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【発明の名称】 新規水酸化カルシウム、その製造方法及びそれを有効成分とする酸性ガス処理剤
【発明者】 【氏名】佐藤 俊治

【氏名】横倉 実

【氏名】長澤 博司

【氏名】石原 正行

【要約】 【課題】BET比表面積が大きく、かつ見掛比重が大きい新規水酸化カルシウム、それを効率よく製造する方法及びそれを有効成分とする酸性ガス処理剤を提供する。

【解決手段】水酸化カルシウムとして45m2/g以上のBET比表面積、0.4g/cm3以上のゆるみ見掛比重、及び0.7g/cm3以上の固め見掛比重を有するものを用いる。このものは酸化カルシウムを消化してBET比表面積が少なくとも35m2/g以上の水酸化カルシウムを調製し、次いでこれに粉砕と圧密造粒の処理を単独の装置で施して得られる。また、このものは酸性ガス処理剤の有効成分として用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 45m2/g以上のBET比表面積、0.4g/cm3以上のゆるみ見掛比重、及び0.7g/cm3以上の固め見掛比重を有する水酸化カルシウム。
【請求項2】 酸化カルシウムを消化してBET比表面積が少なくとも35m2/g以上の水酸化カルシウムを調製し、次いでこれに粉砕と圧密造粒の処理を単独の装置で施すことを特徴とする、請求項1記載の水酸化カルシウムの製造方法。
【請求項3】 請求項1記載の水酸化カルシウムを有効成分とする酸性ガス処理剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、BET比表面積が大きく、かつ見掛比重が大きい新規水酸化カルシウム、それを効率よく製造する方法及びそれを有効成分とする酸性ガス処理剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ごみ焼却炉、火力発電所その他のボイラー等から生じる廃ガスは、一般に硫黄酸化物、塩化水素等の酸性ガス成分を多量に含有するため、通常はこれを廃ガス煙道中において塩基性アルカリ土類金属化合物粉体と接触させて硫酸塩や塩化物の粉体とし、これをバグフィルタ(bag filter)や電気集塵器で分離した後にガス分を大気中に放出している。
【0003】ところで、一般的に廃ガス中に含まれる酸性ガス成分と水酸化カルシウムとの反応性は水酸化カルシウム粒子の表面積と相関があり、水酸化カルシウム粒子の表面積にほぼ比例して酸性ガス成分との反応性が定まるとされているが、酸性ガス処理剤として例えば市販工業用消石灰を用いた場合、この粒子のBET比表面積は5〜20m2/gと小さいので、水酸化カルシウムと廃ガス中の酸性ガス成分との反応が粒子の表面でしか起こらず、酸性ガス処理剤の大部分は未反応のままダストとして排出されてしまうため、モル比で酸性ガス成分の2〜3倍量の酸性ガス処理剤を投入する必要があった。また、粉体の流動性が良好でないために、貯蔵タンク内でブリッジングを生じたり、貯蔵タンクと煙道の噴射口との間の輸送管中で閉塞を起こしやすいという問題があった。
【0004】このような問題を解決するために、水酸化カルシウム粒子の表面積を大きくする方法が知られているが(例えば特公平6−8194号公報)、得られた水酸化カルシウム製品は工業用消石灰に比べ、表面積は増大するものの、見掛比重はゆるみ見掛比重で0.2〜0.3g/cm3、固め見掛比重で0.4g/cm3前後と、それぞれ工業用消石灰の約0.4g/cm3、約0.7g/cm3より小さくなるため、重量の割には広大な貯蔵スペースを要するし、また製品使用時に貯蔵タンク出口から製品を排出するのが困難になるなど、作業性に難があった。