mは0〜2の数を示すの組成を有し、ウラン(U)含量が10ppb以下、平均2次粒子径が約3μm以下で、かつBET比表面積が30m2/g以下であることを特徴とするハイドロタルサイト類化合物である。
【0009】本発明のハイドロタルサイト類化合物としては、高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、および高級アルコールのリン酸エステルからなる群より選ばれた表面処理剤の少なくとも一種で表面処理された上記のハイドロタルサイト類化合物が好ましい。
【0010】これらの中、特にその3重量%以下のシラン系カップリング剤で表面処理されたハイドロタルサイト類化合物が好適である。
【0011】本発明のハイドロタルサイト類化合物は合成樹脂用添加剤および充填剤として好適である。
【0012】また、本発明のハイドロタルサイト類化合物は、前記式(1)においてA2-がCO32-であるものが特に好適であるが、CO32-の一部が他のアニオンで置換されたもの、例えばAlの 1/5 モル以下(−CO32-の40モル%以下)、特にAlの 1/10 モル以下(−CO32-の20モル%以下)のSO42-を含んだものも同じく好適である。
【0013】本発明のウラン含量が少ないハイドロタルサイト類化合物は、(1) 水可溶性アルミニウム化合物の水溶液と水可溶性マグネシウム化合物および/または水可溶性亜鉛化合物の水溶液をアルカリ性条件下でかつ、下記式(2)のモル比範囲、【0014】
【化5】

【0015】式中、M2+はMg及びZnの少なくとも1つを表すを満足する原料組成で、10〜50℃の温度で撹拌して共沈反応させ(以下第(1)工程ともいう)、次いで(2) 得られた共沈反応物を、その反応母液の懸濁液のまま温度90〜200℃で0.5時間以上水熱反応させ(以下第(2)工程ともいう)、その際、(3) 水熱反応後の反応物懸濁液のpHが7.0〜13.5の範囲に入るように調整する、ことによって製造することができる。
【0016】本発明の製造方法においては、特に、(1) 水可溶性アルミニウム化合物の水溶液と水可溶性マグネシウム化合物および/または水可溶性亜鉛化合物の水溶液をアルカリ性条件下でかつ、下記式(2−a)、【0017】
【化6】

【0018】式中、M2+はMg及びZnの少なくとも1つを表すで示されるモル比範囲を満足する原料組成で、10〜50℃の温度で撹拌して共沈反応させることが好ましい。
【0019】また、本発明においては、前記(3)で述べたとおり、水熱反応後の反応物懸濁液のpHが7.0〜13.5の範囲に入るように調節して、前記(1)の工程で得られた共沈反応物を、その反応母液の懸濁液のまま温度90〜200℃で0.5時間以上、好ましくは0.5〜24時間水熱反応させ(前記(2)の工程)、次いで、(4) 炭酸アンモニウムおよび/または炭酸(水素)アルカリ水溶液に水洗済みの水熱反応物を懸濁させ、温度10〜100℃で1〜24時間撹拌(溶離処理)する、ことが好適である。
【0020】上記(4)の炭酸アンモニウムおよび/または炭酸アルカリ又は炭酸水素アルカリの濃度は0.1〜3.0モル/lの濃度が好ましい。
【0021】本発明の製造方法の前記第(2)工程の水熱反応後の懸濁液のpHはウラン除去率を左右する重要な条件であるが、基本的にはUO22+イオンが水溶液中でUO2(OH)3-、UO2(CO3)22-、UO2(CO3)34-等の錯アニオンの形をとるに充分なpH、すなわち、7.0以上であればよい。とりわけ高いpH領域ではハイドロタルサイト類化合物の表面荷電がマイナスに逆転し、ウランの錯アニオンと電気的に反発し合い吸着等が起こり難くなりウラン除去は良好となり、炭酸アンモニウム、炭酸(水素)アルカリ等による溶離工程(4)を必要としないで目標のウラン含量レベルを達成できる。溶離処理工程(4)も含めた本発明の製造方法では水熱反応後の懸濁液の好適なpH範囲としては7.0〜13.5であり、より好ましくは9.0〜13.0の範囲である。またウラン除去の機構は明らかではないがこの水熱反応時にはハイドロタルサイト類化合物の結晶成長が起こり、BET比表面積が小さくなり、粒子の分散性が良好となり、樹脂用添加剤として好適な粉体物性が付与されるだけでなく、この結晶成長過程に併う物質の純化作用により、不純物の一種であるウラン イオンも結晶外に排出され、溶液中に存在するか、もしくは再吸着しても結晶表面部分に存在している状態となり、炭酸塩水溶液等により溶離され易くなるものと考えられる。排出されたウラン イオンを錯形成等により、溶液中に溶存させておく許容量を大きくするのにpHの高い且つ配位子となれるアニオンを含有する反応母液が貢献しているものと推定される。
【0022】水熱反応条件としては温度90〜200℃で0.5〜24時間の範囲でよく、好ましくは温度100〜170℃で1〜10時間の範囲である。温度−時間がこの範囲以外ではハイドロタルサイト類化合物の結晶成長が不充分となり、これに伴い分散性も不完全になり易すく、またウラン除去効率が悪くなり本発明の物が得られず不都合である。またこの範囲以上の温度、時間を採用しても特にウラン除去効果は高くならず、生産費用が高くなるだけである。
