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【発明の名称】 石膏の製造方法
【発明者】 【氏名】伊東 正皓

【氏名】綾部 統夫

【要約】 【課題】無排水型乾式石膏製造方法により製造された二水石膏を改質して石膏ボード用の材料とでき、かつ、石膏中に含まれる、水に可溶な不純物を除去することができる石膏の製造方法を提供する。

【解決手段】無排水型乾式石膏製造方法によって製造された二水石膏に水を添加して攪拌しながら熟成する工程と、この熟成物から水分を分離する工程と、水分を分離した熟成物を乾燥させる工程を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 無排水型乾式石膏製造方法によって製造された二水石膏に水を添加して攪拌しながら熟成する工程と、この熟成物から水分を分離する工程と、水分を分離した熟成物を乾燥させる工程とを有していることを特徴とする石膏の製造方法。
【請求項2】 上記熟成する工程における攪拌時間が、2時間ないし4時間に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の石膏の製造方法。
【請求項3】 上記熟成物から水分を分離する工程で回収された排水は、上記熟成する工程で再利用されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の石膏の製造方法。
【請求項4】 上記無排水型乾式石膏製造方法が、炭酸カルシウムを主成分とする原料と硫酸とを混練する工程と、硫酸と炭酸カルシウムとの反応が途中まで進行した状態の混練物に水を添加して二水石膏への反応を促進させる工程と、水分の補給により混合反応を継続させて石膏を生成する工程とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の石膏の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、石膏の製造方法に係るものであり、特に、無排水型乾式石膏製造方法により製造された二水石膏を改質することができる石膏の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】石膏には、天然石膏と化学石膏とがあり、例えば、石油精製時における脱硫過程で発生した余剰硫黄及び硫酸から化学石膏を製造する場合には、第3図に示すような工程により製造されている。
【0003】すなわち、希硫酸と原料(水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸鉄等)とを反応槽に送り込んで攪拌混合し、CaSO4スラリーを生成する。次に、CaSO4スラリーからCaSO4を沈殿させて水との分離を図り、CaSO4濃縮スラリーを生成する。この工程で分離水が発生する。そして、CaSO4濃縮スラリーから遠心分離器やベルトプレス等の分離器で水分を除去する、この工程でも分離水が発生する。次に、水分を除去したCaSO4濃縮スラリーを乾燥させることにより、製品として石膏が生成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の石膏の製造方法においてはCaSO4濃縮スラリーの精製工程と水分除去工程で多量の水を処理しなければならないため、経済性や設置スペースの点で不利となるという問題がある。これに対して、特開平9−255330号公報に記載されているように、水の生成を低減させることができる無排水型乾式石膏製造方法も案出されているが、この種の製造方法で製造された二水石膏は、その性質上結晶の粒径が10μm以下と小さいため、これを材料として使用した場合に以下のような問題がある。
【0005】(1)塵埃の発生が多くなる。
(2)粉体の流動性が悪くなり、ホッパ等で詰まりやすい。
(3)水の混合率を多くしないとスラリー状態にならないので、ハンドリングがし難い。
(4)含水率が高くなるため、乾燥時間が長くなり製造コストが増加する。
【0006】上記二水石膏をセメント用として使用する場合にはさほど問題ではないが、石膏ボードとして使用する場合には、とりわけ上記(3)(4)に記載した問題がネックとなって使用が制限され、二水石膏の用途を限定してしまう原因となっている。そこで、この発明は、無排水型乾式石膏製造方法により製造された二水石膏を改質して石膏ボード用の材料とでき、かつ、石膏中に含まれる、水に可溶な不純物を除去することができる石膏の製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明においては、無排水型乾式石膏製造方法によって製造された二水石膏に水を添加して攪拌しながら熟成する工程と、この熟成物から水分を分離する工程と、水分を分離した熟成物を乾燥させる工程とを有していることを特徴とする。このように構成することで、生成された二水石膏に水を添加して攪拌しながら熟成する工程において、二水石膏の結晶の粒径を結晶成長によって水中で大きくすることが可能となる。また、この熟成する工程においては、二水石膏に含まれる可溶性の不純物等が水の中に溶け出すため、この溶け出した不純物は、熟成物から水分を除去する工程において分離器により分離除去することが可能となる。
【0008】請求項2に記載した発明においては、上記熟成する工程における攪拌時間が、2時間ないし4時間に設定されていることを特徴とする。このように構成することで、結晶の粒径を石膏ボード用の材料に適した100μmないし200μmの粒径へと結晶成長させることが可能となる。
【0009】請求項3に記載した発明においては、上記熟成物から水分を分離する工程で回収された排水は、上記熟成する工程で再利用されることを特徴とする。このように構成することで、排水の有効利用を図ることができる。