また、製品を陸上輸送する際にトラックやエアースライド車などの輸送用車両で輸送しているが、見掛比重が小さいため、輸送用車両に所定重量まで積載することができず、輸送コストが増大するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、酸性ガス処理剤などとして用いられる従来の水酸化カルシウムがもつ問題点を解決し、酸性ガスとの反応性が向上し、廃ガス中の酸性ガス成分を効率よく除去でき、使用量の減少、貯蔵タンクからの排出時のトラブルの減少、貯蔵スペースの縮小及び輸送コストの低減を可能にし、流動性が改良されて、配管詰まりや排出不良などのトラブルが減少し、作業性が向上した水酸化カルシウムを提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した好ましい特性を有する水酸化カルシウムを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、所定値以上の高比表面積を有するとともに、所定値以上の大きい見掛比重を有する水酸化カルシウムがその目的に適合しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、45m2/g以上のBET比表面積、0.4g/cm3以上のゆるみ見掛比重、及び0.7g/cm3以上の固め見掛比重を有する水酸化カルシウムを提供するものである。本発明の水酸化カルシウムは、酸化カルシウムを消化してBET比表面積が少なくとも35m2/g以上の水酸化カルシウムを調製し、次いでこれに粉砕と圧密造粒の処理を単独の装置で施すことによって製造することができる。また、本発明の水酸化カルシウムは、それを有効成分とする酸性ガス処理剤として用いられる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の水酸化カルシウムはBET比表面積及び見掛比重が共に大きい点で新規なものであって、BET比表面積が大きいことで、反応性が向上するので、このような水酸化カルシウム粉体を使用することで、より高効率の反応が期待でき、例えば廃ガス処理に用いて酸性ガス成分を効率よく除去するなど酸性ガスとの反応性を向上させ、また反応性の向上により使用量も減少させることが可能になる。また、見掛比重が大きいので、貯蔵スペースを縮小したり、輸送コストを低減したりすることができる。また、流動性も改良され、それにより配管詰まりや排出不良などのトラブルを減少させるなど、作業性を向上させることが可能になる。
【0009】本発明の水酸化カルシウムを製造するには、例えば先ず酸化カルシウムを消化して所定比表面積の水酸化カルシウムを調製する。この調製方法については特に制限はないが、好ましくは消化反応の際に水酸化カルシウム粒子の表面積を大きくする方法(例えば、特公平6−8194号公報)が挙げられ、中でもアルコールなどの消化反応を遅延させる有機溶媒の存在下に消化する方法が有利である。酸化カルシウムは特に制限されず、石灰石を仮焼したものが一般的であるが、好ましくは乾式粉砕されたもの、例えばケージミル、バイブロミル、ボールミルなどで粉砕されたものが用いられる。
【0010】次いで、このようにして調製された水酸化カルシウムに、粉砕と圧密造粒の処理を単独の装置で施す。このようにして、水酸化カルシウムはBET比表面積45m2/g以上、ゆるみ見掛比重0.4g/cm3以上、固め見掛比重0.7g/cm3以上になるように調製される。ここで、ゆるみ見掛比重とは疎充填時の見掛比重を意味し、また固め見掛比重とは密充填時の見掛比重を意味する。このような見掛比重は、原料粉体の種類、入手経路や調製手段、使用目的などにより様々に調整される。水酸化カルシウムの各見掛比重が上記各下限値よりも小さいと、積載重量も少なくなってしまうため輸送コストが増大し、また貯蔵スペースも大きくなるので好ましくない。また、水酸化カルシウムのBET比表面積が45m2/g未満では水酸化カルシウムの反応性向上効果が十分には得られないので好ましくない。
【0011】また、粉砕と圧密造粒の処理を単独で施す装置としては、粉砕と同時に圧密造粒の処理が行えるような装置、例えば粉砕媒体を備えた装置などが好ましく、中でも特に振動ミルやボールミルが有利である。
【0012】このような方法によって見掛比重及びBET比表面積が大きくなるのは、見掛比重の小さい水酸化カルシウムの比較的大きな一次粒子が一度粉砕され、その後の粉砕工程中で圧密造粒作用が誘発され、該作用により一度粉砕されて生じた細かい水酸化カルシウム粒子が二次凝集を生じることで粒子が肥大化し、このような作用が繰り返されることで平均粒径が大きくなることと、このような肥大化がいったんは粉砕された上記粒子の増大した表面積を減少させないような点接着でもたらされるからであると推測される。