【0023】溶離処理に用いられる溶離液としては0.1〜3.0モル/l濃度の炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸アンモニウム−炭酸水素ナトリウム混合水溶液、炭酸アンモニウム−炭酸ナトリウム混合水溶液等が好適であり、さらに好ましくは0.5〜2.5モル/l濃度の該水溶液が用いられる。
【0024】本発明のウラン含量の少ないハイドロタルサイト類化合物の製造において前記第(1)工程の共沈反応に用いられるマグネシウム、亜鉛およびアルミニウムの水溶性化合物または塩としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、苦汁、ブライン等のマグネシウム化合物、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物を例示することができる。また、共沈反応および水熱反応後の懸濁液のpHを7.0〜13.5(室温)の範囲に入るよう調整するために用いられるアルカリ性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア水、アンモニアガスなどを例示することができる。
【0025】また前記(4)の溶離処理に用いられる炭酸塩としては炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が例示でき、また、炭酸アンモニウム−炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム−炭酸水素ナトリウムなどの組合で自由な割合で混合したものの所定濃度範囲(0.1〜3.0モル/l)で用いてもよい。
【0026】本発明のウラン含量の少ないハイドロタルサイト類化合物は合成樹脂に充填する際、相溶性、加工性等を良好にするために高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤からなる群から選ばれた表面処理剤の少なくとも1種で表面処理されていてもよい。本発明において表面処理剤として好ましく用いられるものとしては、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、エルカ酸等の高級脂肪酸類およびこれらの高級脂肪酸アルカリ金属塩、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エーテル結合スルホン酸塩、エステル結合スルホネート、アミド結合アルキルアリルスルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリルスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤類、オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のモノまたはジエステルまたは両者の混合物であって、それらの酸型またはアルカリ金属塩またはアミン塩等のリン酸エステル類、ビニルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、ガンマーアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、等のシランカップリング剤類、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤類、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤類、などを挙げることができる。
【0027】表面処理の方法としては、湿式法と乾式法がある。湿式法ではハイドロタルサイト化合物のスラリーに前記表面処理剤を液状またはエマルジョン状で加え、撹拌下で約10〜100℃までの温度で十分に混合する。又乾式法ではハイドロタルサイト化合物の粉末をヘンシエルミキサーなどの混合機を用いて表面処理剤を液状、エマルジョン状又は固形状で加え、加熱または非加熱下に十分混合すればよい。なお表面処理剤の使用量はハイドロタルサイト化合物の重量に対して約0.05〜約10重量%で使用するのが好ましい。
【0028】本発明のウラン含量の少ないハイドロタルサイト類化合物を好適に用いることができる合成樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニル又はアクリル酸エチル又はメチルメタアクリル酸との共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体、α−オレフィン単独又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂およびそのハロゲン化樹脂、エチレン−プロピレン系熱可塑性エラストマー、ナイロン6、66、11、12、46、610、612等のポリアミド樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、シクロペンタジエン含有エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、PET、PBT等のポリエステル系樹脂、有機ジイソシアネートの如きポリイソシアネート、ジオール類等のポリオールおよびジアミン類の如きポリアミンの反応生成物であるポリウレタン樹脂が例示できる。