【0010】請求項4に記載した発明においては、上記無排水型乾式石膏製造方法が、炭酸カルシウムを主成分とする原料と硫酸とを混練する工程と、硫酸と炭酸カルシウムとの反応が途中まで進行した状態の混練物に水を添加して二水石膏への反応を促進させる工程と、水分の補給により混合反応を継続させて石膏を生成する工程とを有することを特徴とする。このように構成することで、中和のための排水処理設備が不要となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施形態について説明する。まず、無排水型乾式石膏としての二水石膏を製造する方法について説明する。図2において、炭酸カルシウム供給系1の貯留ホッパ2内の炭酸カルシウムを主成分とする原料、例えば、炭酸カルシウムや石灰石を粉末化した原料(例えば、粒径150μm以下)を、送り込みフィーダ3により混練機4のホッパ5に供給すると共に、硫酸供給系6からポンプ7、硫酸希釈手段8を介して濃度調整された硫酸を同様に混練機4のホッパ5に供給し、これら原料と硫酸を混練機4において混練処理する。尚、上記硫酸希釈手段8には水供給系9からポンプ10を介して希釈水が供給され、硫酸濃度が最適に調整される。
【0012】上記原料と硫酸とを混練する際には、前記水供給系9からポンプ11を介して混練機4の水注入口12から混練機4内に水が供給され、混練機4内で反応処理された材料は払出部13から大気暴露手段14に払い出される。混練機4の反応部4Aにおいて、材料は、例えば反応時間約5分で水分約35%の石膏となる。ここで、反応時間約5分で水分約35%となる石膏が生成されるためには混練機4の反応部滞留時間のほぼ中間で水分を添加する必要がある。
【0013】尚、上記混練時における初期硫酸濃度は60%ないし80%(最適には70%)に設定され、混合される炭酸カルシウム粉末は、硫酸と当量ないし5%程度の過剰当量にされている。また、初期硫酸濃度に対して50%ないし60%(上記初期希釈濃度70%の場合に50%が最適)相当の濃度になる量の水が混練中に添加される。このようにして、生成された石膏を大気暴露手段14により12時間以上暴露して水分を蒸発させることにより、反応を完結させて二水石膏と無水石膏との混合物を得る。
【0014】次に、上記無排水型石膏製造方法によって得られた二水石膏(粒径10μm以下)から石膏ボード用として適した石膏を製造する方法について説明する。図1に示すように、二水石膏に水を添加して熟成槽15で攪拌しながら熟成させる。ここで、攪拌は2時間ないし3時間(好ましくは3時間)行い、これにより二水石膏の粒径は10μm以下であったのが、粒径100μmから200μm(細長い形の結晶)に結晶成長する。また、この工程において、二水石膏に含まれている不純物である可溶性塩類、例えば、NaCl、KCl、MgSO4等は水に溶け出す。
【0015】次いで、例えば、遠心分離器やベルトプレス等の水分離装置16内で熟成物の水分を分離し、分離した排水は熟成槽15において循環再利用される。また、排水の一部は含有可溶性塩類等を沈殿槽(図示せず)で回収した後に排出される。このようにして得られた二水石膏は乾燥(水分が10%以下とする)され、粒径が大きくなった結晶性二水石膏として回収される。ここで、乾燥は乾燥機によって行ってもよく、あるいは、自然乾燥でも良い。この乾燥工程において、熟成物はその粒径が大きくなっている分だけ含水率が低くなるため、乾燥時間が短くて済む。
【0016】上記製造方法によって製造された二水石膏は、結晶成長によって粒径が大きくなっているため、粒径が小さい場合に比較して容易にスラリー状になる。したがって、ハンドリングが容易となる。また、粒径が大きくなったため、粉体の流動性が良くなり製造工程での供給排出をスムーズなものとすることができると共に粉塵の発生が少なくなり石膏ボード用の材料として使用することができる効果がある。
【0017】このようにして、多量の水を必要としない無排水型乾式石膏製造方法によって製造された二水石膏を改質することにより、石膏に対して3倍ないし5倍の少量の水を使用するだけで、石膏ボードとして好適な二水石膏を製造できるのである。尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、無排水型乾式石膏の製造方法については、上述の方法に限られるものではなく、混練機4内の反応部4Aを別装置として機外に配置し、ここで反応を行わせるようにしても良い。
【0018】
【発明の効果】以上説明してきたように、請求項1に記載した発明によれば、生成された二水石膏に水を添加して攪拌しながら熟成する工程において二水石膏の粒径を大きくすることが可能となると共に、熟成する工程で水に溶け出した可溶性の不純物を熟成物から水分を除去する工程において分離することが可能となる。
【0019】したがって、二水石膏の結晶の粒径を結晶成長によって水中で大きくできるため、粉体の流動性が良くなり製造工程での供給排出がスムーズになる効果がある。また、粒径が小さい二水石膏に比較して簡単にスラリー状になるため、ハンドリングが容易となる効果がある。更に、含水率が低くなるため乾燥時間が短くなりその分だけ製造コストを低減できる効果がある。ここで、請求項2に記載した発明のように、結晶の粒径を100μmないし200μmのとすることで、石膏ボード用の好適な材料となる効果がある。
【0020】請求項3に記載した発明によれば、無排水型乾式石膏製造方法によって排水処理が必要なくなったのに加えて、使用される水を再利用することで排水の有効利用を図ることができるため、生産コストが減少すると共に生産効率を向上させることができる効果がある。
【0021】請求項4に記載した発明によれば、中和のための排水処理設備が不要となるため製造コストを低減でき、設置スペースを小さくすることができる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
【出願日】 平成10年9月29日(1998.9.29)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外1名)
【公開番号】 特開2000−103618(P2000−103618A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平10−276173