【0013】ところで、粉体の流動性の指標となる粉体物性については、例えば安息角や圧縮度などが知られているが、中でも圧縮度は粉体の流動性との関係が深いとされ、以下の式で表わされる。
C=(P−A)×100/P(式中のC、P及びAはそれぞれ圧縮度、固め見掛比重及びゆるみ見掛比重を示す)
圧縮度が小さいほど、その粉体の流動性は良好であるとされている。この流動性について、本発明の水酸化カルシウムを従来のそれと比べると、本発明のものの方が良好である。この理由については必ずしも明確ではないが、粉体の流動性との関係が深い圧縮度に注目した場合、本発明の水酸化カルシウムの方が従来のそれより小さくなっていることも一因であると推測される。
【0014】本発明の水酸化カルシウムは、ごみ焼却炉、火力発電所その他のボイラー等の廃ガス中の酸性ガスを除去するためなどに用いられる酸性ガス処理剤において、その有効成分とすることができる。
【0015】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、水酸化カルシウム粉体の物性は以下のようにして求めた。
(1)平均粒径:堀場製作所製の粒度分布計(LA−920、乾式ユニット)を用い50%累積粒子径として求めた。
(2)見掛比重:ホソカワミクロン社製のパウダーテスタ(PT−N型)を用いて測定した。
(3)圧縮度:ホソカワミクロン社製のパウダーテスタ(PT−N型)を用いて測定した。
(4)BET比表面積:島津製作所製Flow Sorb II 2300を用いて測定した。
【0016】まず、比較のために比較例を示す。
比較例1BET比表面積14.8m2/g、ゆるみ見掛比重0.41g/cm3、固め見掛比重0.77g/cm3、圧縮度46.8%、平均粒径7.3μmのJIS特号消石灰を酸性ガス処理剤として用い、処理能力120t/日のごみ焼却炉の稼働時の廃ガス処理を行った。廃ガス処理塔の廃ガス煙道入口における廃ガス中の酸性成分濃度はHClが580ppm、SO2が40ppmであり、HClとSO2の入口合計量に対して酸性ガス処理剤を消石灰の量が約4当量となるような割合で噴射した。塔出口における酸性成分濃度はHClが29ppm、SO2が13ppmであり、除去率はHClが95%、SO2が68%であった。この際の飛灰の集塵はバグフィルターで良好に行われ、また、廃ガス温度は175〜185℃であった。また、配管中における目詰まりが一時間平均で2回発生した。
【0017】比較例2BET比表面積43.7m2/g、ゆるみ見掛比重0.25g/cm3、固め見掛比重0.46g/cm3、圧縮度45.7%、平均粒径2.8μmの高比表面積水酸化カルシウムを酸性ガス処理剤として用い、処理能力120t/日のごみ焼却炉の稼働時の廃ガス処理を行った。廃ガス処理塔の廃ガス煙道入口における廃ガス中の酸性成分濃度はHClが580ppm、SO2が40ppmであり、HClとSO2の入口合計量に対して酸性ガス処理剤を消石灰の量が約2当量となるような割合で噴射した。塔出口における酸性成分濃度はHClが23ppm、SO2が12ppmであり、除去率はHClが96%、SO2が70%であった。この際の飛灰の集塵はバグフィルターで良好に行われ、また、廃ガス温度は175〜185℃であった。また、配管中の目詰まりはなかったが、貯蔵タンク内の酸性ガス処理剤の排出が困難になるトラブルが発生した。
【0018】実施例1ロータリーキルン炉で焼成され、バイブロミルで乾式粉砕された酸化カルシウム100重量部に対して、60重量%のエタノール水溶液92重量部を消化液として加え、消化機中で15分間混合後、100℃で30分間混合した後、熟成機に供給するとともに、熟成機内が110℃になるようにジャケットに加熱蒸気を導通して加熱し、熟成しながら、水及びエタノールを気化させ、さらに連続式振動ミル〔容器容積20000cm3、媒体(SUJ−2、φ12mm、充填率80%)〕により加振力約7Gで処理し、水酸化カルシウムを得た。得られた水酸化カルシウムの粉体物性を測定したところ、BET比表面積49.2m2/g、ゆるみ見掛比重0.50g/cm3、固め見掛比重0.74g/cm3、圧縮度32.2%、平均粒径8.5μmであった。この粉体を酸性ガス処理剤として用い、処理能力120t/日のごみ焼却炉の稼働時の廃ガス処理を行った。廃ガス処理塔の廃ガス煙道入口における廃ガス中の酸性成分濃度はHClが640ppm、SO2が45ppmであり、HClとSO2の入口合計量に対して酸性ガス処理剤を消石灰の量が約2当量となるような割合で噴射した。塔出口における酸性成分濃度はHClが10ppm、SO2が8ppmであり、除去率はHClが98%、SO2が82%であった。この際の飛灰の集塵はバグフィルターで良好に行われ、また、廃ガス温度は175〜185℃であった。また、配管中の目詰まりはなく、貯蔵タンク内の酸性ガス処理剤の排出性は良好であった。