【0029】ハイドロタルサイト類化合物は昇温していくと約180〜230℃付近で結晶水の脱離を起こす。加工(または架橋等の処理)温度が比較的高い、例えば200℃以上の合成樹脂に応用する場合等で、結晶水の脱離による発泡、シルバーストリークなどの問題またはその他の不都合が予想される時は、予め本発明のハイドロタルサイト類化合物を200〜350℃の温度で0.5〜24時間処理することにより脱結晶水型[式(1)でmがほぼ0.05〜0であって、mが0に近いもの]にして用いることができる。脱結晶水型ハイドロタルサイト類化合物は元の結晶水を持った物と比較してU含量は相対的に高くなるが、酸中和能、イオン交換能等の化学的性質および、2次粒子径、比表面積等の物理的性質においてほぼ同様であるので同じ用途に用いても性能は変わらない。
【0030】この脱結晶水型ハイドロタルサイト類化合物は物理的には、層間に存在していた結晶水のみが脱離し、アニオンはそのまま層間に残っている物で、粉末回折X線(XRD)図は元の結晶水型から変化している。すなわち、層間の結晶水を失うことで層間隔は収縮して狭くなり、その結果XRD図において(00l)面の回折線は高角側(面間隔が小さくなる方向)へのシフトが起っている。
【0031】以下本発明の実施例および比較例を挙げてさらに詳しく説明する。なお実施例および比較例中のハイドロタルサイト化合物のウランの定量分析は試料を塩酸と過塩素酸で溶解後希硝酸で希釈し液中のウランの測定をICP質量分析法で行った。2次粒子径は試料を水または有機溶媒に加えて超音波分散した後にレーザー回折散乱法により測定した。
【0032】比表面積は窒素ガスの吸着量よりBET法にて測定した。
【0033】参考例市販の合成ハイドロタルサイトであり合成樹脂類の添加剤として現在最も広く使われている協和化学工業(株)製の商品名DHT−4Aのウランおよびトリウムの分析結果を示す。
【0034】
【表1】

【0035】市販品の合成ハイドロタルサイトを例えば5重量%配合してもウラン含量が約10ppbの樹脂組成物となり、現行製品のおよそ2桁ウラン含量を落とさなければならないことがわかる。また通常の原料を用いてハイドロタルサイトを合成した場合トリウムは常に検出限界以下であり、当面の目標を達成するためにはウラン含量を低下させることが課題となることもわかる。
【0036】実施例1Mg濃度が1.5モル/lの苦汁液[Mg(OH)2当りの換算でUとして50ng/g(ppb)含有する]361mlとAl濃度が1.03モル/lの工業用硫酸アルミニウム[Al(OH)3当りの換算でUとして570ng/g(ppb)含有する]117mlとを混合する。この混合水溶液を2lのビーカーに入れ強く撹拌しながら室温下で3.4Nの荷性ソーダ水溶液585mlおよび0.8モル/lの炭酸ソーダ水溶液226mlを注加し約30分間撹拌して共沈反応物を得た。
【0037】沈降濃縮して700mlとした共沈反応物懸濁液を容量0.98lのオートクレーブに移し170℃で6時間水熱反応させた。冷却後の懸濁液のpHは13.17(30.1℃)であった。濾過・水洗後95℃で18時間乾燥させた。乾燥後、100メッシュで篩過した。
【0038】生成物は粉末X線回折測定によりハイドロタルサイト類化合物と同定された。またウラン(Uとして)含量は8ppb[ng/g(乾燥粉末)]、平均2次粒子径は1.0μm、BET比表面積は11.2m2/gであった。
【0039】化学分析結果より求めた化学式は次のとおりであった。
【0040】
Mg0.72Al0.27(OH)2(CO3)0.13・0.59H2O実施例2−1実施例1で用いたのと同じ原料を用い、実施例1と同様の操作を行なったが、ただし注加する3.4Nの荷性ソーダ水溶液の液量および0.8モル/lの炭酸ソーダ水溶液の液量は各々478mlおよび226mlとした。170℃で6時間水熱反応後の懸濁液のpHは12.08(28.6℃)であった。
【0041】生成物は粉末X線回折測定によりハイドロタルサイト類化合物と同定された。またウラン(Uとして)含量は17ppb(ng/g(乾燥粉末)]、平均2次粒子径は0.59μm、BET比表面積は13.4m2/gであった。化学分析結果より求めた化学式は次のとおりであった。
【0042】
Mg0.70Al0.30(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O実施例2−2試薬一級の炭酸アンモニウム47gを脱イオン水に溶解し、全量を700mlに調整後、1lのビーカーに入れる。撹拌下で実施例2−1で得られたハイドロタルサイト類化合物27gを加え、室温下で20時間撹拌した。濾過水洗後95℃で18時間乾燥させた。乾燥後、100メッシュで篩過した。
【0043】生成物は粉末X線回折測定によりハイドロタルサイト類化合物と同定された。またウラン(Uとして)含量は5ppb(ng/g)以下、平均2次粒子径は0.59μm、BET比表面積は13.0m2/gであった。化学分析結果より求めた化学式は次のとおりであった。
【0044】
Mg0.69Al0.30(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O実施例2−3工業用炭酸ソーダの0.5モル/l水溶液700mlを1lのビーカーに入れ、撹拌下で実施例2−1で得られたハイドロタルサイト類化合物27gを加え室温下で20時間撹拌した。濾過・水洗後95℃で18時間乾燥させた。乾燥後100メッシュで篩過した。生成物は粉末X線回折測定によりハイドロタルサイト類化合物と同定された。またウラン(Uとして)含量は5ppb(ng/g)、平均2次粒子径は0.59μm、BET比表面積は13.3m2/gであった。化学分析結果より求めた化学式は次のとおりであった。
【0045】
Mg0.70Al0.30(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O実施例3注加する3.4Nの荷性ソーダ水溶液が461mlおよび0.8モル/lの炭酸ソーダ水溶液が226mlとした以外は、実施例1で用いたのと同じ原料を用い、同様の操作を行なった。水熱反応後の懸濁液のpHは11.05(28.2℃)であった。
【0046】濾過・水洗して得られたケーキを試薬1級の1.0モル/l濃度の炭酸アンモニウム水溶液700mlに入れ撹拌により懸濁させて、室温下で20時間撹拌を続けた。次に濾過・水洗して得られたケーキを2lのビーカーに移して脱イオン水800mlを加え、撹拌により懸濁し80℃に加熱する。200mlのビーカーにステアリン酸ナトリウム(純度86%)1.2gと脱イオン水150mlを入れ約80℃に加熱して溶解した液を撹拌下の懸濁液に注加して80℃で30分間維持した。濾過・水洗後、95℃で18時間乾燥させ100メッシュで篩過した。生成物は粉末X線回折測定によりハイドロタルサイト類化合物と同定された。またウラン(U)含量は5ppb(ng/g)以下、平均2次粒子径は0.59μm、BET比表面積は13.0m2/gであった。化学分析結果より求めた化学式は次のとおりであった。
【0047】
Mg0.69Al0.31(OH)2(CO3)0.15・0.53H2O実施例41.2モル/lの塩化亜鉛液300mlと0.4モル/lの工業用硫酸アルミニウム水溶液225mlとを混合する。2lのビーカーに入れ強く撹拌しながら、室温下で工業用の3.4NのNaOH液318mlおよび工業用の0.8モル/lのNa2CO3液135mlを注加し約30分間撹拌した。
【0048】沈降濃縮で700mlとした共沈物懸濁液を容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、110℃で15時間水熱反応させた。
【0049】冷却後の懸濁液のpHは10.51(29.2℃)であった。濾過・水洗して得たケーキを試薬一級の0.5モル/l濃度の炭酸アンモニウム水溶液700mlに入れ撹拌機で十分に懸濁させて室温下で20時間撹拌した。濾過・水洗後95℃で18時間乾燥させた。乾燥後100メッシユで篩過した。生成物は粉末X線回折測定および化学分析によりハイドロタルサイト類化合物であった。またウラン(U)含量は5ppb[ng/g(乾燥粉末)]以下、平均2次粒子径は1.2μm、BET比表面積は9.9m2/gであった。
【0050】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0051】
Zn0.67Al0.33(OH)2(CO3)0.17・0.5H2O実施例5実施例1と同様にMg濃度が1.5モル/lの苦汁液363mlとAl濃度が1.03モル/lの工業用硫酸アルミニウム水溶液117mlとを混合する。2リットルビーカーに入れ強く撹拌しながら室温下で3.4NのNaOH液463mlおよび工業用の0.8モル/lのNa2CO3液303mlを注加し、約30分間撹拌した。共沈物懸濁液を600ml採取して容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し170℃で6時間水熱反応させた。冷却後の懸濁液のpHは10.56(25.0℃)であった。濾過・水溶後95℃で18時間乾燥させた。乾燥後100メッシユで篩過した。
【0052】生成物は粉末X線回折測定によりハイドロタルサイト化合物と同定された。
【0053】またウラン含量は13ppb(ng/g)。平均2次粒子径は0.60μm、BET比表面積は14m2/gであった。
【0054】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0055】