【0019】実施例2BET比表面積42.8m2/g、ゆるみ見掛比重0.23g/cm3、固め見掛比重0.46g/cm3、圧縮度49.0%、平均粒径3.4μmである市販の高比表面積水酸化カルシウムを、連続式振動ミル〔容器容積20000cm3、媒体(SUJ−2、φ12mm、充填率80%)〕により加振力約7Gで処理した。得られた水酸化カルシウムの粉体物性を測定したところ、BET比表面積50.5m2/g、ゆるみ見掛比重0.58g/cm3、固め見掛比重0.87g/cm3、圧縮度33.5%、平均粒径7.1μmであった。この粉体を酸性ガス処理剤として用い、処理能力120t/日のごみ焼却炉の稼働時の廃ガス処理を行った。廃ガス処理塔の廃ガス煙道入口における廃ガス中の酸性成分濃度はHClが570ppm、SO2が37ppmであり、HClとSO2の入口合計量に対して酸性ガス処理剤を消石灰の量が約2当量となるような割合で噴射した。塔出口における酸性成分濃度はHClが8ppm、SO2が6ppmであり、除去率はHClが99%、SO2が84%であった。この際の飛灰の集塵はバグフィルターで良好に行われ、また、廃ガス温度は175〜185℃であった。また、配管中の目詰まりはなく、貯蔵タンク内の酸性ガス処理剤の排出性は良好であった。
【0020】実施例3BET比表面積48.9m2/g、ゆるみ見掛比重0.25g/cm3、固め見掛比重0.46g/cm3、圧縮度45.7%、平均粒径2.9μmである市販の高比表面積水酸化カルシウムを、連続式振動ミル〔容器容積100000cm3、媒体(SUJ−2、φ12mm、充填率80%)〕により加振力約7Gで処理した。得られた水酸化カルシウムの粉体物性を測定したところ、BET比表面積56.7m2/g、ゆるみ見掛比重0.58g/cm3、固め見掛比重0.86g/cm3、圧縮度32.6%、平均粒径8.6μmであった。この粉体を酸性ガス処理剤として用い、処理能力120t/日のごみ焼却炉の稼働時の廃ガス処理を行った。廃ガス処理塔の廃ガス煙道入口における廃ガス中の酸性成分濃度はHClが650ppm、SO2が39ppmであり、HClとSO2の入口合計量に対して酸性ガス処理剤を消石灰の量が約1.8当量となるような割合で噴射した。塔出口における酸性成分濃度はHClが20ppm、SO2が9ppmであり、除去率はHClが97%、SO2が77%であった。この際の飛灰の集塵はバグフィルターで良好に行われ、また、廃ガス温度は175〜185℃であった。また、配管中の目詰まりはなく、貯蔵タンク内の酸性ガス処理剤の排出性は良好であった。
【0021】
【発明の効果】本発明の水酸化カルシウムは、BET比表面積が増大し、かつ見掛比重が大きい新規なものであって、酸性ガスとの反応性が向上し、廃ガス中の酸性ガス成分を効率よく除去でき、使用量の減少、貯蔵タンクからの排出時のトラブルの減少、貯蔵スペースの縮小及び輸送コストの低減を可能にし、流動性が改良されて、配管詰まりや排出不良などのトラブルが減少し、作業性が向上するなど種々の利点を有する。また、このものを有効成分とする酸性ガス処理剤は、ごみ焼却廃ガスなどの廃ガスから効率よく酸性ガス成分を除去でき、反応性の向上により使用量を減少させることができ、飛灰の減容化に貢献しうるという利点を有する。
【出願人】 【識別番号】390020167
【氏名又は名称】奥多摩工業株式会社
【出願日】 平成10年8月14日(1998.8.14)
【代理人】 【識別番号】100071825
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 明 (外1名)
【公開番号】 特開2000−63116(P2000−63116A)
【公開日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願番号】 特願平10−229818