Mg0.69Al0.31(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O得られたハイドロタルサイト類化合物試薬1級の1.0モル/l濃度の炭酸アンモニウム水溶液700mlに撹拌下で加えて懸濁させ、室温下で20時間撹拌を続けた。次に濾過・水洗後、95℃で18時間乾燥させ、100メッシユで篩過した。生成物は粉末X線回折測定によりハイドロタルサイト類化合物と同定された。またウラン(Uとして)含量は5ppb(ng/g)以下、平均2次粒子径は0.60μm、BET比表面積は14m2/gであった。化学分析結果より算出した化学式は次のとおりであつた。
【0056】
Mg0.69Al0.31(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O比較例1実施例5で得られた共沈物懸濁液を600ml採取して濾過・水洗後1リットルビーカーにケーキを入れ脱イオン水で懸濁し、全量を600mlに調整する。0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、170℃で15時間水熱反応させた。冷却後の懸濁液のpHは9.94(24.1℃)であった。濾過・水洗後95℃で18時間乾燥させた。乾燥物は100メッシユで篩過した。
【0057】生成物は粉末X線回折測定および化学分析により、ハイドロタルサイト化合物であった。
【0058】またウラン含量は190ppb(ng/g)。平均2次粒子径は0.6μm、BET比表面積は19m2/gであった。
【0059】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0060】
Mg0.69Al0.31(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O実施例6実施例1と同じ反応原料液を用い連続反応方式で共沈反応を行った。すなわち、反応懸濁液を連続的に採り出せる容量約1lの反応槽に撹拌下でMg濃度が1.5モル/lの苦汁液を12.1ml/分、Al濃度1.03モル/lの硫酸アルミニウム水溶液を3.92ml/分、0.8モル/lの炭酸ナトリウム水溶液を5.5ml/分の各流量でまた3.4Nの水酸化ナトリウム水溶液を反応懸濁液のpHが10±0.2に維持するように調節した流量で同時に定量ポンプにて注加して、共沈反応を3時間継続した。
【0061】得られた反応懸濁液は沈降濃縮により約1.5倍の濃度とした後、700mlを採取して0.98lのオートクレーブに移して170℃で6時間水熱反応させた。冷却後、濾過、水洗した。1lのビーカーにて炭酸アンモニウム101gを脱イオン水に溶解して全量を700mlに調整後、撹拌下で得られた水洗ケーキを加えて懸濁し、室温で20時間撹拌した。濾過、水洗して得られたケーキを2lのビーカーに移して脱イオン水1lを加え撹拌により懸濁した。γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187 日本ユニカー製)3gを撹拌下で注加し、30分間維持した。得られた懸濁液をスプレー・ドライヤーに導き乾燥させ、白色乾燥粉末を得た。得られたハイドロタルサイト類化合物のウラン(U)含量は5ppb(ng/g)以下、平均2次粒子径は0.62μm、BET比表面積は13m2/gであった。
【0062】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0063】
Mg0.69Al0.31(OH)2(CO3)0.15・0.53H2O比較例2実施例6の連続式共沈反応で得られた。
【0064】反応懸濁液700mlを濾過・水洗後、共沈物を脱イオン水で全量700mlにする。これを0.98リットルのオートクレーブ装置に移して170℃で20時間水熱反応させた。冷却後、濾過・水洗95℃で18時間乾燥させた。乾燥後100メッシユで篩過した。生成物は粉末X線回折測定(および化学分析)によりハイドロタルサイト化合物であった。またウラン(U)含量は200ppb(ng/g)。平均2次粒子径は0.5μm、BET比表面積は13.5m2/gであった。
【0065】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0066】
Mg0.69Al0.31(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O試薬一級の炭酸アンモニウム101gを脱イオン水に溶解し全量を700mlに調整後1リットルのビーカーに入れる。撹拌機で撹拌しつつ比較例1で得られたハイドロタルサイト化合物38gを入れ室温下で20時間撹拌した。濾過・水洗後95℃で18時間乾燥させた。乾燥後100メッシユで篩過した。
【0067】生成物は粉末X線回折測定および化学分析によりハイドロタルサイト化合物であった。またウラン(U)含量は110ppb(ng/g)。
【0068】平均2次粒子径は0.54μm、BET比表面積は13m2/gであった。
【0069】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0070】
Mg0.69Al0.31(OH)2(CO3)0.15・0.54H2O実施例7実施例1と同様にMg濃度が1.5モル/lの苦汁液133mlと0.2モル/lの硫酸亜鉛液143mlおよび0.4モル/lの工業用硫酸アルミニウム水溶液143mlとを混合する。1リットルのビーカーに入れ強く撹拌しながら、室温下で工業用の3.4NのNaOH液202mlおよび工業用の0.8モル/lのNa2CO3液143mlを注加し、約30分間撹拌した。沈降濃縮で700mlとした共沈物懸濁液を容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、150℃で10時間水熱反応させた。冷却後の懸濁液のpHは9.71(32.4℃)であった。濾過・水洗してケーキを試薬一級の0.6モル/l濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液700mlに入れ撹拌機で十分に懸濁させた後、50℃に加熱して2時間維持した。濾過・水洗後95℃で18時間乾燥させた。乾燥後100メッシュで篩過した。
【0071】生成物は粉末X線回折測定および化学分析によりハイドロタルサイト類化合物であった。
【0072】またウラン(U)含量は5ppb[ng/g(乾燥粉末)]、平均2次粒子径は0.6μm、BET比表面積は8.0m2/gであった。
【0073】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0074】Mg0.58 Zn0.08 Al0.33(OH)2(CO3)0.16・0.5H2O実施例8実施例1と同様にMg濃度が1.5モル/lの苦汁液213mlと0.2モル/lの工業用硫酸アルミニウム水溶液266mlおよび試薬一級のNa2SO4 15gとを混合する。1リットルのビーカーに入れ強く撹拌しながら室温下で工業用の3.4NのNaOH液251mlを注加し、約30分間撹拌した。共沈物懸濁液を容量0.98リットルのオートクレーブ装置に移し、170℃で12時間水熱反応させた。冷却後の懸濁液のpHは11.08(29℃)であった。
【0075】濾過・水洗してケーキを工業用の0.5モル/l濃度のNa2CO3水溶液700mlに入れ撹拌機で十分に懸濁させ、室温下で10時間撹拌した。濾過・水洗後95℃で18時間乾燥させた。
【0076】乾燥後100メッシュで篩過した。
【0077】生成物は粉末X線回折測定および化学分析によりハイドロタルサイト類化合物であった。
【0078】またウラン(U)含量は8ppb[ng/g(乾燥粉末)]。
【0079】平均2次粒子径は1.5μm、BET比表面積は10.9m2/gであった。
【0080】化学分析により求めた化学式は次のとおりであった。
【0081】Mg0.75 Al0.25(OH)2(CO3)0.113(SO4)0.012・0.6H2O実施例9実施例5で得られた炭酸アンモニウム水溶液処理後のハイドロタルサイト類化合物の乾燥粉末を実験室ギヤーオーブン中で温度270℃で8時間乾燥処理をして脱結晶水型ハイドロタルサイト類化合物を得た。ウラン(U)含量は6ppb[ng/g]、平均2次粒子径は0.6μm、BET比表面積は15m2/g、温度250℃で1時間加熱による重量減量は0.5%であった。
【0082】実施例10実施例6と同様に反応、水熱反応及び炭酸アンモニウム水溶液処理を行なった後、濾過、水洗して得られたケーキを脱イオン水に懸濁し、80℃に昇温して撹拌下で所定量のステアリン酸ソーダの5重量%溶液を注加し30分間維持した。続いて懸濁液を濾過・水洗後95℃で18時間乾燥した後粉砕して表面処理乾燥粉末としこれを熱風乾燥機中で230℃で20時間乾燥して脱結晶水型ハイドロタルサイト類化合物を得た。ウラン(U)含量のは8ppb[ng/g]、平均2次粒子径は0.65μm、BET比表面積は14m2/g、250℃で1時間の加熱減量は0.8%であった。
【0083】実施例9、10で得られた脱結晶水型ハイドロタルサイト類化合物のXRD測定による(003)面の回折位置[2θ値]および、面間隔[d(003)値]を次に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば高純度(ウラン10ppb以下)のハイドロタルサイト化合物を容易に且つ工業的に製造することが出来る。そして高集積度の半導体メモリー素子用封止材樹脂組成物の添加剤として好適なハイドロタルサイト化合物を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000162489
【氏名又は名称】協和化学工業株式会社
【出願日】 平成10年11月10日(1998.11.10)
【代理人】 【識別番号】100060782
【弁理士】
【氏名又は名称】小田島 平吉 (外1名)
【公開番号】 特開2000−159520(P2000−159520A)
【公開日】 平成12年6月13日(2000.6.13)
【出願番号】 特願平10−333357